土木学会論文集
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2003 巻, 740 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 安田 浩保, 白土 正美, 後藤 智明, 山田 正
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 1-17
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    高速性と精緻性を有する浸水域の予測モデルの開発を行った. まず, 高速演算に適した基礎式の選定を理論的に行った. そして, 精度の良い計算が可能なように河川水位の予測モデルでは適切な境界条件を設定し, 氾濫流伝播の予測モデルでは地形形状に合わせて柔軟に計算格子の構築が可能な地形適合格子による計算方法を開発した. この予測モデルを実流域に適用し, 種々の規模の既往洪水の再現計算を行ったところ浸水痕跡値と計算結果はいずれの規模とも良い精度で一致した. また, パーソナルコンピュータを用いた場合でも短時間で計算が可能であった. さらに, 本モデルの高速演算性と精緻性という特徴を活かし, この予測モデルとGISから成る水防活動の支援システムを構築するとともに, 水防活動の効果を定量的に評価することを試みた.
  • 重枝 未玲, 秋山 壽一郎
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 19-30
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    樹林帯等の計算メッシュより小さな物体が流れに及ぼす影響を考慮できる SA-FUF-2DF モデル (Spatial Averaged Finite volume method on Unstructured grid using FDS technique for 2D Flood flows) を開発した. 樹林帯と構造物が設置された状況での氾濫流の水深, 流速ベクトルおよび構造物に作用する流体力に関する実験データを収集するとともに, これらに基づき SA-FUF-2DF モデルの検証を行った. さらに, 実スケールの市街地を対象とした氾濫解析を実施し, 同モデルによる樹林帯の治水機能の検討を試みた. その結果, SA-FUF-2DF モデルにより, 樹林帯の氾濫流量抑制効果や構造物に作用する流体力低減効果を評価できることが明らかとなった.
  • 福岡 捷二, 渡邊 明英, 關 浩太郎, 栗栖 大輔, 時岡 利和
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 31-44
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    我が国の洪水流は, 洪水位上昇時の時間変化率が大きい特徴を持っている. さらに, 大河川中下流域の河道横断面形状は低水路と高水敷からなる複断面形が採用されている. このことは複断面河道における洪水流の水理現象は, 洪水ごと, 河川ごとさらには, 河川の区間ごとに異なることを示しており, 複断面河道の洪水流を深く理解することが必要である. 本文では, 複断面河道における洪水流の非定常水理現象に焦点を当て, 洪水流の水理現象のうち, 特に河道内における貯留に及ぼす河道特性と洪水流特性の影響について詳細に検討した. これより, 洪水流の非定常性, 河道の平面形, 横断形などの断面形状および下流端条件が, 洪水流の流下に与える影響を明らかにし, 洪水流の河道内「貯留」の評価を行い, 今後の治水計画の新しい方向性を示した.
  • 道奥 康治, 神田 徹, 石川 浩
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 45-62
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    富栄養化した貯水池において, 底層に高い電気伝導度 (塩分) と逆転水温勾配をともなう熱塩成層が観測された. 暖海水や高濃度温泉水の流入によって形成される「異常水温成層」とは異なり, 深水層の貧酸素化にともなう底泥からの嫌気的溶出と熱塩傾斜プルームが成因であることが明らかになった. 深水層における熱塩成層の季節変化, 貧酸素化にともなう深水層への熱・水質輸送過程が「熱塩循環モデル」によって検証された. 熱塩輸送が深水層の有機汚濁を促進するとともに深水層の重力安定度を増加させて周年にわたる部分循環状態を維持し, 底層に汚濁水を滞留させることが示された. ここで検出された熱塩循環は, これまで一般に認知されてきた汚濁負荷とは別に考慮しなければならない新たな水質汚濁機構である.
  • 梅田 信, 高 峰一, 石川 忠晴, 大滝 諭, 市山 誠
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 63-73
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    霞ヶ浦の凌藻泥を敷き詰めた比較的大型の実験水路を用いて, 底泥の洗掘実験を行った. 実験対象とした底泥は, 含水比が数百から千数百パーセントにも達するため, 実験方法には工夫及び注意が必要であった. まず底泥の実験条件の形成は, 底泥と水を十分に撹拌した懸濁液を所定の日数, 放置して行った. また同時に作成したサンプルを用いて含水比の鉛直分布を詳細に測定した. 泥面位置 (洗掘量) 計測の方法に関しては, 泥面低下と圧密量の両方を計測するための装置を制作した.
