デザイン学研究
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45 巻, 1 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 小野 英志
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    スタンリ・モリスンは, ゴランツ書店の斬新なブック・ジャケットによって知られるデザイナーあるいはアート・ディレクターであると同時に, 印刷・出版の歴史に関する深い学殖を備えた研究者でもある。1932年に発表され, 現在では最もポピュラーなローマン書体とも見做すことのできるタイムズ・ニュー・ローマンの開発経緯を例として, 彼の書体開発態度を, その著作を通じて検討した。その結果, 書体開発における彼の態度は, ブック・ジャケットのデザインのような場合とは異なり, たいへん慎重かつ保守的であり, そのことがまた彼の書体観ないし書体史観の反映であることが了解された。モリスンにおいてこうした態度を支えているものは, 文字の歴史に関する該博な知識と, それが差し示す書体の正統的形態を尊重する姿勢である。
  • 朴 燦一, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    日本全国の国公立博物館600館を対象として, 運営と活動に関するアンケート調査を実施した。この結果より, 地域博物館の今日的課題として次の4点を得た。 (1) 志向性の課題 : 地域住民の積極的な参加と博物館利用を導く最も有効な方策として, 「地域住民の日常生活と密接な館活動」を通した, 地域住民との連帯感の増進が求められる。このためには, 時代の変化に対応できる館側の体制づくりが必要である。 (2) 博物館の「開放性」に関する課題 : 博物館の活動における開放性と利用者の持続的な参加ならびに博物館利用との間に高い相関性が現れた。しかしながら, 住民との共同研究は19%, また, 積極的に学習施設を開放している館は26%に過ぎず, 今後の, 館側の配慮が望まれる。(3) 専門職員の課題 : 今回の調査では, 専任解説員の不在率が80%と高く, 教育普及活動に資するための専門職員の増強の必要性が認められた。 (4) 場の課題 : 博物館の活動に地域住民の積極的な参加と博物館利用を促進するためには, ソフトの整備と同時にハードの整備も肝要である。
  • 朴 燦一, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 21-30
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 今日の地域博物館の特性, 志向目標・路線の明確化を目的として, (1) 地域博物館の運営・活動の特性と要因に対して数量化III類およびクラスター分析を適用し, 地域博物館の運営・活動の各部門別類型化を試み, (2) クロス集計によって各部門の特性を把握し, 利用者の利用特性と各部門との関係について検討したものである。その結果, 以下の点が明らかになった。(1) 数量化III類およびクラスター分析を行った結果, 基礎部門, 運営・サービス部門, 研究・調査部門, 公開・教育部門の四つの部門ごとに, 五つの類型が得られた。(2) 館の運営と活動に積極性がみられるほど, 利用者の継続的な利用, 自主的な活動, 館と市民との共同研究, 学習施設の開放などが行われている。(3) これらの活動は, 施設・設備や人的な充実もさることながら, ソフト面における運営の工夫によって改善・促進することができる。
  • 岩井 正二
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本報は, 自動販売機の使い方のシンタックスに関するものである。操作の記号として, 金券, 個数情報, 商品情報のインプットの組み合わせによる, つながり方のパターンの仮説を立て, 実際にある自動販売機で, 存在を確認し, 以下の結論を得ている。第1に, それぞれのシンタックスは, この操作をしたら, 商品が出てきて, 後に戻ることはできない操作「トリガー」があり, 金券, 商品情報, 個数情報のインプットの各操作のいずれかが, 兼用している。順番によって, どちらの操作をしても「トリガー」になる入れ替わり「トリガー」もあるといえる。第2にほとんどの自動販売機は, 金券インプットの操作が「スタート操作」として, 一番最初であり, 商品情報のインプットが「トリガー」として, 最後であるが, 扱う商品の複雑化に伴い, 金券インプット操作が「トリガー」として, 最後の操作になる自動販売機が出現してきている。第3にシンタックスのデザインにおいては, ユーザーの学習の観点から, 統一をとることが重要であることがわかった。
  • 森本 一成, 西村 武, 黒川 隆夫, 押部 直克
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    音アイコンをユーザ・インタフェースに利用するために, アイコンの機能を表現するのにはどのような音がよいかについて調査し, 音の有無や音の種類によってユーザの操作感がどのように変るかを実験により検討した。音アイコンに用いた音は, シンセサイザで作成した単純音と実物から採取した音(メタファ音)であった。これらの音をアイコンに付加した場合と音なしの場合の操作感について実験を行った。被験者は30人で, 彼等にテキスト編集と描画のタスクを与えた。実験の結果, 次のことなどが明らかになった。(1) 機能からイメージされる音は被験者により異なるが, 自然界に存在する音と人工的に作る音とに大きく分けられる。(2) 音は面白さ, 楽しさ, 活動性などを大きく向上させることができる。これらに対しては, 楽器の1音だけよりも音階や, 身の回りの音(メタファ音)の方が効果は大きい。(3) 音アイコンは使いやすさ感を向上させる。
