日本消化器外科学会雑誌
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34 巻, 5 号
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  • 経皮的胃電気活動記録と排出能からの検討
    平岡 敬正, 佐治 重豊, 国枝 克行, 安江 紀裕
    2001 年 34 巻 5 号 p. 431-438
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    幽門側を普通切除したstage Ia胃癌症例中, 再建をBillroth I法で施行した15例 (BI群) と幽門輪を温存した15例 (PPG群) を対象に, 術後1か月と6か月以上経過時に経皮的胃電気活動記録 (EGG) による残胃運動機能とアセトアミノフェンによる胃排出能などを検査し, 幽門輪温存意義を検討した.
    結果:(1) EGG波形は術後1か月目には全例陰性であったが, 6か月目にはPPG群で全例, BI群で1例に回復がみられた.(2) 胃排出能はBI群では墜落型を示したが, PPG群では健常対照群 (10例) に近似した波形を示した.(3) 部消化管造影検査, 内視鏡検査などで, PPG群には胃の蠕動波がみられたが, 食物残渣はBI群より多く観察された.
    以上の結果, 残胃運動機能と排出能などから, 幽門側普通切除群での幽門輪温存意義が確認された.
  • 織畑 道宏, 加戸 秀一, 竹内 弘久, 畑 真, 森脇 稔, 掛川 暉夫
    2001 年 34 巻 5 号 p. 439-444
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    目的: 大量経口投与されたビタミンB12は濃度勾配により吸収され, 内因子を必要としない. 胃切および胃全摘症例についてメコバラミン (メチコバール) の経口投与の有効性を検討した. 方法: 幽門側胃切除B-I法11例, 胃全摘R-Y 8例にメコバラミン1日量1.5mgを分3で4週間経口投与し, 血清ビタミンB12濃度を測定した. 成績: 投与前, 2および4週目の血清ビタミンB12濃度は胃切例で, 412±33,581±62および701±94pg/ml, 胃全摘例で312±40,440±34および469±30pg/mlと増加した. 胃切例ではビタミンB12の投与前値と増加量に有意な正の相関を認め, 逆に胃全摘例では負の相関の傾向を認めその増加に上限が示唆された. 結論: 常用量のメコバラミン経口投与は, 胃切例や胃全摘例で吸収され, ビタミンB12の補給に外来で容易に管理できる有効な方法である.
  • 石神 純也, 帆北 修一, 有留 邦明, 渡辺 照彦, 宮薗 太志, 徳田 浩喜, 中条 哲浩, 東 泰志, 夏越 祥次, 愛甲 孝
    2001 年 34 巻 5 号 p. 445-448
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃粘膜下層癌 (以下, SM胃癌) 120例を対象として胃癌取扱い規約の深達度亜分類 (SM1, SM2) の有用性を検討した. SM1は50例, SM2は70例であった. リンパ節転移はそれぞれSM1: 6例, SM2: 20例であり, 有意差が認められた (p<0.01). 亜分類の境界である0.5mmの深さは従来の3等分する亜分類 (SM1, SM2, SM3) ではSM1と一部のSM2にかかっており, リンパ節転移程度は規約上のSM1よりやや高率であった. 長径20mm未満のSM1症例にリンパ節転移は認められなかった. 縮小手術の適応となる腫瘍径の小さな症例に対して, SM亜分類は, リンパ節転移の予測に有用であると考えられた. 各部位でのSM層の厚みは, 胃上部大彎で1.89mm, 胃下部小彎で1.27mmであり, 有意差が認められた (p<0.05). SM1のリンパ節転移6例中4例は胃下部小彎であり, 腫瘍占居部位による粘膜下層の浸潤程度の違いを考慮する必要があると考えられた.
