本稿は図記号の分かりやすさの根底となる,表示概念と画材との関係に着目し,記号論と比喩の視点から,図記号の記号化過程を分析し,図記号の画材選択法の分類を試みた。結果として,①図記号の表示概念と画材との関係は記号内容と記号表現との関係であり,模写で表す図記号,比喩で表す図記号,象徴化で表す図記号に分類できる。②比喩で表す図記号は,隠喩,提喩,換喩の記号化過程にならって,類似する事物への置換で表す図記号(隠喩図記号),カテゴリー順序の置換で表す図記号(提喩図記号),近接する事物への置換で表す図記号(換喩図記号)に分類できる。③近接する事物への置換で表す図記号では,事例における表示概念の意味属性と画材の意味属性の分析から,行為の一般概念を特定の行為の画材に置換して表す図記号,特定の行為の概念を具体物の画材に置換して表す図記号,場所の概念を行為の画材に置換して表す図記号,場所の概念を主体の画材に置換して表す図記号,場所の概念を具体物の画材に置換して表す図記号の5つに分類できた。
前報においては,記号論と比喩の視点から図記号の画材選択法を分類した。本報では,それらの分類を用いて,図記号の画材選択法による分かりやすさの違いや,図記号のデザイン条件を導出することを目的とした。日中大学生,日本人高齢者を被験者として,115の公共用図記号の意味について質問紙調査を行った。各画材選択法で表す図記号において,異なる被調査者の正答率,誤答から推測した理解の仕方等を分析した。結果として,①図記号の枠の中の画材は枠より理解度への影響が強いこと,②3つのグループ,特に高齢者グループの理解の特徴,③各画材選択法で表す図記号において,表示概念と画材との関係について,「特定の行為の概念を具体物の画材に置換して表す図記号」等の画材選択法が相対的強く,「場所の概念を行為の画材に置換して表す図記号」等の画材選択法が相対的弱いことを明らかにした。また,④各画材選択法における正答率が高いものと低いものの特徴から,画材選択法の留意点を伺える。
本稿は、中国における意匠権保護のあり方を導出するための一過程として、古文献に基づき、古代中国における「模倣」の観念について考察したものである。
その結果、以下の知見を得た。
かつての中国において、「模倣」は「臨模」という概念でとらえられ、学習過程でなされるべき行為であった。また、その体験を通して、ものの創造行為に対する敬意を涵養しつつ、自らの独自性が培われた。「模倣」は、決して悪の行為としてみなされることなく、学習・鍛練に不可欠な奨励すべき行為として位置づけられていた。「型」「手本」への出会いを喜び、その「真」に近づくべく徹底した「模倣」を積重ねることが、オリジナリティのある自己の世界の創造に通じると考えられていた。
「模倣」に関するこのような観念は、今後、知的財産としての意匠権のあり方を考えるにあたって、多くの示唆を与えてくれる。それゆえ、古代中国における「模倣」に関する観念は、今日、再認識されるべきである。
It is known that designers employ a wide range of visual representations in order to tackle ill-determined problems that are known as the wicked problems. In addition, a sketch is typically employed among such visual presentations in the early stage of a design. Therefore, systematic analysis of the sketches that designers produce in their practice could be a means of understanding how designers think during the conceptual phase of a design. Hence, this paper explores designer sketches from two perspectives. First, preceding research concerning analyses of designer sketches that were carried out in the fields of architectural design and engineering design was extensively reviewed and analyzed. Secondly, on the basis of studies of industrial designers activities in his/her practice, methods for sketch analysis and its application are proposed. This study also structures a conceptual framework for the analysis of the sketches of industrial designers. This framework and method of this analysis will make a contribution toward a profound understanding of the characteristics of industrial designer's ways of thinking as well as toward pedagogical applications of this work.
The purpose of this research is to discuss the behavior and consciousness of the elderly in utilization of bathroom space in Taiwan, find where the problem is and try to give suggestion about a safer and more convenient bathroom for them. Observation interviews and consciousness questionnaires are used in this research. The observation interviews are towards two groups of the elderly who live in residential and retirement homes. The residential homes are classed to three categories, which are one-storeyed houses, town houses, and apartments. The retirement homes are classed by public and private. From observing we found the bathroom in residential homes is minimal, but the equipments inside are well-pointed. The share with bathroom will affect the elderly to change their habits. The retirement homes mostly consider the physical characteristic of elderly, the handgrip and no doorsill are two good examples. Now the bathroom in generally house cannot afford the needs of the elderly and most of them have problems in their regular life unconsciously. In addition, living with their children make them be used of children's habits and hold the needs themselves back.
本研究の目的は、デジタルテレビの新機能の使用を動機づける要因の同定である。本研究では、使用を動機づける要因を「キッカー(Kicker)」と名づけた。有効なキッカーを同定するために、デジタルテレビユーザーの長期の行動観察を行なった。具体的には、赤外線センサーを利用した操作ログ取得、インタビュー分析、教示実験である。
その結果、9個のキッカーを同定し、使用を動機づける行動プロセスモデルを提案した。ユーザーがある機能を使い始めるためには、複数のキッカーの働きによって、<興味を持つ>、次いで<理解する>状態になることが必要である。しかしそれだけでは充分ではなく、今一歩<踏み切る>キッカーが必要な場合もあることがわかった。その後、量的調査によって、同定したキッカーのうち初期使用に関するものの妥当性を検証した。
現在,工業製品の形状設計に使用する曲線を創成する際,まず,デザイナが描いたスケッチ上の曲線をコンピュータに入力する.次にそれらをCAD上でスブライン曲線などで近似し,さらに曲率変化を補正して,図面に利用可能な美しい曲線を創成する.しかし,現状ではその一連の作業を効率化するシステムはほとんど提案されていない.
