脳卒中
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35 巻, 3 号
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原著
  • 尾原 知行, 山本 康正, 田中 瑛次郎, 藤並 潤, 森井 芙貴子, 石井 亮太郎, 小泉 崇, 永金 義成
    2013 年 35 巻 3 号 p. 167-173
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:【背景/目的】脳静脈血栓症は近年日常診療で遭遇する機会が増えている.脳静脈血栓症自験例の臨床像,急性期画像所見につき検討する.【方法】対象は2008年4月~2011年3月に当院に入院した脳静脈血栓症10例(平均49歳,男性5例/女性5例)である.【結果】初診時臨床症状は,7例で局所神経症状(うち5例は軽度の運動麻痺)を認め,3例は頭痛のみであった.4例はけいれん発作を伴った.閉塞静脈洞は上矢状洞6例,横静脈洞3例,直静脈洞1例で,初診時脳出血を4例,静脈梗塞を3例に認めた.9例で頭部MRI T2強調画像にて閉塞静脈洞が低信号で強調された.全例抗凝固療法で治療し,8例は退院時modified Rankin Scale 0~1であった.【結論】自験10症例は比較的軽症で予後良好な例が多かった.T2強調画像を含むMRI検査による早期診断が臨床経過に影響を与えている可能性が考えられた.
  • 宇佐見 千恵子, 宮坂 裕之, 植松 瞳, 近藤 和泉, 富田 豊, 園田 茂
    2013 年 35 巻 3 号 p. 174-180
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:脳卒中患者の麻痺側上肢訓練の一つとして電気刺激療法があり,運動麻痺改善や痙縮抑制効果などが報告されている.われわれは電気刺激療法の一種である随意運動介助型電気刺激(IVES)を回復期脳卒中患者の麻痺側上肢に行い,治療同日の持続効果について検討した.IVESによる訓練は1週間継続し,開始時と1週間後の治療前,治療直後,治療後から30分毎に120分後までの手関節背屈自動運動角度の経時変化を評価した.手関節背屈自動運動角度は,開始時に比べ,有意な改善がみられた.SIAS,MASは開始時と比べ,改善を認めたが有意差はみられなかった.また,治療直後の角度が有意に低下するのが開始時は治療後60分,1週間後は治療後90分であり,継続した使用により効果が持続されやすいと考えられた.
  • 野越 慎司, 植田 敏浩, 高木 誠, 畑 隆志, 春原 則子, 粟屋 徳子, 吉岡 文, 藤森 秀子
    2013 年 35 巻 3 号 p. 181-186
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:今回我々は頸動脈ステント留置術(CAS)施行患者において術前後の認知機能について検討した.2005年1月から2007年9月の間にCASを施行した109例中,術後検査を完遂しえた34例を対象とした.CAS前後(術後平均6カ月後)に認知機能検査を実施し,MMSEおよびWAIS-Rの下部項目である絵画完成,WMS-Rの下部項目である視覚性記憶,一般的記憶,遅延再生に有意な改善を認めた.またMMSEの改善に寄与する因子として,術前MMSEが24点未満と低いことが挙げられた.CASは頸動脈狭窄患者の認知障害を改善し,特に術前MMSEの点数が低い群でより有効であることが示唆された.
  • 前島 伸一郎, 大沢 愛子, 林 健, 棚橋 紀夫
    2013 年 35 巻 3 号 p. 187-194
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:【目的】嚥下造影検査(VF)の実施に合わせて,5 mlと60 mlの段階的飲水試験を施行し,誤嚥の検出や経口摂取の可否,選択された食形態との関連について明らかにする.【対象と方法】経口摂取開始時の適切な食材を選ぶことを目的にVFを施行した183名(男性107,女性76)の脳卒中患者を対象とした.平均年齢は66.9±12.1歳で,原因疾患は脳梗塞98名,脳出血49名,くも膜下出血23名,その他の脳血管疾患13名,発症からVFまでの期間は18.0±12.0日であった.方法は,まず,VF実施の直前に段階的飲水試験にて臨床評価を行い,次にゼリーや粥などの模擬食品に加え,5 mlと60 mlの液体にてVFを行った.その後,段階的飲水試験の結果と実際のVF結果との関連について検討した.【結果】臨床所見の異常にて段階的飲水試験を途中で中止したのは46名(第1段階43名,第2段階3名)であった.段階的飲水試験での異常所見はVFの液体誤嚥と有意な関連を認め,VFにて観察される誤嚥に対する段階的飲水試験の感度は85.2%,特異度は41.8%であった.飲水速度(ml/秒)や1回嚥下量(ml)と誤嚥に明らかな関連はなかった.経口摂取の可否や選択された食形態は,VFの液体誤嚥との間に関連を認めたが,段階的飲水試験の臨床評価との間には関連はなかった.【まとめ】段階的飲水試験の臨床評価は液体誤嚥の検出には有用ではあるが,その結果と誤嚥予防のための適切な食形態との間には明らかな関係を見いだせず,経口摂取の開始前には嚥下造影検査などの詳細な評価を合わせて行うべきである.
