ここ数年, 近畿以西のイチゴの市場では, 品種豊の香'が急速に売上を伸ばしたが, この品種はウドンコ病に罹病性が高く, その防除について生産者のあいだに混乱が生じている。今回筆者は, ウドンコ病対策殺菌剤7種 (トリアジメホン, キノメチオネート, フェナリモル, ミクロブタニル, ビテルタノール, トリフルミゾール, ピリフェノックス) に加えて, 従来から比較的高濃度の残留が報告されているジカルボキシイミド系殺菌剤3種 (イプロジオン, ピンクロゾリン, プロシミドン) の同時分析法を作成し, 市販イチゴの残留調査を行った。
作成した分析法による, 10種の殺菌剤およびその代謝物13化合物の回収率は76~92%であり, HPLC-DADおよびGC-ECDを用いることにより定量下限値を0.01μg/g以下とすることができた。本分析法により市販イチゴの残留分析を行ったところ, ビンクロゾリンを除く9殺菌剤が検出さ乳, HPLC-DADおよびGC-MSにより定性された。全ての検出事例について国内基準を上回るものはなかった。
ジカルボキシイミド系殺菌剤が品種を問わず60~70%の検体から検出された。一方, ウドンコ病対策殺菌剤は, 7種とも検出されない検体が半数近くあった中で, 品種'豊の香'5検体からはそれぞれ3, 4種を複合的に検出した。この結果は, 生産現場における上記のような状況を反映しているものと推察される。耐病性の品種への転換を検討する必要があると考える。
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