日本消化器外科学会雑誌
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52 巻, 11 号
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症例報告
  • 川合 亮佑, 河合 徹, 京兼 隆典, 雄谷 慎吾, 浅井 悠一, 渡邉 夕樹, 久世 真悟, 宮地 正彦
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 611-619
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    悪性腫瘍の骨転移はしばしばみられるが,四肢末梢骨への転移はまれである.今回,我々は異時性に環指骨と中指骨に転移を認め,切断術後長期生存した症例を経験したので報告する.症例は82歳の男性で,心窩部痛を主訴に当院を受診した.上部消化管内視鏡検査にて切歯より36 cmに2/3周性の2型腫瘤を認め,生検で扁平上皮癌が検出された.胸部中部食道癌と診断し,右開胸開腹食道亜全摘を施行した.術後2か月頃から右環指DIP関節に軽度の疼痛を認め,経時的に発赤,腫脹が出現した.単純X線検査で右環指末節骨に溶骨像を認めたため,右環指骨転移を疑い,生検を施行した.術中迅速病理検査で扁平上皮癌と診断し,PIP関節で切断術を施行した.食道癌術後2年2か月,右中指骨爪周囲に発赤,疼痛,潰瘍形成を認め,骨転移と診断し切断術を施行した.その後,腋窩リンパ節転移,胸膜播種,小腸転移などが増悪し,食道癌術後2年11か月で死亡した.

  • 門間 聡子, 森田 信司, 小田 一郎, 吉永 繁高, 茂呂 浩史, 木下 敬弘, 谷口 浩和, 片井 均
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 620-628
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は56歳の男性で,定期検査の上部消化管内視鏡検査で胃体上部に広範な胃粘膜下異所腺と0-IIa+IIc病変を認めた.生検の結果,Group 5(高分化型腺癌)と診断された.超音波内視鏡検査ではびまん性に粘膜下層に囊胞性病変を認め,癌の範囲診断および深達度診断は困難であった.CTでは明らかなリンパ節転移や遠隔転移は認めなかった.以上より,びまん性胃粘膜下異所腺(diffuse cystic malformation;以下,DCMと略記)に併発した胃癌と診断した.粘膜下異所腺が噴門近傍まで広がっていたことから,術式は腹腔鏡下胃全摘術を選択した.病理学的検索では,癌は固有筋層まで浸潤する進行癌であった.また,粘膜下異所腺周囲の線維化のため,癌の範囲診断が困難であったと考えられた.DCMに併発した胃癌については,時に術前の範囲診断や深達度診断が困難なことがあり,治療方針や切除範囲の決定には注意が必要であると考えた.

  • 雨宮 隆介, 早津 成夫, 三戸 聖也, 上野 万里, 石塚 裕人, 柳 在勲, 津和野 伸一, 江頭 有美, 原 彰男
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 629-636
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は69歳の女性で,右側胸部痛を主訴に前医受診,炎症反応上昇と肝胆道系酵素異常を指摘され当院紹介となった.CTにて肝外側区域に乏血性で早期輪状濃染を伴う60 mm大の腫瘍を認め,肝内胆管癌の診断で腹腔鏡下肝左葉切除を施行した.病理組織学的検査所見では,腫瘍は紡錘形細胞で構成され,腺管構造や肝細胞への分化傾向を認めなかった.肝臓原発の肉腫様癌と診断した.S-1による補助化学療法を施行したが,術後4か月で肝前区域に56 mm大の腫瘍が出現し再発と診断した.Gemcitabine+cisplatin療法を6か月施行し腫瘍の縮小が得られたため,肝腹側前区域+左尾状葉切除術を施行した.その後補助化学療法を施行せずに初回肝切除後55か月,再肝切除後45か月経過し無再発生存中である.肝臓原発の肉腫様癌はまれで治療に難渋することも多い.集学的治療が奏効した症例を経験したので報告する.

  • 筒井 由梨子, 二宮 瑞樹, 本坊 拓也, 定永 倫明, 内藤 嘉紀, 加藤 誠也, 松浦 弘
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 637-645
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は68歳の女性で,来院1か月前より炎症反応高値と肝腫瘤性病変を認め,肝膿瘍として抗菌薬加療を行うも増大し当院受診した.CTにて肝S6に囊胞性病変と腫瘍性病変を認め,感染性囊胞と悪性腫瘍を疑い,腹腔鏡下肝後区域切除術を施行した.病理検査では肝腺扁平上皮癌の診断であった.術後21日目に退院したが41日目に白血球数,CRP値は再上昇し,残肝に辺縁の増強効果を伴う多数の結節性病変を認めた.肝膿瘍を疑い抗菌薬加療を行うも,白血球数は上昇し,2週間後のCTでは病変は増大し,残肝も著明に肥大していた.各種検査で感染症は否定的で血清granulocyte colony-stimulating factor(以下,G-CSFと略記),IL-6が高値であり,G-CSF産生肝内胆管癌と考えた.G-CSF産生肝内胆管癌はまれで,肝膿瘍との鑑別が困難なうえに進行が早く,予後不良な疾患である.感染に起因しない炎症反応高値や不自然な肝肥大を伴う悪性腫瘍症例では,G-CSF産生腫瘍を念頭におくことが必要である.

