検診活動及び健康増進, 生活改善を含む健康教育活動を実施することによって, それが疾病予防及び医療費の軽減にどの程度役立つかを, 上記活動が充実している町村群と, あまり充実していない町村群との比較によって明らかにすることを本研究の目的とした。
まず, 検診活動, 健康教育, 保健衛生活動が充実している代表的な町村 (検診群) と, それらが低くとどまっている町村 (対照群) として, 北海道では鷹栖町 (検診群) と東神楽町 (対照群), 長野県では八千穂村, 臼田町, 川上村 (以上検診群) と南牧村, 小海町, 佐久町 (以上対照群), 高知県では梼原町 (検診群) と安田町 (対照群) の各町村を選んだ。
それらの町村について, 検診活動及び健康増進活動と一般医療費, 老人医療費との関係について調査分析した。その結果, 検診群は対照群に比較して, とくに年間1人当たり老人医療費が少なく, その差額は鷹栖町では34,649円, 八千穂村, 臼田町, 川上村の3か町村では4.2~10.2万円, 樽原町では, 344,915円であった。
一方, 検診ならびに健康教育に要した費用を年間1人当たりに換算して算出し比較したが, いずれも検診費用総額よりも老人医療費の低下額のほうが大きいという結果が得られた。すなわち, 検診活動および健康教育活動が, 老人医療費を低下させており, 費用効果の点から見ても効果が大きいことが明らかとなった。
この中で, とくに35年間健康管理を続けている八千穂村では, 平成7年度において全国と比較した1人当たり年間医療費の差額は, 一般国保医療費 (歯科を除く) において37,373円, 老人医療費において208,246円の低下となって現れている。
また別に, 島根県, 熊本県の全市町村について, 各種検診活動, 健康教育活動と一般医療費, 老人医療費との相関関係について分析した。島根県の分析では相関がはっきりしなかったが, 熊本県の分析では, 保健婦数については, 療養諸費と歯科を除く全ての診療費 (入院・入院外・計) に負の相関を認めた。また健康診査では, 老人保健事業による基本健康診査受診率と大腸がん検診受診率について, 同じく療養諸費と歯科を除く全ての診療費 (入院・入院外・計) に負の相関を認めた。また胃がん・大腸がん・子宮がん検診受診率については, 一部の診療費と負の相関が認められた。
以上, 住民の健康保持・増進を目指した保健婦活動や各種検診活動は, 医療費抑制に効果があると考えられた。
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