日本消化器外科学会雑誌
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45 巻, 8 号
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症例報告
  • 谷峰 直樹, 畑中 信良, 吉川 幸伸, 清水 洋祐, 遠藤 俊治, 西谷 暁子, 三隅 俊博, 中島 慎介, 上池 渉
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 817-825
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は36歳の男性で,健診の胸部X線検査にて異常陰影を指摘された.精査にて左横隔膜上に5 cm大の腫瘍を認めたが,腫瘍発生臓器の特定は困難であった.潜在的悪性度を考慮し手術行った.腹腔鏡下観察困難にて開腹移行し,経食道裂孔的に食道左側に突出する腫瘍を同定した.食道憩室を基部とした腫瘍と判断し,憩室切除に準じ腫瘍切除を行った.免疫組織学的検索にて中リスク群gastrointestinal stromal tumor(以下,GISTと略記)と診断した.手術所見,術後検査結果から,食道GISTの存在が憩室形成に関与した可能性を考えた.食道GISTは術前確定診断困難な場合も多く,その解剖学的特性のため切除方法も個々の症例においてさまざまである.本症例は特殊な発生様式であったため,食道温存術式にて完全切除可能であった.我々は食道憩室を併発したまれな食道GISTの1例を経験したので考察を加えて報告する.
  • 洞口 正志, 藤島 史喜, 岡本 宏史, 亀井 尚, 宮田 剛, 笹野 公伸, 里見 進
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 826-833
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は68歳の男性で,嚥下困難を主訴に他院受診.食道腺癌の診断で,加療目的に当院紹介となった.当院の上部消化管内視鏡検査では,門歯列より30 cm~37 cmに全周性の3型病変を認め,生検では扁平上皮癌の診断が得られた.初回の生検より,腺癌の成分を有している可能性が考えられたため,術前補助療法は施行せず,胸腔鏡下食道切除術を施行した.切除後の病理組織所見では,扁平上皮癌成分,腺癌成分,類基底細胞癌成分をそれぞれ同程度の領域に認め,腫瘍最深部は食道外膜に浸潤しており,リンパ節106recRに扁平上皮癌成分の転移を認めた.pT3pN1cM0p Stage IIIと診断した.扁平上皮癌成分,腺癌成分,類基底細胞癌成分を有する食道癌の報告は極めてまれである.
  • 武山 大輔, 宮田 剛, 小野寺 浩, 市川 宏文, 亀井 尚, 星田 徹, 菊池 寛, 中野 徹, 藤島 史喜, 里見 進
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 834-841
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    多彩な組織像を呈したalpha-fetoprotein(以下,AFPと略記)産生Barrett食道癌の1例を経験した.症例は58歳の男性で,虫垂炎術後の腸閉塞を契機に,下部食道に1型病変を指摘され,生検で腺癌の診断となった.血清AFPが3,877 ng/mlと高値を示した.胸腔鏡下食道切除,D2リンパ節郭清,用手補助腹腔鏡下胃管作製,後縦隔経路胃管再建術を施行した.病理組織学的検査ではBarrett食道から発生し,胎児消化管上皮類似癌,類肝細胞癌,管状腺癌の像が混在していた.免疫染色検査では全ての成分にAFPの陽性所見を認めた.術後補助療法としてS-1投与を行った.血清AFP値は正常化し,術後22か月経過したが無再発生存中である.AFP産生Barrett食道癌は非常にまれであるので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 小網 博之, 亀山 眞一郎, 本成 永, 谷口 春樹, 西垣 大志, 伊志嶺 朝成, 長嶺 義哲, 古波倉 史子, 松村 敏信, 伊佐 勉
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 842-849
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    極めてまれな走向異常である副交通胆管枝(communicating accessory bile duct;以下,CABDと略記)を3例経験したので報告する.症例1は60歳の女性で,胆石症にて当院に紹介された.術前MRCPでは明らかな走向異常は認めなかった.術中胆道造影所見にてCABD(Goor分類F3)と診断された.症例2は26歳の男性で,胆石症にて当院に紹介された.術前MRCPで胆囊管と右肝管とを交通するCABDが疑われた.術中胆道造影にてGoor分類F2と診断された.症例3は40歳の女性で,胆石胆囊炎にて当院に紹介された.術前MRCPにて明らかな走向異常なし.術中胆道造影にてCABD(Goor分類F2)と診断された.今日の画像診断の進歩や本検討を踏まえるとCABDの頻度は,諸家の報告よりも多い可能性が示唆された.CABDを念頭においた術前検査だけでなく術中胆道造影も肝要と考えられた.