  • 熊澤 伊和生, 平岡 敬正, 川口 順敬, 国枝 克行, 梅本 敬夫, 佐治 重豊
    2001 年 34 巻 5 号 p. 449-458
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 胃癌治療に対するテーラーメードの医療を目指し, パターン認識に優れた数理学的モデルであるニューラルネットワークの予後予測法としての有用性を評価した. 方法: 術後胃癌患者672例に対しニューラルネットワーク (NN) とロジスティック回帰分析 (LR) を用いて術後1年3年時点での生死の予測をretrospectiveに行い精度につき比較検討した. 予後因子は腹膜転移, 肝転移, 深達度, リンパ節転移, 根治度, 郭清度, 年齢, 組織型, INF, ly, vの臨床病理学的因子で, 21の2値変数 (0, 1) にカテゴリー化したものを予測モデルの共変量とし, 適中率とROC解析 (Az値) で評価し, leave-one-out法にて検証した. 結果: 術後1年時点の適中率で学習検証結果ともにNNは有意に高値を示した (学習NN 90.0% vs LR 86.8%, 検証NN 88.1% vs LR 85.3%; ともにp<0.01). 術後3年でも比較的良好であった (学習NN 85.3% vs LR 83.9%, 検証NN 83.0% vs LR 82.7%). Az値では両モデルは同等の数値となった. 考察: ニューラルネットワークはロジスティック回帰と比べて同等かそれ以上の予後予測能力を示した. 今後, ニューラルネットワークは個々の術後患者のリスクを判定する指標としての有用性が期待される.
  • 阿部 哲夫, 伊藤 契, 阿川 千一郎, 石原 敬夫, 小西 敏郎
    2001 年 34 巻 5 号 p. 459-464
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに: 膵癌の治療成績向上のため1986年から当科で施行中の術中照射療法 (IORT) の治療成績と合併症について検討した. 対照と方法: 1980年1月から1999年12月までに当科で扱ったIORT施行および非施行の膵癌症例を対象とした. IORTは非切除例で40例 (A群), 切除例で8例 (B群) に施行した. この2群とIORT非施行の非切除例59例 (C群) および切除例55例 (D群) を比較検討した.検討項目はA群とC群, B群とD群の生存率の有意差検定, A群のIORTによる除痛・腫瘍縮小効果, CA19-9の推移, また剖検例では照射による組織学的効果とした. さらに, 照射に伴う合併症についても検討した. 結果: C群と比較してA群は有意な生存期間の延長と81.8%に除痛効果, 50%に腫瘍縮小および56.3%にCA19-9の低下が認められ, QOLの改善に有用であった. しかし, B群とD群の生存率に有意差はなかった. 組織学的にA群剖検例の照射野内の膵実質に著明な線維化を認め, 効果が確認された. IORTに関連した重篤な合併症をB群の2例に認めた. 1例はIORTの照射野内の膵断端の壊死を伴う膵空腸吻合の縫合不全, 他の1例はIORTと術後体外照射後の消化管, 血管の破綻による腹腔内出血であった. 考察: 今後は照射による残存膵, 膵周囲の組織障害を考慮してバイパス手術の付加や照射線量の決定, 鉛板による遮蔽を徹底する必要がある.
  • 富田 凉一, 福澤 正洋, 池田 太郎, 越永 従道, 藤崎 滋, 丹正 勝久
    2001 年 34 巻 5 号 p. 465-469
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎と大腸腺腫症の5症例 (男性3例, 女性2例, 10~15歳, 平均13.0歳) についてJ型回腸嚢肛門吻合術後soilingの病態解明を目的に, 回腸瘻閉鎖術後1年目 (A群) と2年目 (B群) における陰部神経伝導時間について, 対照16症例 (C群: 男性10例, 女性6例, 12~18歳, 平均15.4歳) を用いて比較検討した. その結果, 右側ではA群2.85±0.72ms, B群1.78±0.37ms, C群1.76±0.32msであり, A群がB, C群より有意に延長していた (p<0.01). 左側ではA群2.95±0.25ms, B群1.86±0.31ms, C群1.84±0.41msであり, A群がB, C群より有意に延長していた (p<0.01). すなわち, 左右両側において, A群がB, C群より明かに伝導時間の延長を示した. よって, 術後1年目までのsoilingの原因として, 陰部神経への手術操作による損傷が考えられ, 2年目ではその機能が改善し, soilingは治癒するものと思われた.
