デザイン学研究
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47 巻, 4 号
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  • 洪 尚憙, 杉山 和雄, 渡辺 誠, ジョン シャクルトン
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論は, 道路景観の形成に多大な影響を及ぼすと判断される道路系公共物を対象に, 韓国における現行法制度の現状の把握および課題抽出を目的とし, 道路系公共物を取り巻く韓国の関連現行法制度の体系化を図り, その法的特徴による分類を試みたものである.さらに, 日韓の比較により, 互いに違うイメージの道路景観を形成した原因の究明を行った.その結果, 韓国が法律上道路外公共物を許容せず, 現行法制度上の道路系公共物は4つに分類できたこと以外は, 日韓における現行法制度上の相違点はあまり認められなかった.そのため, 設置・形態に関する規制の問題や設置・管理運営における体制の問題, 景観形成のための総合的な考慮がされていない面など, 日本と同じような課題を抱えており, 景観の観点に立った法律的補完や設置・管理担当者同士のより緊密な連携等の行政側の改善と, 施工技術の向上, 一般市民のさらなる意識の向上が形成されれば, 総合的に調和のとれた道路景観形成が可能であることもわかった.
  • 洪 尚憙, 杉山 和雄, 渡辺 誠, ジョン シャクルトン
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 11-20
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論は, 街路景観に多大な影響を及ぼす道路系公共物を対象に, デザイン特性の抽出を行い, 現在, 公共物としてあるべき姿から外れているものが如何に多いか, それを修正する方法も提案することで, 道路系公共物におけるデザイン指針の抽出を図ったものである.そのため, 事業者と生活者を被験者とし, 既存の130の道路系公共物に対し, 16アイテム, 43カテゴリーの属性による評価を行い, 主成分分析法による特性抽出を実施した.その結果, 既存の道路系公共物は(1)自分関連度(2)ゆとり(3)目立ち度の3つのデザイン特性を有し, それをもとに意味空間を解釈した結果, 半数近くのものが本来あるべき位置からずれており, それらを本来の位置に修正することこそが今後の公共物のあり方を定めるというデザイン・コンセプト作成のための一指標を得ることができた.
  • 趙 英玉, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 21-30
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    清代以前の外出服には着装者の身分等級と性別によって異なる「多次元型」の色彩制度が適用されてきたものの、満州族が支配者となった清代には、官吏の礼服を身分に関係なく同一の色彩で統一する「単次元型」の色彩制度が実施された。本研究では、そのような変革期・清代の中期に著わされた『紅楼夢』にみられる被服の色彩と配色の特徴について分析した。その結果、次のことが判明した。1)外出服には、清王朝における官吏の被服色彩と同一のものが用いられ、清代の「単次元型」色彩制度の影響がみられる。2)在宅服と下着の配色には, 上衣・下裳・外套においての色彩使用の法則性がみられ、清代以前の伝統的な「多次元型」色彩使用の原則が残存していることがうかがえる。3)下着には、緑の上衣と赤の下裳の組み合わせ事例がみられ、「多次元型」配色観念が薄れていることがうかがえる。4)在宅服の上下に同じ色相の被服を着用するなど、異文化としての満州族文化との出会いのなかで、漢民族の被服色彩に新たな胎動が生起している。
  • 趙 英玉, 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 31-40
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    清代、漢民族の被服は満州族に影響され、大きく変化した。本研究は、小説『紅楼夢』にみられる被服文様を対象に、清代の文様の特徴を、文様がもつ身分象徴や吉祥などの意味性の側面と装飾形式の側面から分析・考察した。その結果、以下のように清代の被服文様がもつ意味性や形式の特性の一端を明らかにした。1)身分文様 : 身分文様を施した礼服に、縁文様を加えて飾ることにより、身分を区別する傾向がみられ、一つの文様の意味が薄れると別の文様を加え、その意味を強くするという新しい文様の使い方が明らかになった。2)吉祥文様 : 吉祥文様は、ほとんどがその文様形式に意味が内包され、図像のモチーフより形式にこだわった吉祥文化であることがうかがえる。3)装飾文様 : 装飾文様は、身分象徴と吉祥的な意味性を特に有さないが、その文様構成の点で、身分文様や吉祥文様と類似した文様構成がなされていたことがうかがえた。
  • 高橋 靖, 長谷川 桂介, 杉山 和雄, 渡辺 誠
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 41-50
