日本農村医学会雑誌
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47 巻, 1 号
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  • 生活上の出来事とライフスタイルとの関連
    桂 敏樹, 野尻 雅美, 中野 正孝
    1998 年 47 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    健康的なライフスタイルを悪化させる出来事を明らかにするために地域住民を対象に健康習慣の総体であるライフスタイルに及ぼす生活上の出来事の影響力を比較検討した。
    多変量解析の結果, 以下のことが明らかになった。
    1. ライフスタイルと有意な関連が認められた出来事は夫婦喧嘩, 夫婦別居, 借金, 帰省, 親友の死, 浮気, 収入の変化, 会社の倒産等であった。
    健康なライフスタイルにする出来事は浮気, 解雇, 帰省などであった。一方, 不健康なライフスタイルにする出来事は夫婦別居, 夫婦喧嘩, 会社の倒産などであった。
    2. 性別にみると男性でライフスタイルと有意な関連が認められた出来事は帰省, 収入の減少, 夫婦喧嘩, 結婚, 親友の死, 浮気, 解雇, 借金であった。
    健康なライフスタイルにする出来事は解雇, 帰省, 浮気, 妊娠などで, 不健康なライフスタイルにする出来事は夫婦別居, 夫婦喧嘩などであった。
    一方, 女性でライフスタイルと有意な関連が認められた出来事は結婚, 個人的な成功であった。
    健康なライフスタイルにする出来事は個人的な成功, 離婚, 退職などで, 不健康なライフスタイルにする出来事は会社の倒産等, 配偶者の死, 夫婦喧嘩などであった。
  • 桂 敏樹, 星野 明子, 渡部 由美
    1998 年 47 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    1995年7月に広島市A地区の独居老人を対象に面接調査を実施し, 高齢者の孤独感を規定する要因を検討した。
    孤独感はLoneliness Scale by Ochiaiを用い評価した。孤独感に関連する要因として調査した項目は独居期間, 独居に対する主観的評価, ライフスタイル, 自覚的健康度, 生活活動能力, 社会的支援ネットワーク (手段的支援および情緒的支援), 高齢者抑うつ度, Self-esteem, Morale (PGC Morale Scale), 自覚的ストレス度である。
    分析では孤独感を基準変数, その他の要因を説明変数として一括して重回帰分析を行なった。その結果, 以下のことが明らかになった。
    独居老人の孤独感を軽減する要因としてSelf-esteemおよび手段的支援が明らかになった。
  • 桑原 祥浩, 上田 成子, 吉田 政雄
    1998 年 47 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    アスパラガスに対してTPN (クロロタロニール: chlorothaloni1) 製剤を動力噴霧機による歩行散布とスピードスプレーヤにより散布した時の散布作業者の被曝状況を比較・検討した。その結果, 動力噴務機による散布者の身体各部位への農薬付着量は, 同一量の薬液をスピードスプレーヤにより散布した場合よりも推定全身被曝量は10倍以上多く, 散布作業時間も数倍必要とした。さらに, 散布後の圃場内のTPNの消長について測定し, 再入園時の農薬被曝の可能性について考察を行うために, スピードスプレーヤによる散布圃場内のTPN残留量を測定した。アスパラガス葉の農薬は, 散布1時間後から1日後にかけて1/3に急減したが, その後の減少は非常に緩やかであった。また, 圃場内の気中農薬はTPN濃度は, 散布4時間後には散布1時間後の1/3以下になり, 測定箇所によってはTPNは検出されなかった。このことから散布後1日以降の再入園にさいしては, 特に茎葉との接触を避けるように作業すべきものと考えられた。
  • 高松 道生
    1998 年 47 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    佐久地域において継続されている心筋梗塞発症登録状況の推移とCircadian Variationについて検討した。309例のCircadian Variationから午前と夕刻の二峰性パターン (午前く夕刻) を有するCircadian Rhythmが認められ, 比較的若年 (69歳以下) 発症の男性が最も鋭いピークを示したことから心筋梗塞発症と職業従事との関係が示唆された。男性例は農業従事の有無でもパターンが異なり, 農作業が心筋梗塞発症に与える影響についての検討が必要と考えられた。急性期死亡例の検討では発症時間帯による死亡率の差は認められないものの心原性ショックによる死亡が夜間帯発症例に多く認められ, これらの症例に対する循環管理が課題と考えられる。
