日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 12 号
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原著
  • 加藤 卓也, 二宮 基樹, 丁田 泰宏, 金澤 卓, 原野 雅生, 松川 啓義, 小島 康知, 井谷 史嗣, 塩崎 滋弘, 岡島 正純
    原稿種別: 原著
    2015 年 48 巻 12 号 p. 963-970
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     目的:残胃癌では術式により領域のリンパ流が大きく異なる.方法:2001年1月から2012年8月までに残胃癌の診断で残胃切除を施行した49例を対象として,リンパ節転移の有無,初回手術術式の相違によるリンパ節転移の傾向および生命予後について検討した.結果:リンパ節転移陽性群(陽性群)は12例で転移陰性群(陰性群)が37例であった.陽性群で深達度が高度であり,未分化型が多く,高度脈管侵襲を認めた.陽性群での再発は9例(75%)に認め,無再発期間の中央値は8.5か月であった.5年生存率では陰性群が82%に対して,陽性群が0%と陽性群で有意に予後不良であった.陽性群における初回手術別のリンパ節転移の検討では,残胃空腸吻合群(Billroth-II法とRoux-en-Y法)において,全例空腸間膜リンパ節への転移を認め一定の傾向が認められた.結語:残胃癌のリンパ節転移陽性例は極めて予後不良であり,特に残胃空腸吻合群では空腸間膜リンパ節の重点的郭清が必要であると考えられた.さらに,陽性群では早期に再発を来しやすいことから,強力な術後補助化学療法が必要と考えられた.
症例報告
  • 安田 洋, 門野 潤, 大迫 政彦, 井上 真岐, 石崎 直樹, 基 俊介, 中薗 俊博, 槐島 健太郎, 藏元 慎也, 井本 浩
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 971-976
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     症例は40歳の男性で,転落事故で左胸部を打撲し,プランターの杭が会陰部に刺入した.転倒後に杭は自然抜去した.肛門と尾骨の間に刺入創を認め,下腹部の圧痛と板状硬を認めた.CTで下部直腸損傷,左第3肋骨骨折,胸部皮下気腫および左肺挫傷と診断した.経肛門的直腸縫合,審査腹腔鏡と腹腔鏡下人工肛門造設の方針とした.杭は下部直腸背側から前壁左側を貫通しており,経肛門的に貫通部の直腸縫合を行った.審査腹腔鏡では腹膜翻転部直上の直腸左側の腹膜損傷以外の腹腔内臓器損傷は認めなかった.腹腔鏡下S状結腸人工肛門造設術後に改めて腹腔内を観察したところ,肝鎌状間膜付着部左側の横隔膜に3 cmの損傷を認め,小開腹下に縫合閉鎖した.胸腔鏡検査で心・肺損傷は認めなかった.術後,無気肺を併発したが経過は良好であった.横隔膜損傷を合併している症例では,術後の肺合併症の発症を考慮し,腹腔鏡操作にこだわらないことも重要である.
  • 村上 聡一郎, 難波江 俊永, 相良 亜希子, 川本 雅彦, 梅田 修洋, 石川 幹真, 内山 明彦, 笹栗 毅和, 中野 龍治
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 977-983
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     症例は49歳の男性で,胃検診で異常を認めたため精査を行ったところCTで胃大彎側のリンパ節腫大を伴う胃前庭部大彎と連続した12×8 cmの腫瘤を認めた.胃由来のgastrointestinal stromal cell tumor(以下,GISTと略記)の診断で手術を施行した.腫瘍は胃前庭部大彎より発生しており,右胃大網静脈領域(No6およびNo14v)のリンパ節腫大を認めた.リンパ節を術中迅速診断に提出したところCastleman病(Castleman’s disease;以下,CDと略記)の診断であったため胃局所切除術を行って手術を終了した.術後4か月後のCTでは再発所見を認めずリンパ節は消失していた.CDはリンパ濾胞の過形成に加え形質細胞が濾胞間に多数浸潤する組織所見を有する原因不明のリンパ増殖性疾患である.CDを合併したGISTの症例はこれまで報告がない.
