日本農村医学会雑誌
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原著
  • 永田 悠起, 酒井 幹康, 駒井 博子, 渡口 賢隆, 田中 浩一, 木村 有里, 松久保 修, 杉山 裕衣, 松本 美咲, 浅井 梨乃, ...
    2024 年 72 巻 5 号 p. 367-373
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
    血液培養検査において第3世代セファロスポリン系薬耐性菌を早期に検出する事は患者の抗菌薬選択に影響を与える。当院において簡易CPDXスクリーニング検査を用いた腸内細菌目細菌の第3世代セファロスポリン系薬耐性菌の迅速報告体制をAntimicrobial Stewardship Teamと共同で構築したので,有用性を報告する。対象は迅速報告体制を導入後3年間に血液培養検査にてEscherichia coliKlebsiella pneumoniaeKlebsiella oxytocaProteus mirabilisを検出し簡易CPDXスクリーニング検査を実施した468症例を対象とした。簡易CPDXスクリーニング検査は血液培養陽性処理時にボトル内溶液をCA羊血液寒天/VCMチョコレートEXⅡ分画培地に画線塗抹後,VCMチョコレートEXⅡ培地の中央にセンシ・ディスクCPDXを留置し35℃にて培養し阻止円径を判定報告した。さらにAST担当医師が簡易CPDXスクリーニング検査結果についてカルテにコメント記載した。薬剤感受性結果を基準とすると,簡易CPDXスクリーニング検査の第3世代セファロスポリン系薬耐性菌の検出感度は95.5%であった。無効抗菌薬投与症例における薬剤感受性結果判明前の抗菌薬変更率はAST担当医師によるコメント実施症例では19症例中11症例57.9%に対して,コメント未実施症例では7症例中3症例42.9%であり,コメント実施症例の抗菌薬変更率が高かった。簡易CPDXスクリーニング検査は第3世代セファロスポリン系薬耐性菌を早期に推定可能でありAST担当医師のコメントにより一般医師でも検査結果の正確な解釈が可能となり早期での適切な抗菌薬変更が促せられた。
  • 木村 裕美, 古賀 佳代子, 西尾 美登里, 久木原 博子
    2024 年 72 巻 5 号 p. 374-384
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,地域で暮らす早期認知機能低下高齢者の家族が認知機能の低下に初めて気付き,適切なケアを可能にするためのケアニーズを把握する尺度を開発することである。先行研究から導き出された早期認知機能低下高齢者のケアニーズ32項目を勘案して尺度案を作成し,A地域包括支援センター物忘れ相談来所者およびB大学病院脳神経内科物忘れ外来受診者の主介護者86名に質問紙調査を実施した。探索的因子分析の結果,【家族の早期認知機能低下・介護への理解不足】,【介護の困惑と相談相手】,【早期認知機能低下の介護方法と悪化防止】の3因子14項目から構成され,全項目のCronbachのα係数は0.83となり信頼性が確認された。確証的因子分析の結果は,モデル適合度GFI=0.89,AGFI=0.88,CFI=0.90,RMSEA=0.08であった。早期認知機能低下高齢者のケアニーズ尺度は14項目からなり,介護者が適切なケアを行なうためのケアニーズ尺度として活用が可能であることが示唆された。
研究報告
  • 若松 綾華, 田中 彩, 若松 遼介, 山下 友輝, 柴波 明男, 樋浦 一哉
    2024 年 72 巻 5 号 p. 385-393
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     シスタチンC(cystatin C:CysC)は血清クレアチニン(seram creatinine:Scr)と比べ外的要因の影響を受けにくく,より正確な腎機能評価が可能である。TC療法施行婦人科癌患者を対象に,CysCとScrから算出した腎機能評価と化学療法施行状況について調査した。対象患者は98例であった。CysCとScrそれぞれから推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)を算出し,eGFRcreとeGFRcysとの間に有意な正の相関が認められた。