日本農村医学会雑誌
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43 巻, 5 号
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  • 中村 攻
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1049-1054
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村医学も, その基盤となる農村, 農業, 住民生活の激変のなかで, 地域医療という視点が必要になっている。これには2つの意味があって, 一つは個々の医療施設が, 地域にある様々な医療・福祉・健康管理等の施設と連絡をとって, 住民の健康を守るための地域のネットワークを構成することである。二つ目は, 医療関係者が直接的な医療活動に止まっていては住民の健康を守ることが難しく, 住民の物心両面にわたる生活全般の理解が必要になってきていることである。これが地域医療のタテとヨコの両軸である。
    本論文は, こうした視点に立って, 地域住民の生活全般にわたる問題を概観し, その基礎になる農村・農家経済の再建の方向を検討したものである。具体的に明らかにした点は第一には, 今日の農村問題を農業生産の衰退, 人口の減少と高齢化, 生活環境施設の困窮化といった側面から検証した。第二には, これまでの過疎 (農村) 対策を地域開発の諸策を検証しながら, その課題を抽出した。第三には, 新しい地域づくりの方向を, その素材活用の事例を検討しながら構想した。
  • 神奈川県西部住民について
    矢崎 ますみ, 田中 ゆみ, 三橋 倫誉, 田村 秋夫, 尾上 尚美, 徳島 修, 小野 龍彦, 北村 磨知子, 前田 厚志, 米山 桂八
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1055-1060
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は当院人間ドック受診者を居住地域環境別に区分し, 大気汚染や喫煙者及び農業従事者等に着目し, 肺機能の比較検討を行なった。平成3年4月から平成4年3月までの1年間, 計1,322人を対象とし, 神奈川県西部を山間部, 都市近郊部, 臨海部と大きく3つの地域に区分した。肺機能の検査項目は, FVC, FEV1.0,%FVC, FEV1.0%, の4項目とし, 年代, 性, 職業, 喫煙の因子を加え検討した。結果は都市近郊部に居住する高齢者及び非農業従事者, 非喫煙者に目立って肺機能低下が認められた。この地域は, 東名高速道路等の幹線道路があり他の二地域に比べ大気環境がよくないといわれている所でもある。大気汚染等の影響も考えられ, 確固とした理由は特定出来ないが今後も更に受診者の細かな生活状況等を調査し, 環境測定等も検討し, 資料分析を続けていきたいと考える。
  • 小谷 和彦
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1061-1064
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年C型肝炎ウイルス (HCV) 関連抗体の測定が臨床応用され, 肝細胞癌 (HCC) の成因の把握は容易になった。そこでHCC発症までの経過について, 特に成因の面からB型肝炎ウイルス (HBV) 関連群とHCV関連群とに分けて臨床疫学的な差異を観察した。HCCの臨床診断時年齢はHBV関連群よりHCV関連群が高く, 女性はより高齢の傾向があった。遡及的に各慢性肝疾患の進展期間をみると成因により大差はなかったが, 女性が長期を要する可能性はある。同じ飲酒習慣では, 各肝疾患の進展期間に成因差は認められず, 飲酒習慣の差により同じ各肝疾患の進展を示すものの期間を比べると, 成因によらず86g/日以上では短期の進展傾向は窺えたが有意とはし得なかった。
  • 田近 徹也, 神田 裕, 渡辺 智仁, 北川 雄一, 三浦 敦, 寺本 誉男, 政井 治, 大沼 俊和
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1065-1071
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    過去14年間に経験した胆石症手術例について診断と治療の変遷を振り返り今後の治療のあり方を検討した。胆石症の診断で手術を受けた524例 (胆嚢結石412例, 胆嚢-総胆管結石75例, 総胆管結石36例, 肝内結石1例) を対象として, 胆石の種類, 期間別での胆石の対比, 手術術式の内容と術式の変遷, 無症状胆石症, 検診時発見症例について分析した結果, 当科では胆石症に対する外科的治療方針を胆嚢結石は急性胆嚢炎や重大な合併症を併発している場合を除いて, 有症状の胆嚢結石症は原則として腹腔鏡下胆摘術を選ぶ。無症状胆石に対しては胆嚢形態の変化 (壁肥厚, 萎縮など) を厳重に観察して経過を見ていく。胆嚢-総胆管結石及び総胆管結石は胆摘+Tチューブ挿入を第一選択とし, 再発例については胆道付加手術を適宜選択するか, 全身状態不良例, 開腹手術不可能例と同様に消化器内科と協力して内視鏡的乳頭括約筋切開術や経皮経肝胆道鏡による截石を行なう。経皮経肝胆嚢ドレナージ (PTGBD) については症例を厳密に検討して採用する必要があること, さらに加えて検診の推進による無症状胆石症の発見に努め, その人達の経過を経年的にみていくべきことも強調した。
