デザイン学研究
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46 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 黄 淑芬, 陳 其南, 翁 徐得, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 1-8
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は, 文献調査ならびに現地での職人へのヒヤリングを通して, 台湾・大渓木工芸産業における使用木材の種類, 調達経路, 利用方法などを調査し, 清時代後期(19世紀後半)から現代までの大渓木工芸品産業の様相を明らかにしたものである。結論は, 次のように要約される。1)木材加工の面では, 職人が原木の収集から製品加工まで, あらゆる工程をすべて自らの力で行った「専業制」から, 各工程をそれぞれ独立させた「分業制」へと変遷した。2)木材利用では, 流木の廃物利用と適量を伐採するという自然との共生に立脚した利用法に始まった木材利用法であったものの, 大規模な製材所や問屋の登場により, 自然から乖離した産業に移行した。3)供給では, 初期は「地元調達」, 後に「地元・台湾島内調達=外部調達」へと変遷した。4)産業形態では, 「原材料立地型」から「技術立地型」に構造が変容した。
  • 石村 真一, 田村 良一, 本 明子
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 9-18
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文では, 明治後期に我が国で成立したトーネット法による曲木加工の導入経緯とその定着について考察した。最初に, 明治中期から昭和初期までの史料から, 広葉樹の利用と曲木産業の育成に関する事項を摘出した。次にその内容を分類し, 明治中期から大正初期の編年化を試みた。その結果, 次のような内容を明らかにした。農商務省は, 明治20年代後半よりドイツ, オーストリアを手本として木材利用の基礎研究に着手し, 20年以上の歳月を費やして, 広葉樹の利用促進と曲木椅子生産技術の導入を進めた。その最終目標は輸出産業の育成であった。民間企業は, 曲木椅子の輸入が増大する明治30年代末から相次いで設立され, 東京と大阪でほぼ同時期に生産を開始した。
  • 本 明子, 石村 真一
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 19-26
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は, 蒸し曲げ法による曲げ加工に利用し得る基礎データを作成することを目的とし, 蒸し曲げ法の原理と曲木材の特性について検証したものである。我が国における曲げ加工の第1報であると考えられる, 1909(明治42)年に記された農商務省山林局の林業試験報告を再考して実験を行い, 曲げ加工が可能な樹種と基礎的な設備で曲げ加工を行うために必要な具体的条件を考察した。その結果, 曲げ加工に適する樹種は, 現在多く用いられているブナ材だけでなく, その他の樹種にも十分な可能性があることが示された。また, 曲げ加工上, 木取りと, 対象とする材に適合した含水量と蒸し時間の管理を徹底し, 材の内部に水分を浸透させた上で内部温度を上昇させることが重要であることが示唆された。
  • 林 品章
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 27-36
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文は1970年代以降の台湾視覚伝達デザイン運動について論述したものである。1970年以降, 「運動」と呼ばれる出来事は, 年代順に「アミーバ(変形虫)デザイン協会」, 「広告時代雑誌」, 「中国時報人間コラム」, 「連広会社」, 「時報広告アカデミ賞」, 「外貿協会デザイン推進センター」など, 六つがあげられる。本論文においては, それらの出来事やその動きが, 当時の台湾の視覚伝達デザインの発展に大きな原動力になっていることを明らかにする。また, それら出来事の考察から, 1970年代から現在に至るまで, 台湾の視覚伝達デザインにおいては, 表現技術や表現概念などが次第に複雑になり, 各領域に重視される度合いも大きくなってきたことが分った。それ故, 本論文は, その六つのデザイン運動の考察に加えて「その他」の項に, 視覚伝達テザインの発展に貢献した各々の組織について重点的に述べる。
  • 菅 靖子
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 37-46
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論は, 「ポスター芸術」の発展経緯を基軸として, イギリスの近代グラフィックデザインの発展にみるパトロネージの役割を明確にする。これは同国グラフィックデザインの主要な特徴である。「ポスター芸術」は19世紀末のピアーズ社による公報ポスター, 「しゃぼん玉」以来, 産業界のあらゆる分野で活用された。広告業界の発展とあいまって, 応用芸術論の成熟により, 20世紀初頭までにポスターは芸術の一形態として確実に位置づけられた。更にこれを推進したのが20世紀前半に活躍した3人のパトロン, ロンドン交通公社(後のロンドン運輸局)のフランク・ピック(1878-1941), シェル石油会社のジャック・ベディントン(1893-1959), そして国家公務員スティーヴン・タレンツ(1884-1958)である。彼等がポスター芸術を介して行った一連の広報活動が, デザイナー育成にも繋がった。ただしこうした寡頭的な状況は芸術表現の限界も生んだ。ここでは「ポスター芸術」とパトロネージとの関連性を探求し, 現代的な意味でのグラフィックデザインが生成された過程をパトロンとの関係から論じていく。
  • 小原 康裕
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 47-56
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    A.M.カッサンドルはポスター・デザイナーとして, 主に1920年代後半から1930年代後半に, フランスを中心に活躍した。彼の作品の画面には, この時代に特徴的なスタイルである幾何学的な構成が顕著にうかがえる。本稿の目的は, 彼のポスター制作における技法と造形理論を考察し, 数学的な視点から分析して、体系づけることである。また本稿は、彼の画面構成が, 単に装飾のための技法によるものではなく, 理論を伴った機能的なデザインによるものであることを証明することを試みた。特に, 技法の再現と分析には, コンピュータを利用した。結論として本稿は, 彼の技法が, 「機能主義に基づく幾何学の利用」を意図していることを指摘した。また, この技法の成立と展開が, ポスターの印刷される紙面と, 印刷技術へのアプローチから導き出されたものであったことを明らかにした。
  • 高橋 靖, 長谷川 桂介, 杉山 和雄, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    2000 年 46 巻 6 号 p. 57-66
    発行日: 2000/03/31
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は映画における物語の構造を簡潔に表現し, タイトルや内容の検索, ブラウジング, 編集, 要約等に活用するために, 映画における物語の意味的単位であるシーンを複雑化・解決化の尺度で評価するセマンティックスコア法を提案した。5ジャンル15タイトルのセマンティックグラフの解析から重要シーン抽出の手がかりが得られ, またジャンル別にグラフを特徴づける4つの特徴関数, すなわち最高シーン率, 最終複雑度率, 平均シーン秒数, フラクタル次元が導かれた。これよりジャンルのグラフの型が次のように定められた。アクションタイプ「右上がり型」ドラマタイプ「山型」コメディタイプ「台地型」ラブストーリータイプ「右寄り山型」ファンタジータイプ「連峰型」さらに, 4つの特徴関数を用いたジャンルの判別分析によって15タイトルの映画が効果的に判別され, 映画の構造記述におけるセマンティックスコア法の有効性が示された。
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