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本報は映画のタイトル選択に役立つ要約映像を自動生成することを目標に、映画の本編・予告編の比較解析を通して予告編タイプの要約映像制作のアルゴリズムを導き、それによる要約映像を試作・評価した。その結果、物語の構造記述法であるセマンティックスコア法をシーン抽出のアルゴリズムに用い、画像・音声信号処理技術をショット抽出と映像カットのアルゴリズムに用いることによって効果的な要約映像が制作できることが示された。シーン抽出アルゴリズムの要旨は次の通りである。1)本編の[起]からのシーン抽出率を[承][転]より多くし、[結]からは用いない。2)[起]からは絶対値の高いシーンおよびピークとその次のシーンを抽出する。3)[承][転]からはプラスの値の高いシーンおよびピークのシーンを抽出する。4)情景シーンは絶対値スコアの低いシーンから抽出する。要約映像評価の結果、要約映像の好感度とそれ自体の作品評価を高めることが本編を見たくすることにつながることが判明した。
  • 斎藤 共永
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 51-58
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    デジタル技術の進展がいわゆる「情報化時代」を押し進めている。本稿は、デジタル時代の工業デザインの在り方を探る研究の一段階として、デジタル機器のデザインの特質について考察した。その結果として、次の5点を得た。(1)ネットワークを介して機能するデジタル機器が「端末化」するなど、デザインの価値の中心がものからコンテンツへ移行する。(2)デジタル技術は既存の製品の延長線上にない非連続的なコンセプトの変化をもたらす。(3)機器のもつ意味の変化はユーザーのものに対する価値観の変化を生じさせる。(4)物理的な操作から情報を介した操作への移行などにみられるように、機器と人間との関係が変化する。(5)機能や構造などの要因を形に統合するというメカニカルな機器を前提としたデザイン形成の方法が適用できない例が増える。以上のことから、今後の課題として、シンセシスプロセスの確立と、人間・社会科学に準拠したアプローチを中心とした方法論研究が必要となる。
  • 氏家 良樹, 鈴木 貴雄, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 59-68
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    曲線設計においては、形状要素の組み合わせによりはじめて発現する全体的な形状特徴の把握やその制御が重要となる.しかし、従来の形状情報だけでは全体特徴の表現が難しく、全体特徴を表現しうる新たな形状情報や、それを設計指標として用いた設計支援システムが望まれている.前報において、筆者らは新たな形状情報として曲率エントロピーの定義を行い、同形状情報が単純な曲線形状において「複雑さ」という全体特徴を表現しうることを明らかにした.本研究では、曲率エントロピーと遺伝的アルゴリズムを用いた形状生成方法を提案し、自動車サイドビューの設計への適用を行った.その結果、曲率エントロピーは製品レベルの自由度を有する曲線形状においても全体特徴を表現しうることが確認され、同形状情報を用いた設計支援システム開発の可能性を示すことができた.
  • 高橋 靖
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 69-78
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本報は複数視聴者から映画のシーン評価データを定量的に採取する標準セマンティックスコア法を提案し、その評価データから視聴者グループがとらえる物語の解釈を導くことによって提案手法の有効性を示した。評価実験セットは複雑化・解決化の評価概念を動画サンプルでわかりやすく解説した教示ビデオと冊子、シーン番号入り評価ビデオ、エピソード区切りが示された5段階評価シート、および映画鑑賞用DVDの5点からなり、評価手法に起因する誤差の極小化をはかった。視聴者データの相関係数とセマンティックグラフをもとに特異ケースを除去し、セマンティックグラフおよびシーンスコアの4指標すなわちシーンのピーク度数、ハイスコア度数、平均スコア、分散値から物語の解釈を行った結果、(1)ドラマを盛り上げる物語の演出、(2)主な登場人物への感情移入の構図を浮き彫りにすることができた。これにより物語に内包される多様な意味とそれに感応する視聴者の評価構造が明らかとなり、提案手法が映画のグループ評価・解釈に有効であることが示された。
  • 林 品章
    原稿種別: 本文
    2000 年 47 巻 4 号 p. 79-88
    発行日: 2000/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究は、1935年に開催された「始政四十周年記念台湾博覧会」の目的、企画ならびにデザインを探究し、その歴史的意義について考察するものである。研究の結果以下のことが分かった。(1)日本政府は、この博覧会の開催を通して、国際社会に日本政府の台湾建設における各種の進歩状況を知らせると同時に、台湾民衆の心を日本政府に向けようとする意図があった。(2)この博覧会の展覧に出したものの規模は大きく、また、宣伝組織は細密、デザイン計画は詳細であり、全体的なデザインに関する仕事は専門家によって制作された。(3)博覧会に参与したデザイナー、あるいはデザイン会社は大多数が日本人であったが、そのプロ意識と仕事に対する姿勢は学ぶに値するものであった。(4)台湾博覧会は、台湾有史以来唯一の国際的な博覧会であり、台湾における視覚伝達デザイン史上重要な役割を果たした。
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