  • 角南 栄二, 黒崎 功, 滝沢 一泰, 西倉 健, 畠山 勝義
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 850-856
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は78歳の女性で,2002年9月脾囊胞自然破裂による腹腔内出血のため当院にて緊急脾臓摘出術を施行した.その際脾動静脈は数回に分けて一括結紮処理された.その後2006年6月他院での腹部USにて脾静脈拡張を指摘され当科紹介となった.腹部CTにて膵尾部外側に長経約7 cmの,脾静脈と同等に強く造影される腫瘤を指摘された.腹部MRIでは造影早期相にて強い造影効果を呈し,さらに,拡張した門脈にも造影効果を認めたことから脾動静脈瘻と診断し手術適応と考え,前回手術から3年11か月後に手術を施行した.開腹所見では膵尾部外側の,脾動静脈の断端に約7 cm径のスリルを伴う血流豊富な腫瘤を認め脾動静脈瘻と診断した.手術は脾動静脈をそれぞれ結紮切離し腫瘤切除を行った.術後経過は良好であった.脾摘の際に脾動静脈を一括結紮切離したことが原因になり脾動静脈瘻が形成されたと考えられる,まれな1例を経験したので報告する.
  • 伊藤 眞廣, 庄 雅之, 山田 高嗣, 鎌田 喜代志, 榎本 泰典, 野々村 昭孝, 中島 祥介
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 857-864
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は76歳の男性で,スクリーニング目的で施行された腹部超音波検査にて,脾臓に径3 cm大の腫瘤性病変を指摘された.症状は認めなかった.腹部造影CT,腹部MRIにて確定診断がつかず,脾腫瘤の精査加療目的に当科受診となった.FDG-PETで同部位に強い集積が認められたため,悪性腫瘍の可能性を疑い,手術を施行した.術後の病理組織学的検索にて,炎症性筋繊維芽細胞性腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor;以下,IMTと略記)と診断した.術後経過は良好であり,無再発に経過していたが,術後2年3か月後,原発性肺癌を発症した.化学療法を施行されたが,脾摘術後3年4か月で肺癌にて死亡した.脾原発IMTの本邦での報告は5例のみと極めてまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 渡辺 栄一郎, 徳家 敦夫, 久保田 豊成, 青木 恵子, 杉本 真一, 武田 啓志, 高村 通生, 橋本 幸直, 大沼 秀行
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 865-874
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は気管支喘息治療中の58歳の男性で,2か月前より腹痛を認めていたが,白血球数40,200/μl(好酸球68%),CRP 18.6 mg/dlと上昇,右上下肢神経障害認め,アレルギー性肉芽腫性血管炎が疑われた.プレドニゾロン45 mg/day,アスピリン100 mg/day,ベラプロストナトリウム120 μg/dayの内服を開始するも下腹部に激痛認め当院総合診療科紹介受診,腹部造影CTにてfree air認め小腸穿孔の疑いで外科紹介となった.身体所見は血圧109/77 mmHg,脈拍数136 bpm,体温37.5度,るい痩著明で腹部全体に筋性防御を認めた.血液検査所見は白血球数29,600/μl,CRP 24.6 mg/dlと高度の炎症所見上昇を認めた.以上より小腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.手術所見はTreitz靭帯から回腸終末約30 cmに至るまでの小腸腸間膜対側壁がとび石状に壊死および穿孔所見を呈する多発小腸穿孔・壊死および汎発性腹膜炎の状態であったため,小腸亜全摘術,腹腔ドレナージ術,胃瘻および腸瘻造設術を施行した.現在術後20か月が経過するがプレドニゾロン10 mg/day内服にて全身状態は良好である.小腸穿孔を伴うアレルギー性肉芽腫性血管炎の報告は少なく,なかでも広範囲な多発小腸穿孔による大量小腸切除例の報告は極めてまれである.今回,我々は貴重な症例を経験できたので若干の文献的考察を含め報告する.
