移動用福祉機器の一つとして車椅子車載システムが注目されている。本研究では, 既存システムの設計に関して, 乗心地に対する配慮が不十分であることに着目し, 乗心地設計を図るうえでの基礎的知見として人体-車椅子系の振動特性を把握することを研究目的とした。この目的に対して, 実験的モード解析を採用し, 振動特性を表すモード特性の明確化を試みた。まず, 加振台における入力振動と, 人体および車椅子上の各計測点における出力振動を同時に計測する加振実験を行い, 1〜15Hzの範囲における周波数応答関数を得た。つぎに, 周波数応答関数に適切なモードパラメータ推定法を適用し, 系の固有周波数として2.51Hz, 4.63Hz, 7.10Hz, 8.31Hzを抽出した。この結果, 系のモード特性が明確になった。さらに, 系の振動特性とヒトの振動感覚特性を検討した。その結果, 車椅子車載システムにおける乗心地の悪さに繋がる要因として, 4.63Hz, 7.10Hzにおける固有モードが抽出された。また, これらの固有モードにおける振動低減が, 乗心地向上に対して有効であることを示した。
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