超音波カラードプラ法による体内血流観察は心疾患についてよく行なわれている手法である。しかし腹部臓器については血流速度が遅いためなかなか実用化しなかった。近年, 細動脈低速度血流を測定することが可能な機器が開発され, おもに肝臓, 腎臓についての測定が可能となってきた。そこで我々は本法を用いて泌尿器科領域で頻度の高い前立腺肥大症, 水腎症, 小児の逆流性腎症について測定を行い, その診断的意義を考察した。
測定は腎葉間動脈 (ILA) で行い, 最高血流速度 (Vmax) と最低血流速度 (Vmin) を記録した。その他の腎機能検査としてDMSA-腎シンチグラムを行った
結果:(1) 前立腺肥大症については34人 (68腎) について測定した。その結果Vmax, Vminなどの血流速度は年齢と共に低下する傾向が見られ, これは対照群も同様であった。またVminは対照群より有意に低下していた。
(2) 水腎症についてはVminが対照群より有意に低下していた。また水腎度別に分類すると水腎症が高度になるほどVminも低下傾向を示した。
(3) 逆流性腎症群についてVminは腎シンチグラム摂取率と高い相関を示した。Vminを瘢痕度別に分類してみると高度瘢痕群は有意に低値を示した。
これらの結果より本法による腎血流速度測定は泌尿器科的疾患の進行程度判定に有用であり大まかな腎機能検査にもなり得る。また簡便で容易に小児, 高齢者にも行えることから集団検診にも有用であるものと予想された。
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