  • 木村 俊郎, 豊木 嘉一, 石戸 圭之輔, 工藤 大輔, 木村 憲央, 櫻庭 伸悟, 鍵谷 卓司, 吉澤 忠司, 鬼島 宏, 袴田 健一
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 984-992
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     症例は十二指腸乳頭部腫瘍が指摘された50歳の女性で,生検にてneuroendocrine tumorが疑われた.腹部造影CTでは十二指腸下行脚内腔に突出する腫瘍に加えて水平脚腸管から壁外性進展の疑われる腫瘍性病変を認めたため,十二指腸neuroendocrine tumorと十二指腸消化管間葉系腫瘍疑いとの術前診断で手術を施行した.術中所見では後者は,腸間膜リンパ節転移が疑われたため,膵頭十二指腸切除術で一括切除した.病理組織学的検査では,乳頭部腫瘍内にneuroendocrine tumorとganglioneuromaの混合腫瘍の所見を認め,gangliocytic paragangliomaと診断された.また,腸間膜内腫瘍は同腫瘍のリンパ節転移と診断された.リンパ節転移を伴うgangliocytic paragangliomaは極めてまれなため報告する.
  • 西村 廣大, 太田 俊介, 池山 隆, 大森 健治
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 993-1000
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     症例は54歳の男性で,数年間持続していた下痢が,プロトンポンプ阻害薬投与により改善したことからガストリノーマを疑われ当院を紹介された.精査の結果,十二指腸に4個,膵頭部に1個のガストリノーマを疑った.さらに,副甲状腺機能亢進症も認め,多発性内分泌腫瘍症1型と診断した.膵および多発十二指腸ガストリノーマに対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本の病理検索で19個の十二指腸ガストリノーマを認めたが,膵頭部腫瘍は粘液性囊胞腺腫だった.術後経過は良好で,現在無再発フォロー中である.多発性内分泌腫瘍症1型に合併する十二指腸ガストリノーマは多発性,小病変を特徴としており,本症例でも術前診断できなかった小病変が多数存在していた.
  • 山口 直哉, 久留宮 康浩
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 1001-1006
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     それぞれ胆管内進展を伴う複数の直腸癌肝転移の切除例を経験したので報告する.症例は2004年に直腸癌手術歴のある71歳の男性である.CTでS5とS7に低吸収域を示す腫瘍を認め,それぞれの下流胆管に拡張と異常造影効果を認めた.ERCPでは右肝管が途絶する像を認めた.胆管内進展を伴う直腸癌肝転移を強く疑い,肝右葉切除・肝外胆管切除を施行した.切除標本の検討では,二つの転移巣からそれぞれ胆管内進展を認め右肝管内で衝突していた.病理組織学的に胆管内進展を伴う直腸癌肝転移と診断した.同時性に複数の肝転移から胆管内進展を来す症例はまれである.肉眼的胆管内進展を来す大腸癌肝転移は予後良好な因子として報告されているが,本例でも術後長期無再発期間を得ており,これらの結果を裏付けるものとなった.胆管内進展を伴う大腸癌肝転移を完全切除するためには,胆管断端陰性を確保し安全に行える術式を検討することが重要と考えられた.
