デザイン学研究
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48 巻, 5 号
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  • 澤口 亮, 赤松 明, 久下 靖征
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_1-5_8
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     椅子の形体と椅子の視覚的イメージの関係について検討した。椅子に対する視覚的なイメージ構造は「華やかな-質素な」に代表される情緒性因子及び「機能的な-機能的でない」に代表される機能性因子の2因子で解釈できた。この2因子で構成されるイメージ空間に着目するとサンプルの椅子は5つの類型に分けることができた。座り心地評価及び総合評価は,情緒性因子と機能性因子に関係していることが明らかになった。それぞれの評価を高めるには,椅子の使用目的が損なわれないよう椅子の機能寸法を考慮し,「柔らかい」,「ゆったりとした」という情緒性イメージ,「安定感のある」という機能性イメージのある形体とすればよいといえよう。

  • 車 政弘
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_9-5_18
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

    1)雲南省地床式住居の主要な日常の食事空間は,各少数民族住居の発展段階や歴史的経緯は異なるものの,近代化パターンとしてリビングダイニングの方向性とダイニングキッチンの方向性があり,空間未分化の住居では炉端である。
    2)漢民族庶民文化の受容の結果である甲板正方形で高さ53cm程度の食卓は,雲南省住居におけるひとつの典型的食卓である。
    3)もう一つの典型である徳宏州に見られる甲板円形で高さ50cm程度の食卓は,伝統的な膳の形態イメージと,イギリス文化の間接的浸透の結果である。
    4)上記2),3)の食卓に対応する座具の座面高は17-18cmから35cm程度で,低い腰掛け文化が先行定着しており,その日常生活における起居様式が食卓の高さを規定する主要なものである。新たな家具の導入,受容には,従前の行動様式,起居様式の特徴を包摂する形式が必要であることを示している。

  • 高 榮俊, 金 明載, 工藤 卓
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_19-5_26
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は高齢者および車イス使用者の台所作業の分析によって韓国の現状の台所を評価することである。調査はソウル市内のアパートのI字型とL字型の台所2個所で行った。被験者は,高齢者,車イスを使用する高齢者,若く健康な成人のグループである。台所作業15項目の課題を遂行する過程を,ビデオカメラ,一般カメラ,ストップウオッチを用いて,所要時間と誤操作の頻度を解析した。その結果,次の知見を得た。1)ビルトインタイプの台所機器のデザインでは、高さとともにコントロールパネルの角度を慎重に検討する必要がある。2)車イス利用者には、熱いもの,重いもの,生ゴミを運ぶカートが必要である。3)従来の韓国の台所の作業面積の不足を解消するためには,下段の収納に多様な高さのスライド式棚や折りたたみ式棚を考慮する必要がある。

  • 高橋 紀哉, 原田 利宣, 吉本 富士市
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_27-5_36
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     自動車のフロントマスクデザインは,ヘッドランプのことを'目'といったり,エアインテーク形状のことを'口'というように,よく人の顔に例えられる.つまり,自動車のフロントマスクと人の顔の認知においては,何らかの類似関係があるという仮説をたてた.
     そこで,本研究ではイメージという視点から自動車のフロントマスクや人の顔の形態要素間の類似関係を明らかにすることを目的とした.具体的には,主成分分析,クラスター分析を用いて自動車のフロントマスクと人の顔を4つのクラスターに分類を行い,また,古屋らの研究(1993)における誇張画作成の考え方を応用し,各クラスターにおける誇張画の特徴を考察した.その結果,各クラスター内の自動車のフロントマスクと人の顔との間には,一致する形態的特徴が数多く存在することが明らかとなった.