eGFRcreとeGFRcysのCKD重症度分類におけるGFR区分が一致した症例は56例であった。重度症例(eGFRcys<eGFRcre)は一致症例と比較して年齢が有意に高く(P<0.05),アルブミンが有意に低かった(P<0.01)。腎機能評価と化学療法施行状況について明らかな関連は見いだせなかったが,処置・延期群ではCysCおよびeGFRcysが低値もしくは低値傾向であった(CysC:P<0.01,eGFRcys:P=0.07)。以上より,婦人科癌患者ではeGFRcreはeGFRcysと比較して過大評価となる可能性があり,特に高齢者や低アルブミン血症患者は乖離する傾向が強く,乖離症例ではカルボプラチン過量投与や治療延期の危険性を招く可能性が示唆された。
  • 岩切 詩子, 守山 十和子
    2024 年 72 巻 5 号 p. 394-401
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     県立日南病院では地域との連携を充実させることを目的として,2020年6月から連携充実加算の算定を開始した。外来がん化学療法における連携充実加算では,専任の薬剤師が実施することとなっているため,限られた人員で薬剤部全体の業務を維持しつつ,専任薬剤師の業務配分を検討する必要があった。そこで,がん患者に対するより効果的・効率的な介入を行なうため,段階的に薬剤部全体の業務配分を検討した。病棟業務と兼務していた外来がん化学療法室担当薬剤師を調剤室との兼務に変更することで,外来がん化学療法室での従事時間を4時間から6時間へ増加した。その結果,連携充実加算件数は有意に増加した。入院がん患者への指導件数は減少したが,薬剤師によるがん患者への介入は全体として増加傾向にあり,入院から外来へシフトしたことがわかった。また,得られた診療報酬をみると,連携充実加算とがん治療以外の入院患者への指導件数が増加した。入院患者と外来がん患者への指導介入で得られた業務配分変更前後の収益を比較すると,有意差はみられなかったが689,450円増収となった。連携充実加算を算定するためには,知識とコミュニケーション力の高い薬剤師が必要であるが,人員配置を工夫することで,患者への安心・安全な治療に寄与し,診療報酬の増収に繋げられることがわかった。
症例報告
  • 熊谷 卓朗, 内藤 真奈美, 齊藤 研
    2024 年 72 巻 5 号 p. 402-407
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     症例は71歳女性。強皮症に関連する食道蠕動低下に伴う栄養障害のため胃瘻を造設した。しかし,胃瘻周囲の皮膚炎が増悪,対応に難渋したことから,胃瘻チューブを抜去した。皮下埋め込み型中心静脈ポートを造設後,瘻孔は徐々に縮小したが,閉鎖・治癒に至らず,持続する胃液の流出のため瘻孔周囲皮膚の発赤やびらん,疼痛などの皮膚障害が1年にわたり持続していた。難治性の胃皮膚瘻に対して,局所麻酔下に瘻孔切除術を施行した。体表面よりアプローチし,瘻孔を切除したが,瘻孔切除部周囲の皮膚には長期に及ぶ炎症が認められ,一期的創閉鎖は困難と判断し,局所陰圧閉鎖療法を併用することとした。術後9病日に局所陰圧閉鎖療法を終了し,創部の自己管理が可能となった。胃瘻抜去後の難治性瘻孔は,低栄養を背景とし,流出する胃液の暴露などから自然閉鎖に難渋すると考えられる。胃瘻抜去後の難治性瘻孔に対して,瘻孔切除術後の局所陰圧閉鎖療法は術後早期より経口摂取可能となり,創傷管理の上でも有用であると考えられた。
  • 小塩 英典, 徳山 泰治, 奥村 直樹, 高野 仁, 杉山 恵みり, 石原 和浩
    2024 年 72 巻 5 号 p. 408-414