症例報告
  • 松田 雅純, 鎌田 幸子, 大川 聡, 菅原 正伯, 大西 洋英
    2013 年 35 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:Body lateropulsionは,一側に体が不随意に倒れてしまう症候のことをいう.今回我々は,body lateropulsionを主訴とした脳梗塞の5症例について後ろ向きに検討した.5例とも当科には原因不明の失調症として紹介された.症状としては,Horner症候群,顔面,手,足の感覚障害を伴う例もみられた.急性期では画像診断に難渋する例が多くみられた.5例とも初回のMRI検査では病巣を検出できなかった.病巣をMRI検査で検出できたのは平均6.4日目(中央値8日)であった.責任病巣としては前脊髄小脳路またはascending graviceptive pathwayが責任病巣と考えられた.急性発症の体が傾くという訴えの際には,詳細な診察を行い発症初期のMRI拡散強調像で病変を指摘することができなくても脳血管障害の可能性を常に念頭に置き診療に当たることが重要であると思われた.
  • 榊原 史啓, 大谷 直樹, 竹内 誠, 森 健太郎
    2013 年 35 巻 3 号 p. 200-202
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:微小な被殻出血により一過性運動麻痺を生じた1例を経験したので報告する.症例は48歳女性.突然の構音障害と左片麻痺が出現したため救急搬送された.CTでは径3.5 mm大の右被殻出血を認めた.来院時左不全片麻痺はほぼ改善していたが,発症10時間後に左片麻痺が再度悪化した.その際血腫の増大は認めなかった.その後症状は徐々に改善し3日後には消失した.症状が一過性に増悪した機序としては,血腫による運動および感覚神経路の破壊はなく,圧排や浮腫による二次性の虚血が考えられた.微小な被殻出血でも症状が一過性となることがあり,虚血性脳血管障害と鑑別すべく詳細な画像検索が必要と思われた.
  • 金中 直輔, 佐藤 博明, 阿部 肇, 根城 尭英, 福井 敦, 寺西 裕, 鳥橋 考一, 宮腰 明典, 楚良 繁雄, 河野 道宏
    2013 年 35 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:頭痛を主訴に来院した68歳男性.3年間にわたる硬膜動静脈瘻の治療経過において,頭部CTやMRIのFLAIRおよびT2画像にて両側視床に限局した異常信号域を認めた.深部静脈系のvenous congestionによるvenous hypertensionが疑われた.臨床症状として特徴的な視床性認知症を呈していたが,血管内治療により画像的にも臨床的にも改善を認めた.このような適確な診断と治療により可逆的な病態である一方で,時期を逸することで不可逆的な変化を来すこともありうるため,迅速かつ適確な対応が必要な疾患であると考えられた.
  • 榎木 圭介, 松本 勝美, 鶴薗 浩一郎, 佐々木 学, 芳村 憲泰, 藤原 翔
    2013 年 35 巻 3 号 p. 209-212
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:症例は72歳女性.呂律困難,右外転運動麻痺,左水平眼振および左上下肢不全麻痺にて発症した.頭部CTにて右小脳橋角部に広がるクモ膜下出血を認め,脳血管撮影では右重複上小脳動脈のうち1本の遠位部に紡錘状の解離性動脈瘤が認められた.全身状態の改善後第10病日に動脈瘤コイル塞栓術を施行した.術後は右小脳梗塞を認めるも,特に新たな神経症状の悪化はなく,modified Rankin Scale 2の状態でリハビリテーションのために転院となった.解離性動脈瘤が重複上小脳動脈遠位部に発生する報告例はきわめて少なく,さらに破裂し,クモ膜下出血を来した例での治療の報告はまれである.本症例のような重複上小脳動脈では,末梢性解離性動脈瘤の再出血防止には,脳動脈瘤コイル塞栓術は安全かつ有効な方法であったと考えられる.