  • 畝 博
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1072-1077
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    民間の地域中核病院を中心とした障害老人の地域ケアシステムについて検討した。
    対象とした特定医療法人天心堂へつぎ病院 (大分市南部の農村部の地域中核病院) では, 老人保健施設, および看護婦2名が専任で在宅ケアに当たる独立した在宅医療事業部を設け, 病院, 老人保健施設, 在宅医療事業部が三位一体になって, 24時間救急から在宅ケアまでの継続した包括的な医療サービスを提供している。こうした病院を中心とした施設ケアと在宅ケア活動の充実の結果, 病院の平均在院日数はこの7年間で約10日短縮する等の成果がみられた。また, 老人保健施設のデイケアを利用している障害老人およびその家族の大部分が提供されたサービスに満足していた。
    民間の地域中核病院を中心とした地域ケアシステムは, 保健・医療・福祉の資源の乏しい農村地域にあっては, 現実的で有効な障害老人のケアシステムの一つと考えられた。
  • アンケート調査より
    江幡 世利子
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1078-1082
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    土浦協同病院に勤務する看護婦を対象として「死後の処置」に関する意識調査をアンケート方式で行った。
    調査は,(1) 死後の処置を行う時どのようなことに気をつけているか,(2) 患者の生前と死後での接し方の変化,(3) 患者の死に接して考えること,(4) 死後の処置に家族を参加させることの是非の4点に主眼を置いた。
    調査は,(1) 死後の処置を行う時どのようなことに気をつけているか,(2) 患者の生前と死後での接し方の変化,(3) 患者の死に接して考えること,(4) 死後の処置に家族を参加させることの是非の4点に主眼を置いた。
    今回の調査により, 本来の目的である「死後の処置」についての現状の把握ができたほかに, 自分達の行ってきた業務を振り返り, 反省するよい機会にもなった。そして, 家族の危機状況に対する心くばりをすることなど改めて自分の看護の姿勢を見直すことへもつながった。
  • 鷹栖町在宅ケアシステムについて
    杉村 巌, 荒 尋子
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1083-1086
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    鷹栖町では, 昭和60年から, 住民台帳をベースにした保健医療情報システムが稼働しているが, それに在宅ケアの情報も付加して, 在宅ケア支援を一層効率化するように努力している。
  • 若月 俊一
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1087-1092
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    有機農法と慣行農法で生産された農産物 (ニンジンとホウレンソウ) に含まれるビタミンやミネラルを測定しその違いを調べた. その結果, ニンジンでは窒素が有機農産物で有意に低く, ホウレンソウではMg, Cu, Znの含有量が有意に高かった. また, 化学肥料使用の土地と有機質肥料使用の土のもつ, 保水力や添加硝酸ナトリウム排出量を比較すると, 排出パターンは有機質肥料使用の土の方が穏やかであった.
    一般に有機農業実践者は, 緑黄野菜や有機農産物を多く摂る機会があり, その結果としてガン予防に関連の深い血中カロチンが高くなると考え, 血中カロチン濃度を農村住民約500人について測定した.男女ともカロチンを多く含む芋類や乳製品の摂取と血中カロチン濃度に明らかな関係が認められたが, 調査時期がずれた関係から, 農薬散布者と非散布者では特に血中カロチン濃度に差は認められなかった.
    農薬の生体影響の国際的評価について, カリフォルニア州食品農業局の農薬作業による中毒事例の報告と, 日本の人口動態統計調査を対比し, 評価・検討を行なった。その結果, 従業中の中毒例はカリフォルニア州が多かったが, 死亡例は日本が多く, 重大な健康障害が発生していることが判明した.
