脳卒中
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7 巻, 1 号
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  • 大岩 海陽
    1985 年 7 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    半球性脳血管障害における脳循環autoregulationの経時的変化を, 自律神経機能の立場から検討した.対象および方法 : 対象は半球性脳血管障害42例と健常コントロール60例である.脳循環autoregulationの指標としてdysautoregulationindex (D.I.) =|ΔCBF/ΔMABP| (%/mmHg) を用いた.脳血流変化 (ΔCBF) は, 脳動静脈血酸素較差法により測定し, 自律神経機能検査はhemodynamic functional testsを用いた.結果 : 1) 脳循環autoregulationの障害は, 発症直後と発症後12日目にピークを有する二相性の変化を示した.2) 発症後10日目以内の急性期において, 脳循環autoregulationの障害は発症後4日目から5日目に一時正常化した.以上の成績は, Aschner試験の成績とより密な相関を示したが, 寒冷昇圧試験の成績とは密接な相関を認めなかった.結語 : 脳循環autoregulationの経時的変化に副交感神経機能の密な関与が示唆された.
  • 熊谷 頼佳
    1985 年 7 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    抗凝固剤 (ワーファリン) 療法40例と, 抗血小板療法 (アスピリン, 塩酸チクロピジン) を血小板凝集能測定できずに39例, その監視下で35例施行しその安全で有効な投与方法について検討した.抗凝固剤はトロンボテスト10~20%の範囲を目標にした場合, ワーファリンを初日15mg, 2日目12mg, 3日目休薬, 4日目より3mgから維持量を決定するのが最も早く安全に治療域に達する方法で, 平均維持量は4.7mg/日であった.その安全性を確認するため常にトロンボテストによる監視が必要である.抗血小板剤を投与する場合も常に血小板凝集能測定による監視が必要で, その監視下では過剰効果による出血傾向はみられなかった.虚血性脳血管障害群は正常群に比して血小板凝集能充進例が圧倒的に多く, 血小板凝集能抑制の程度は正常人と同程度 (ADP最終濃度3~5μMで2次凝集) か, 軽度抑制状態 (同5~10μMで2次凝集) を目標にした.症例の68.6%で塩酸チクロピジン200mg/日によりこの目標が達成された.
  • 石川 正恒, 半田 肇, 平井 収
    1985 年 7 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    クモ膜下出血後水頭症28例において, 腰部髄液圧の持続測定を行い, 髄液圧と圧波, 臨床症状との相関について検索した.
    髄液圧は意識障害の高度な群や正常圧水頭症群では無症状群より高い基礎圧を示す傾向にあったが, 有意差はなかった.基礎圧の高さと出血後の期間でも有意の差を認めなかった。圧波は基礎圧が高いほど頻発し, B波が主体をなしていた.しかし, 無症状群の中に圧波の出現をみる例や, 正常圧水頭症で短絡術有効にもかかわらず, 基礎圧が低く, 圧波の出現しない例もみられた.以上により, 正常圧水頭症の症状発現と頭蓋内圧の関係は必ずしも一定ではなく, 症状発現には脳血流, 脳代謝の因子も関与していると考えられた.
  • 松島 善治, 高里 良男, 山口 武兼, 黒岩 俊彦, 稲葉 穰
    1985 年 7 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    脳の側副血行路は脳を層状に囲むAからGまでの7つの系で形成され, 内頚動脈系のA, B, C系と外頚動脈系のD, E系とは脳の乏血時に異った行動をとる.つまりA, B, C系は直ちに動員されるが, D, E系はかなり時間を経てから動員される.これはCおよびD系の間にはくも膜下液層が, またDおよびE系の間には頭蓋という固い壁があって, 連続的に自然吻合が形成されるのを阻害しているためと考えられる.したがって, 慢性乏血を外科的に治療するのには, 部分的には既に側副血行路として働いている可能性のあるDおよびE系の傷害を最少限にし, かつ上の2つの障害物をなんらかの形で克服すればよい.この立場から私どもは小児モヤモヤ病にたいしてEDASなる手術を開発・施行し, 極めて良好な成績を得てきている.EDASは以上から他の慢性小児脳乏血にも有効であると考え, これを急性小児片マヒ後TIAのある小児で臨床的に証明した.
  • 経時的変動とその意義
    峰松 一夫, 熊谷 芳夫, 長木 淳一郎, 田代 幹雄, 山口 武典
    1985 年 7 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル フリー
    一定の臨床的診断基準により診断された脳塞栓 (塞栓群) 68例および血栓性脳動脈閉塞症 (血栓群) 63例を対象として133Xe吸入法による局所脳血流量測定を行った.塞栓群では急性期 (発症2週間以内) における病巣側の平均半球脳血流量 (mCBF) は非病巣側のそれと差がなく, 局所的にも非病巣側より高いrCBF値を示すチャンネルが多かった.亜急性期 (3~4週), 慢性期 (5週以降) と推移するにつれ, 病巣側のmCBFは非病巣側に比べ有意に低い値となった (それぞれp<0.02, p<0.001).血栓群では急性期より慢性期に至る全ての時期で, 病巣側のmCBFは非病巣側より有意に低値であり (いずれの時期もp<0.001), 時期による変動はみられなかった.塞栓群の急性期に観察された病巣側半球の比較的高灌流状態は閉塞血管の再開通とそれに続く局所性の血流増大を反映しているものと推定された.