  • 梶原 淳, 秋田 裕史, 江口 英利, 丸橋 繁, 和田 浩志, 森井 英一, 若狭 研一, 森 正樹, 土岐 祐一郎, 永野 浩昭
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 1007-1014
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     症例は83歳の女性で,腹部CTにて膵尾部に囊胞性病変を指摘され膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm;以下,IPMNと略記)と診断された.その後経過観察されていたが,腹部MRIにて膵尾部の囊胞性病変の近傍に乏血性腫瘤が出現し,超音波内視鏡検査(endoscopic ultrasound;EUS)でも囊胞内の充実成分に一部膵臓への浸潤を疑う所見を認めた.また,FDG-PET/CTにて充実成分へのFDG異常集積を認めたためIPMN由来浸潤癌と診断し膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的診断は慢性膵炎を伴う膵管内乳頭粘液性腺腫で,悪性所見は認めなかった.IPMNは通常型膵癌と異なり手術時期に苦慮することがある.囊胞の急速増大を来し悪性を疑う所見を呈したIPMNに対しては膵炎などの影響の可能性も考慮し,慎重な手術適応の決定を行う必要があると思われた.
  • 田中 雄亮, 呉林 秀崇, 天谷 奨, 斎藤 健一郎, 寺田 卓郎, 高嶋 吉浩, 宗本 義則, 飯田 善郎, 三井 毅
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 1015-1020
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     症例は43歳の男性で,心窩部痛が増悪し当院を紹介受診した.CTで原因不明の腹腔内出血を疑い,緊急手術を施行した.Meckel憩室を認め,その漿膜側からの出血源を同定し,同部位を含めた小腸部分切除術を行った.切除標本所見ではMeckel憩室内に異所性粘膜や腫瘍性病変は認めなかったが,炎症による憩室内圧の上昇により漿膜および漿膜下の血管が破綻したことで腹腔内出血を引き起こしたと類推された.Meckel憩室は多くが無症状で経過するが,一部では消化管出血・腸閉塞・憩室炎などの症状を認める.自験例のように穿孔や腫瘍を伴わずに腹腔内出血を起こすことは極めてまれな病態であるが,迅速な外科的加療が必要な病態であるため報告する.
  • 高原 善博, 志田 崇, 小笠原 猛, 野村 悟, 大塚 恭寛, 高橋 誠
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 1021-1026
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
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     大腸切除後の縫合不全は比較的頻度が高い合併症であり,その対策として術中のリークテストは有用であると考えられる.今回,我々は術中内視鏡検査により見つかった縫合不全に対して内視鏡下クリッピングを施行した2例を経験したので報告する.症例は共に直腸癌に対して腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行し,術中大腸内視鏡検査によるリークテストが陽性となり,内視鏡観察にて pinholeとなっている縫合不全部を確認できたので,内視鏡下クリッピングを施行することとした.再度施行したリークテストが陰性となったためにストマ造設施行せずに手術終了とした.2例とも術後の縫合不全は認めず退院となった.腹腔鏡下直腸切除時のリークテスト陽性例に関しては一般的に鏡視下直接吻合を行うことが推奨されているが,狭骨盤などで直接縫合が困難である場合には内視鏡によるクリッピングでの閉鎖も選択肢になりうると考えられた.
  • 藤原 愛子, 正木 忠彦, 小嶋 幸一郎, 吉敷 智和, 小林 敬明, 松岡 弘芳, 阿部 展次, 森 俊幸, 杉山 政則
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 12 号 p. 1027-1031
    発行日: 2015/12/01
    公開日: 2015/12/23
    ジャーナル フリー HTML
     直腸癌術後のフォローアップ中に多発肝転移を契機として診断された直腸肛門部悪性黒色腫の症例を経験したので報告する.患者は62歳の男性で,下部直腸進行癌に対して低位前方切除術が施行された.病期IIIbのため補助化学療法としてUFT(500 mg/日)+LV(75 mg/日)内服化療が半年間施行された.術後30か月目に行われたMRIにて肝臓に多発腫瘤を指摘され,肝生検にて悪性黒色腫と診断された.全身検索の結果,肛門部悪性黒色腫の診断となった.急激な肝機能の悪化と全身状態の衰弱のため4か月の経過で死亡された.直腸癌術後の異時性重複癌として,悪性黒色腫は極めてまれであり報告する.
特別報告
編集後記
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