Fibronectin (以下, FN) の発現, および局在を膵癌原発巣53例 (うち, 粘液産生膵癌9例), 転移巣26例, および膵良性疾患22例において免疫組織学的に検索し, 臨床病理学的因子や予後との関連から検討した. 基底膜FNの陽性率は原発巣11%, 転移巣8%, 良性疾患22%で, 差はなかったが, 粘液産生膵癌では56%で, 通常の浸潤性膵管癌に比べ有意に高かった. また, 周囲間質FNの陽性率は, 原発巣36%, 転移巣27%, 良性疾患100%で, 良性疾患では他の2群に比べ有意に高かった. 臨床病理学的因子との関係では, 基底膜FNの陽性率はT1群33%, T2以上群7%であり, またN (-) 群25%, N (+) 群5%と, T因子, N因子の進行に伴い有意に低下した. さらに, 基底膜FN陽性例は, 予後良好であった. 以上, 膵癌におけるFNの発現性低下は予後不良を示唆し, 生物学的悪性度を反映していると考えられた.
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