土木史学は,「土木学会内の研究委員会の設立」という形で1974年に正式発足して以来, 1981年に年次研究発表会の開催と論文集の創刊, 1990年には審査付き論文制度の導入と, 土木工学における学問分野の一つとして徐々に形を整えてきた. 特に, 1991年に始まった近代土木遺産の調査は, 土木史学を, 文献を中心とした「史学」から, フィールド・ワークとしての保存・活用, そして, まちづくりへの参加といった, より工学的な目的意識を包含した分野へと成長させた. 本稿では, こうした土木史学の現状と問題点について触れた後, 土木遺産に関する調査・研究の現状, 文化財法制との絡み, まちづくりとの関わり, さらには, もっと広い意味での土木計画学と土木史学の連携について私見を述べてみたい.
抄録全体を表示