  • 第8報 破裂脳動脈瘤手術時期に関する推計学的検討
    佐野 公俊, 加藤 庸子, 藤沢 和久, 片田 和広, 神野 哲夫
    1985 年 7 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    急性期破裂脳動脈瘤の治療方針は, 手術時期, 重症例の手術適応, 脳血管李縮の対策など幾多の問題が残され, 意見の統一をみない.
    本報告では, 本院にCTが導入され画像の安定した1976年9月から1982年8月までに当院に入院した315例の脳動脈瘤患者の死亡率, symptomatic vasospasmの発生率, 転帰につき, 24時間以内手術例と, それ以外の症例での推計学的検討を行った.
    死亡率は24時間以内手術例で82例中28例 (34%) と高いがそのうち26例はgrIV, Vの死亡例である.2週間以後の待期手術例では死亡率は142例中3例 (2%) と低く手術の安定性を示している.そこで24時間以内手術例82例と, それ以外の症例232例につき各重症度別に死亡率の有意差検定を行うと, 重症度がgrIVに近づく程, 24時間以内手術例が有意に優れていた.
    symptomatic vasospasmの発生率は, 24時間以内手術例及び2週間の待期中には8%~12%であったが, 48時間~2週間以内の手術例では40%前後と多かった.更に24時間以内手術例とそれ以外の例で推計学的有意差検定を行うと, 重症度がgrIIIに近づく程, 24時間以内手術例が有意に優れていた.
    転帰は神経学的重症度がgrIVに近づく程, 有意に24時間以内手術例が, それ以外の症例に比して優れていた.
    これらにより, grI, IIで脳底槽血腫の少ない症例に対しては, 再破裂防止の為の早期手術の適応であり, grIIで脳底槽血腫の多い例や, grIII, grIVの例では, クモ膜下出血の病態改善のための早期手術の適応であり, 重症例程, 24時間以内早期手術の絶対適応であるといえる.
  • 永田 博司, 中村 重信, 亀山 正邦, 天野 殖, 狭間 章忠
    1985 年 7 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    Wistar系ラットを用いて両側椎骨動脈焼灼後, 両側頚動脈を60分間結紮して, 実験的脳虚血ラットを作製した.虚血脳の5'-nucleotidaseの変化を組織化学的方法およびhomogenateにおける活性測定により検討した.その結果, sham operationでは認められなかった血管周囲の5'-nucleotidaseが, 脳虚血により麻痺をきたしたラットでは認められた.脳組織のhomogenate中の5'-nucleotidase活性はsham operation群 (22.0±4.1nmoles/mg protein/min);麻痺の認められない群 (23.3±3.8nmoles/mg protein/min) に比して, 麻痺の認められた脳虚血群 (29.8±5.2nmoles/mg protein/min) で有意の (p<0.05) 高値を示した.以上の結果より, 虚血時には脳血管周囲の5'-nucleotidase活性が上昇することにより, adenosine合成が増加し, 恐らく, 虚血に対する防禦的な血管拡張作用が起こることが示唆された.
  • 臨床症状, CT所見と予後
    古賀 信憲, 保坂 泰昭, 杉村 純, 榊原 常緑, 高木 偉
    1985 年 7 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    約3年半の間に当科へ入院した27例の原発性橋出血を対象に, 臨床症状およびCT所見上の大きさと拡がりと, 生命および機能予後との相関関係について比較検討した.症例は臨床経過により, 1) 長期生存群として, A.予後良好群 (ADLI, II) 9例, B.重度障害群 (ADLIII, IV) 3例, C.合併症死亡群3例, および, 2) 早期死亡群12例, に分類できた.急性期臨床症状では, 高度意識障害, 眼球正中固定, 対光反射消失, 四肢麻痺あるいは除脳硬直肢位が, 予後不良の徴候であった.CT所見についてみると, 血腫の大きさ, とくに橋脳より上方への拡がりと, 第四脳室穿破の有無が予後を左右していた.すなわち, 橋断面での血腫横径が25mm以上, スライス枚数4枚以上は予後不良で, 第四脳室穿破例も予後不良が多かった.全例に保存療法のみを行なっている.呼吸管理と合併症予防が治療の重点となるが, 高度機能障害の残存など問題は多い.
  • 大田 純夫, 稲葉 光, 宮下 孟士, 山口 武典
    1985 年 7 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    超音波ドプラーイメージ法と眼球容積脈波 (OPG) を用いて頚動脈狭窄性病変の診断を行い, 血管撮影所見との比較を行った.対象は96症例163血管である.ドプラーイメージ法とOPGを単独に使用した場合の正診率, 偽陽性率, 偽陰性率はそれぞれドプラーイメージ法で82.2%, 11.3%, 33.3%, OPGで81.6%, 10.4%, 37.5%であり, 両者の優劣はつけ難かった.両者を併用した場合, 正診率81.6%, 偽陽性率20.0%, 偽陰性率14.6%となり, 単独使用の場合に比べ偽陰性率の低下が認められた.また50%以上狭窄, 完全閉塞の23本中, ドプラーイメージ法では20本, OPGでは22本が正しく診断され, 両者を併用すれば全例診断可能であった.これらの2つの検査法はともに合併症の危険性がなく, くり返し行うことが可能である.両者の併用により偽陰性率を低下させることができるため, スクリーニング検査, 経過観察に有用と思われた.