  • 福永 亮朗, 鈴木 康弘, 高橋 基夫, 狭間 一明, 吉田 直文, 川上 敏晃, 近藤 哲, 加藤 紘之, 藤田 美悧
    2001 年 34 巻 5 号 p. 470-474
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の女性. 嘔気, 上腹部痛, 体重減少を主訴に当院受診. エコー, CT, MRI, 内視鏡検査などにて胃幽門側に内部不均一で周囲臓器との境界不明瞭なmassを認め, 進行性の胃原発悪性腫瘍の術前診断にて横行結腸合併切除を伴う幽門側胃切除術を施行した. 術後の病理組織学的検索にて悪性細胞は認められず胃放線菌症と診断された. 術後1週間の抗生剤投与を行ったのみで再発兆候なく術後1年9か月を経た現在, 経過観察中である. 本症は現在では比較的まれな疾患となり術前診断は必ずしも容易ではないが, 腹部腫瘤の鑑別診断の1つに考えることは重要であると考えられた.
  • 横山 浩一, 浅田 康行, 斉藤 英夫, 宗本 義則, 藤沢 克憲, 笠原 善郎, 三井 毅, 飯田 善郎, 三浦 將司, 藤沢 正清
    2001 年 34 巻 5 号 p. 475-479
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎を伴う胃重複症の1例を経験した. 症例は17歳の女性. 3歳時より腹痛・嘔吐発作繰り返すも原因は判明しなかった. 今回は腹痛, 腹部腫瘤を主訴に入院となった. 入院5日目に突然の疼痛の増強をきたし緊急手術を行った. 開腹すると左上腹部を中心とする巨大な腫瘤を認めた. 腫瘤は4個の嚢胞性病変より成り, 1個の内腔は胃粘膜と類似し重複胃と推定し一部を採取した. 他は2個の膿瘍と膵仮性嚢胞であった. 高度の癒着にて重複胃切除は不可能で, 膵仮性嚢胞を介した胃と重複胃の吻合術を行った. 病理組織学的検索では萎縮粘膜, 粘膜筋板, 固有筋層を有する胃壁様構造を示し胃重複症と診断した. 術後は順調に経過し, 現在まで腹痛発作は認めていない. 慢性膵炎を伴う重複胃では, 重複胃と膵管との異常交通があり, このことが反復する急性膵炎の原因となるとの報告があり, 本症例でもこのような異常病変が慢性膵炎の成因となった可能性は否定できない.
  • 早馬 聡, 屋比久 孝, 竹之内 伸郎, 加藤 紘之, 西原 広史
    2001 年 34 巻 5 号 p. 480-484
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹膜播種を伴うgastrointestinal stromal tumor (以下, GISTと略記) の1例を経験したので報告する. 症例は73歳の男性. 胃癌検診にて胃彎隆部の陰影欠損を指摘され, その後タール便出現したため, 当院紹介入院となった. 転院後の内視鏡にて胃体上部から胃彎隆部にかけて巨大な粘膜下腫瘍を認め, その一部に潰瘍を形成し出血していた. 胃粘膜下腫瘍の診断で手術を施行. 腫瘍は左上腹部全体を占める巨大な腫瘤で, 脾臓への浸潤が疑われたため, 胃全摘, 膵脾合併切除術, D2郭清術を施行した. また, S状結腸間膜に腫瘤を認め, 併せて切除した. 病理組織学的にはmalignant GIST uncommitted type, n (-), 膵脾浸潤 (-) で, S状結腸の腫瘤は, GIST腹膜播種の診断だった. また, 免疫染色学的にはCajalの介在細胞との関連が示唆された. 本症例は高悪性度群のGISTに属すると考えられ, 今後厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 齊藤 修治, 遠藤 格, 熊本 宣文, 三浦 勝, 杉田 光隆, 三浦 靖彦, 田中 邦哉, 渡会 伸治, 嶋田 紘, 鈴木 馨一郎
    2001 年 34 巻 5 号 p. 485-489
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性. 近医で貧血精査のために行われた上部消化管造影で十二指腸空腸曲に狭窄像を認め, 当科へ紹介, 入院となった. 上部消化管造影では造影剤のたまりを伴う全周性の狭窄像とその口側に連続する4.1cm大の憩室を認めた. 内視鏡検査では十二指腸第4部に狭窄を伴った全周性の2型腫瘍を認め, 生検で高分化腺癌と診断した. 十二指腸空腸曲原発の小腸癌の診断で, 十二指腸第3・4部および空腸部分切除・リンパ節郭清術を施行した. 病理組織学的診断では, 腫瘍は中分化腺癌が十二指腸周囲脂肪織まで浸潤し, ly0, v0, リンパ節は十二指腸壁在のものにのみ転移を認めた. 術後診断では, 第4部原発の十二指腸癌, T3, N1, M0 Stage IIIであった.
