脳卒中
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36 巻, 3 号
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追悼文
症例報告
  • 輪島 大介, 高村 慶旭, 明田 秀太, 米澤 泰司, 大岡 洋子, 岡崎 知子
    2014 年 36 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    電子付録
    要旨:症例は49 歳男性.起床後に突然の構音障害,右不全片麻痺を認めたため当院へ救急搬送された.脳MRI・MRA にて右橋の新鮮梗塞所見とbasilar dolichoectasia の所見,さらに拡張した脳底動脈内に血栓化を伴う動脈瘤所見を認めた.心電図は正常で,心臓超音波検査では卵円孔開存の所見を認めたが下肢静脈超音波検査では深部静脈血栓の所見は認めなかったため,血栓化動脈瘤による血栓症による脳幹梗塞と診断し抗血小板薬内服と抗凝固療法を行った.軽度の後遺症は残存したものの現在,独歩で外来通院中である.Basilar dolichoectasia に伴う血栓化動脈瘤はmass effect を呈することが多いが本症例のように血栓症を来す場合もある.Mass effect を呈した場合には症状進行性となるため外科的加療を要する場合が多いとされるが現在でもチャレンジングであり今後の課題と考えられる.
  • 障子 章大, 佐藤 浩一, 中野 佑哉, 住友 弘幸, 仁木 均, 木内 智也, 花岡 真実, 田村 哲也, 新野 清人, 三宅 一
    2014 年 36 巻 3 号 p. 186-190
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:Dabigatran etexilate methanesulfonate(プラザキサ®)内服中に症候性頭蓋内出血を来した症例を報告する.症例は5 例で,いずれも非弁膜性心房細動患者で,数年間ワルファリンコントロールの後,かかりつけ医によりdabigatran へ内服変更されていた.ワルファリンコントロール中のイベントはなく,dabigatran へ変更後1~2 カ月で頭蓋内出血を来し,直接当院に搬送されていた.搬入時の血液所見に凝固異常や,顕著な異常を認めず,腎機能障害が推測された症例も1 例のみであった.1 例は死亡し,1 例は植物状態となり社会復帰した症例は1 例のみであった.初診時には服薬情報が得られないまま手術的治療を行った症例もあり,複数の経口抗凝固薬が登場した現在重要な問題である.
  • 須山 嘉雄, 若林 伸一, 向井 智哉, 今村 栄次, 石井 洋介, 梶川 博
    2014 年 36 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:今回,われわれはくも膜下出血を伴わない急性硬膜下血腫で発症した内頸動脈-後交通動脈分岐部破裂脳動脈瘤の1 例を経験した.症例は92 歳女性,突然左顔面から前頭部にかけて激しい痛みを自覚し来院した.来院時神経学的所見では軽度の左眼瞼下垂を認めた.頭部CT および頭部MRIで後頭蓋窩と大脳半球間裂に急性硬膜下血腫を認めたが,くも膜下出血は認めなかった.頭部MRAで左内頸動脈-後交通動脈分岐部に脳動脈瘤を認めた.本人および御家族に頭部外傷歴を聴取したがないとの返事であった.病歴および画像所見,神経学的所見より破裂脳動脈瘤による急性硬膜下血腫と診断し,破裂脳動脈瘤に対してコイル塞栓術を施行した.破裂脳動脈瘤が原因で生じる,くも膜下出血を伴わない急性硬膜下血腫は稀である.外傷の既往のない急性硬膜下血腫では,頭部CT による診断だけでなく頭部MRI や脳血管の評価が必要であると考える.
第38 回日本脳卒中学会講演
シンポジウム
総説
  • 豊田 一則, 大﨑 正登, 坂本 悠記, 古賀 政利
    2014 年 36 巻 3 号 p. 197-200
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:2013 年に筆者らの施設から論文報告された,急性期脳梗塞への静注血栓溶解療法の治療成績,とくに血管閉塞部位や治療後早期再開通に関する研究成果を概説する.Koga らは治療開始後8 時間以内(大半がrt-PA 投与終了前後)のMRA での再開通を阻害する要因としての,近位部主幹動脈閉塞と高感度C 反応性蛋白高値の意義を報告した.Osaki らは,rt-PA 静注の終了までの短時間に,NIH Stroke Scale 値を用いて臨床転帰を予測する方法を報告した.またSakamoto らは,治療前の拡散強調画像とMRA の所見からreverse MRA-DWI ミスマッチに該当する症例を割り出し,その臨床像やrt-PA静注療法の治療成績を報告した.
  • 横田 裕行, 高木 誠, 有賀 徹, 青木 則明
    2014 年 36 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:東京都は脳卒中医療連携協議会を組織して,都民への啓発活動や脳卒中急性期医療体制の構築を行ってきた.2010 年と2012 年2 月の1 週間に救急搬送された患者の中から脳卒中急性期患者を抽出し,発症から救急車要請までの時間,救急隊員の判断等を検証した.その結果,発症から救急車要請までの時間は2010 年が平均42 分で,2012 年には23 分と短縮された.一方,救急隊員が脳卒中を脳卒中と判断できる割合(感度)は2010 年82.4%,2012 年70.8%,脳卒中ではないものを脳卒中ではないと判断する割合(特異度)はそれぞれ97.9%,98.4%であった.一方,救急隊員が脳卒中ではないと判断したにもかかわらず,医療機関で脳卒中と診断されたのは2010 年64 例,2012 年100 例と増加していた.また医師や看護師が救急患者に対しての診断や重症度評価に使用するJTAS や ISLS についての解説も行った.