  • 児玉 幸子, 久保田 敏弘, 三田村 [シュン]右
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    カラーホログラム記録技術の基礎研究はこれまでに種々行われてきた。しかしディスプレイへの応用に関するデザイン分野における研究は少ない。本研究では, カラーホログラムを用いたディスプレイをデザインする際に指標となるカラーサンプルを作製することを目的に, 正確な色再生に適しているリップマン・カラーホログラムを用いて様々な色を指定通りに再生する方法の実験を行った。記録材料に銀塩乳剤を使用し, 乳剤の膨潤率, 3原色のレーザー光で多重露光する際の露光量等を調節することによって, 理論通りに指定した色を再生する実験を行い, 異なる色を再生するリップマン・カラーホログラムのカラーサンプルを作製した。この方法を用いることにより, ホログラム上の意図した場所に, 意図した色再生が可能となった。さらに, カラーホログラムによる3次元ディスプレイの実際的応用を検討し, 空間に浮かぶ色面による試作品を作製した。
  • 庄子 晃子
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    ブルーノ・タウト(Bruno Taut, 1880-1938) は, 仙台の商工省工芸指導所で, 1933年11月11日から1934年3月6日まで顧問(嘱託)として指導に当たった。この間の1933年12月15日から2か月弱, タウトは, 東京や京阪地区の伝統ある工房で工芸指導所に適切な工芸品を選択するための旅に出た。その旅先の京都から, 所員斎藤信治に宛てた2通の手紙が今日に残る。それは, 1934年1月8日付の"Brief des Herrn Prof. Taut an den Herrn Saito (タウト教授氏から斎藤氏への手紙)"と, 1934年1月12日付の "Brief an den Harrn Saito (斎藤氏への手紙)" である。翻訳を試みたところ, 前者は斎藤からの手紙に対する返書であり, 工芸指導所の金工部と木工部での規範原型の研究についての助言と工房探訪の若干の報告であることがわかった。後者は, 諸工房の訪問についての詳しい報告であり, タウトが選んだ優良工芸品の数々が記されている。彼が, 伝統ある工房で優良工芸品を選択し収集したのは, 現代の新しい規範原型を創出する基礎は伝統にあることを示すためであったといえる。
  • 神野 由紀
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 65-74
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    近代における「子供の発見」が市場としての子供の存在をも見出し, 子供のためのデザインが生み出されていく。本研究は近代日本でのその歴史を明らかにするものであるが, 本稿では特に子供部屋の出現と受容の変遷に焦点をあて考察した。欧米で子供部屋が急速に普及するのは19世紀以降で, 子供という存在の発見と尊重, さらに夫婦と子供を主体とする新しい家族像の誕生などが直接的な影響を及ぼしていた。日本では, 明治期の児童教育運動で家庭教育の重要性が唱えられる中, 盛んに紹介され始めるが, その内容は児童博覧会や家庭雑誌などを通じて人々に提供された。さらに大正時代中頃からは一連の生活改善運動や童心主義児童文学の影響を受け, 子供部屋への関心は一層強まる。こうした動向の下で「子供部屋」は百貨店など企業により商品化されていくが, 実際の子供部屋普及率の低さとは無関係に, 強い関心を持たれた近代日本の子供部屋には, 商品としての西洋的=近代的イメージが付されていたといえ, 人々の消費の欲望の対象になっていたことが明らかになった。
  • 伊原 久裕
    原稿種別: 本文
    1998 年 45 巻 1 号 p. 75-84
    発行日: 1998/05/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, オットー・ノイラートの活動を視覚表現に取り組む端緒となった戦争経済博物館での試みからアイソタイプの提案に至る過程を中心に再構成し, アイソタイプに込められたノイラートの思想的含意を彼の他の活動との関連性を通して, 同時代の文脈を含めたより広い視野から考察することにある。彼の視覚表現に関わる活動は「ウィーン社会経済博物館」において「絵による統計」の手法「ウィーン・メソッド」として具体化するが, 統計への関心自体は第一次大戦中の戦争博物館における活動にまで溯れる。しかし1934年のハーグ亡命以降に書かれた「絵による国際言語」では, むしろ「絵による言語」として, その言語としての性格が強調されるようになった。ノイラートの視覚教育における統計から国際的に通用する言語への訴求点のこうした転換は, 彼のもう一つの重要なプロジェクト, 「科学の統一運動」の到達点であった「統一科学百科全書」の提案と同様に, 特に同時代のファシズムの脅威に対抗する意識的な国際的協調の呼びかけをも含意していた。
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