    まれな第4部原発十二指腸癌に対し, 上腸間膜動静脈根部リンパ節郭清を伴った十二指腸部分切除術を行った. 十二指腸癌の診断・治療・予後に関し文献的考察を加え報告する.
  • 高橋 収, 高橋 透, 岩井 和浩, 水戸 康文, 鈴木 善法, 辻野 栄作, 坂井 俊哉, 加藤 紘之, 石津 明洋
    2001 年 34 巻 5 号 p. 490-494
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性. 右季肋部痛を主訴に近医を受診した. 血液検査で貧血と血小板減少を認め, さらにCT検査で肝右葉を中心とした占居性病変を認めたため当院に紹介された. 入院後, 血管造影検査を含めた諸検査を進めた結果, 巨大肝血管腫あるいは肝血管肉腫と診断した. 入院第14病日に突然, 腹痛が出現し, 超音波検査にて肝腫瘍の破裂と診断されたため経カテーテル的動脈塞栓術を施行した. しかし, その後も貧血が進行したため, 緊急手術に踏み切り肝右葉切除術を施行した. S4, S2, 3に腫瘍が遺残したが緊急避難的手術と考え切除しなかった. 術後の病理検査にて肝血管肉腫の診断を得た. 患者の周術期の経過は順調であったが, その後, 残肝腫瘍が急速に増大し, 第53病日目に死亡した. 肝血管肉腫は, 肝原発悪性腫瘍の中でまれな疾患であるが, 肝血管腫との鑑別を含め, 外科治療上, 多くの問題を提起するものと考え報告した.
  • 宗岡 克樹, 白井 良夫, 高木 健太郎, 小山 高宣
    2001 年 34 巻 5 号 p. 495-499
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    急性上腸間膜動脈閉塞症の2症例に対し, ウロキナーゼを上腸間膜動脈 (SMA) に動注する血栓溶解療法を施行した. 症例1は59歳の男性で, SMA本幹に完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IUの動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは3.5時間であった. 腸切除を要さず, 1か月で軽快退院した. 症例2は68歳の男性で, SMAの完全閉塞を認め, ウロキナーゼ60万IU動注により血栓は消失した. 発症からSMA再疎通までは6.5時間であった. 腹部所見は軽減したが, 再疎通後3時間目から再度憎悪したため緊急手術を行った. 空腸, 回腸280cmが壊死しており, 腸管切除再建を行ったが, 術後4か月目に多臓器不全で死亡した. 自験例および従来の報告例の検討からは, 本療法を発症後早期 (SMA本幹閉塞では5時間以内, SMA遠位部の閉塞では12時間以内) に行えば腸管壊死を回避できる可能性がある.
  • 野中 泰幸, 津下 宏, 湯村 正仁
    2001 年 34 巻 5 号 p. 500-504
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    虫垂Crohn病はきわめてまれで, 本邦では14例が報告されているにすぎない. 今回, われわれは虫垂Crohn病の1例を経験したので報告する. 症例は42歳の男性. 腹痛を主訴に来院. 右下腹部に強い圧痛と筋性防御, Blumberg徴候を認め, 急性虫垂炎の診断にて緊急手術を行った. 虫垂は炎症性に著しく腫大しており, 後腹膜に癒着し大網に被われていた. 盲腸および終末回腸には異常はみられず, 虫垂切除術を施行した. 切除標本では, 虫垂壁は著しく肥厚しており, 粘膜面は顆粒状を呈していた. 病理組織学的には全層にわたりリンパ球集簇巣と非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め, 虫垂Crohn病と診断された. 術後内視鏡検査にて虫垂開口部周囲盲腸粘膜に結節状隆起病変の集簇が認められた. 同部の生検ではCrohn病を示唆する所見はみられなかった. 術後6か月現在, 慎重に経過観察中である.