  • 加藤 健宏, 小木曽 清二, 小林 建仁, 加藤 一夫
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 875-880
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は66歳の男性で,2週間前からの吐き気・食欲不振を主訴に当院救急外来を受診した.腹部超音波・CTにて,同時性肝転移を伴う小腸腫瘍を先進部とした腸重積症と診断し緊急手術を施行した.開腹するとTreitz靭帯から約100 cmの空腸に直径5 cmの腫瘤を認め,これを先進部とした約40 cmの順行性腸重積を認めた.重積を徒手整復し,約30 cmの小腸部分切除および近傍のリンパ節郭清を施行した.病理組織学的検査所見は,粘膜下層を中心とした紡錐形細胞の増殖を認め,免疫染色検査にてαSMA陽性,KIT・CD34・desmin・S-100陰性で小腸平滑筋肉腫と診断した.術後9日目に軽快退院し,1か月後同時性肝転移に対し肝部分切除術を施行した.初回手術後7か月の時点で多発残肝再発を来したが,化学療法は希望されず初回手術から1年3か月後に永眠された.
  • 工藤 道也, 浦山 弘明, 志賀 知之, 市川 英幸
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 881-888
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は高血圧で治療中の84歳の男性で,下腹部痛を主訴に入院した.汎発性腹膜炎の診断で手術を施行したところ,回腸に限局性で,分節,飛び石状の壊死を認めた.病理組織学的検査で,コレステロール結晶塞栓症(cholesterol crystal embolization;以下,CCEと略記)と診断された.CCEは多くの場合,動脈カテーテル検査および処置,血管外科手術,血栓溶解療法あるいは抗凝固療法の後に,微小塞栓によって多臓器の障害を来す予後不良な全身疾患とされている.なかでも腎障害,皮膚障害を引き起こしたとの報告が多く,本症例のように高血圧と動脈硬化以外に医原性危険因子がないにもかかわらず,自然発生的に,突然小腸壊死で発症することは極めてまれである.急性腹症の診断・治療の際,特に高齢の男性の場合には,本症の可能性も念頭に置き対処する必要があると考えられた.
  • 北村 美奈, 清水 智治, 目片 英治, 龍田 健, 赤堀 浩也, 三宅 亨, 村田 聡, 山本 寛, 石田 光明, 谷 徹
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 8 号 p. 889-896
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    症例は48歳の女性で,前日の上部消化管内視鏡検査では異常はなかったが腹痛が増悪し再来した.造影CTにて左側結腸に腸重積を認め緊急手術となった.S状結腸に嵌頓腸管の先進部を認め用手的に整復できた.横行結腸腫瘍が先進部で15 cm肛門側に約1 cmの大網結節を認めた.横行結腸切除,大網腫瘍合併切除と結腸人工肛門造設術を施行した.病理組織学的検査所見では結腸低分化腺癌と大網由来炎症性筋線維芽細胞腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor;以下,IMTと略記)と診断された.術後31病日に癒着性イレウスにてイレウス解除・人工肛門閉鎖術を施行した.再手術時の所見と術後PET-CTでIMTの原発となる他病変は認めず大網原発IMTと診断した.結腸癌の腸重積と大網原発IMTの併存はこれまでに報告されていない.IMTは比較的予後のよい低悪性度の腫瘍であるが再発に対する経過観察が必要である.
臨床経験
  • 砂川 真輝, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎, 前田 敦行
    原稿種別: 臨床経験
    2012 年 45 巻 8 号 p. 897-904
    発行日: 2012/08/01
    公開日: 2012/08/20
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    患者は62歳の女性で,上腹部痛と背部痛を認め受診した.USで拡張した肝外胆管内の結石および胆囊内結石,造影CTで総肝管を中心に囊状に拡張した肝外胆管を認めた.ERCPと超音波内視鏡検査で膵・胆管合流異常を認めなかった.通常の胆道造影で肝内胆管と囊状に拡張した肝外胆管の合流形態を詳細に評価することはできず,内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブからの胆道造影とmulti-detecter row CTを用いて3D-cholangiogramを構築した.これにより右葉胆管枝は前上腹側枝および前下区域枝の共通管,前上外側枝および背側枝の共通管,南回りの後区域枝の計3本で拡張胆管に合流し,左葉胆管枝は外側区域枝,内側区域枝の2本で拡張胆管に合流していることが明らかとなった.膵・胆管合流異常を認めない戸谷Ia型の先天性胆道拡張症と診断し,胆囊および肝外胆管の切除と肝管空腸Roux-en-Y吻合を行った.
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