本研究では,ヒトの平面や立体に対する認知に基づいた「認知幾何」という既成の幾何とは異なった概念およびその幾何学としての可能性を提案し,「認知幾何」と既成の幾何との比較を行った。その結果,いくつかの相違の例から,「認知幾何」が既成の幾何から多少ずれたところに存立する可能性があることが推測された。次に,「認知幾何」の公理を定義するとともに,一面体と六面体の間に,ヒトの認知として違った面構造を持ったジオン(geon)が何種類あるのかについて算出し,その面構造を分析する。さらに,その面構造の違いが,どのようにそのジオンの認知およびジオン間の類似性に関係するのかについてアンケート調査を行い,MDAを用いて分析した。また,MDAによる結果とゲシュタルト理論から考えられる結果の比較考察を行った。その結果,ゲシュタルト理論により,各種のジオンは,球系,立方体系,円筒系,および鞍形系の4タイプに分類され,この分類方法が立体図形認知に影響していることが推測された。
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