日本農村医学会雑誌
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42 巻, 4 号
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  • 13年間の統計より
    安藤 幸穂
    1993 年 42 巻 4 号 p. 949-955
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1979年から91年の13年間に, 当院皮膚科および救急外来を受診した蜂刺症患者は, 1,711名 (男1,027名, 女684名) で, 年平均130名前後である。受傷者は7~10月の蜂の活動がもっとも盛んな時期に多く, 9歳以下の男児と30~50歳代の男性が大部分である。蜂の種類はアシナガバチとスズメバチが, 蜂刺症患者の70%を占めており, 蜂刺部位は手, 顔, 上肢, 頭の順に多く, すべて身体露出部である。蜂刺傷時の全身症状は23.3%に認められ, 重篤な意識障害は3.3%にみられ, 全身症状出現者は男性の方が有意の差で多い。また頭部刺傷者は, 手・上肢刺傷者と比較して全身症状の出現頻度が高率である。
    1991年の蜂によるアナフィラキシーショック症例は8例である。その男女比は7: 1で, すべて中高年者である。発生は8~9月で, 刺傷部位は頭頸部が多く, 症状発現まで数分から15分ときわめて短時間であった。7例がIgE RAST陽性であり, アレルギー的機序により発症したものと考えられた。
  • 吉川 隆志, 稲葉 秀一, 牧村 士郎, 寺井 継男
    1993 年 42 巻 4 号 p. 956-961
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    昭和63年より平成5年まで当科で経験した自然気胸50例について検討した。内訳は男性43例, 女性7例である。そのうち11例22%は安静療法のみで気胸は改善し, 残り39例に対しては胸腔ドレナージを行い, 最終的に30例60%に気胸の改善をみた。しかし残り9例18%の症例は, 手術を必要とした。再発率は初回例39%, 2回目36%であり, 良性疾患で, 内科的治療の再発率は高いが半数以上は再発しない点を治療選択の際どう評価するかが, 意見の分かれるところと考える。さらにこれらの症例を対象に, 特発性自然気胸例における体格と胸部X線写真上で測定される肺の大きさとの関連を検討する目的で, 特発性気胸患者のうち10歳代から30歳代の男性気胸例34例を選択し, 年齢を合致させた男性対照30例についても比較検討した。身長については特発性気胸例については対照より有意に高値を呈し, 体重については低い傾向を示した。また肺の高さについては気胸群は対照群に比し有意に高値を呈し, 従来から言われている長身, 痩せ型の体型で, 肺の高さも高いことが裏づけられた。
  • 生田 清美子, 堀口 佳哉
    1993 年 42 巻 4 号 p. 962-968
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    神奈川県のある地区で毎年5月頃, 児童・生徒に目の痛み, 目のかゆみ等が多発した。昭和63年保健所に調査依頼があり, 検討を続けた結果, イネ科牧草 (イタリアンライグラス) による花粉症としての, アレルギー性結膜炎が強く疑われた。
    当該地区には, 多くの住宅と小さな事業所の中に島のように田畑が広がり, 5月には一面牧草が開花時期をむかえる。「アレルギー性結膜炎」が多発するA小学校, B中学校, C高等学校は, この田畑の中にある。平成2年度, 学校における記録等を整理し, 発症者の被害発生状況, 症状等を, 被害発生時に調査票により調査した。
    「アレルギー性結膜炎」で保健室を訪れる児童・生徒数は, 毎年3校合計100名以上である。「アレギー性結膜炎」は4月末からではじめ, 5月初旬から中旬に集中して発生する。多発日は気温が高く, 被害発生時刻は昼近い午前中で, イネ科牧草開花時刻に一致する。保健室へ手当にきた児童・生徒のもっとも多い症状は, 目のかゆみ, 充血で, 90%以上に起こる。次に多い症状は流涙で, 約60%に起こる。次に目の痛み, 目の腫れ, 鼻汁, くしゃみが多く, 約30~50%に起こる。目のゼラチン様外観が, 約20%に起こる。再発する児は多く, 毎年発生する児が小学生で14.3%, 中学生で30.8%ある。症状は一過性で, 学校健診における眼科検診に変化は見られない。
  • 田尻 由貴子, 小山 和作, 上村 妙子, 奥村 芙美子
    1993 年 42 巻 4 号 p. 969-974
