高齢者消化器手術の治療成績を周術期管理の面から検討した.教室で22年間に切除術を施行した食道癌, 胃癌, 肝胆膵悪性腫瘍, 大腸癌および胆石症の3,481症例を用い, 前期, 後期のそれぞれ11年間の術前術後合併症, リスク年齢の検討を行い, 全体としては65歳を基準に, 疾患別では食道癌根治術と膵頭十二指腸切除術は60歳, 胃癌胃全摘術は70歳を基準に, 高齢群と若年群に分け, 手術侵襲と血中指標との関連, 術後の血清蛋白, 免疫指標の変動を比較し, 長期予後の比較検討を行った.術前有合併症例は高齢群で多かった.高齢群の術後合併症発生頻度は前期の55%から後期の49%へ, 術死率は10%から3%へ減少し, 長期生存率の改善を認めた.その機序として, 術中出血量の減少や麻酔法の改善による手術侵襲の抑制, 積極的な代謝栄養管理により, 侵襲ホルモン分泌や代謝変動がよくコントロールされていることより, それが予後の改善をもたらしたと考えられた.
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