    富山県の平成5年度の詳細に報告された農薬中毒は9件であった. また, 富山県と中国の河南省の2県の農薬中毒の実態を比較すると, 中国の特徴は, 中毒年齢が低い, 死亡率は低い, 水や食品に残留した農薬によって中毒が発生しているなどである.
    農業従事者における有機リン系農薬の生体影響を血漿コリンエステラーゼと腎尿細管機能を指標として検討した. 急性有機リン中毒患者では腎尿細管の機能障害が起こっていた.
    有機リン系殺虫剤の大量暴露を受ける白蟻駆除作業者では対象群と比較してSCE頻度が有意に増加し, 有機リン系殺虫剤の変異原性が指摘された. また, リンパ球サブセットでは, 農作業者, 自蟻駆除作業者の両者に, 対照群と比較して有意の変動が認められた.
    農業化学物質の人体内残留は脂肪組織では前回と同じかやや高い値を示し, 母乳でもほぼ前回と同じであり, いずれもここ数年横這い状態である.
    動物実験で3種類の農薬(アセフェート, マラソン, メソミル)による相乗作用効果を調べると, アセフェート添加で特に脳のCh-E活性が低下し, 病理組織学的には, 3種混合で肝臓, 腎臓, 心臓に変化が認められた.
  • 野村 茂
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1093-1097
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    作目として, 岩手県の米作・肉牛飼育, 茨城県および熊本県のレンコン生産, 富山県の米作・チューリップ球根栽培, 長野県の高原野菜栽培および鹿児島県の施設園芸などを選び, 農業従事者の労働負担と健康影響を調査するとともに, 労働負担評価の開発, すなわち, 蓄積的疲労兆候インディックス (CFSI) の農業従事者への適用のための改訂を試みている.
    第2年度, 本研究では, 肉牛飼養農家では, 作業者の心拍数の観察から, 牧草処理の最農繁期に最も労働負担が強い可能性が示唆され, レンコン生産については, 茨城県と熊本県における生産労働の差異, 収穫作業労働の改善の必要性が指摘された. また, チューリップ球根栽培における農薬の使用の実態と農薬中毒および皮膚炎の発生の様態が把握された. また, 高原野菜栽培でも9時間未満の農作業で130/分以上の心拍数増加が認められ, 最盛期の12時間以上農作業時の実態の把握も必要であることが示された. このように, 本年度, さらに, 農業経営の性格をふまえた作目別の労働特性と労働負担の実態が明らかにされた.
  • 登内 真
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1098-1100
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農漁村において, 小児肥満症を予防することは, 住民の成人病を予防し, その健康増進を推進するためにきわめて重要なことである. 今回の研究は, 小児肥満予防の手掛かりを得るため, まず農村・漁村の肥満児の発生状況について疫学的調査を行った. その結果, 農村部の肥満児率は, 毎年高くなる傾向を認め, 現在は, 明らかに都市部を上回っていることが確かめられた. 肥満児は, 5歳頃より増加し, その頃が小児肥満症の始まりであることが推測された. 漁村の肥満児率は, 農村よりやや低く, 都市部より高い率を示していた. 以上の結果, 農村・漁村において, 小児肥満症を予防することは, きわめて緊急の必要事であり, その時期は, 学童期では遅く, 4-5歳の幼児期より始める必要のある事が予測された.
    次に, 体重による肥満の判定は, 真の体脂肪を表現していない難点があるため, 体脂肪計を使用して小児の体脂肪を測定し, 小児に対する有用性を検討した. その結果, 体脂肪の測定は, 動脈硬化の予測に有効であることが分かった. また, 農村の肥満児は, 体脂肪の測定などを考慮すると, 都市部に比べてとくに憂慮すべきではないという報告もあった.
    思春期の女子では, 肥満度が低値であっても, 体脂肪率が高い場合が多く, 体脂肪の測定がとくに必要であると思われた. この結果, 従来成人に応用されていた体脂肪の測定が, 小児に対しても有用であることが示唆された.
  • 山根 洋右
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1101-1102
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 江崎 廣次
    1995 年 43 巻 5 号 p. 1103-1106
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 43 巻 5 号 p. 1107-1116
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 43 巻 5 号 p. 1117-1130
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1995 年 43 巻 5 号 p. 1131-1141
    発行日: 1995/01/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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