  • -駅空間におけるボーディング・ルートの複雑さに関する研究(1)
    馬 敏元, 釜池 光夫, 長尾 徹
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_37-5_46
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     近年、駅空間は多機能化に伴い、巨大化し、その案内やサービス情報に満ちあふれ、複雑となった。駅空間を利用する場合、入口から乗車するまでに選択したルート(ボーディング・ルートと呼ぶ)により、その複雑さに違いが生じる。現在、その複雑さについては利用者の印象で判断するしかなく、客観的な指標が無い。駅空間をデザインする場合の基準となりうる複雑さの定量的な指標が必要であると思われる。本研究の目的は駅空間におけるボーディング・ルートの複雑さに着目し、情報理論に基づき、定量化を行うことである。
     はじめに情報理論による空間の複雑さを定量的に示す尺度-「エントロピー」を用い、ボーディング・ルートの評価を試みた。その結果、単純なエントロピーのみでは、空間の方向選択による複雑さを充分に説明できず、利用の実感と一致せず不備があることが分かった。そこで、ボーディング・ルートにおける方向転換の要素を加重情報量として取り入れることで、ボーディング・ルートの複雑さを評価することが可能と考えられる。

  • -駅空間におけるボーディング・ルートの複雑さに関する研究(2)
    馬 敏元, 釜池 光夫, 長尾 徹
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_47-5_54
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     駅空間の計画段階に、設計図面上で動線計画を検討する際、「最簡」というものを測る尺度はないので、その推測モデルを構築するために本研究を行った。前報で、「情報理論によるボーディング・ルートの複雑さの定量化」を試みた。それにより、ルートの複雑さを情報量で表す可能性について述べた。本研究は動線計画を支援できるように、ボーディング・ルートの複雑度合いを順序付けるモデルの提案することを目的とした。そして、首都圏の86駅における1804通りのボーディング・ルートを抽出し、ルートに含まれた情報量を計算し、首都圏におけるルートの相対的な順位モデルの構築を試みた。重回帰分析を行い、2つの推測関数を明らかにした。それは、ボーディング・ルートの順序付けモデルとして利用でき、「複雑係数(Rc)」と名付けた。また、主観的な判定を行い、被験者6名が共通に経験したことのあるルートを取り上げ、利用経験に基づき、複雑さを順序付けた。ケンドールの一致係数は0.74の正相関を判明した。これは、新しい尺度として動線の複雑さを評価し、デザイン計画段階に応用できると思われる。

  • -鉄道路線図位相図化・デザイン方法の研究(1)
    長尾 徹, 芥田 幸一, 柴田 吉隆, 馬 敏元
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_55-5_64
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     鉄道路線図は、駅と路線のつながりという位相関係の表示が目的であり、距離や方位、縮尺から解放された地図である。位相図とは、点と線の系列を表示するネットワーク図のことをいい、鉄道路線図もこれにあたる。本論では、まず鉄道路線図の成立過程を調査した。次に鉄道路線網がどのように認知されているかの観察調査を行った。その後、鉄道路線図に求められる検索性に注目し、位相図構成要因が検索性に及ぼす効果の検証実験を行った。被験者の知識による差異を排除するために、認知されている路線網と既存の路線図に対する観察を基に、位相図構成要因を抽出、水準を設定し、パターンの異なる3路線網について実験用の位相図を作成した。実験の結果、主に以下のことが判明した。1)路線により構成される形状は単純な図形に置き換えられ記憶される。2)検索性を大きく左右する要因は角の丸みの有無であり、角の丸みの大きさによる影響は小さい。

  • 河 鳳洙
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_65-5_74
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     透視画における奥行きは作家の視点次第で変わる空間構造であり、この空間構造は逓減比という数理的な比をもっている。そのためこの逓減比は作家の視点に依存する比であると考えられる。
     もし奥行き知覚と関わって感覚的に好む普遍的な視点があるとすれば、その奥行き空間にはどのような数理的比が表れるか。本稿ではポスターと写真を用いて奥行きと関わった作家、観察者の視点を比較分析した結果、視点分布の特徴から調和数列と関わった奥行きにみる数理的特性を見出した。それは視高1に対して視距離0.8の関係を持ち、1:0.8, 1:1.6, 1:2.4, 1:3.2となり、1:4.0, 1:4.8 …と続く1:0.8n (n = 自然数)の可能性を示した。
     これは視点の規則的な特徴から調和数列と相まって成り立つ「奥行きにみるプロポーション」の1つのかたちであり、奥行き知覚と関わった心理的働きの一貫性から導かれた数的秩序であるといってよいと考えられる。

