内分泌専門外来では健康成人の甲状腺異常症の頻度は17%と報告されている。今回2007年4月2日から2008年3月31日までの1年間を通して,人間ドック受診時に得られた血清を用いてFT
3,FT
4,TSHを測定し,それらの分布をみて,成人における甲状腺機能異常症の出現頻度を明らかにするために調査・研究した。男性1,630人,女性1,053人の合計2,683人を対象にした。血清FT
3,FT
4値では男性群が女性群に比較して高い値が示され,血清TSH値では男性群に比較して女性群で高い値が示された。血清FT
3,FT
4の基準値より低い値であった個体数が男性例より女性例で高い出現頻度を認めた。血清TSH高値 (>4.91μU/ml) の個体数は男性例より女性例で出現頻度が高いことが示された。男性より女性で甲状腺ホルモン値が低い傾向を示し,甲状腺機能低下症が出現しやすいことが明らかにされた。甲状腺機能低下症を惹起しやすい慢性甲状腺炎が男性例より女性例で出現頻度が高いことが知られているが,今回得られた結果は慢性甲状腺炎の出現頻度と類似した傾向が考えられた。血清甲状腺ホルモン値と甲状腺自己抗体価は密接な関係があることから,今後更なる関係性を明らかにするために甲状腺自己抗体価の調査・研究と併せて検討していきたい。
抄録全体を表示