デザイン学研究
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45 巻, 6 号
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  • 千代田 憲子, 森田 昌嗣
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 1-10
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 街路景観エレメントと街路景観イメージの関連性に着目し, 街路景観エレメントのあり方について研究して, ストリートアメニティ形成方法を提案することを目的としている。本報では, 街路景観エレメントに関する実態調査として, 「街路景観エレメントの数量と分布調査」および「色調による色彩分布調査」の物理量調査を行ない, 次に街路景観イメージの意識調査として, 「SD法による街路景観イメージ調査」および「アンケートによるベスト・ワースト5地点調査」を行なった。その結果, 街路景観エレメントの充実は, 街路景観イメージの向上に明らかな効果が認められた。また, 街路景観エレメントが連続することにより, 相互に影響して全体の街路景観イメージを高めるなど, 街路景観イメージと街路景観エレメントの間には密接な関係があることが明らかになった。
  • 杉山 和碓, 金 哲浩, 小野 健太, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 11-18
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    デザイン決定プロセスはその企業の状況, 体質などによって異なる。その中で本研究ではデザイン決定プロセスに影響を与えると思われる要素の一つとして組織体系(企業におけるデザイン機能の組織的な位置)を取り上げ, 各企業におけるデザイン決定プロセスと組織体系との関係を明らかにし, 効率的なデザイン決定プロセスを行うための方向性を示すことを目的とした。そして, 各社のプロセスの現状を把握するために調査を行い, 各社のデザイン決定プロセスと組織体系を分類し, 比較を行った。その結果, デザイン決定プロセスの効率化においては, 事業部内デザイン組織の方が, 企業内独立デザイン組織に比べて効率的なプロセスをとっていることが分かった。しかし, 企業内独立デザイン組織であっても, 情報・知識の共有, 思考様式の統一を図るための工夫, 努力をすることによリ, 効率的なプロセスをとることは可能であることもわかった。
  • 金 恩子, 宇野 英隆
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 19-24
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    スチュワーデスは航空機という限られた空間と時間の中で多種多様な仕事をこなさなければならない現状にある。最近, スチュワーデスの腰痛の問題が労働災害として表面化し, 作業空間の改善が求められているところである。そこで本研究ではスチュワーデスの主な作業空間であり, 航空機内の台所と言われるギャレー空間の再構築を目的に, スチュワーデスの作業内容やギャレー空間の特徴を調べた。さらに住宅用の台所との比較を通して, 人間工学的な考察を行った。その結果, ギャレー空間は調理や洗浄をしないこと, 一度に何十人もの食事を準備すること, 狭い空間の中に膨大な量の搭載品を収納していることなどから, 台所というよりはむしろ収納室に近い空間であることがわかった。また, ギャレー空間は十分な作業領域と十分な通路領域が確保できないほどの狭い空間であった。さらにギャレー空間はその構成要素の一つであるカートの出し入れによって, 空間的大きさが刻々と変化することが分かった。最後に本研究によって得られた知見をもとに, 今後の研究課題を示した。
  • 陳 郁佳, 野口 薫
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 25-34
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 有効なサインデザインを探ることである。まず, ユーザーに対するアンケート調査を行い, 案内標識の知覚・認知に関しての問題点を明らかにした。次に, これに基づき, 現行の標識よりも知覚されやすく, まとまりのある単純な構造をもったテスト標識を試作し, SD法を用いたイメージ調査及び再生法による認知実験によって, 既存のデザインと比較した。SD評定値を用いたイメージ調査の結果は, テスト標識の方が現行標識よりも簡潔で, 見やすく, 好ましく, まとまりのあるデザインであることを示した。また, 認知実験の結果は, テスト標識の方が情報の再生率が高く, 認知されやすいことを示した。以上の結果から, 視覚伝達における有効なサインデザインは, 快適で, まとまりのある印象を与え, しかも, 認知されやすいものであるといえよう。
  • 森田 昌嗣
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 35-44
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    都市内の主要4街路を対象に, 街路構成要素である都市環境装置類の分布に関する実態調査を行い, 装置類の空間・情報・時間系の種類別および街路別の定量化(100mあたりの装置基数)による比較分析を行った。分析の結果, 街路別に装置の種類別の分布特性に違いがあり, その要因には街路幅員の断面構成, そして延長方向での沿道の土地利用と整備状況の違いが関係していることが明らかとなった。また装置の種類別では, 空間系の装置類が主に街路の節景観を形成し, 情報系と時間系の装置類が主に街路の連続景観を形成していることが分かった。さらに, 情報系の装置類が歩行空間の秩序化の役割を, 時間系の装置類が歩行環境の個性化の役割を主に担い, 空間系の装置類は街路に対応して秩序化と個性化の双方において役割を担うことを導いた。街路の都市環境装置デザインにおいては, 街路の環境特性を把握した上で連続・節景観を形成する装置類に対し, 秩序化と個性化のいずれかの方向から取り組むことが有効なデザイン方法となりうることを示唆した。
