デザイン学研究
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70 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • ─蔡侯盤書体のトレースとデジタルフォント化による観察
    髙城 光
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1_1-1_10
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/08/03
    ジャーナル フリー

     本稿は,列国金文書体の一つである蔡侯盤書体の字形と書き手の書きぶり(身体の動き)の関係の考察である。
     字形と書きぶりの相関は書芸術と書体デザインの両方において重要である。書芸術においては書き手の唯一性が書きぶりを通して文字に表れるとされ,字形のばらつきも尊重される。一方,書体デザインにおいては用筆や書きぶりは書き手個人と区別され,字形のばらつきを抑えながら書体の様式を解釈・表現するための手がかりである。書体デザイナーたちは一般的な用筆と書きぶりをイメージしながら書体を共同制作する。
     蔡侯盤書体は用筆法の成立以前の書体であるため,書き手たちは用筆法から様式を解釈することができない。用筆に代わる手がかりを考察するため,拓本資料のトレースによって字形の書きぶりを観察した。結果,蔡侯盤書体においては手の自然な握り込みにともなう規則的な動きが,様式を解釈し書きぶりを統一するガイドとしてはたらいている可能性があることを確認した。

  • ─千葉県安房地域における地域資源「万祝」の再確認・再認識に基づく地域活性化(1)
    郭 庚熙, 青木 宏展, 植田 憲
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1_11-1_20
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/08/03
    ジャーナル フリー

     今日、急速な経済発展の傍らで、地域に根ざして形成されてきた地域固有の文化の衰退が危惧されている。その対策として、当該地域の文化や資源を活かした地域活性化が求められている。本稿は、千葉において誕生・発展した漁師の晴れ着「万祝」を対象としたものである。万祝の型紙のデジタル化に基づき、万祝の認知度向上や共有化に資する資源の活用方法を、実践を通して提示することを目的とした。具体的には、万祝の型紙の図柄のデジタルデータの取得・保存を行うとともに、それらを活用した生活用品の提案、展示・ワークショップの実施、職人との連携などを試みた。以上の取り組みの結果、万祝のデジタル化・活用による地域活性化への可能性について以下を抽出した。(1)地域住民とのコミュニケーションによる万祝の顕在化、(2)自律的な地域活性化への可能性、(3)地域社会での共有のためのプロセスの提示、(4)職人との協力による伝統的工芸の継続。

  • ─千葉県安房地域における地域資源「万祝」の再確認・再認識に基づく地域活性化(2)
    郭 庚熙, 青木 宏展, 植田 憲
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1_21-1_30
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/08/03
    ジャーナル フリー

     本稿は、千葉県安房地域における漁師の晴れ着「万祝」の型紙のデジタルデータを活用し、万祝の図柄の形態とその類型化、図柄の意匠の分類に基づき、万祝の文化的特質を明らかとすることを目的としたものである。調査・考察の結果、以下の各点が明らかとなった。(1)万祝の図柄には、背景、漁獲対象、漁撈道具、人物、動物、植物、宝物関連、補助的素材、文字などの多様な要素が存在し、それらがいくつかの形式に基づき組み合わさることによって図柄を構成している。(2)万祝の図柄は、数量化Ⅲ類およびクラスター分析により、①漁獲対象・吉祥型、②宝物・吉祥型、③漁獲対象型、④漁撈型、⑤歴史上の人物型、⑥想像上の人物型、⑦伝統芸能型、⑧その他の8類型に分類できる。(3)万祝の図柄は、地域の特性を表しつつも、細部の意匠においては紺屋ごとの個性を有している。総じて、万祝には、豊かな生活を描こうとした海と暮らす人びとの多様な想いや願望が如実に投影されている。

  • -版式や図像要素の分析を中心に
    李 卓, 中野 豪雄
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1_31-1_40
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/08/03
    ジャーナル フリー

     「内景図」という人体図像が,中国に古代より伝わる多領域の印刷物に掲載されてきた。本稿は,現存する印刷物にある「内景図」を中心に,版式や図像要素の変化を分析することにより,「内景図」の視覚伝達デザインの特徴を検討したものである。古代の印刷物における「内景図」の変遷,印刷文化の背景,「内景図」に関連する印刷物の紙面的特徴を探究することにより,以下の諸点を明らかにした。(1)「内景図」は印刷文化の発展とともに,最初に道教の書物に掲載され,医学の書物と日用類書に普及した。(2)現存する「内景図」を載せた書物には,4つの版式が存在することを明確化した。なお,「内景図」が木版の半分即ち書物の1ページを占める掲載の版式が最も頻度が高い。(3)「内景図」を構成する情報要素は,文字,象徴記号,具象的な図像に分類される。道教の書物における「内景図」の図像要素が最も複雑であり,医学の書物と日用類書における「内景図」の図像要素は次第に簡略化されていった。

  • 三輪 正幸, 渡邉 誠
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1_41-1_50
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/08/03
    ジャーナル フリー

     養蜂家のニーズに適合したセイヨウミツバチ専用巣箱を開発する際の設計要件を明らかにするために、文献調査とアンケート調査をした。文献調査では、巣箱のデザイン史上、最も重要な巣箱は 1851 年に発表されたラングストロス式巣箱であることが確認できた。この巣箱は内部に可動式の巣板を入れることができ、内部空間を自由に拡大縮小できる構造を採用したことが、現在でも広く使用されている主な要因であることが分かった。国内の巣箱のニーズや巣箱の性能や設計要求に関するアンケート調査をしたところ、プロ養蜂家はハチミツの生産性や品質を重視しているのに対して、趣味養蜂家は作業性や外観のデザインのよさを求めていることが示唆された。国内の養蜂において求められているのは趣味養蜂に特化した巣箱の開発で、その設計要求は巣箱を小型化もしくは軽量化しつつ、周囲の景観に違和感なく適合し、雨避けや横方向に巣箱を拡大させる機能であることが明らかになった。

  • 岡崎市康生通りの将来ビジョン作成を対象として
    伊藤 孝紀, 中山 朋紀, 近藤 宏樹, 正村 優衣
    2023 年 70 巻 1 号 p. 1_51-1_60
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/08/03
    ジャーナル フリー

     本研究では , 岡崎市康生通りにおける将来ビジョンの作成を目的としたまちづくりワークショップ(以下,WS)を対象として,ハイブリッド型 WS の検証をおこない,その効果および課題点を把握することを目的とする。
     2020 年度に作成した将来ビジョンへの意見および評価を把握するため,ヒアリングによる意識調査をおこなった。また,ハイブリッド型 WS において,非対面式の参加者が対面式の参加者と同程度の発言機会を得るための条件を整理するため,予備実験をおこなった。さらに,ハイブリッド型 WS の効果および課題点を明らかにするため,ハイブリッド型 WS と従来型 WSを比較する実証実験をおこなった。
     意識調査から , 沿道店舖の店主のまちづくりに対する価値観を把握した。予備実験から , 円滑に議論をおこなう条件を整理した。実証実験から , 参加者の評価と成果物の分析から従来型WS とハイブリッド型 WS の特徴を把握した。

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