    流量と放置日数 (すなわち含水比) を変化させたケースを設定し, 実験結果を整理したところ, 洗掘速度は流速 (せん断応力) と含水比 (見かけ密度) の関係によって表現できることが示された.
  • 山口 里実, 泉 典洋
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 75-94
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    洪水時, 流量の比較的小さい領域で発生した河床波は, 流量増加に伴って消滅し, 流量減少時に再び発生することが知られている. また河床波から平坦床へ遷移する際の流量が, 平坦床から河床波に遷移する際の流量と異なるというヒステリシス現象が見られることが知られている. 本研究は, 弱非線形解析の手法を用いて, ヒステリシス現象の原因の一つが, 平坦床から河床波に遷移する際に見られる亜臨界分岐であることを理論的に示したものである.
  • 泉 典洋, 田中 仁, 伊達 政直
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 95-107
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    河川流が卓越する河口部を対象にして, 河口噴流の流速分布とそれによって形成される河口テラスの初期堆積形状を予測する数学モデルを提案した. 横断方向の流速分布および浮遊砂濃度の相似性を仮定し, 流れの運動方程式および浮遊砂の移流分散方程式を横断方向に積分することによって得られる簡便な常微分方程式を解くことによって流速分布および浮遊砂濃度分布を求めている. さらに流速および浮遊砂濃度分布から掃流砂および浮遊砂によって形成される河口テラスの初期堆積形状を求めた. 解析の結果, 掃流砂が支配的であるとき, 噴流の流軸上に堆積そしてその両側に侵食が生じ, 浮遊砂が支配的で移流拡散の影響が比較的小さいとき, 流軸上に侵食そしてその両側に堆積が生じることが明らかとなった.
  • 泉 典洋, 田中 仁, 坪井 宏介, 伊達 政直
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 109-120
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    河川流が卓越する河口部を対象に模型実験を行い, 河口噴流における流速および浮遊砂濃度の分布構造, 掃流砂および浮遊砂による河口テラスの初期形成機構を明らかにした. また著者らの一部が提案した理論の妥当性を検証した結果, 理論と実験結果には良好な一致が認められ, 浮遊砂が支配的な場合, 噴流軸の両側に堆積が生じることが実験によっても示された. さらに河口テラスからデルタへの発達過程に関する実験を行い, 浮遊砂が支配的な場合, 掃流砂が支配的な場合とは明らかに異なる, 鳥趾状デルタに近い堆積形状へと発達することが示された.
  • 牛島 省, 竹村 雅樹, 山田 修三, 禰津 家久
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 121-130
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    後流渦などの流れ場への影響をもたらす固体粒子を含む粒子-流体混合系に対する数値解析法 (MICS) を提案し, その適用性について検討を加えた. 粒子近傍の流れや粒子に作用する流体力を正確に評価するため, コロケート格子配置に基づく非圧縮性流体解析法を混合系全体に適用する. 密度分布や流体の連続性に対して考察を加えた高次精度の解法により, 粒子に対する流体力を求める. また, 他の粒子との接触力を算定するために, 個別要素法モデルを利用する. 既往の実験結果に基づく基礎的な検証により, 抗力係数や非定常後流渦の特性などが適切に再現されることが示された. さらに, 壁面近傍を落下する粒子の運動や接触移動する粒径が異なる粒子群などへ計算手法を適用し, 実験結果との比較を通じてその有効性を確認した.