  • 森田 昌嗣, 土井 誠博
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 45-54
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 街路における歩行者および自転車(利用者)の行動に着目し, 利用者の行動特性と街路の装置類の配置特性との関係を明らかにすることを目的とした。そこで, 広幅員歩道を有する街路調査から歩行空間形態のタイプ分けを行い, 街路別の行動調査区域を選定し, タイプ別の歩行者交通量と通行動線の調査・分析を行った。その結果, 街路利用者には, 内的および外的要因による「行動特性」が存在し, 装置類の線状および点状の「配置特性」などが, 利用者の行動に影響を与えることを明らかにした。さらに, この「行動特性」と「配置特性」の関係から, 街路の歩行空間の確保と, 景観面と生活面での歩行環境形成における解決すべき課題を導いた。そして課題解決のためには, 都市環境装置デザインの装置相互を整理統合する「秩序化」の方法が, 歩行空間確保の有効な方法の一つであり, また歩行環境形成においては, 歩行空間形態に適応する装置配置などによる生活の場としての「個性化」の方法が適用できる可能性を示唆することができた。
  • 崔 乗日, 森田 昌嗣
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 55-64
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究では, 人々の屋外生活に最も身近な装置類の開発及び計画・設計方法を模索するために, 都市環境装置の一つであり, 街路に数多く設置され種類多様な車止めを研究の対象とする。車止めの製品の特徴と設置上の問題点から車止めのデザインにおいて考慮すべき課題を明らかにすることを目的としている。製品の特徴については, 市販されている車止めの製品調査から整理し, また都市内街路の車止めの実態調査から設置上の考慮すべき事項を整理した。その結果, 製品の特徴と設置上の考慮すべきデザイン課題には, 機能と製造上の解決すべき課題と景観及びメンテナンスにおいて対応すべき課題が関連していることが分かった。その課題解決のための車止めの製品化においては, "標準化"を前提とした"多様化"を踏まえることが, 人々の生活や都市環境との関係を考慮した車止めの製品化を進める一つの方向になり得ることが示唆できた。
  • フローレス テルマラソ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 65-74
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    文化的な価値と規範を共有するコミュニティにおける伝統的住居の特質には, 当該の地域における人びとのいわば生活言語が反映している。本研究は, このような視点に立ち, フィリピンの伝統的住居の内部空間構成が地域の歴史と対応してどのように変化してきたかを, 現地調査に基づきながら考察したものである。調査地域は, 山岳部のイフガオ, 平坦部のイロイロである。この異なる二つの地域を対象に, 住居の構えと囲い, 空間の配置, 空間の機能, 空間における動線などに着目して, 観察・解析・考察を行なった。その結果, 次の5点が明らかになった。(1)住居の構えと囲いには, 山岳部型と平坦部型がみられる。(2)居住空間の配置では, 山岳部, 平坦部ともにリニヤー型が多い。(3)空間の機能と使い方の点では, 山岳部と平坦部とには固有の特質がある。(4)家族構成, 社会的地域などに対応し, 居住空間における動線が異なっている。(5)また, 山岳部と平坦部における伝統的住居の内部空間構成の変遷モードとしては, 典型的, 実用的, 類似的, 正規的の四つの規範が抽出される。
  • フローレス テルマラソ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1999 年 45 巻 6 号 p. 75-84
    発行日: 1999/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, フィリピンにおける伝統的住居を対象として, 地域と居住地の社会的・歴史的変化が住居の内部空間構成にどのような変容をもたらしたかをみたものである。調査地は, 山岳部のイフガオと平坦地のイロイロである。史料によって当該地域の歴史的変容を整理するとともに, 地域や集落の特質とそこにおける人びとの活動を観察し, 往時と今日との内部空間構成の特質を比較した。その結果, 次の4点が明らかになった。(1)480年間の歴史を通じ, 山岳部と平坦部とではそれぞれに異なる経済的進展を遂げた。(2)それぞれの地域と居住地が歩んだ歴史的特質が, 今日の集落構成の型に影響を及ぼしている。(3)それぞれの地域における住居の内部空間構成の変遷モードとして, 典型的, 実用的, 類似的, 正規的の四つの規範を抽出することができる。(4)それぞれの地域における住居の内部空間に変化が生じていない事由としては, 経済的進展が極めて緩やかであったこと, ならびに, 人びとの生活空間感覚が伝統的規範に拘束されていたことが挙げられる。
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