デザイン学研究
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49 巻, 4 号
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  • 工藤 芳彰, 宮内 ★
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は『ステューディオ』誌の創刊当初の編集方針を考察するために、既往の研究と創刊の経緯、創刊号の誌面を検証した後、創刊(1893)年の主要記事を分析した。主要記事31編を、題材にもとづき、写真(5編)、イラストレーション(4編)、複製版画(4編)、レリーフ制作(3編)、室内装飾(3編)、スケッチ(3編)、美術展(3編)、テキスタイル(2編)、その他(4編)に分類した。考察の結果、同誌は読者層を限定せず、多数の読者を獲得するために、応用美術の領域を中心とした幅広い題材を目立った偏りなく掲載していた。『ステューディオ』誌の編集方針は、芸術やデザインに興味を有する一般の人々に、アーツ・アンド・クラフツ運動の思想を啓蒙することであったと考える。そして、その編集方針ゆえに、同誌は商業的成功をおさめ、19世紀末から20世紀初頭に展開したデザイン運動の拠り所となったのであろう。
  • 原田 利宣, 菅野 貴亨
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    今日まで様々な製品や広告における形態要素とイメージおよび魅力度との関係を明確にする研究は数多くなされてきたが,ファブリックデザインにおいてはその事例は少ない。そこで,本研究では既存ファブリックデザインを構成する形態要素がどのようにユーザーのイメージおよび魅力度に影響しているかを調査・分析することを目的とした。具体的には,地場染色企業の協力を得てサンプルを収集し,アンケート調査を行い,数量化理論第I類,重回帰分析およびクラスター分析などの多変量解析を用い,イメージと魅力度の関係,形態要素とイメージおよび魅力度の関係を分析した。さらに,その分析結果に基づいて,魅力度を制御するイメージを有するように,形態要素を選択し,新しいファブリックデザインの制作を行った。このファブリックデザインを被験者に評価してもらい,その魅力度が制御できていることを確かめた。
  • 広川 美津雄, 井上 勝雄, 高橋 克実
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 21-28
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    近年、製品デザインの現場やデザインマネジメントの立場から、デザインコンセプト策定の重要性が増大している。本研究は、橋梁という特殊な領域におけるデザインコンセプト策定についての先行研究の考察を基礎に、工業デザインの分野において曖昧に使われてきたデザインコンセプトの内容を明らかにし、工業製品のデザインコンセプト策定の方法に関する提案を行った。策定方法は、まずデザイナーが、製品開発の時系列的視点で製品価値を再構成することによってデザインコンセプトを設定する。次に、現在デザインしようとしている製品に求められる要件のうち、評価を定めたり、合意したりすることが困難な要件に対して、デザインコンセプトによって方向性を示す。このような製品価値主導のデザインコンセプト策定により、製品全体の新しい価値を明確にすることができ、以後に続く設計をリードし、製品開発の全体をコントロールできる。
  • 阿部 眞理
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 29-36
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    針葉樹人工林から産出される木材の有効利用は、山林の環境保全のためにも重要な今日的課題となっている。本研究はこのことに着目し、スギ材に圧縮加工を施し、硬材に類する材質に変質させ、インテリア構成部材や家具・建具等への高度利用を目指すものである。この論文はその第1段階としてスギ材を1/2に圧縮成形した場合の材の「硬さ」について、スギ、ブナ、ナラ等と測定比較し、有効な活用方法を探ることを目的に行った研究をまとめたものである。その結果、下記の項目が明確になった。1)スギ圧縮材の硬さは、硬材、例えばブナ、ナラとほぼ同じレベルで扱うことが出来る。2)スギ圧縮材にスライス加工を施し、スギ圧縮突き板化粧単板として合板や集成材に貼り付ける場合、単板の厚さ0.6mm以下では圧縮単板の硬さの効用はあまり発揮されないが、0.8mm〜1.5mm厚ではその効用は顕著で、充分硬材として実用に耐えることがわかった。
  • 松岡 由幸, 篠崎 直人
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 37-44
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らは,過去の研究において,曲線形状の全体特徴である「複雑さ」を表現しうる巨視的形状情報として,曲率エントロピーおよび曲率2次エントロピーを定義した.本報においては,巨視的形状情報を曲線設計支援において活用するために,両形状情報と「複雑さ」の弁別との関係を明確にすることを試みた.はじめに,基本曲線形状における「複雑さ」の弁別実験を行い,「複雑さ」と巨視的形状情報の大きさの順位相関を解析した.その結果,曲率2次エントロピーが,「複雑さ」の順位を適切に表現しうる巨視的形状情報であることが示された.また,同形状情報の弁別閾値を求め,曲線設計支援における適用範囲を示した.つぎに,弁別率と注視時間との関係解析,および弁別時の眼球運動の解析を行った.その結果,「複雑さ」の弁別に要する注視時間は約200msであった.さらに,「複雑さ」という巨視的形状情報の認知過程が短時間での情報取得に有効であることを示唆するとともに,本知見がITSへの活用において新たな可能性を有していることを考察した.
