有機リン殺虫剤EPN, O-ethyl-O, 4-nitrophenyl phenylphosphonothioateは, コリンエステラーゼ活性阻害作用が強い。このため, 化学構造がleptophosやcyanofenphosと類似しているので遅発性神経毒性の存在が予測されながら, 経口1回投与法では, 大量のアトロピンにより急性中毒から救命しなければ, 遅発性神経毒性の観察が困難である。今回の実験では, すでにcyanofenphosについて報告した反復前投与方法により, 予め少量のEPNの反復投与により急性毒性に対して感受性を抑えたニワトリを用いて, アトロピンを用いずに大量のEPNを経口投与し, 定型的な遅発性神経毒性の証明を試みた。
予め5mg/kg/dayEPNを20日間または10mg/kg/dayEPNを10日あるいは20日間経口的に反復前投与した後, それぞれの群に150,200または300mg/kgEPNを1回攻撃投与して症状を観察した。
攻撃投与後の急性中毒による死亡率は, 10mg/kg/day×20日群が無処理 (前投与なし) 群より有意に低率であった。
無処理群の生存ニワトリからは神経毒性は発現しなかったが, 前投与群のニワトリからは, それぞれ遅発性神経毒性が観察され, そのうち3羽は観察期間中に死亡した。
神経毒性の症状, 体重の変化, また, 脊髄にみられた病理組織学的所見は, leptophosやcyanofenphosと酷似していた。
抄録全体を表示