そこで,本研究ではデザイナが描いたスケッチから,補正された曲線と同程度の美しい曲線を創成するシステムの開発を目的とした.具体的には,まずデザイナが描いた重なった曲線をひとつの図として認識させ,その濃淡の中央線を求める.次に求まった濃淡中央線を曲率単調曲線に分割し,それぞれの曲線の性質を分析し,視覚言語に置換する.さらに,それら視覚言語を元の位置に再配置し,一般的数学曲線の分析を通して得られた知見を利用して,視覚言語間を美しく接続する接続曲線の創成を行った.その結果,現状よりも効率よくスケッチから美しく図面へ適用可能な曲線を創成できる可能性が示された.
現在,工業製品のデザインで用いられている3次元CADシステムでは,キーラインとなる空間曲線が美しくなるように制御することが難しく,そのデータをもとに削りだしたクレイモデルをさらにモデラが玉成することで理想となる曲線(面)を作り出しており,その作業は多大な工数を必要としている.
そこで,本研究では空間曲線の性質を定量化する手法の開発を行い,それを用いてさまざまな美しい空間曲線がどのような性質とその組み合わせでできているかを同定することを目的とした.具体的には,まず空間曲線の性質を分析するシステムの開発を行った.次に,数学曲線や製品における空間曲線の曲率半径・捩率半径から曲率対数分布図,および捩率対数分布図を作成し,これらの空間曲線の性質を同定した.さらに,本システムを応用し,曲面を構成する曲率線群の分析を行った.その結果曲面の性質を定義する曲率線の性質とその接続位置の変化,およびその組み合わせを同定することができた.
触知のための案内図記号のデザインに係わる認知力調査をした。写真を線画にした7種の基本図形に3属性として要素数E、曲線数C、直線数Lを与え、単純化したサンプルを用いて視覚障害者の分かりやすさに対する影響力を重回帰分析により分析した。その結果、女性、犬、車は直線数に、子供、男性、飛行機は曲線数、鹿は要素数に影響されていることと、望ましい単純化の程度を知ることができた。さらに、より分かりやすいデザイン作成のため、理論値が高いデザインを試案した結果、理論値が高くても分かりやすさへの影響は少なかった。また、データを基準化して一般的傾向を求めた結果、曲線数や直線数の増加がプラスに働く傾向が確かめられた。これらの調査結果は今後の触知のための案内用図記号のデザイン作成に有効である。
本稿は、韓国政府の主導によって各地に設立された「デザイン革新センター」の運営・活動状況とその特性を把握し、今後の在り方を検討したものである。以下の各点を明らかとした。(1)設立にあたっては、中央政府からの支援金の比重が高いなど、地域特性が十分に反映されているとは言い難く、運営に関しては、地域の特性を反映した「地域のデザインセンター」として運営していくことが求められる。(2)地域経済の活性化に焦点をあてた運営がなされており、地域の状況を踏まえ、地域のデザインインフラの底辺拡大に向けた取り組みが望まれる。(3)地域のデザインネットワークの中核となるべく、センターと地域社会との連携体系・連携プログラムを積極的に展開していく必要がある。(4)今後、センターは、自律的・自立的運営を目指すと共に、デザイン概念の地域社会への普及のためにも、状況改善に向けた方策の遂行が求められる。
消費者は乗用車を購入する際に、どのようなデザイン要件を重要視しているのだろうか。また、どのようなデザイン要素を評価基準にしているのだろうか。これらの疑問を明らかにすることで、乗用車のデザイン開発の方向性を示すことができると思われる。本研究の目的は、中国における消費者の乗用車の評価基準となる重要なデザイン要素を把握し、デザイン要件の重要度についての評価行動を明らかにすることにある。まず、本研究では、乗用車の購買行動に影響を及ぼすデザイン要件を抽出した。次に、非所有者と所有者が関心を持つ乗用車を調査用サンプルとして選出し、それに基づいてデザイン要素を設定した。そして、非所有者と所有者における購買意向とデザイン要件の重要度に関するアンケート調査を行った。最後に、ラフ集合によりデータを分析し、評価基準となるデザイン要素を把握し、共分散構造分析により非所有者と所有者におけるデザイン要件の評価行動を明らかにした。
An investigation on development status of community industries in the reconstruction areas struck by the 921 earthquake in Taichung and Nantou Counties was conducted from 1999 to September 2008 and the causes for sustainability were analyzed. Several conclusions were reached by observations, interviews on the phone and in-depth interviews. First, most of the community industrial organizations in Nantou county are non-profit organizations and cooperatives (81% in all), which implies a majority of them tends to provide social service. Second, the southern Fukien people run the most community-based businesses in Nantou county (59%), who are followed by the aboriginals (36%). A comparison of the population groups in Taiwan (less than 2% of indigenous people) reveals the peculiar role played by the community industry for the aboriginals. Third, some of the community industries are stagnant after recovery; however, most of them keep running. The sources of operating funds indicate there are still 66% of the cases that depend on financial aids from the government, which implies only a limited number of the businesses that can operate independently. Fourth, factors causing stagnant community industries include willingness of leadership and capability of the leaders, losses suffered from disasters and self-assumption ability of the community industry proprietors. Fifth, elements that support sustainable operation of community industries consist of participants' ideals, mutual trust among the community industry proprietors, working capital and management ability [1].