  • ―台湾視覚伝達デザイン史研究(6)
    林 品章
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_75-5_84
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     「台湾戦後の視覚伝達デザイン表現の発展」は、時期により二部に分けられる。前編は1945年から1970年まで、後編は1970年から1970年までである。本論文は前編である。本研究は、台湾の戦後の視覚伝達デザインに関連するさまざまなデザイン活動と表現の様相を系統的に歴史の骨組みとして整理することを目的とする。内容構成としては、台湾のデザイン学界と業界共通の認識に従い「ポスター」「挿画(イラスト)」「商標と標誌(ロゴ)」「パッケージデザイン」「広告デザイン」の五つの項目に分けた。
     研究の結果は次のようにまとめられる。(1)台湾の戦後は政治的影響を受け、視覚伝達デザインの表現も保守的な傾向が見られる。(2) 1960年以降、政治経済が安定するに従い、また政府関係機関と民間企業の仲立ちもあって、日本や西欧から現代デザインの理念が大量に持ち込まれた。デザイナーらの積極的活動と相まって、デザイン表現も高度かつ専門的水準に達するようになった。

  • ―台湾視覚伝達デザイン史研究(7)
    林 品章
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_85-5_94
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     本研究は1970-1990年の台湾視覚伝達デザイン表現の発展について論述し、系統的に歴史の骨組みとして整理することを目的とする。内容として「挿画(イラスト)」「ポスター」「商標と標誌(ロゴ、CIS、サイン)」「パッケージ」「広告デザイン」「コンピューター・グラフィックス」などが含まれている。研究の結果は次のようにまとめられる。(1) 1970年以降、台湾は政治的、経済的な出来事による衝撃は多く受けたが、視覚伝達デザインの発展は時代の進展にともない、デザイン活動が非常に盛んに行われた。(2) この時期「本土意識」が台頭してきたことにより台湾本土文化がデザイン理念や創作に浸透、デザイン技術の向上ともあいまってデザイン表現もさらに多様でかつ専門性を増し細分化が進んだ。(3) 1980 年代以降、模倣や盗作などの事件が増加、デザイン界に自律運動の気運が起こる。政府も積極的にオリジナルの制作を奨励、国家イメージ向上に努めたため、1980年代以降のデザインはよい方向への発展が見られる。

  • ―自動車広告を対象として
    崔 慈芳, 宮崎 紀郎, 玉垣 庸一
    2002 年 48 巻 5 号 p. 5_95-5_102
    発行日: 2002/01/31
    公開日: 2017/11/08
    ジャーナル フリー

     本研究は,日本と台湾の自動車の新聞広告を対象として,そのレイアウトについて調査・実験を行うことから,新聞広告のより効果的な表現を検討するものである。
     日本と台湾の新聞広告の表現について分類し,代表的な各5件を抽出してイメージ実験を行った。実施は1999年,対象は日本と台湾の大学生92名である。実験の結果を因子分析やK-S検定などを用いて分析し,両国被験者の評価の差違や特徴をまとめた。その主な結果は以下のようである。
    (1)因子分析の結果,好感度,インパクト度,親近度の3因子が抽出された。
    (2)日本人はきれいな広告に惹かれる。一方,台湾人は新奇な広告に関心が高い。
    (3)両国に共通して評価が高い広告は,写真やイラストレーションを中心に据え,少な目のコピーで読みやすく,適度な余白をもったものである。
    (4)台湾ではほとんど見られない白黒広告に対して,台湾人は高く評価している。

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