有機農法と慣行農法で生産された農産物 (ニンジンとホウレンソウ) に含まれるビタミンやミネラルを測定しその違いを調べた. その結果, ニンジンでは窒素が有機農産物で有意に低く, ホウレンソウではMg, Cu, Znの含有量が有意に高かった. また, 化学肥料使用の土地と有機質肥料使用の土のもつ, 保水力や添加硝酸ナトリウム排出量を比較すると, 排出パターンは有機質肥料使用の土の方が穏やかであった.
一般に有機農業実践者は, 緑黄野菜や有機農産物を多く摂る機会があり, その結果としてガン予防に関連の深い血中カロチンが高くなると考え, 血中カロチン濃度を農村住民約500人について測定した.男女ともカロチンを多く含む芋類や乳製品の摂取と血中カロチン濃度に明らかな関係が認められたが, 調査時期がずれた関係から, 農薬散布者と非散布者では特に血中カロチン濃度に差は認められなかった.
農薬の生体影響の国際的評価について, カリフォルニア州食品農業局の農薬作業による中毒事例の報告と, 日本の人口動態統計調査を対比し, 評価・検討を行なった。その結果, 従業中の中毒例はカリフォルニア州が多かったが, 死亡例は日本が多く, 重大な健康障害が発生していることが判明した.
富山県の平成5年度の詳細に報告された農薬中毒は9件であった. また, 富山県と中国の河南省の2県の農薬中毒の実態を比較すると, 中国の特徴は, 中毒年齢が低い, 死亡率は低い, 水や食品に残留した農薬によって中毒が発生しているなどである.
農業従事者における有機リン系農薬の生体影響を血漿コリンエステラーゼと腎尿細管機能を指標として検討した. 急性有機リン中毒患者では腎尿細管の機能障害が起こっていた.
有機リン系殺虫剤の大量暴露を受ける白蟻駆除作業者では対象群と比較してSCE頻度が有意に増加し, 有機リン系殺虫剤の変異原性が指摘された. また, リンパ球サブセットでは, 農作業者, 自蟻駆除作業者の両者に, 対照群と比較して有意の変動が認められた.
農業化学物質の人体内残留は脂肪組織では前回と同じかやや高い値を示し, 母乳でもほぼ前回と同じであり, いずれもここ数年横這い状態である.
動物実験で3種類の農薬(アセフェート, マラソン, メソミル)による相乗作用効果を調べると, アセフェート添加で特に脳のCh-E活性が低下し, 病理組織学的には, 3種混合で肝臓, 腎臓, 心臓に変化が認められた.
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