デザイン学研究
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  • ―クリエイティブをキーワードとして―
    伊藤 孝紀, 吉田 夏稀, 岩崎 翔太, 西田 智裕
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_1-1_10
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,愛知県名古屋市に位置する名駅南地区を対象とし,「クリエイティブ」をキーワードに活動をおこなう民間団体の取組みを明らかにすることである。
     名駅南地区まちづくり協議会の活動把握調査により, 地区内の課題と要望を把握した。その結果, 歩道における歩行のしやすさと環境や雰囲気, 訪れたくなる施設の不足が課題として挙げられた。また, 歩道の賑わいや彩り,植栽帯の有効活用などが求められているとわかった。
     NAGOYA 創造協議会の活動把握調査により,イベントに対する参加者の評価についてアンケートを用いて把握した。その結果,イベント参加者の属性と評価,ライフスタイルを明らかにした。また,地区にカフェや飲食,ギャラリーといった用途の施設と,イベントの継続が求められているとわかった。

  • 米沢 みどり, 井上 勝雄
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_11-1_20
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     三菱電機における情報通信システムのデザイン開発事例を用いてデザイナーの役割の変化とデザイン方法論(デザインアプローチ)の変遷に関し、参与観察手法を用いて歴史的な視点から分析、考察する。企業内デザイン組織が出来たのは 1970 年代であるが、この時代はスケッチやモデル製作が中心であった。1980 年代に、コンセプトを重視した提案型アプローチの研究が始まった。1990 年代になるとバブルが崩壊し、製品がユーザーに与える価値から考え直さなければ売れなくなった。そのため、技術研究部門においてゼロルック VA という価値を重視する手法が始まり、デザイナーとの本格的な共同研究(携帯端末関係)が始まった。2000 年代になると、公共事業の公募においても、将来提案や独自の付加価値を含めた提案が求められるようになってきたため、実案件(成田空港デジタルサイネージ等)へのデザインアプローチの適用が進んだと考えられる。

  • ―パースの探求の理論に基づくデザイン推論のダブルサイクルモデル
    前川 正実
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_21-1_28
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的はデザイン活動における推論の性質を明らかにするための知見を得ることである。科学的発見とデザインのアブダクションが異なることは既往研究に示されるが,デザインの動的なプロトタイピングにおける推論過程の説明は不十分である。そこでまず,発見された事象に対し,デザインにおいてはその事象を受け入れず解消するための推論がなされることが,科学的発見における推論に向けての態度と異なる点であることを指摘した。そしてデザイン活動のプロトタイピングにおける推論にはふたつのサイクルがあり,それらが交互に働くことを示した。双方ともパースの探求の理論に沿って,アブダクション,演繹,帰納のステップを経るサイクルである。しかし「探索のサイクル」は暫定的デザインコンセプトに基づくアイデア発散機能を担い,「解決のサイクル」はアイデア収束機能を担っており,これらは異なる役割を持つ推論サイクルとして理解される必要があることを示した。

  • ―盲導犬とユーザーの負担を軽減する盲導犬用ハンドルに関する研究(1)
    白髪 誠一, 赤井 愛, 田上 貴久美
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_29-1_38
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本研究は,盲導犬とユーザーの双方の負担を軽減するハンドルの開発を目的としている。本報では,形態最適化に基づくハンドルの設計および実験による検証を行っている。
     盲導犬に対しては,ハンドルから胴輪へ伝達される負荷を左右均等にするハンドルの形態,ユーザーに対しては自然な姿勢で保持することが可能なハンドルの形態を設計の目標とした。
     ユーザーが体側で自然な姿勢で保持できる楕円型ハンドルのプロトタイプを用いた盲導犬模型による歩行実験より従来型のハンドルに比べて盲導犬の両肩に加わる負荷が均等になる傾向を見ることができた。楕円型の形態パラメータを変化させた形態最適化により盲導犬への左右の負荷を均等にすることが可能な形態を得ることができた。
     プロトタイプを基に設計された y 字型ハンドルを用いて盲導犬模型による歩行実験を行った結果,y 字型ハンドルはユーザーがハンドルの保持姿勢を意識することなく,盲導犬に加わる負荷が均等になる傾向を確認することができた。