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     症例は70代女性,高血圧および心房細動で循環器内科に通院中,腹痛を自覚したためCTを撮影したところ,胃内に3cm大の腫瘤を認めた。上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に3cm大の腫瘤を認め,超音波内視鏡ではgastrointestinal stromal tumor(GIST)や平滑筋腫が疑われたが本人の希望で経過観察となった。2年後のCTおよび内視鏡で腫瘤は3.5cm大に増大したため単孔式腹腔鏡下胃内手術を行なった。術翌日に吐血を認め上部消化管内視鏡検査を施行したところ,腫瘍切離部のstaple lineからウージングを認めたため止血を行なった。術後4日目から経口摂取を開始し,通過障害は認めず経過良好で術後10日目に退院した。病理診断はGISTでmodified Fletcher分類の低リスクの診断であった。術後3年経過しているが通過障害や再発を認めていない。単孔式腹腔鏡下胃内手術の適応や手技について文献的考察を加え報告する。
看護研究報告
  • 前田 恵美, 小玉 幸恵, 矢吹 貢一
    2024 年 72 巻 5 号 p. 415-420
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     大腿骨近位部骨折術後の超高齢者(90歳以上)の自宅退院可能とする要因を明らかにすることで退院後のQOL維持・向上に向けた退院支援ができるのではないかと考えた。
     退院先に有意な関連が認められたのは,退院時の歩行可否・自立度,排泄自立度,家族が自宅退院を希望していることであった。歩行可能でも介助が必要であったり,同居家族がいても日中独居・高齢者のみであると退院先に影響を及ぼすものと考えられ,日中に子供と同居であれば認知症がある場合や要介護状態でも自宅退院可能になることが示唆された。また,歩行能力に影響する因子として,術後7日の歩行可否に関連が認められた。
     超高齢者の大腿骨近位部骨折術後患者が自宅退院可能となった要因は,日中に子供と同居,歩行・排泄が自立する,入院時に家族が自宅退院を希望していることである。また,術後7日に歩行可能であることが,歩行能力再獲得につながる。
短報
  • ─開院から1年─
    加藤 貴彦
    2024 年 72 巻 5 号 p. 421-425
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     当院は2021年1月に移転新築した急性期病院である。
     当院が立地する相模原市では,域外への救急搬送が常態化しており,域内での救急受入が課題となっていた。それらを踏まえて,新病院では「救急医療の強化」をコンセプトに,目的に応じた組織体制を構築し,設計や運用計画等を検討した。
     ハード面として,1階救急外来を中心に,カテーテル室や内視鏡室,放射線室を隣接配置し,直上階には手術室やICU,救急病棟を配置した。ソフト面では,新たに救急センターと脳卒中センターを設立して,救急医療体制の強化を図った。
     開院後,積極的な救急患者の受入増加に繋がり,救急車搬入件数は開院前と比較し,25%増の年間7,600台に到達した。「救急医療の強化」という明確なコンセプトを掲げ,組織体制を構築して進めたことで,救急医療を中心とした新病院が無事に完成し,救急患者の受入増加を達成した。
資料
  • YAN QIJUN, 牛久保 美津子
    2024 年 72 巻 5 号 p. 426-433
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/03/17
    ジャーナル フリー
     1972年の日中国交正常化後に永住帰国した中国帰国者の90%以上が70歳を超えており,介護ニーズが高まっている。本研究は,介護問題が深刻化する中国帰国者の支援検討の基礎資料を得るため,中国帰国者の在宅介護に関する研究論文の文献検討から,中国帰国者の介護に関する研究の概要と1世の介護問題とそれに対する提言を整理することを目的とした。医学中央雑誌,CiNii,PubMedで介護保険法施行2000年以降に公表された中国帰国者の介護に関する研究論文を検索し,5件を分析対象論文とした。結果,在宅介護に関する論文は少なく,中国帰国者1世のみならず2世を含んだ調査であった。データ収集では中国語の翻訳者や通訳者を必要とする調査であった。介護問題は,文化的差異から生じる問題,制度に関する問題,地域社会での支えに関する問題の3つがあげられた。提言は,それら各介護問題に対してと調査研究の必要性の計4つがあげられた。
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