  • 道奥 康治, 前野 詩朗, 羽根田 正則, 古澤 孝明
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 131-142
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    捨石堰を越流・浸透する流れの流量を算定するために水理実験と理論解析を行った. 流れを粗面開水路流と乱流多孔体流れからなる二層流と仮定し, 上下層間の運動量交換を考慮して二層界面での内部抵抗を評価した. 捨石堰内の運動量保存は被圧多孔体乱流として定式化された. 様々な捨石粒径, 間隙率, 堰の高さ・長さ, 水深の条件下で水理実験を実施し, 水面形, 捨石堰内外の流速, 捨石の抵抗力など水理諸量の特性について実験と理論との良好な一致を得た. さらに関連パラメータの関数として流量の理論解が得られ, 実験結果との比較・検証がなされた. 本研究成果は, 堰による流量・水深制御, さらに堰の破壊条件評価など実用的な構造物設計に応用することができる.
  • 森田 知志, 中村 孝幸
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 143-155
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    電気工学におけるローパスフィルタ回路の設計理論を水路を伝播する水波の運動に応用し, 入射波に対して効果的なフィルタ特性を有する波浪共振装置の最適化手法が示された. この方法では水路の開口幅, 水深および制御すべき波の周期帯を設定することによって, 共振装置各部の構造寸法が試行錯誤することなく簡単な机上計算により求められることに特長がある. 共振装置の具体的な応用例として海岸の防護を目的に沖合に設置する離岸堤と港内波浪の静穏化のための港口部防波堤が取り上げられ, 波浪数値解析と水理実験により共振装置型堤体構造の波浪制御効果と設計方法の妥当性が確認された.
  • 小林 博, 本田 隆英, 佐藤 愼司, 渡辺 晃, 磯部 雅彦, 石井 敏雅
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 157-169
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では砕波帯における波の非線形変形と混合粒径底質の分級を考慮した3次元海浜変形モデルを構築することを目的とした. まずはじめに混合粒径底質を用いた室内平面海浜変形実験を行い, 実験結果より離岸堤および突堤周辺の平面的な地形変化と底質粒径分布の変化を把握した. 次に混合粒径砂の粒径別漂砂量と表層内混合率変化を表現できる断面地形変化の計算モデルを構築するとともにこれを平面場に拡張し, 実験結果と比較することにより同モデルの妥当性を検証した. 特に混合砂漂砂量モデルについては, 大型断面実験に対する再現計算の結果から, 波の前傾化を考慮した本モデルの適用性が高いことを確認した.
  • 二瓶 泰雄, 佐藤 慶太, 灘岡 和夫, 熊野 良子, 西村 司
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 171-183
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    より広域スケールの外洋影響を適切に反映した沿岸海水流動計算を行うために, 大領域計算結果を明示的に反映しつつ, 従来のネスティング手法で問題となる開境界条件処理が容易となる新しい多重ネスティング計算法を開発することを試みた. 本ネスティング計算法の基本的な有効性を調べるために, 水位擾乱の伝播現象に関する流動計算に適用した結果, 従来のネスティング手法よりも計算精度が大幅に良いことが確認された. さらに, 実海域流動計算の適用例として, 本計算法を用いて典型的な開放性沿岸海域である沖縄県石垣島白保リーフ海域を対象とした流動解析を行ったところ, 空間解像度の向上とともに, 水平流速に関する計算値は観測値とより近い結果となっており, 本計算法の基本的な有効性が検証された.
  • 宮本 博司, 鈴木 徳行
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 185-195
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    日本の河川は土砂の生産量が多く, 流出土砂量が極めて多い. そのため一部のダムでは堆砂により貯水量が減少し, 下流では河床低下や海岸侵食などが生じている. 従来の排砂対策は, ダム毎の排砂対策であった. そこで本研究においては, 水系一貫した土砂管理, 早期の土砂管理の必腰性既往の排砂対策などについて明らかにするものである. 次に, 貯水池の土砂管理に関する総合的な対策を提案すると共に, 最近の土砂管理について考察するものである.
  • 松冨 英夫
    2003 年 2003 巻 740 号 p. 197-208
    発行日: 2003/08/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    Physical and numerical experiments are carried out to clarify several fundamental characteristics of the two-dimensional behavior of a strong bore over a sloping beach, which has been observed to be caused by a tsunami. An approximate method (referred to as “a ray theory for bores” in this paper) is presented to analyze the two-dimensional behavior of bores. The analyses with the use of the method proposed in this study and Snell's law show that the behavior of strong bores over sloping beaches is quite different from that of waves.
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