水引は,日本の伝統工芸品の一つである。筆者らは海外のエンドユーザーにも受け入れられるよう,新しい用途の水引工芸品を考案し,リデザインを行った。欧米の3都市の展示会にて,このリデザインした水引工芸品の販売を試みたが,販売結果はあまり芳しくなかった。販売不振の理由として「水引工芸品のコンテキストが欧米人に十分に伝わっていないからではないか」という仮説を立て,水引のコンテキストを「素材・歴史・風習・形象・技能」の5種類に分類した。仮説を検証するために,被験者にコンテキスト非提示状態と,5種類のコンテキスト提示状態の2段階で購入意向度を答えてもらい,その変化を測定する実験を行った。実験では,イタリア人を被験者とし,比較分析のために日本人にも同じ実験を実施した。実験の結果,両者ともコンテキストを提示しないで水引工芸品を見るよりも,コンテキストを提示した時が,5種類全てのコンテキストにおいて購入意向度が上がる結果となった。また5種類のコンテキストの中で,購入意向に寄与するものの優劣が明らかになった。
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