当院は,組織および職員が地域の医療に貢献するために,基本理念,組織風土ならびに組織アイデンティティを重要視してきている。さらに我々はこれらの浸透を目指した職員教育を計画的に実施している。しかし,我々はこれまで,これらの浸透度を確認したことはない。本研究は,組織アイデンティティに関する研修内容に対する浸透度をアンケート調査で明らかにすることを目的に計画された。
研修前アンケート回答者は,全職員1,696名中1,418名であった。研修参加者数および研修後アンケート回答者は,1,016名であった。研修前アンケートで「地域での使命を理解」(以下,使命)を‘理解できている・概ね理解できている’と回答した割合(以下,浸透度)は53.9%であった。これに対して,研修後におけるアンケートで「使命」を理解できた・概ね理解できたと回答した割合(以降,理解度)は84.0%であった。研修前アンケートで「地域での役割」(以下,役割)の浸透度は53.8%であった。また,研修後の「役割」の理解度は85.5%であった。さらに,「プロジェクトの意義」(以下,意義)の浸透度は48.3%であった。これに対して,研修後の「意義」の理解度は82.3%であった。他方で,本研修による組織アイデンティティの理解度は,職種により異なることが明らかとなった。
2012年に実施した「組織アイデンティティ研修」に対する7年後の浸透度は約50%であり,組織アイデンティティの浸透の難しさを示している。他方で,本研修は,組織アイデンティティに対する理解を向上させるために効果的であった。しかしながら,その理解は職種により違いが認められ,理解や職種に合わせて柔軟に対応できる研修プログラムの必要性が示唆された。
抄録全体を表示