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    菊水町は, 熊本県の北西部に位置し, 古代遺跡で有名であると同時に豊かな自然環境に恵まれた町である。全国の農村地域の状況と同様に, 近年高齢化は急速に進展し, このため, 町では1973年から高齢者に対する身体的, 精神的両面にわたる総合的健康管理の試みを行なってきた。その間, 社会福祉協議会や老人会と町の保健婦との連携, 加えて, 町立病院とそれに併設された町健康管理センターがその連携に加わり, 行政のバックアップもあり, 訪問看護システムを確立した。更に町立病院と同一敷地内にできた特別養護老人ホームのデイサービスが開始され, 在宅ケア支援システムが充実するようになった。在宅ケアのさまざまな計画は訪問看護婦によって主になされたが, 医療関係者にとって福祉従事者との協力が必要であったし, 更に菊水町の住民 (大部分はボラソティア活動) がこの事業に参加することが重要であった。ここに, 高齢者に対する在宅ケアのシステムをいかにして確立したかについて報告する。
  • 村田 謙二, 松浦 麻里子, 本家 好文
    1993 年 42 巻 4 号 p. 975-978
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    癌性疼痛をコントロールし, 癌患者のQOLを高めるために, 院内にターミナルケア研究会を組織し活動した結果, 研究会活動前後では院内のモルヒネ年間使用量が6倍にも増加した。研究会は隔月に計8回行い, 院内癌性疼痛患者の実態調査 (2回) や職員へのターミナルケアに関するアンケート (2回) の報告, 大量モルヒネ投与例の紹介 (1回), 患者家族や他院でホスピスを実践している医師の講演会 (3回) で, いずれも啓蒙的内容になるよう配慮した。また他に院内Pain Control Manualの作成やターミナルケアに関する文献リストの作成配布等を行った。カンファレンスへの参加者は看護婦を主体に多数となり, 癌性疼痛に対する治療の改善は得られたものの, 職員に対するアンケート調査からは当院のターミナルケアに関して種々の問題点がなお山積していることが浮き彫りにされた。
  • 佐藤 英嗣, 東 清吾, 山口 潤, 熊切 正信, 佐藤 七七朗
    1993 年 42 巻 4 号 p. 979-982
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1977年に米国コネチカット州ライム地方で確認され, ライム関節炎として報告されたスピロヘータの全身感染症であるLyme病は, 本邦でも報告例が増加している。本疾患はBorrelia burgdorferiに起因する感染症であるが, 皮膚症状である慢性遊走性紅斑をはじめ, 神経症状, 関節症状, 心電図異常など種々の症状を併発することが知られている。
    Lyme病の診断には血清抗体価の上昇と, 明らかな本症の臨床症状が一つ以上あれば診断が確定する。しかし, 慢性遊走性紅斑のみの軽症例や, 早期に抗生剤が投与された患者, または感染後1か月以内の患者では, 十分に抗体価の上昇がみられない場合もあり, 診断は必ずしも容易ではない。自験例は臨床像や症状は合致するが, 抗体価の有意な上昇はみられなかった。しかし, 慢性遊走性紅斑が抗生剤投与に反応して軽快したこと、心電図の異常があり, これはLyme病で生じる症状の一つであることから, 自験例もLyme病であると推測した。
  • 郭 文治, 五十嵐 豊, 森田 達史, 越田 英夫, 田中 功, 亀谷 富夫, 堀上 健幸, 永井 忠之, 加藤 正義
    1993 年 42 巻 4 号 p. 983-988
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性。テレビにてコンフリーという薬草を食すと胃腸の具合が良くなると聞き, 隣人宅に生えていた自生ジギタリスをコンフリーと誤って食した。食後4時間頃より吐気, 腹痛出現, その後嘔吐, 下痢も出現した。翌日になっても上記症状は消失せず, 意識レベルも低下してきたので当院受診した。入院時患者は顔面蒼白で苦悶様, 血圧触診で60mmHg台, 著明な徐脈を呈し, 低心拍出量が起因すると思われる急性腎不全像も呈していた。血中ジゴキシン濃度は2.0ng/ml, 血中ジギトキシン濃度は111ng/mlと著明な高値を示した。患者は第2病日に治療のかいもなく心室細動にて死亡した。自生ジギタリスを誤食した例は比較的診しく, 本例の様に死亡するケースもあり臨床上重要と考えられたので報告した。
  • 松島 松翠
    1993 年 42 巻 4 号 p. 989-993
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高齢化の進展とともに, 障害老人の増加とそのケアは, 地域における深刻な問題となってきている。今後, 寝たきり者をできるだけ予防し, また障害老人の在宅ケアを効果的に推進していくためには, 地域における諸機関 (病院, 開業医, 市町村, 福祉事務所, 社協等) や施設 (老人ホーム, 老人保健施設等) の連携のもとに, 医療担当者 (医師, 看護婦等) やヘルスワーカー (保健婦, ホームヘルパー, MSW等), 地域ボランティア, 近隣者等の地域ぐるみの組織的活動が必要である.
