検診活動及び健康増進, 生活改善を含む健康教育活動を実施することによって, それが疾病予防及び医療費の軽減にどの程度役立つかを, 個人を対象に上記活動に積極的に参加している者とそうでない者とに分けて, 以下の3点について研究を行った。
1. 国保加入者について健康増進活動への参加・非参加別にみた医療費の分析
検診を継続的に受診している者, あるいは健康づくり活動に積極的に参加している者は, そうでないものと比較して, 一人当たりの年間国保医療費が低いという結果が得られた。両者の差額は, 費用としての検診受診料をはるかに上回るものであり, 費用効果は十分あると考えられた。前者が後者にくらべて医療機関受診率が高いにもかかわらず, 医療費が低かったのは, 入院医療費が少なかったためであり, 検診の連続受診および健康づくり活動への積極的参加は, 重病を予防し, とくに高額な入院医療費の低減に効果が期待できることを示した。
2. 胃癌患者の検診受診・非受診別にみた入院医療費の分析
地域胃癌登録の胃癌患者について分析した結果, 胃検診 (胃X線集団検診, 胃内視鏡検査) 受診者 (検診発見者) は非受診者 (外来発見者) にくらべて, 胃癌による死亡率が低く, 入院医療費が低いという結果が得られた。これは胃癌の早期発見により進行癌が少ないために救命出来る者が多く, また入院期間が短縮され, 医療費が軽減されるためと考えられた。また費用損失については, 検診費用, 入院医療費, 胃癌で死亡した場合の逸失利益等を総合して比較した結果, 受診者に利益が多いことが分かった。
3. 介護保険導入による費用効果の分析
介護保険導入にともない, 被保険者の保険料と介護サービス利用の一部負担金が本人にとっての費用増加となるが, 一方では, 在宅介護サービスの強化, 特別養護老人ホームの開設, 短期入所の設置, デイサービス開設など, 要介護者にとってサービスの拡大が図られ, その内容は飛躍的に充実し, 利益が多いと分析された。さらに周辺の社会開発が行われつつあり, 政策立案, 住民参加など地方分権を担う力が強化されると予想された。
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