症例は35歳, 女性。咀嚼障害を主訴に当科受診した。患老は17歳頃から脱毛が出現し, 20歳頃から歯が脱落した。25歳頃から脱毛は著明になり, 無, 月経になった。体格は肥満が見られ, 頭部は大きく, 顔面は浮腫性に腫大し上眼瞼は下垂していた。口腔内では, 上下歯槽部は膨隆を呈し, 膨隆部は骨様硬であった。残存歯15本と少数で, 動揺は著明であり歯冠部は歯槽骨中に埋没していた。X線的に前頭骨の吸収および硬化の混合像を認め, 上下の歯槽骨が著しく膨隆していた。さらに歯根は肥大し, 歯根膜腔の拡大, 歯槽硬線の消失を示した。CT上では, 頭蓋骨の肥厚, 骨吸収と硬化像, 頭蓋骨内板の吸収像を示した。その他骨シンチグラム, 血液生化学等検査施行するも, 明らかな異常を示さなかった。その後, 抜歯とともに, 上下顎骨の生検から, 抜去歯の歯根肥大は, 根尖セメント質の増生であり, 上顎骨からの組織で, 間質の線維性組織の発達と骨吸収と新生像が認められ, 下顎骨からの組織から, 成熟した骨の中にモザイクパターンが認められたため, 以上の結果からPaget骨病と診断した。しかし脱毛, 無月経等については, 原因不明であった。Paget骨病は顎骨が含まれることは稀であるといわれているが, 組織像から病期の進んだPaget骨病と思われた。さらに続発症として, 骨肉腫などが挙げられるため, 今後注意深い経過観察が必要と思われた。
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