デザイン学研究
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41 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 竹田 直樹
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    戦後の彫刻作品設置事業は,社会情勢の影響を受けながら継続的に推進され多様化してきた。現在の事業は,(1)景観形式,(2)地域の個性の表現,(3)文化振興というような目的に基づき推進されている。本報はこのような目的が形成される経緯ならびにそこに内在される問題について論じたものである。戦後の設置事業は大きく3期に分け,それぞれの期間の社会的背景ならびに設置された作品の傾向をふまえ,設置事業の目的を整理した。各期間の特徴は次の通りである。第一期(1950年頃から):当時の社会的価値観やイデオロギーやスローガンの表現が重視されていた。第二期(1960年頃から):彫刻作品の都市環境に対する景観形成上の機能が注目された。第三期(1975年頃から):第二期の景観形成に関わる目的に,地域の個性の表現や文化振興に関わる目的が付加され複合的な目的が成立した。一方,田園地域では地域振興に関わる目的が見いだされた。
  • 寺内 文雄, 青木 弘行, 大釜 敏正, 久保 光徳, 鈴木 邁
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    木材自体のニオイ再現を目的として,7樹種の針葉樹材部から熱水蒸溜法と超臨界二酸化炭素抽出法により,木材精油を抽出した。これら抽出物のニオイ評価を20対の評価尺度を用いた官能評価実験により検討し,木材のニオイと比較した。因子分析法を用いて解析した結果,これらのニオイの評価構造は,生活空間を構成する材料のニオイ評価の場合と同様〔認容性・嗅質性・力量性〕の3因子で構成されていることが明らかとなった。また,熱水蒸溜物では香り立ちの鋭さが,超臨界二酸化炭素抽出物では各樹種特徴香気が力量性因子の評価と関連していることが判明した。一方,木材精油と木材のニオイの評価差を検討した結果,熱水蒸溜物では〔スギ・ダグラスファー・ヒノキ・ヒノキアスナロ〕のニオイをほぼ再現でき,後者の超臨界二酸化炭素抽出物は,〔ヒノキ・ダグラスファー〕といった快い部類に属するニオイを再現できることを確認した。
  • 永田 喬
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    El Koussyが空間能力(SA)を人の知性の一つとして抽出し,Spatial Visualisation(SV)能力は常にその主要な能力とされている。しかしSAの複雑さ故にSAに含まれる個々のサブ能力にも心理学者の間で合意は得られておらず,その用語にも多くの見解がある。例えばデザインに深く関係するSVもその例で,ThurstoneはSVかIdentificationとすべきかに迷いがあったと認めている。Macfalane Smithの立体描画テストも,その証差であろうが結果は示していない。先次大戦中のパイロットの敵機/僚友機の視覚的識別を意図したテストがSVに定着している。このSV能力と造形活動でのSVとは異質であるという認識から仮説を設定し,信頼性の高いSAテストと立体の描画テストの実験を132名の大学生に実施し,検証した。その結果,認知および操作両部門からなるSAテストと描画テストの相関は,R=0.118,0.156,確率p=0.179,0.074を得た。したがって空間/立体描画はSVと異なるとの知見から,SVに含ませるか,新サブ能力としてSAに加える必要があると考える。
  • 永田 喬
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    前報告では可視化能力(Visualisation ability)の一つとして描画能力(DA)が何らかの形でSAに組み込まれる必要があることを指摘した。SA研究では成人個人の属性に及んだ報告はほとんどみられない。ある報告ではSAは幼少の頃から徐々に発達するとされ,BrinkmanやBrownはSAに適切な訓練を施せば発達しうるものであることを報告している。本研究では被験者の作図経験,好み,関心,加えて科目別成績とSA/DAとの関連を132名の被験者について実験したものである。作図経験,好み,関心はアンケートの結果をSA,DA別に被験者を高低5段階に分けてContingency Table Analysisで分析した。また科目別成績は5科目とSA/DAとの相関をみた。その結果,「作図経験」ではSA,DAとも段階間に有意差が認められ,「好み」においてはDAで有意差が認められたがSAでは認められず,「関心」にあってはSA,DAとも有意差が認められた。科目別成績ではすべての科目および総合点とSA/DAの相関がないことが解った。
  • 上原 勝, 青山 智津子
