日本消化器外科学会雑誌
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57 巻, 1 号
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会告
症例報告
  • 松波 光志朗, 柴崎 晋, 梅木 祐介, 芹澤 朗子, 中内 雅也, 秋元 信吾, 田中 毅, 稲葉 一樹, 宇山 一朗, 須田 康一
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2024/01/30
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    症例は70歳の女性で,2か月ほど前からの繰り返す嘔吐を主訴に来院した.精査の結果,III型食道裂孔ヘルニアの診断となり,待機的に腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行した.ヘルニア門は縫縮後メッシュで補強し,ヘルニアステープラーを使用し横隔膜に全周性に固定した.術翌日より酸素化低下と急激な血圧低下,頻脈を認め,緊急の胸腹部CTで心囊液の貯留を認めた.心タンポナーデと診断し,直ちに経皮的心囊穿刺を施行した.術後18日目に再度心タンポナーデを起こしたため,再度心囊ドレナージを施行し,ドレーンを留置し,5日後に抜去した.その後は再発なく,術後45日目に退院した.後方視的な手術ビデオの検証では,メッシュ固定のヘルニアステープラーによる医原性心タンポナーデと考えられた.本疾患は致死率が非常に高いため,器具を正しく使用し本症を予防するとともに,術後にバイタルの異常を認めた場合には迅速に対応する必要がある.

  • 古川 舜理, 平木 将紹, 梶原 脩平, 明石 道昭, 宮原 正晴, 鮫島 隆一郎
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2024/01/30
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    症例は84歳の女性で,増大傾向を認める胃体中部大彎の腫瘤性病変の治療目的に紹介された.内視鏡検査では,周辺粘膜との境界が不明瞭な周堤を伴い,中心に深い潰瘍を有する腫瘤性病変を認め,造影CTではリンパ節や遠隔転移などの他臓器病変の所見は見られなかった.PET-CTでは病変部に異常集積を認めた.術前に組織生検での診断は得られなかったものの悪性疾患の可能性が高いと判断し,腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.病理組織学的検査で粘膜下層と固有筋層に限局する胃形質細胞腫と診断し,リンパ節転移は認めなかった.術後補助化学療法は行わずに経過観察を行い,術後5年以上経過し無再発で生存中である.

  • 横井 彩花, 高見 秀樹, 山中 雅也, 中野 辰哉, 大津 智尚, 栗本 景介, 田中 伸孟, 猪川 祥邦, 林 真路, 小寺 泰弘
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2024/01/30
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    症例は63歳の女性で,検診で腹部超音波検査を受けた際に,膵腫瘍を指摘された.CTで膵尾部腹側に33 mmの低吸収腫瘤を認めた.病変は漸増性にやや不均一に造影された.MRIでは,T1強調像で低信号,T2強調像では中心部が低信号,辺縁部が淡い高信号,拡散強調像では辺縁部で高信号,中心部で低信号を呈した.以上の所見から,solid pseudopapillary neoplasm(SPN)やデスモイド腫瘍が疑われたが確定診断には至らず,診断的治療目的に手術の方針とした.術中所見では,腫瘍は膵尾部に存在し,胃大彎側の胃壁に浸潤していた.悪性腫瘍も疑われたため,腹腔鏡下脾合併膵体尾部切除,胃部分切除を施行した.術後病理組織診でデスモイド腫瘍と診断された.腹腔鏡下膵切除を施行したデスモイド腫瘍の報告はまれであり報告する.

  • 見原 遥佑, 平山 一久, 田井 優太, 林 良郎, 石松 久人, 小路 毅, 山崎 將典, 丸尾 啓敏, 中村 雅登
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 27-35
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2024/01/30
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    症例は78歳の男性で,上行結腸癌(T1b N1a M0 Stage IIIa)に対して腹腔鏡下結腸部分切除術を施行した.術後24か月の腹部造影CTで腹腔内に37 mmの腫瘤を認めた.術後腹膜播種再発を疑い,外科的切除の方針とした.開腹すると腸間膜内に5 cm大の腫瘍を認め,小腸と合併切除した.術後の病理組織学的検査から,腸間膜デスモイド腫瘍と診断した.術後3か月の腹部造影CTで,新しく11 mmの結節を腸間膜に認めた.デスモイド腫瘍の再発を疑い,術後6か月の現在慎重に経過観察をしている.最近ではデスモイド腫瘍の治療方針として,外科的切除よりも経過観察が推奨されている.しかし,どのような症例で積極的治療を行うべきか明言された報告は少ない.今回,我々は本邦報告例をまとめ,腫瘍径が65 mm以上ではデスモイド腫瘍による症状が出現する可能性があるため,治療介入を検討する一つの基準となりうると考えた.

  • 加藤 碩人, 薮﨑 紀充, 遠藤 美代, 尾嵜 浩太郎, 白濵 功徳, 肌附 宏, 櫻井 俊輔, 荒木 貴代, 佐藤 文哉, 石岡 久佳, ...
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2024/01/30
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    症例は87歳の女性で,直腸癌の診断でロボット支援下Hartmann手術を施行した.術後6日目に腰痛が出現し,CTで感染性大動脈瘤と多発肝膿瘍を認めた.血液培養よりKlebsiella pneumoniaeを検出し抗生剤加療を行った.術後14日目のCTで大動脈瘤拡大を認め,切迫破裂と診断し緊急でステントグラフト内挿術を施行した.その後の経過は良好で術後46日目に独歩退院した.Klebsiella pneumoniaeは消化管内の常在菌で弱毒菌であり,腸管授動や切離・ストマ造設時の操作による菌血症に加え,患者因子,手術による侵襲などの要素が加わって敗血症となり,大動脈壁への感染と多発肝膿瘍を生じたと考えた.救命可能であった大腸癌術後早期に感染性大動脈瘤,多発肝膿瘍を発症した症例を報告する.

  • 内藤 慶, 亀高 尚
    原稿種別: 症例報告
    2024 年 57 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2024/01/01
    公開日: 2024/01/30
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    症例は57歳の女性で,腹部刺創で当院に救急搬送となり,精査の結果,外傷性腹腔動脈損傷,肝損傷,膵損傷の診断で,緊急開腹術の方針とした.術中所見では肝損傷,膵損傷に加え腹腔動脈の完全断裂を認め,腹腔動脈の結紮により止血を得た.総肝動脈が上腸間膜動脈から分岐するAdachi分類VI型の血管走行異常を有していたため,術後も肝血流は温存され,術後34日目に軽快退院した.腹腔動脈が断裂している症例においては結紮での止血により肝臓や胃の血流障害が危惧されるが,その血管走行異常によっては腹腔動脈の血流が途絶しても臓器の血流が温存される症例が存在する.今回,Adachi VI型の血管走行異常を伴う外傷性腹腔動脈損傷の1救命例を経験したのでこれを報告する.

編集後記
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