工業デザインの対象は, 技術・社会の変化に伴って道具から機械へ, さらに機械から情報機器へとその範囲を拡張してきた。この拡張は, 本論文に於いて, 単体からシステムヘの展開と考えている。しかし, 現在の工業デザインの手法は, 必ずしも対象の拡張に歩調を合わせてきたとは言えない。工業デザインの手法は基本として動かない構造体に対応して形成されてきたものであり, 動きや情報を的確にとらえられるものではない。また, 情報を取り扱うシステムの進展に伴ってその内部にサイバースペースと命名される仮想的な世界が顕在化し, 実体のある世界との関係が曖昧になってきている。本考察は, この様な情報によって形成されつつある状況の中で, 工業デザインが担う新たな役割・意味を情報とシステムの性質を考察する事によって模索し, 方法を探索している。かつ今後の機器・システムの姿, 方向性を探るとともに, 工業デザインの在り方についても言及する。
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