  • 福田 皓佑, 蔵原 弘, 前村 公成, 又木 雄弘, 迫田 雅彦, 飯野 聡, 川崎 洋太, 橋口 真征, 新地 洋之, 夏越 祥次
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 646-653
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は62歳の男性で,体底部の胆囊癌に対して胆囊床切除術を施行された.郭清した#12bおよび#12cリンパ節は術中迅速病理検査にて転移陰性であった.最終病理診断はpoorly differentiated adenocarcinoma,Gbf,30×25 mm,pT3a(S),pN0,M0,pStage IIIAであった.術後1年8か月目に#12aリンパ節転移再発を認めた.Gemcitabine+cisplatin療法,gemcitabine+S-1療法を施行したが,転移リンパ節が増大したためS-1併用の化学放射線療法(50.4 Gy)を施行した.著明な縮小効果が得られ,新規病変の出現を認めなかったため転移リンパ節の摘出術を施行した.最終病理診断は病理学的完全奏効であった.胆囊癌術後再発の予後は極めて不良であるが,化学放射線療法が著効し完全奏効を得られた症例を経験したので報告する.

  • 小林 智輝, 水野 伸一, 松葉 秀基, 金森 明, 玉内 登志雄
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 654-664
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    肝腸間膜動脈幹型かつ膵頭部実質内を肝動脈が貫通する膵頭部領域癌に対して血管を温存した膵頭十二指腸切除術を施行した2例を経験したので報告する.症例1は66歳の男性で,黄疸を主訴に来院し,精査で膵頭部癌の診断となった.肝腸間膜動脈幹から分岐する総肝動脈(common hepatic artery;以下,CHAと略記)が,膵頭部実質内を貫通していたが,腫瘍は離れていたため肝動脈を温存した根治術が可能と判断し,膵頭十二指腸切除を施行した.症例2は52歳の男性で,心窩部痛,黄疸を主訴に来院し,遠位胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行した.肝腸間膜動脈幹から分岐したCHAが,膵頭部背側から膵鉤部を回り込むように腹側へ立ち上がり,膵実質内を貫通した後に膵表面を走行していた.腫瘍による血管浸潤はなく,膵実質を切離してCHAを温存した.血管走行変異がある膵頭部領域の手術においては,術前画像評価を詳細に検討し,手術の根治性と肝血流の維持を考えた術式を選択する必要がある.

  • 東海 竜太朗, 吉岡 伊作, 平野 勝久, 関根 慎一, 渋谷 和人, 橋本 伊佐也, 北條 荘三, 奥村 知之, 長田 拓哉, 藤井 努
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 665-671
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は84歳の男性で,糖尿病で当院内科通院中に血糖コントロールの急激な悪化を認め,精査にて膵頭部腫瘍を指摘され当科に紹介となった.腹部造影CTでは膵頭部に15 mm大の乏血性腫瘤を認め,一部門脈に接するが主要動脈への浸潤を認めず,切除可能膵頭部癌の診断で手術の方針とした.門脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後第4病日に腹痛,腹部膨満感の訴えがあり腹部CTにて腸管囊腫様気腫症(pneumatous cystoides intestinalis;以下,PCIと略記)と診断された.腸管壊死はないものと判断し,保存的加療の方針とした.その後の腹部CTでは経時的なPCIの改善傾向を認め,全身状態良好にて第22病日に退院した.術後合併症としてのPCIの報告は少なく,膵頭十二指腸切除後に発症した報告は非常にまれである.今回,我々は亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後に発症したPCIに対して保存的治療にて軽快した症例を経験したので報告する.

  • 小林 龍太朗, 山口 直哉, 加藤 岳人, 平松 和洋, 柴田 佳久, 吉原 基, 青葉 太郎, 神谷 忠弘, 前田 松喜
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 672-678
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は72歳の男性で,貧血を主訴に当院を受診した.CTで回盲部に辺縁のみ造影効果を有する比較的境界明瞭な長径10 cmの類円形腫瘍を認めた.内視鏡では上行結腸の内腔に充満するように粘膜下腫瘍の発育を認め,腫瘍部の粘膜にびらんを認めた.生検結果は腫瘍成分陰性であったが,同部位からの出血が貧血の原因と考え,結腸右半切除を施行した.腫瘍は漿膜面に露出はしていなかったが,炎症が強く,後腹膜との剥離に難渋した.摘出標本を検討すると,腫瘍は10×8 cmで,上行結腸から発生した有茎性の粘膜下腫瘍と考えられ,病理組織学的検査所見で上行結腸由来の脂肪肉腫と診断した.術後2年経過したが,現在無再発生存中である.結腸由来脂肪肉腫は非常にまれであり,また腸管内に有茎性に発育した形態学的な考察も含め報告する.

  • 橋本 至, 村上 仁志, 稲垣 大輔, 上田 倫夫, 大佛 智彦, 長谷川 誠司, 池 秀之, 福島 忠男, 利野 靖, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2019 年 52 巻 11 号 p. 679-686
    発行日: 2019/11/01
    公開日: 2019/11/30
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    症例は78歳の女性で,66歳時に直腸癌RbPに対しMiles手術を施行し,最終診断はpT3(SS)N0M0,pStage IIであった.71歳時に傍ストーマヘルニアを認め,Composix meshを用いたkeyhole法によるヘルニア修復術を施行するも,72歳時に再発を認め,他院で再度Composix meshを用いたkeyhole法によるヘルニア修復術を施行された.今回,腹痛を主訴に受診し,腹部CTで挙上結腸穿孔によるメッシュ感染と診断し,絶食,経皮的膿瘍ドレナージ,抗生剤治療を開始した.栄養状態改善目的に,腹腔鏡下横行結腸単孔式人工肛門造設術を施行するも,術後に膿瘍腔への小腸瘻形成を認めたため,メッシュ除去術を施行した.経過良好で,術後43日目に退院した.術後,感染の再燃は認めていない.傍ストーマヘルニア修復術後にメッシュ感染を認めた場合は,早期のメッシュ除去を検討するべきである.

臨床経験
編集後記
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