  • 伊藤 忠雄, 小西 啓夫, 麦谷 達郎, 山岡 延樹, 相良 幸彦, 佐々木 義文, 山岸 久一
    2001 年 34 巻 5 号 p. 505-509
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性. 右下腹部腫瘤を主訴に受診し, 同部位に圧痛を伴う小児頭大の腫瘤を触知した. 下部消化管造影検査では横行結腸に圧排像と腫瘍内腔と思われる壁外腔への造影剤の流出を認めた. 内視鏡検査では横行結腸に腸管腔の狭小化と瘻孔を認めたが瘻孔開口部周囲粘膜は正常であった. 開口部より腫瘍内腔へと内視鏡を挿入すると多量の便塊が認められ, 内腔壁よりの生検はmucinous car-cinomaであった. 手術所見では腫瘍は回腸瘻を形成しており, 回盲部から40cmにわたる小腸合併切除を伴う右半結腸切除術を行った. 病理組織学的検査にて横行結腸原発と診断された. 他臓器浸潤を伴う大腸粘液癌では腫瘍径が大きく腸管腔内への腫瘍の発育も顕著であることが多い. 本例の如く壁外性にのみ著明に発育する例は特異的であった. また, 瘻孔形成も十二指腸瘻もしくは空腸瘻のことがほとんどであり, 回腸瘻はまれであった.
  • 遠藤 良幸, 吉田 典行, 安藤 善郎, 小野木 仁, 中村 泉, 大木 進司, 滝田 賢一, 土屋 敦雄, 関川 浩司, 竹之下 誠一
    2001 年 34 巻 5 号 p. 510-514
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    内ヘルニアは, 腸間膜または腹膜の欠損部に臓器が嵌入するまれな疾患である. 特徴的な症状がないためイレウスの診断で開腹手術を施行され確定診断にいたることが多い. 症例は69歳の男性で, S状結腸間膜の異常裂孔に小腸が嵌入していた. 術前に内ヘルニアによるイレウスとの確定診断は出来なかったが, 腹部CTでは小腸がS状結腸の外側 (左側) に位置しているなど, 大腸および小腸の位置異常の所見があった. 開腹手術の既往がないイレウス症例においては常に内ヘルニアの存在を念頭に置く必要があると思われた. S状結腸間膜に関連した内ヘルニアは本邦では自験例を含めて43例の報告を確認したが, その1亜型であるS状結腸間膜裂孔ヘルニアは自験例が11例目でありまれな症例と思われた.
  • 伊原 文恵, 上田 一夫, 城原 直樹, 野中 博子, 秋間 道夫, 柴 忠明
    2001 年 34 巻 5 号 p. 515-519
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性. 排便時出血にて近医を受診, 肛門管癌と診断され当院に紹介受診となった. 腫瘍は肛門周囲皮膚に白色変色域を伴っていたが, 患者の希望で経肛門的腫瘍摘出術のみを施行した. 歯状線上に長径2cmの隆起性腫瘤を認め, 組織学的に粘液癌であった. 肛門粘膜上皮内pagetoidspreadを認め断端陽性のため, 後日腹会陰式直腸切除術施行した. 肛門周囲皮膚の広範なpagetoidspreadを伴い, 粘液癌部は肛門腺との関連は不明であった. 粘液癌とは非連続性に直腸高分化型の粘膜内腺癌の存在を認めた.
    肛門管癌に合併する肛門周囲pagetoid spreadは比較的まれな病態であり, 本邦では文献上自験例を含め30例の報告をみるのみであり, さらに直腸に粘膜内癌を合併した点でまれと考えられた.
  • 二村 浩史, 樫村 弘隆, 佐野 芳史, 柏木 秀幸, 青木 照明, 藤崎 順子, 成宮 徳親, 鈴木 博昭
    2001 年 34 巻 5 号 p. 520
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
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