デザイン学研究
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44 巻, 4 号
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  • 益岡 了, 材野 博司
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    人間の移動における継起的体験と空間構造との関係に基づいたシークエンスの研究において, どのような行動変化を手がかりに, 実際の空間や景観の変化に伴った行動として認識するのかが問題となる。そこで本報告は, シークエンスにおける短時間の行動や視覚の認知の連続をより正確に把握するために, 心理学などの研究で用いられている特定の装置を改良し, 景観行動の実態を解明することを目的とする。調査の結果, 特定の空間の変化と行動, および生体反応とが対応した関係にあることが明らかになった。また全く同一の空間の歩行であっも, 往路と復路という歩行方向によって行動・反応に違いがあることが分かった。これらのことから, 実際に空間や景観を体験する歩行者の行動や認識を予想することにおいて, 空間を歩行方向に向けて断面図的に解析し, 継起的な歩行者の体験に基づく景観の分析を行う手法の有効性が確認できた。
  • 田中 みなみ, 小島 恭子, 宮崎 清, 松林 健一
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本稿は, 霞ケ浦周辺地域の地域づくりの指針を得ることを目的として, アンケート調査を行ったものである。地域住民の意見を把握するに当たり, 霞ケ浦湖岸線を有する市町村のなかから地域づくりの方針の異なる二村として, 茨城県稲敷郡美浦村, 桜川村を選び, 書面によるアンケートを実施した。アンケートの内容は, 主として霞ケ浦とのかかわりを中心に構成し, 加えて霞ケ浦を活かした地域づくりに関する意見をひろく聴取した。108件の有効回答(回答率27%)を分析した結果, 地域づくりの指針として次の5項目を得ることができた。(1)体験を通した親水環境づくりをめざす, (2)次の世代の住民に, かつての姿を語り継ぐ, (3)水質の浄化と自然環境の保全・育成を地域づくりの柱とする, (4)新住民を積極的に取り込んで地域づくり活動を行う, (5)行政と住民とが連携をとる。今後, これらを軸として住民の一致した意見をまとめ上げ, 行政と住民とが一体となって地域づくりを進めていくことが望まれる。
  • 佐藤 達哉, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 21-30
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    現在における製品開発は, 意匠系, 技術系, 社会系などさまざまな専門家集団による共同作業として行われている。本稿では, 異分野の共同作業による設計過程の特質を明らかにするための第一歩として, 異なる設計過程の比較を通して, 実験設計学の手法を援用した分析手法の妥当性について検討した。比較を行った設計過程は, 「重さをはかるもの」という同一課題で, 意匠科の大学生によるものと機械科の大学生によるもである。これらの設計過程を, 実験設計学による手法を援用して比較した結果, 以下の違いが得られた。1.意匠科学生の設計過程は, 設計仕様の詳細化, 既知の機能や属性から未知の属性を想起することで仕様を充実させ, これを満たす機能を模索していく「模索型」である。2.機械科学生の設計過程は, 基準となる機能を中心に, 設計仕様とするものの対象物や置かれる環境, 操作する人などを詳細にし, それをもとに機能を展開していく「展開型」である。
  • 大森 峰輝
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 31-38
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    生理学的手法を用いれば, 映像(空間プレゼンテーション)と観視者との関わりの状態をオンラインで直接的に評価できる可能性がある。本稿では, 精神活動の高まりを示唆する生理的挙動が空間プレゼンテーションのリアリティ高揚による影響であると定義した上で, 映像情報呈示に深く関連する要素技術についての評価を試みた。結果は, 以下のようにまとめられる。1)観視者の生理状態によって空間プレゼンテーション技術(要素技術)による効果を相対評価することができる。2)空間プレゼンテーションの要素技術によって映像世界(仮想環境)と観視者との関わりの形態が変わる。言い換えれば, 要素技術の組み合わせによってリアリティが変容する。3)空間プレゼンテーションのリアリティを高めるには, 映像世界とのインタラクションによる観視者の効率的な知覚サイクルと感覚情報の組み合わせによるマルチ・チャンネルの情報環境の構築を検討する必要がある。
  • 天貝 義教
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 39-48
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    ブラック・マウンテン・カレッジは1933年から57年までアメリカ合衆国ノースカロライナ州に開設されていたリベラル・アーツの実験的大学である。その開校の年ベルリンにおいてバウハウスはナチズムの圧力のもとで閉校し, アルバースはニューヨーク近代美術館のP.ジョンソンの仲介によりブラック・マウンテン・カレッジに招聘されることとなった。アルバースは1949年までこの地に留まり, バウハウスの教育法とその理念を移植し, 自らの造形思考を発展させていった。その間アルバースは合衆国において抽象芸術家としての地位を固めるとともに最も影響力のある芸術教師となり, その学生にはR.ラウシェンバーグ.K.ノーランドらが含まれていた。アルバースとその学生たちの活動によってブラック・マウンテン・カレッジは40年代から50年代初頭にかけてモダン・アートとデザインの中心となったのである。本稿の目的はアルバースの造形思考を辿りながら, ブラック・マウンテン・カレッジにおけるバウハウスの影響とその発展を考察することにある。