    そこで農村地区における実践的活動の中から, 寝たきり予防のための取り組み方法, 効果的な地域ケアシステム達成のための取り組み方法, 効果的な地域ケア推進のための, 国, 行政, 各関係機関への要望事項, 在宅ケアの原価計算の4点について研究を行った。国, 行政, 関係機関への要望事項としては, 組織とマンパワーの充実, 地域のコーオディネイト機能の推進, 財政面への配慮, 施設の効率的設置と利用, 在宅福祉サービスの拡充, 終末期医療への支援等があげられた。
  • 林 雅人
    1993 年 42 巻 4 号 p. 994-1001
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我が国の農村部では虚血性心疾患年齢別調整死亡率は山間農村で低く, 都市近郊農村で高かった。虚血性心疾患のリスクファクターとして総コレステロールの意義は都市近郊農村で高いが, 山間農村では明確な有意差を示さなかった。一方, HDLコレステロールは典型的農山村の秋田, 長野, 島根の調査対象地域で虚血性心疾患と負の相関が認められ, 動脈硬化指数とは正の相関となっていた。全国集計した冠動脈写による病変の程度と血清脂質の関係では総コレステロール, LDLコレステロール, 動脈硬化指数, Apo A1, Apo B, Apo B/Apo A1と正の相関, HDLコレステロールと負の相関が認められた。中性脂肪については女のみ正相関していたが, 男では相関がみられなかった。男の中性脂肪は飲酒習慣等のためバラッキが大きいことが有意差を示さない一因となっていると考えられる。食習慣は時代, 地域による差の他に年齢による食嗜好の変化があり, 高齢になると魚介類を好む傾向がある。このことは脂肪酸について断面での血清脂肪から動脈硬化のリスクファクターを抽出することを困難にしている。一方, 脂肪酸は前日の食餌の影響をうけやすいので, その影響が少ない燐脂質分画の脂肪酸構成との比較も検討する必要がある。
    なお, 本研究から低カロリー, 低血清アルブミンが冠動脈病変の進展に寄与している可能性を示す結果が得られた。
  • 若月 俊一
    1993 年 42 巻 4 号 p. 1002-1006
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農薬や化学肥料の生体影響の国際的評価について,'87年のカリフォルニア州の農薬作業による中毒事例の報告と,'86年の日本の厚生省報告を対比し, 評価・検討を行なった。その結果, 従業中の中毒例はカリフォルニア州が多かったが, 死亡例は日本が多く, 重大な健康障害が発生していることが判明した。
    有機農業者と一般農業者の健康実態の分析については, 富山県の5年間に報告のあった農薬中毒90例についてみると, パラコート剤による自殺例は減少傾向にあった。農業従事者の有機リン系殺虫剤などによる農薬暴露の影響をみるとき, 血漿ChE, 赤血球AChE, 尿中BMG, 遺伝学的影響としてSCEの頻度調査および有機リン農薬の尿中代謝物であるDPM, DMTPなどの調査が有効であることが示唆された。また, 健康実態を把握するための基礎的な問診および検査項目について検討した。
    農業化学物質の人体内残留については, 脂肪組織では前回と同じか, やや高い値を示し, 母乳でも, ほぼ前回と同じであり, いずれもここ数年横這い状態である。有機農業の生体影響に関する実験的研究では, 化学肥料, とくに窒素肥料の生体影響をみるため, メトヘモグロビンを誘発する硝酸ナトリウムなどを家ウサギに投与して, 血中メトヘモグロピンの形成動態を微量測定法を用いて調査した。その結果, 投与後1~3時間にピークが認められ, 24時間後には投与前の値にもどっていた。
  • 野村 茂
    1993 年 42 巻 4 号 p. 1007-1011
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    岩手県の米・肉牛飼育, 茨城県のレンコン生産、富山県のチューリップ球根栽培, 長野県の高原野菜栽培および鹿児島県のイチゴ等施設園芸など各作目を対象に選び, 農業従事者の労働負担と健康影響を調査するとともに, 労働負担評価の開発, すなわち, 蓄積的疲労徴候インデクス (CFSI) の農業従事者への適用のための改訂を試みた。初年度, 本研究では, 現地における質問紙調査および面接, 健康診断によって, まず, 各作目の経営, 生産過程と労働負担やその健康影響の特質を明らかにした。すなわち, 米作畜産における牧草, 飼料用作物の収穫処理と稲刈り作業の重複する労働加重と健康障害, 特に腰痛の問題, レンコン生産の重労働である掘り取り作業の省力化の効率が悪く, 労働生理学的問題の多いこと, チューリップ球根の収穫, 出荷作業による爪, 手指の特異な皮膚障害とその対策, イチゴなど施設園芸で収穫とともに出荷作業の労働負担が大きく加重する実態等, 問題点が把握された。
  • 山根 洋右
    1993 年 42 巻 4 号 p. 1012-1016
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 42 巻 4 号 p. 1017-1021
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 42 巻 4 号 p. 1022-1024
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1993 年 42 巻 4 号 p. 1025-1036
    発行日: 1993/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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