  • 佐渡島 省三, 塩川 宰, 井林 雪郎, 藤島 正敏, 尾前 照雄
    1985 年 7 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    成長期のSHRを用い, 血圧の上昇と自動調節能および動脈壁の肥厚の程度との相関について観察し, さらに昇圧時に脳血流におよぼす交感神経の意義について検討した.基礎平均血圧は4, 6, 9週齢でおのおの88,105,127mmHgであった.脳血流はそれぞれの群で51, 51, 48ml/100g/minと差はみられないが, 自動調節能の上限域は, 109,126,168mmHgと基礎血圧の上昇とよく相関した.一方急性に上頚部交感神経節を切除すると, 上限は4, 9週でそれぞれ100,152mmHgと有意に低下したが, 切除後2, 5週間群では健側との差はみられなかった.又動脈壁/内腔比は4週齢で0.133, 9週齢で0.130と差はなく, 又交感神経節切除による影響もみられなかった.これらのことより, 若年SHRでは自動調節能の上方偏位は基礎血圧とよく相関するが, 動脈壁の肥厚との関係は明らかでないこと, 交感神経の急性切除は昇圧時の自動調節能に障害をおよぼすことなどが示された.
  • 京井 喜久男, 横山 和弘, 内海 庄三郎, 外賀 昭, 飯田 紀之
    1985 年 7 巻 1 号 p. 67-78
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    SAHおよびSAH以外の原因で死亡した27例の剖検ヒト脳血管を用い, 血管平滑筋筋放電の出現状況と等尺性張力ならびに血管壁の組織学的変化との関連を検討した.非SAH群では7例に群発性放電, 4例に散発性放電を認め, 血管収縮も良好で, 筋壊死も認めなかった.SAH群では群発性放電を示すものはなく, 筋壊死も著明で, local narrowingの症例など5例で散発性放電を認めた.筋放電, 血管収縮は攣縮発生後1週間以内の死亡例かlocal narrowingの症例でみられ, 収縮一拡張という血管の生理的機能よりみて攣縮血管の機能的可逆性は攣縮発生後約1週間で消失する.脳動脈瘤症例26例を対象としたCa++拮抗薬 (diltiazem) の血管攣縮に対する臨床効果はSAH後血管攣縮8例中4例, 術後血管攣縮9例中7例にみられたが, これらは攣縮発生後5~6日以内に薬剤が投与されたもので, 基礎的検討の結果と一致している.Ca++拮抗薬の投与は攣縮発生早期から開始するか, 予防的に投与することが肝要である.
  • 東海林 幹夫, 玉田 潤平, 岡本 幸市, 高玉 真光, 平井 俊策
    1985 年 7 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    傍正中視床, 中脳梗塞の1例を報告した.症例は, 46歳男性で, 1) 動揺する過睡眠, 行動異常.2) 上下方向注視麻痺.3) 動揺する瞳孔散大・不同, 対光反射低下.4) 四肢麻痺 (左>右).両側病的反射.5) 知覚障害.6) 左顔面神経麻痺.7) 尿便失禁.8) 自律神経症状.9) 痴呆.10) 不随意運動を呈した.頭部CT像では両側視床・右中脳に蝶形の限局性低吸収域を認めた.椎骨動脈血管写では, 右脳底交通動脈の閉塞を認め, 傍正中視床・中脳梗塞と診断した.文献的考察を行ない, 傍正中視床・中脳梗塞の特殊性及び, akinetic mutismとの違いを指摘した.
  • 木谷 光博, 小林 祥泰, 山口 修平, 山下 一也, 恒松 徳五郎
    1985 年 7 巻 1 号 p. 85-89
    発行日: 1985/02/25
    公開日: 2009/09/03
    ジャーナル フリー
    57歳という比較的高齢である男性における, 動静脈奇形 (AVM) による原発性橋出血の1例を報告した.原発性橋出血の多くは, 成人にみられ, その原因はほとんど高血圧症であるといわれている.しかし, 小児に見られる橋出血においては, その原因は血管奇形によるものが多いといわれている.本例は, 既往に高血圧等の脳血管障害をきたす危険因子がなく, 発症直後のCTscanにて橋上部右外側被蓋に血腫を認め, 脳室穿破を合併していた.発症3ヵ月後のenhanced CTでは, 橋上部被蓋に低吸収域及び, その中に小さなenhanced spotを認めた.左椎骨動脈写により, 同部位に上小脳動脈をfeederとするAVMが確認され, このAVMが出血の原因と考えられた.本例のごとく50歳以上の原発性橋出血において, CT, 脳血管写上AVMが確認された例は, 極めて稀であると思われる.
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