  • 長谷川 泰弘
    2014 年 36 巻 3 号 p. 206-209
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:tPA 静注療法の実施には著しい地域格差があることが知られているが,海外では1990 年代からtelestroke によってこれを克服しようとする試みが始まり,すでに実用段階に達している.Telestrokeでは,支援を行う専門医がtPA 静注に必要な全ての患者情報を正確に取得できること,静注後の管理が適切に行われることが保障されなければならない.Geographic information system 解析を用いた検討では,drip and ship 型よりもdrip and keep 型支援の効果が大きいことが明らかとなった.Telestroke の実施は,現状の通信網とテレビ会議用機器だけで直ちに開始可能な状況にあるが,救急医療体制の再構築,ガイドラインの作成,費用/便益分析,費用/ 効果分析,教育システムの整備,認証方法の確立,診療報酬設定や法改正等,解決すべき課題も多く早急な対応が望まれる.
  • 山崎 昌子, 内山 真一郎
    2014 年 36 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:非心原性脳梗塞の再発予防には抗血小板療法の有効性が確立しており,アスピリン,クロピドグレル,シロスタゾールが用いられている.これらの薬剤の相違を示すエビデンスは乏しいため,それぞれの抗血小板薬の作用機序や副作用の特徴などを考慮して個々の症例に薬剤が選択されているが,その有効性は十分とはいえない.アスピリン・クロピドグレル併用療法は,出血が増加するため有効性が示されず推奨されてこなかったが,発症早期の軽症脳梗塞または一過性脳虚血発作を対象に,期間を限定して行えば有効かつ安全であることが示された.新規抗血小板薬では,クロピドグレルよりも強力,即効的で薬効の個人差も小さい新規ADP 受容体阻害薬が開発され,臨床試験が進行している.強力な抗血小板療法の選択肢が増えれば,個別の患者に最適な薬剤と投与量を選択する重要性が増し,詳細なリスク評価やゲノム薬理学による薬効予測が必要になると考えられる.
  • 川原 信隆
    2014 年 36 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:近年の再生研究の進歩により,骨髄幹細胞やiPS 細胞などの移植治療が注目を集めている.一方で,内在性神経幹細胞からの再生療法も大きな可能性を秘めている.いずれにおいても神経損傷の形態によって局所環境は大きく異なり,細胞の生着・生存率は大きく変化すると考えられる.我々は,その点で利点があると思われる一過性前脳虚血モデルを用いて,内在性神経再生誘導の検討を加えてきた.その結果,海馬CA1 領域や線条体背外側域などの虚血に脆弱な部位での選択的神経細胞死に対しては,EGF,FGF-2 を用いた内在性神経幹細胞の賦活療法にて行動学上の改善につながる有意な再生を誘導することを示した.また,これらの経路に若干の修飾を加えることも,さらに効率的神経系分化を誘導可能であることがわかった.本療法がどの疾患に応用可能か,特に脳梗塞モデルでの検討などについて,今後のさらなる研究が望まれる.
  • 長尾 毅彦
    2014 年 36 巻 3 号 p. 220-222
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:新規経口抗凝固薬では,ワルファリン療法に比較して,頭蓋内出血が極めて少ないことが最大の特徴とされている.頭蓋内出血の内訳は脳内出血と硬膜下血腫が半数ずつを占め,硬膜下出血のみで用量依存性が認められた.またアジア人集団の解析では,非アジア人集団と比較して新規経口抗凝固薬でも脳梗塞発症が高率であり,頭蓋内出血が増えないこととあわせて,アジア人で減量をすることは勧められない.また高齢者でも腎機能が保たれている症例では,不必要な減量は避けるべきであることもサブ解析から明らかとなった.出血合併症時の中和療法の開発も順調に進められているが,腎機能を正しく評価し,定期的に再検することが出血合併症の予防に最も重要である.
原著
  • 影治 照喜, 永廣 信治, 里見 淳一郎, 寺澤 由佳, 原田 雅史
    2014 年 36 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/05/23
    ジャーナル フリー
    要旨:【目的】徳島大学病院では1999 年から脳卒中ケアユニット(SCU)を立ち上げ脳卒中救急医療の確立と改善に努めており,その意義と効果について述べる.【方法】当施設でのSCU 運用の理念と試みは以下に要約される.(1)脳神経外科・神経内科・放射線科・救急集中治療部など各科の医師およびSCU 専任の看護スタッフや多種のコメディカルスタッフが協力して,脳卒中救急に対し24 時間断らないチーム医療を実践する.(2)脳卒中急性期の画像診断は,くも膜下出血例を除き3 テスラMRI(DWI, T2*, MRA)first とし,脳卒中の病型診断や治療方針を即座に決定する.(3)脳虚血救急では,rt-PA 治療適応例には迅速に治療開始し,rt-PA 非適応例やrt-PA 治療無効例においても主幹動脈閉塞によるペナンブラが存在する場合には機械的血栓破砕やステント,バイパスなどの血行再建治療を試みる.(4)2012 年からSCU にスマートフォンとインターネットを用いた脳卒中救急画像転送システム(i-Stroke)を導入し,SCU スタッフ間での情報の共有化と治療方針の適正化を実践した.(5)SCU の9床を1〜2 週で回転し,必ず空床を置き救急を断らないためにベッドコントロールと地域連携を徹底し促進した.【結果】1999 年の開設から2013 年10 月31 日までの脳卒中救急搬送例は3452 例,rt-PA治療は131 例であった.脳梗塞救急例の20%に何らかの血行再建治療,10.6%にrt-PA 治療を行った.SCU が軌道に乗った2008 年以降の実施率は平均12.8%であった.【結論】これらの活動は,地域における脳卒中医療レベルの向上,回復期リハビリ施設の増加と連携の強化,病院診療報酬の増加を促進し,若手医師や学生の脳卒中教育にも大きく貢献している.今後の課題は,県内医療過疎地域の脳卒中救急医療の対策と確立である.
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