  • 津田 浩昌, 高 沙羅, 田中 こずえ
    2013 年 35 巻 3 号 p. 213-215
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:症例は84歳の女性で,本態性高血圧症の内服治療を受けていた.左方へのbody lateropulsion(BL),左三叉神経領域全体の温度覚・痛覚低下,共働型斜偏位が突然発症した.その他に神経学的異常所見はなかった.頭部MRIで,右橋上部被蓋に急性期梗塞がみられた.抗血小板薬の投与で,1週間以内に無症状となった.共働型斜偏位は,脳幹,小脳,視床のいずれの病変でも起こりうる.BLは,筋力が保たれているにもかかわらず,一側に体が不随意に倒れてしまう症候で,ascending graviceptive pathway(GP)の障害で発症しうる.前庭神経核から対側のCajal間質核に至るGPは,橋下部で正中交叉すると推定されているが,正確な走行は未解明である.本症例は,橋上部において右GPの障害で左方へのBLが発症し,右腹側三叉神経視床路の障害で左三叉神経領域の温度覚・痛覚低下が起きたと推定された.
  • 輪島 大介, 井田 裕己, 横田 浩, 中瀬 裕之
    2013 年 35 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:外側膝状体の血管病変では同名性半盲や4分盲を呈することが報告されているが,その脳血管障害の報告および外側膝状体病変と視野障害の関係についての報告はまだ少なくその左右眼の視野障害の視野の一致・不一致についても議論の余地がある.今回我々は4分盲を呈し画像診断にて外側膝状体近傍の出血性病変が確認された2症例を経験したのでこれを報告し視野障害の成因につき文献的報告を加えて考察する.
  • 藤沢 弘範, 村松 直樹, 東馬 康郎, 木多 真也
    2013 年 35 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:鉄欠乏性貧血(iron deficiency anemia; IDA)に関連したまれな成人の脳静脈洞血栓症(cerebral sinus thrombosis; CST)の3例を報告する.症例1は上矢状静脈洞血栓症の34歳女性で,急性期ヘパリン投与とワーファリン内服で独歩退院した.子宮筋腫によるIDAを合併し,筋腫摘出のみでワーファリン中止後も4年間再発なく経過している.症例2は右横静脈洞~S状静脈洞血栓症の38歳女性で,月経過多によるIDAを伴っていた.ヘパリン,ワーファリン療法で良好に経過し,左同名半盲のみで独歩退院した.症例3は左横静脈洞~S状静脈洞血栓症の51歳女性で,子宮筋腫によるIDAと女性ホルモン剤内服が原因と考えられた.ヘパリン,ワーファリン療法で良好に経過している.IDAはCSTを合併する場合があり注意を要する.
  • 白石 渉, 松尾 龍, 荒川 修治, 鴨打 正浩, 北園 孝成
    2013 年 35 巻 3 号 p. 227-231
    発行日: 2013/05/20
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
     要旨:症例は89歳女性である.慢性心房細動に対し,ワルファリン内服中であったが,4カ月前から中止していた.意識障害と右完全片麻痺が出現し来院した.MRIでは左内頸動脈閉塞と左大脳半球の広範な脳梗塞を認め,心原性脳塞栓症と診断した.第7病日に除脳硬直と両側の病的反射が出現し,頭部CTではテント切痕ヘルニアと脳幹部に出血を認めた.テント上の占拠性病変による続発性の脳幹出血,いわゆるDuret出血と診断した.続発性脳幹出血は急速な頭蓋内の占拠性病変の拡大により生じることが一般的であり,比較的時間の経過した7病日に生じたこと,また脳梗塞に続発したDuret出血をCTで確認し得たことは比較的まれであると考えられた.大脳半球の広範な脳梗塞患者の急性期において,症状が急に増悪した際には,Duret出血も鑑別に考える必要がある.
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