  • 山下 一也
    1998 年 47 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    高校生を対象に学校へ行きたいかどうかの意欲と血清脂質の関連について検討した。
    対象者は高校普通科1年生83名 (男性31名, 女性52名) とした。うつの尺度としてZungのselfrating depression scaleのうち9項目 (短縮SDS scale) を用いた。学校に行きたくないかどうかを, 学校に行きたくないことが「ない」と答えた者は48名 (男性13名, 女性35名, 登校群),「ときどき」,「かなりある」と答えた者は合計で35名 (男性18名, 女性17名, 不登校予備群) であり, 不登校予備群には男子生徒が有意に多かった(p=0.0419)。肥満度, 血算, 総コレステロール, 中性脂肪, LDL-コレステロール, atherogenic index, HDL-コレステロール/LDL-コレステロールに関しては特に有意差は認められなかったが, HDL一コレステロールにおいては登校群のほうが, 不登校予備群よりも有意に高かった (P=0.0401)。短縮SDSscaleの比較では, 不登校予備群のほうが, 登校群よりも有意に高かった (p=0.0077)。また, 保健室の利用度に関しては不登校予備群のほうが, 登校群よりも有意に保健室を利用していた (p=0.0192)。
    学校嫌い, 登校拒否および不登校児においては血清脂質の側面からも検討していく必要がある。
  • 坂東 玲芳, 橋本 寛文, 水田 耕治
    1998 年 47 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本報告は, 全共連委託「農村地域における高齢者の尿失禁の実態調査とその対応方法の検討」(班長杉山一教) に参加した徳島県における調査研究の一部である。これは3部よりなり, 1) 農村高齢者の自立状況と排尿状態, 2) 農村高齢者の尿失禁- 患者, 老人施設入所者との比較-, 3) 本報告である。
    既報のごとく, 農村の在宅高齢男性の尿失禁者率は20.5%, その不満者率は14.4%, また, IPSS10以上の異常者率は20.1%を占めた。IPSSの高値者率は, 加齢とともに増加し, また, 地域差が認められ, 農村平地部より山村部に低い。この原因として, 山村住民の前立腺肥大発症率の低い可能性がある。
    前立腺検診において, 国際前立腺症状スコア (IPSS) は, 肥大のスクリーニングにはある程度有用である。有用な検査は, 超音波画像による重量計測や性状診断, 尿流量計測などであることは, 臨床上よく知られているが, フィールドにおけるスクリーニングへの導入には問題が多い。
    これに比し, PSA, PAP測定は, 前立腺検診上にきわめて有用であるばかりでく, 老人健診に直ちに導入可能であり, 可及的速やかな実現が望まれる。
  • 紫外線の増加が人の健康に及ぼす影響についての研究
    堀内 信之, 関 詩穂, 小林 栄子, 柳沢 正, 松島 松翠, 安藤 幸穂, 宇原 久, 斎田 俊明
    1998 年 47 巻 1 号 p. 42-50
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, フロンガスによるオゾン層の破壊によって, 有害紫外線が増加し, 皮膚癌および有棘細胞癌の前駆症が増加するものと危惧されている。そこで、長野県佐久地方で, 40歳以上の住民を対象に皮膚癌検診を実施した。
    第1次検診は, 平成5・6・7年度に実施し, 男2,658人, 女4,870人, 合計7,528人 (全人口の7.4%) が受診した。このうちの67人が病理組織学的検査を受けた。その結果, 悪性腫瘍では, 悪性黒色腫1例, 基底細胞腫3例, 有棘細胞癌の前駆症ではボーエン病1例, 日光角化症44例が確認された。
    第2次検診は, 平成8年度に第1次検診の有所見者229人を対象に実施し, 93人 (40.6%) が受診した。要生検5人, 要治療11人, 皮膚科専門医を受診すべき者10人, 今後とも経過観察すべき者24人を確認した。
    今後とも長期計画のもとに, 皮膚癌検診を行っていけば, 住民の関心を高め皮膚癌の早期発見・治療・予防に役立つものと考えられた。
  • 住民教育の効果
    小林 加代子, 竹ノ内 洋子, 田口 里美