  • ―パターン・ランゲージの誕生 (1)
    古川園 智樹
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_39-1_48
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本論文では,「再発見」したクリストファー・アレグザンダーの博士論文『THE SYNTHESIS OF FORM; SOME NOTES ON A THEORY』と『形の合成に関するノート』との比較分析を行った。分析の結果,パターン・ランゲージの理論的背景・哲学的背景にとって,以下の重要な知見が明らかになった。(1)アレグザンダーは,博士論文から『形の合成に関するノート』を出版するために,いくつかの加筆修正を行っており,博士論文と『形の合成に関するノート』には重大な相違点が存在する。(2)アレグザンダーは,ロス・アシュビーの『頭脳への設計』にもとづく「システムの定義」を削除してしまっており,アレグザンダーの理論はシステム理論として捉え直す必要がある。(3) アレグザンダーの博士論文には,「参考文献」がある。その中では,ジョージ・ミラー他『プランと行動の構造』が重要視されており,その影響は大きい。(4) カール・ポパーの『開かれた社会とその敵』も同様に,「参考文献」の中で重要視されている。ただし,ポパー哲学を徹底的に研究した痕跡が博士論文・『形の合成に関するノート』両方に認められるが,博士論文全体に影響があったかどうかは疑問が残る。

  • ―パターン・ランゲージの誕生 (2)
    古川園 智樹
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_49-1_58
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本論文では,パターン・ランゲージの理論的・哲学的背景を探るために,クリストファー・アレグザンダーの博士論文時代の研究史を中心に,世界各地のアーカイブ史料の調査・収集して,それらの史料の分析を行った。その結果,以下の新事実が明らかになった。(1)アレグザンダーは1959年8月には,コンピュータを利用したデザインを開始していた。(2)『コミュニティとプライバシイ』のコンピュータを利用したデザイン・プロセスを執筆したのはアレグザンダーである。(3)アレグザンダーは1960年末に博士論文を一度提出している。その後,審査委員をジェローム・ブルーナーに変更して,1962年11月に最終的に提出している。(4)アレグザンダーが使用したMITのコンピュータは,1960年9月にはIBM704からIBM709に,1962年1月にはIBM7090に変更された。(5)アレグザンダーはベイエリア高速鉄道の駅を「セミラティス構造」でデザインを行う予定だった。このプロジェクト自体は未完であったが,UCバークレーの学生達が,同様の手法でデザインを行っていた。これらのことから,アレグザンダーが提案したコンピュータを利用したデザイン手法・理論を,Type1(オーバラップ構造),Type2(ツリー構造),Type3(セミラティス構造)の3つに分類した。

  • ─パターン・ランゲージの誕生(3)
    古川園 智樹
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_59-1_68
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本論文では,パターン・ランゲージを,都市や建築を生み出す生成システム「パターン・ランゲージ・システム」として捉え,生成システムとしての「要素」と「構造」に着目して,その起源と理論的背景を分析した。その結果,パターン・ランゲージ・システムは,コンピュータを利用した生成システム(「ダイアグラム・オーバーラップ・システム」「ダイアグラム・ツリー・システム」「ダイアグラム・セミラティス・システム」)から誕生してきたことが明らかになった。筆者は,アーカイブ史料の分析から,コンピュータを利用した生成システムの起源が『コミュニティとプライバシイ』にあることと,その時期を明らかにした。同時に,それぞれの生成システムの理論的背景も,以下のように明らかにした(1)主に『コミュニティとプライバシイ』で提案されている「ダイアグラム・オーバーラップ・システム」は,ロス・アシュビー『頭脳への設計』のシステム理論に基づいている可能性が高い。(2)『形の合成に関するノート』で提案されている「ダイアグラム・ツリー・システム」は,ジョージ・ミラー他『プランと行動の構造』のシステム理論に基づいている。(3)『都市はツリーではない』と『形の理論と合成』で提案されている「ダイアグラム・セミラティス・システム」は,アレグザンダー独自のシステム理論である。

  • ─パターン・ランゲージの誕生(4)
    古川園 智樹
    2021 年 68 巻 1 号 p. 1_69-1_78
    発行日: 2021/07/31
    公開日: 2021/07/30
    ジャーナル フリー

     本論文では,コンピュータを利用した生成システムと,「パターン・ランゲージ・システム」との比較分析から,その違いが,システム理論の違いだけでは説明しきれない,もっと大きな哲学的背景・立場が変化したことにあることを明らかにした。その哲学的背景の違いの象徴となるのが,『オレゴン大学の実験』で提案された「ピースミール的成長」という概念である。『パタン・ランゲージ』と『時を超えた建設の道』には参考文献と脚注がないために,これまでは,その哲学的背景を探ることは困難であった。筆者は,『オレゴン大学の実験』にある唯一の脚注とその中の参考文献を手がかりに,ウォーバーグ研究所アーカイブのゴンブリッチ史料,および,スタンフォード大学フーバー研究所アーカイブのポパー史料の分析から,この「ピースミール的成長」という概念が,カール・ポパーの「ピースミール社会工学」に由来することを明らかにした。このことから,パターン・ランゲージの哲学は,ポパー哲学の「最小不幸原理」である,と筆者は結論づけた。

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