  • 寺内 文雄, 深水 竜介, 松岡 由幸, 久保 光徳, 青木 弘行
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 49-56
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    自動車用革製シートのギャザーパターンに対するユーザーニーズを明らかにするために, 本研究ではギャザーパターンに対するユーザーの評価構造と嗜好性の違いを明らかにすることを目的とした。まず, 予備実験として, 順位法を用いた革製ギャザーシートの嗜好調査を行った。双対尺度法による解析の結果, (1)シート表皮色, (2)立体感, (3)ギャザーパターン, の三つの評価要因が得られ, ギャザーパターンの重要性が確認できた。そこで, ギャザーパターンを対象とした官能評価実験を行った。因子分析の結果, そのイメージは「大胆さ・規則性・柔らかさ・優雅さ・はり」などの因子で構成され, 「大胆さや規則性」のイメージはギャザーの本数や長さの影響を受けることが明確となった。さらに, ギャザーパターンに対する嗜好性によって被験者を層別化したところ, 被験者を(a)シートの「柔らかさ」を重視し, ギャザー本数の多いパターンを好むグループと(b)シートの「はり」を重視し, ギャザー本数の少ないパターンを好むグループの二つに大別できた。
  • 松岡 由幸, 谷郷 元昭, 寺内 文雄, 久保 光徳, 青木 弘行
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 57-66
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    近年, 製品に対するニーズが多様化する傾向にあり, 製品開発においてユーザーの嗜好性の違いを考慮した設計方法の構築が望まれている。そこで, 嗜好性の違いを考慮する方法として, ロバスト設計の方法に注目した。ロバスト設計とは, 製品における機能のばらつきに対処する方法である。本研究では, この方法を基に, 機能のばらつきを人の嗜好性の違いに置き換えることで, 嗜好性の違いを考慮する設計方法の構築を図った。具体的には, 自動車用シートのギャザーパターンをケーススタディーとして, シート設計におけるいせ込み量と引張力を制御因子, ギャザーパターンの外観に対する嗜好性の違いを誤差因子とし, ロバスト設計の手順に従うことで設計方法の構築を試みた。また, 従来の設計方法と比較することにより, 本方法の有効性を検討した。その結果, 今回の方法が製品設計において嗜好性の違いを考慮する上で有効であることを示した。
  • 富松 潔, 森田 昌嗣, 加藤 公敬
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 67-76
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    次世代のメディアのデザインを考えた場合, コンテンツ自体の魅力とコンテンツとユーザのインタラクションが重要な課題になるであろう。ユーザは画面に表示されたメニューを選択して情報機器を使用するが, ユーザがある情報の提示を期待して機器を操作したときに, 機器がユーザの期待したコンテンツを表示されなければインタラクションのストレスは大きなものとなる。本研究では情報ニーズとコンテンツデザインの関わりについて学生を対象として実施した生活情報化ニーズのアンケート調査結果を分析した。公共情報機器は設置される場所によっ情報ニーズが異なるとした仮説のもとに, 情報ニーズ項目と公共情報端末の設置ニーズを分析した結果, 今後の研究の予備的な結論として, 公共情報機器を使用する不特定多数ユーザの情報ニーズを考える場合, 情報機器の設置場所はユーザの利用目的のフィルターの役割を果たすことができ, 設置場所に応じた情報サービスの提供がユーザのニーズにコンテンツを対応させることにおいて有効であると考えられる。
  • 田 慕玲, 杉山 和雄, 釜池 光夫, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    1997 年 44 巻 4 号 p. 77-86
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2017/07/25
    ジャーナル フリー
    本論文は, 自動車デザイン支援を目標とする, 進化アルゴリズムに基づく自動車形態生成モデルを提案している。提案モデルでは, 自動車側面の基本的なプロポーションを表す基本点を自動車形態要素と定義し, 自然界に遺伝変異による新種が形成されることを真似て, 与えられたプロトタイプの, ランダムな, 動態な遺伝プロセスを経て, 様々な形態を生成させる。その結果, デザイン支援のためのバリエーションを展開したり, デザイン目標の不明瞭な場合大範囲に探索したりすることが可能となった。モデルを検証するため, 複製誤差の累積効果による遺伝変異の発生に関する実験, および各入力条件下の生成実験を行った。さらに, 車長, 車高, そしてキャビン長による参照空間を定義して, この空間をベースとし, 提案モデルの出力結果の分布, フォーカスのある探索, また方向探索に関するシステム試行実験を行った。これらの実験の結果より, 提案方法のデザイン支援の有用性と可能性を明らかにした。
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