    1998 年 47 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    わが国の大腸癌罹患率, 死亡率は著しい増加傾向を示している。これに対し大腸癌検診が全国的に普及してきた。当農村検診センターにおいても平成4年に老人保健事業に取り入れられたのを機に, 受診者は年々増加している。しかしその一方で, 精検受診率は60~70%と低い現状であった。そこで, 市町村保健婦の学習会や住民教育を行い, 精検受診率の向上に取り組んだ。市町村保健婦の学習会では, 大腸癌及び大腸癌検診について知識を高めると共に, 住民教育の必要性を認識できるよう働きかけた。そして市町村保健婦と協力し, 各地区で住民教育を実施した。教育内容は, 検診の意義と精密検査の必要性に重点をおき, スライドを使用し医師及び保健婦による講義方法で行った。スライドは飛騨地区腫瘍登録や当院で発見された大腸癌患者調査をもとに作成し, 身近なデータを示すことで自分の問題と捉えられるよう工夫した。又, 聞く側がイメージしやすいよう検査器具, 検査内容を写真や絵で示し, 何故, 検診や精密検査が必要なのかを強調した以上の取り組みの結果, 全体の精検受診率は教育前71%から教育後80%となり, 市町村別にみてもほとんどの地区で上昇した。
  • 高橋 俊明, 伏見 悦子, 関口 展代, 渡辺 一, 福島 隆三, 林 雅人
    1998 年 47 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    48歳男性が発作性心房細動, 左心機能低下のため精査入院した。心電図はPQ時間0.24秒, QRS時間0.12秒。左室造影では前壁, 心尖部, および側壁の一部で壁運動低下。冠動脈狭窄はなかった。退院後発作性心房細動に対しピルジカイニド150mg/日を投与したところ, 9日目に心電図上QRS時間0.30秒, QTc 0.46秒の著明な延長をきたした。血中ピルジカイニド濃度は3.30μg/mlと異常高値だった。この時点で筋萎縮, 筋力低下, 顔貌, 筋生検などから筋緊張性ジストロフィー (MyD) と診断した。電気生理学的検査では刺激伝導系全体に障害を認めた。ピルジカイニド再投与試験では中毒症状は再現されなかった。今回の中毒症状の発現には中等度腎機能障害と負荷依存性の心機能低下が関係していたと考えられた。
  • 倉持 元, 五十嵐 眞二, 長谷川 伸, 小林 勲
    1998 年 47 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    76歳女性。糖尿病性腎症による慢性腎不全にて連続携行式腹膜透析に導入されたが, 難治性腹膜炎のため血液透析に移行した。その後内シャント造設術を繰り返したが, いずれも短期間にて閉塞し更なるシャント造設可能な部位がなくなったため, 右内頸静脈にダクロンカフ付き特殊ポリウレタン製の長期留置用dual-lumenカテーテルを留置し, それによる血液透析に変更した。変更後十分かつ安定した血流量の確保とダイアライザーの膜面積の増加もでき尿素窒素, クレアチニンの除去率, KT/Vは増加した。現在まで合併症は認めていない。長期カテーテル留置の脳及び上肢の動脈系への影響を, 経頭蓋骨超音波ドップラーと指尖容積脈波にて検索したが留置による影響は認められず, また静脈系の怒張それによる腫脹も認めなかった。よって, シャントトラブルを繰り返し更なるブラッドアクセス作製が困難な症例には, 本法は有用なブラッドアクセス法の一つであると思われた。
  • 高田 典彦, 郷家 久道, 飯野 光喜
    1998 年 47 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    患者は22歳男性で, われわれの病院には, 右下顎の腫瘍の疑いで来院した。患者は明らかな下顎前突症顔貌を呈していた。顎骨の病変から得られた生検の結果, 組織学的には典型的なエナメル上皮腫の所見であった。開窓処置の間, 患者は術前矯正を行った。外科処置の手順をX線と術前模型から計画した。患側の右下顎骨は, 神経血管束を取り除くことなしに切除した。その後左側は下顎枝矢状分割術によって下顎を後退させるとともに右側は遊離腸骨によって即時に再建を行った。
    患者の顔貌は改善され, その後部分床義歯を製作することで, 咬合機能と咀嚼機能は正常に回復した。
  • 1998 年 47 巻 1 号 p. 72-77
    発行日: 1998/05/30
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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