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    最近では,登山靴やスキー靴の素材としてプラスチックが多く用いられている。プラスチック製の靴は,防水性に富む,軽い,発色に優れる,安い,というように多くの利点を持つ。ところが一方で,このようなプラスチック製の靴が使用中に突然破損した,という報告が見られるようになった。登山中やスキーの滑走中の破損は,深刻な事故につながる可能性もあり非常に危険である。本研究の目的は,これらの破損の原因を探り,破損事故防止のための適正な使用方法を示すことにある。この研究の結果,プラスチック靴の破損のメカニズムが明らかにされた。そしてさらに事故防止への対処と,靴の素材改良への提案を試みた。靴にあらわれた小さな亀裂が,使用中の突然の破損を引き起こす可能性があるため,これらの注意をはらう必要があることなどを主なものとしてあげた。
  • 劉 建中, 久保 光徳, 青木 弘行, 鈴木 邁, 後藤 忠俊
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 43-50
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    感覚的かつ個人差の大きな主観的評価の定量化を目的として,加法性・独立性を前提としない最適評価システムの構築を行った。構築した最適評価システムは,ファジィ測度とファジィ積分を応用した階層化ファジィ積分モデルであり,非線形計画法の中の罰金関数法と可変計量法により構成した。そして,自動車走行時における乗り心地評価にこのシステムを適用し,評価構造の定量化を試みた。その結果,(1)乗り心地評価には振動刺激要因が最も大きく関与し,次いで生理的要因と心理的要因が影響を及ぼし,これら三要因によって評価の大部分が説明できること,(2)各評価要因に関する評価基準の重要度を,ファジィ測度を検討することにより明らかにした。
  • 原田 利宣, 森 典彦
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    デザイナーの創造作業というものは,コンセプトに対して,それを最もよく具現化するカタチを採ることであり,これは昨今話題となっている"逆問題"を解くことにあたる。この"逆問題"を解く研究は,デザインの分野でもいくつか行われてきた。しかし,その推論にはファジィ逆推論や遺伝的アルゴリズムを用いていたため,最適解はその解のとり得る範囲や最適解を得ても一つもしくは数個であり,その解が全てなのか,もっとよい解が存在するのではという疑問が残っていた。そこで,本研究ではニューラルネットワークの一種の恒等写像モデルを利用して,教師信号の情報を三次元かつ有界に圧縮して,その圧縮された解空間を視覚化し,最適解の探索を可能とした逆推論システムを開発した。さらに,その逆推論システムを利用してシミュレーションを行った。その結果,本システムにより多様解の探索が可能なこと,加えて,恒等写像モデルによる情報の圧縮の特徴などが確認された。
  • 萩原 祐志
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は筆者が開発した製品デザインにおける形状案作成支援システムについて論ずるものである。このシステムを使うことによって,デザイナは製品の形状案のバリエーションを得ることができる。このシステムにおいては,形状案創出の手段として,内挿的方法と外挿的方法が提起されている。まずはじめに,これらの方法について,実例を添えながら簡潔に説明した。また,形状案創出のためには推論モデルが利用されているが,ここでは適切なモデルを選択するために,推論モデルの入出力関係の操作の容易さに関する考察を行い,システムにとってはファジィ推論モデルが妥当であることを示した。最後に,システムに関する今後の課題を指摘し,コンピュータを利用したデザイン支援システムというものに対する筆者の考え方を若干述べた。
  • 久保 光徳, 青木 弘行, 鈴木 邁, 斉藤 秀明, 佐藤 嘉憲
    原稿種別: 本文
    1994 年 41 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 1994/05/31
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ある力学的条件下における適応形状の多様性を明らかにするために,節点の座標値のみで形状を表すことができる二次元トラス構造の有限要素モデルを定義し,力学的適応形状シミュレーションを実施した。シミュレーションでは,設計変数の変化量を乱数により決定するランダム探索法を,形状探索に応用することを試みた。まず,折線状構造の節点間最短距離問題にランダム探索法を適用し,本形状探索アルゴリズムの妥当性の検討を行った。さらに,この形状探索法を用いて基礎的トラス構造の形状を〔応力分岐値〕〔総重量〕の観点から検討し,力学的適応形状探索の可能性を確認するとともに,この適応形状の多様性を示した。また,本探索法の実用性を示すために,可変形状トラス構造の形状制御を試み,多様性に起因する様々な形状変化プロセスを確認した。本研究で構築した形状探索法により,基礎的トラス構造物や可変形状トラス構造のような動的構造物における,力学条件下での形状多様性を示唆することができた。
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