日本農村医学会雑誌
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46 巻, 4 号
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  • 安 玉善, 崔 正和
    1997 年 46 巻 4 号 p. 665-678
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究は韓国の農民と都市人の耐寒性水準を測定し, 農民の健康対策をたてる際の基礎資料を得る目的で実施した。
    農民81人, 都市人64人を対象として氷水浸漬実験を行い, 寒冷血管反応を観察した。
    20.0±2℃, 55±5%RHで被験者の左手中指全体を0℃の氷水に30分間浸漬させたまま, 指の皮膚温度を氷水浸漬10分前から, 浸漬終了後30分まで1分間隔で連続測定し抗凍傷指効を算出した。その他, 寒冷血管反応の特徴を表す項目を測定し, 次のような結果を得た。
    対象全例では, 抗凍傷指数は農民が都市人に比べて多少高かったが, 統計的な有意差はなかった。男性の場合, 抗凍傷指数は農民が都市人に比べて多少低かったが, 統計的に有意ではなかった。女性は農民が都市人に比べて氷水浸漬後, 最初の上昇時の指の皮膚温及び, 抗凍傷指効が有意に高く凍傷抵抗性が高かった。氷水浸漬後25分間の指の皮膚温の平均は女性が男性より有意に高かった。年齢別に見ると, 男性の30代が氷水浸漬後25分間の指の皮膚温の平均が他の年齢に比べて最も高く, 氷水浸漬後, 最初の上昇が起きるまでの時間も最も短く, 抗凍傷指数も特に高かった。しかし, 女性の場合は年齢による有意差はなかった。地域別に見ると抗凍傷指数は沃溝が最も高かったが, 統計的に有意ではない。以上のように, 寒冷作業環境に接する機会の多い農民, とくに女性が露出機会の少ない都市人に比べて抗凍傷指数が高いことがわかった。
  • 新井 正, 安田 洋, 伊東 祐二, 早川 和良, 高屋 忠丈, 戸島 敏, 渋谷 智顕, 吉見 直己, 樫木 良友
    1997 年 46 巻 4 号 p. 679-682
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    テロメラーゼはヒト肺癌組織では80%以上で活性が認められ, 癌の存在診断の一助となることが報告された。そこで今回, 我々は臨床的に原発性肺癌を疑った症例の気管支肺胞洗浄液中のテロメラーゼ活性の測定を試みた。方法はpolymerase chain reaction (PCR) を利用した高感度のアッセイ系であるTRAP (terometric repeat amplification protoco1) assayで行なった。この結果, 原発性肺癌と病理診断のついた6例は全てテロメラーゼ活性が陽性であった。一方細胞診は6例中4例で陽性であり, 2例 (扁平上皮癌と腺癌それぞれ1例) は陰性であった。このことから, 気管支肺胞洗浄液中のテロメラーゼ活性を測定することは, 肺癌のスクリーニングに応用できる可能性があると考えられたが, 未だ現在症例数が少ないため, 今後症例を重ねて検討していかなければならないと考えられた。
  • 高科 成良
    1997 年 46 巻 4 号 p. 683-717
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    一般検診において特別の異常を指摘されなかったものも効年後にはその約25%が生活習慣に関連する成人病を発症する。このような状態を予防するためにRetrospective Cohort Studyを実施し, High Risk指標を検討した。研究対象選定基準として年齢20~69歳, BMI18.1~25.9, 収縮期血圧159mmHg以下, 拡張期血圧94mmHg以下, 空腹時血糖120mg/dlあるいは随時血糖160mg/dl以下, 血清コレステロール120~220mg/dlを設定し, この基準を満足し, かつ4~5年後にも検診を受診した5,218例について解析し, 収縮期血圧130mmHg, 拡張期血圧85mmHg, BMI24.0, 血清コレステロール201mg/dlがHighRisk指標として適当であるという結果を得た。
  • 上田 厚
    1997 年 46 巻 4 号 p. 718-724
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本年度研究は, 統一調査票による農業従事者のストレスの実態と要因を他産業従事者や農村地域の非農住民と比較検討することによって明らかにすること, ストレスや満足度を規定する要因とその関連の構造を明らかにすること, 簡便かつ正確に農業従事者のストレスを評価出来るように統一調査票を改良すること, ストレッサーの抽出とストレスを診断するために有用な他の検査方法を検討することの4点を主要な課題として進められた。その結果;
    (1) 農業従事者のストレスは, 性・年齢のような身体特性や農作業や農業経営の側面だけでなく, 日常生活や地域の特性に由来する多様な要素によって修飾されていることが示された。
    (2) 本研究班による統一調査票は農業従事者ばかりではなく, 他産業従事者のストレス状況およびストレス要因を適切に抽出することが可能であることが示唆された。
    (3) 作業者のストレスを生理的, 心理的側面から適切に評価する手法を導入するために, 心拍数連続測定とエゴグラムの測定を採用し, その有用性を示唆する成績が得られた。
