本研究ではまず,1966年〜2000年に販売された事務用回転椅子(274点)を対象に,形状の変遷を調べた。具体的には,正面斜めから撮影された写真をもとに,形状の特徴となるアイテム(18項目)を設定し,数量化III類を用いて分析した。その結果,「背のボリューム」と「背横方向の分断・ライン」の軸をもとに,8つのグループを得ることができ,ほぼ年代順に分類できることがわかった。次に,8つのグループのうち,サンプル数の少ない2グループを除き,それぞれから代表的な5脚を選び,評価グリッド法を用いて,各グループの椅子が視覚的にどんな印象を持たれるのかを調べた。その結果,(1)ユーザは椅子に対して,視覚の点からは形状の良し悪しと座り心地についての印象を持つ,(2)背もたれの幅や広さが,座り心地や見た目の印象に影響する,(3)肘かけは全体形状のバランスからはあった方が良く見えるが,個々の形状に対する印象評価はユーザによってかなり異なる,との傾向があることがわかった。
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