  • 白石 照美, 深水 義之, 吉田 登美男, 飯塚 昌樹
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 45-54
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    前報告では,ミューラー・リヤー(Muller-Lyre以下M・L)の錯視図形についてサーストンの一対比較法による錯視量の測定実験を行った。一方で厳密な心理実験の結果から視覚の諸特性を明らかにした視空間伝達特性モデルF(1)による解析を試み,両者の間には高い整合性が確認された。本報告では,このモデルの有効性を橋梁図形の例で定量的に確認するために,M・L錯視図形と垂直水平錯視図形を組合せて斜張橋の側面形状を図形化し、塔の高さに関する錯視量の測定を行う。一方、F(1)での解析の結果得られた値を心理生理ポテンシャル値とし,長さの錯視に影響を与える要素として,その最高値間の距離に着目して両者の関係を明らかにする。実験の結果、斜張橋の側面形状を単純化した図形で,約10%の過大視が計測された。また,この図形で実験値とF(1)によって求められた理論値は極めて高い一致を示した。
  • 松本 誠一, 川上 秀人, 橋冨 博喜, 松岡 高弘
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 55-64
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は建築と家具との関わりの中で洋風家具が日本に定着していく変遷過程を明確にしようとするものである。詳細な実測調査結果を基礎に据えた実証的研究で、特に製作技術の変化という側面に注目している。本稿はその第2稿であり、旧松本家住宅の卓子類の製作技術の特徴について述べたものである。旧松本家住宅には約100点の洋風家具が残存し、それらの製作者や製作年代がかなり明確であるため、当時の製作技術を知る上で貴重である。そこで本稿では25種30点の卓子類を採り上げてその製作技術的特徴を以下の3点に要約して提示した。(1)卓子類の製作における問題点は、甲板と脚及び幕板との接合、換言すると「面と点、及び面と線の接合」と、木材の伸縮に対応した技術との2点である。(2)甲板と脚部を嵌合することが卓子全体の強度を保持すると理解されていた。(3)「駒止め」は甲板の伸縮に対応する技術としてではなく,甲板と脚部を強固に圧着する技術として理解されていた。
  • 長尾 徹, 鵜飼 連彦, 佐藤 弘喜
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 65-74
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論では普遍的な鉄道路線網の位相図化の指針を確立することを目的とし、「環状線が存在しない路線網」である名古屋近郊区間の路線認知地図の観察と架空路線網による再生実験を行った。認知地図の観察からは、路線網の基軸となる路線の存在が確認された。被験者に強い印象与えている要因は「直線で表記する」および「2つ以上の路線が組み合わされて何らかの形状を成す」であることが判明した。また、再生実験からは、位相図化の要因である「結節部の軸の本数」と「Rの大きさ」の最適な組み合わせば「軸の本数が6本で、Rは大きくつけたほうが試行数が少なく憶えやすいということができる」ことを明らかにした。そして、位相図の記憶および再生の過程は、基軸が一本もしくは複数路線の組として直線や見慣れた形状に変換されて憶えられ、その後基軸上にその他の路線が重なって行くという2段階で行われていくことを明らかにした。最後に「環状線の存在しない路線網の位相図化」の指針の提案を行った。
  • 郭 東華
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 75-84
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    環境行動研究における「居住後評価」の効用は評価で得られた情報の将来活用にあると言われており、活用性の向上のために、様々な方法が考案されている。本研究は、デザイン過程の各段階における必要情報の獲得に有効な評価の方法を探求し、「居住後評価」結果のデザインへの活用性の向上を目指そうとするものである。本稿は、デザイン過程における必要情報についての検討、評価方法の設定、居住後評価の実行(評価対象は計画住宅地)、の順で研究を進めた。設定した評価方法の特徴は、デザイン過程における情報の特性やデザイン段階別の考慮事項を反映していること、居住者の評価構造をデザイン段階の間の関係構造として抽出していることである。抽出された評価構造はデザイン段階別の様々なデザイン方法情報を含んでおり、本研究における「居住後評価」方法の有用性が明らかになった。
  • 落合 信寿, 佐藤 昌子
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 4 号 p. 85-94
    発行日: 2002/11/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,赤,橙,黄の安全色3色の探索に及ぼす周辺刺激の色とその配置,ならびに背景輝度の影響について検討した。刺激画像は視角40°の広視野に位置された色指標の配列によって構成され,80インチスクリーン上に提示された。妨害指標の色配置は,目標指標と妨害指標間の類似度,妨害指標間の類似度の関係に応じて4種類を設定した。目標指標色,妨害指標数,妨害指標の色配置の関数として反応時間が測定された。その結果,背景輝度が異なっていても,橙は妨害指標数の増加に伴い探索が著しく困難になるが,赤と黄は妨害指標数の影響をほとんど受けないことが明らかとなった。探索に及ぼす色配置の影響は,目標指標と妨害指標間の類似度に依存しており,また安全色によってその影響が異なっていた。すなわち,橙は色配置の影響を著しく受けるが,赤・黄は比較的影響を受けにくいことが明らかになった。これらの結果は,安全色の橙が,周辺環境の視覚刺激によって影響を受けやすい傾向にあることを示唆している。
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