    (4) 本調査票を有効に活用することにより, 現場に即した実施可能なストレス対策を地域の組織的な活動や作業者自らの個々の能力で構築して行くための手がかりが得られるものと期待された。
    (5) 作成された統一調査票のそれぞれの設問を構成する質問項目を因子分析の成績などを参照して削除, 改変して, さらに簡素化された調査票を作成し, 統計的にその有効性と妥当性を検討したところ, 最初の調査票による解析成績と極めて高い相関が得られた。
  • 登内 真
    1997 年 46 巻 4 号 p. 725-729
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村地域における栄養・食生活状況と消化器系諸病態の実態を調査した結果, 現今の状況では主として飲食物の過剰摂取・過栄養の面が問題であり, 低栄養の問題点は表われてこなかった。
    岐阜県で, 山村型農村の方が糖質, 食塩の摂取量が多く, 都市型農村で脂肪, 蛋白質の摂取量が多かった。大分県で, 飲酒習慣を持つ人の減少と, 運動習慣を持つ人の増加が認められた。
    栄養状態のパラメーターから, 大腸ポリープと早期大腸癌での過栄養状態が示された。大腸癌の組織発生におけるadenoma-carcinoma sequenceに過栄養状態が関与することが示された。
    胃癌のリスク要因として濃い味付けが重要因子であるが, 塩味テストとの高い相関があり, 塩が胃癌発生に関連することが示唆された。
    脂肪肝は過栄養状態と密接な関係があり, 各地で増加の傾向にある。脂肪肝は消化器系の病態であるのみならず, 動脈硬化促進病態の一表現型でもあると考えられ, 新たな視点からの対策が必要である。大分県では, この群は健常者より食物摂取量が少なくなっており, 食事療法指導などの対策の効果が表現されていた。
    胆嚢ポリープは過栄養状態に関連する病態と考えられた。胆石症は, 地域により栄養状態のパラメーターに健常者との差が一定していなかった。
    慢性膵炎, 急性膵炎, 肝硬変症などの肝・膵疾患は飲酒習慣と密接な関連があり, 大酒家, アルコール依存症の比率も高く, 飲酒習慣改善の対策, さらに女性や若年者に対する対策も必要である。
  • 山根 洋右
    1997 年 46 巻 4 号 p. 730-738
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, 日本の農業の労働力は, 高齢化社会を背景として, 農村における中高年女性に依存する状況が強まり, 農村の中高年女性の健康増進対策は, 農村医学の重要な課題となっている。
    本研究は, 農山村の地域特性別に調査対象地域を日本を縦断する形で設定し, 中高年女性の健康実態, 生活実態を明らかにし, 中高年農村女性の好ましいライフスタイル, 健康行動, 社会参加, 生きがい, QOLを保障する保健医療福祉サービスの在り方などを調査研究し, 住民参加型の健康で文化的農村づくりの方策を提言することを目的とした。
    その結果, 第1年度1996年には, 次のような調査研究成果を得ることができた。
    1.多様化する農村の実態とコミュニティ特性を明らかにし, 中高年女性の健康増進対策を樹立する基礎調査として, 研究班の共通コミュニティプロフィール調査表を作成し各研究分担者の対象とする農山村町村の特性を把握し, 問題の背景の分析に供した。特に, 一般的コミュニティ特性項目にくわえ, 死因構造と死亡場所, 痴呆老人のケアマネージメント, 痴呆老人に対する社会サービス実態の調査を補強した。
    2.研究班で共通して使用する「農村中高年女性ヘルスチェック調査表」を作成し, 班会議で検討, 修正を行った。本調査票は, 1997年第2年度の調査に使用することとした。あわせて「ヘルスケアマネージメント・チャート」を作成した。
    3.各研究分担者の対象地域で, 共通の「ライフスタイル調査表」を用いて中高年女性の健康とライフスタイル特性を調査し, その特徴と問題点に基づき, 対策を明らかにした。
    4.各分担研究者により, 当面する農村中高年女性の健康問題に対する個別テーマを設定し, 調査研究を行った。個別研究テーマは, 北海道「農村中高年女性の頭部CT検診と痴呆予防対策」, 秋田「農村中高年女性の経年的脂質動態」, 千葉「農村中高年女性の健康と生活習慣」, 長野「農村中高年女性の生活と健康実態」, 島根「農村中高年女性の老人介護実態と健康福祉活動」, 熊本「農村健康長寿者の実態と中高年女性の健康増進対策」である。これらの多角的調査により, 農村における中高年女性の健康問題の多様性と健康増進対策の在り方を検討した。
  • 杉山 一教
    1997 年 46 巻 4 号 p. 739-742
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 小野 満也, 古武 昌幸, 池添 正哉, 山口 博, 佐藤 博司
    1997 年 46 巻 4 号 p. 743-747
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    111例の慢性血液透析患者中19例を透析前後の血圧によって, 血圧正常群 (9例), 透析前高血圧群 (6例), 透析前後高血圧群 (4例) の3群に分類し, 左室拡張末期径 (LVDd), 駆出率 (EF), 心室中隔壁厚 (IVT), 左房径 (LAD) の4点について平均値を比較した。EFは透析前高血圧群 (68±9.4mm) が血圧正常群 (65±9.6mm) に比し有意に増加 (P=0.03) しており, IVTは血圧正常群 (平均10±1.7%) に比し透析前高血圧群 (11±0.9%), 透析前後高血圧群 (11±0.6%) とも有意に肥厚していた (P=0.01, 0.01)。血液透析患者の高血圧は心機能に影響を与えている可能性が示唆され, 血圧のコントロールが重要と思われた。
  • 交流分析法による評価
    酒寄 良子, 酒井 真理子, 粉川 美千代, 弘田 タケ, 近藤 久子, 黒田 かよ子
    1997 年 46 巻 4 号 p. 748-754
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    手術前の患者は, 誰もが不安を抱いている。患者とのコミュニケーションをはかり, 患者が不安なく手術を受けられるように援助することが, 看護婦術前訪問の重要な目的のひとつである。短時間で患者との信頼関係を確立できるよう, 術前患者の精神的援助を目的とし,「交流分析」の手法を取り入れて術前訪問を実施した。平成6年3月から5月にかけて, 14人で構成されている手術部看護婦が全身麻酔を受ける患者を対象として術前訪問を行い患者との会話を記録した。完全な状態でのプロセスレコードができたのは, 患者120人中21人であった。その中で患者と看護婦が出したストロークをカウントし分析した。その結果, 交流分析のストロークを取り入れた術前訪問により86%の患者で手術に対する不安を軽減することができたが, 一方14%の患者には不安を取り除くことができなかった。術前訪問は看護婦, 患者間の信頼関係の確立により9割近い患者に有効であった。
  • 山下 一也, 飯島 献一, 渡部 雄治, 白澤 明
    1997 年 46 巻 4 号 p. 755-759
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    食事療法のみで1年間追跡した農村在住の原発性高脂血症老年期女性患者のbody mass index (BMI) と脂質の関係を調べた。対象は当院を受診中の60歳以上の30名 (平均年齢72.5歳) の女性高脂血症患者である。対象者には初年度に血清脂質を測定, 医師と栄養士より, 食事療法を十分に説明をし1年後に再び血清脂質を測定した。
    総コレステロール, HDL-コレステロール, 血圧, BMIでは1年間で変化はみられなかったが, 中性脂肪に関しては, 有意の減少がみられた。また, 初年度のBMIは中性脂肪の減少率と相関していた。
    食事療法のみの農村在住の老年期女性高脂血症患者のBMIは中性脂肪の減少率を予測しうる因子と考えられた。
  • チームアプローチの有用性について
    水井 伸子
    1997 年 46 巻 4 号 p. 760-763
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    癌患者のような心身両面の問題を抱えた患者に対しては, リハビリテーションの特徴であるチームアプローチは, 大変有用な手段である。主治医や病棟スタッフとともに, リハビリのスタッフが協力したことで, 終末期の患者の心身両面に対する援助が可能となった2症例を紹介する。
    2例とも, 疼痛がコントロールされ全身状態の小康を得た後も, 心理面での葛藤が大きく自宅ヘスムーズに復帰できなかった例であった。臨床心理士やケースワーカーを含めたリハビリのスタッフによる, 患者家族に対する身体心理面への援助によって, 家庭復帰が可能となった。
    〈症例1〉60歳女性直腸癌 (骨盤内侵潤)
    疼痛が緩和され小康を得た後も, 本人家族の心理面の葛藤のため, 退院を拒否し続けた。〈症例2〉71歳男性腎癌
    転移性脊椎腫瘍による完全対麻痺があり, 患者は強い欝状態を呈していた。
  • 小谷 和彦
    1997 年 46 巻 4 号 p. 764-767
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    側頭動脈炎に慢性硬膜下血腫を合併した1例を経験した。症例は68歳の女性で, 高血圧, 糖尿病を基礎疾患とし, いずれも内服加療中であった。右側頭部痛に続き1か月強の間に発熱・尿失禁・四肢脱力を訴えるようになった。身体所見ではやや錯乱様であるときもあり, 血液検査では著明な炎症所見がみられた。頭部CT検査で右慢性硬膜下血腫が認められ, 右浅側頭動脈生検で巨細胞性動脈炎の所見を得た。硬膜下血腫には穿頭ドレナージによる吸引術を, 次いで側頭動脈炎にはプレドニゾロンの投与を行い, 臨床経過は良好であった。側頭動脈炎, 血腫とも発症時期を決めにくいが, これらが合併し得る可能性は既に報告されている。例えば炎症に伴う血管の脆弱化が, その機序としては推定されるが, 余りに不確定の面が多い。これらの合併例の蓄積が今後にわたり必要である。
  • 1997 年 46 巻 4 号 p. 768-772
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 1997 年 46 巻 4 号 p. 773-785
    発行日: 1997/11/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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