日本消化器外科学会雑誌
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34 巻, 12 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 竹村 雅至, 大杉 治司, 高田 信康, 岸田 哲, 西川 正博, 奥田 栄樹, 上野 正勝, 田中 芳憲, 福原 研一朗, 木下 博明
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1695-1701
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道粘膜下層癌の治療方針を臨床病理学的因子・リンパ節転移の状況より検討した.対象と方法:3領域リンパ節郭清術を施行した症例のうち主病巣の病理組織学的検索でpT1bであった50例を用いた.結果:リンパ節転移は18例にみられ, 転移陰性32例に高分化型扁平上皮癌, 脈管侵襲陰性例が多かった. 多変量解析では脈管侵襲の有無がリンパ節転移に最も関与した因子であった. 総郭清リンパ節2532個中63個に転移を認め, 長径10mm以下は41個・6mm以下は19個であった. 9mm以下のリンパ節で, 肉眼的転移判定は困難であった. リンパ節再発が2例, 血行性転移が3例にみられ, 5年生存率は84%で, 脈管侵襲陽性例の生存率が有意に悪かった.結語:粘膜切除可能なpT1b 食道癌には診断的粘膜切除を行い, 高分化型扁平上皮癌で脈管侵襲陰性の場合はリンパ節転移の可能性が低いが, これ以外の症例には追加治療としてリンパ節郭清が必要である.
  • 三邉 大介
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1702-1712
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    浸潤性膵管癌(膵癌)切除後の再発機序の解明を目的に, 臨床病理学的検討ならびに分子生物学的検討を行った. まず, 過去5年間の切除例25例を対象に, 各再発形式に関与する臨床病理学的各因子を多変量解析により検討した結果, 肝転移に対しては原発巣の静脈侵襲が, 局所腹膜再発に対してはリンパ管侵襲が有意な再発危険因子であった. 次に, 最近2年間の切除例13例で術中採取した肝, 腹膜, 骨髄組織中の癌細胞を検索した. PCR法により各組織からK-ras mutationの検出を試みた結果, 肝組織では肝転移再発したv2以上の4例中v3の1例(25.0%)のみで検出された. 腹膜組織では1y2以上の5例中4例(80.0%)に検出され, 全例が腹膜再発した. 骨髄組織ではv2かつ1y2以上の3例中2例(66.7%)に検出され, 全例に遠隔転移再発を認めた. 以上より, 膵癌では脈管侵襲により形成された微小転移が術後再発の主な原因になっていると考えられた.
  • 菅原 元, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 鈴木 正彦, 芥川 篤史, 鈴村 潔, 臼井 達哉
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1713-1717
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに:非閉塞性腸管梗塞症19手術例について臨床病理学的に検討した.結果:年齢は48歳から88歳で, 平均74.6歳, 男性10例, 女性9例であった. 併存疾患として心血管病変を有する症例が多く, 膠原病を6例に認めた. 術前特異的な検査所見はなく, 全例に壊死腸管の切除を行い, 15例が生存退院し救命率は78.9%であった. 切除腸管の直動脈を組織学的に検討し, 内膜と中膜の比で内膜肥厚の程度をmild, moderate, severeの3段階に分類すると, それぞれ3例, 10例, 5例で, 19例中18例に, 直動脈の内膜肥厚を認めた. また膠原病の6例中3例に動脈炎の所見を認めた.考察:非閉塞性腸管梗塞症では, 器質的血管閉塞は認めないが, 動脈内膜肥厚や直動脈の動脈炎が発症の一因と考えられた.
  • 中江 史朗, 川口 勝徳, 沢 秀博, 松本 逸平, 高松 学, 浜岡 剛, 金田 邦彦, 藤原 澄男, 寒原 芳浩, 河野 範男
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1718-1726
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    はじめに:大腸多発癌の臨床的特徴より多発癌のリスクファクターを把握し, 術後のfollow upの方法を考察した.方法:最近16年間の大腸癌切除828例を単発癌と多発癌に分類し, 臨床的に比較検討した.結果:多発癌は64例(7.7%)で, 同時性47(5.7%), 異時性17例(2.1%)であった. 同時性計102病巣の分布は単発癌と差は無かった. 異時性第1 癌は右側結腸2(12.5%), 左側結腸12(75.0%), 直腸2(12.5%), 不明1で, 単発より左側が有意に高率であった. 第1~第2癌までは最長18年で, 平均7年3か月であった. 5年以内に第2癌が進行癌で発見された4例中2例は術前に口側の検索が不十分, 2例は腺腫併存例で, 術後定期的全大腸内視鏡がされていなかった. 多発癌で単発癌より高率であった因子は腺腫の併存(多発93.3%, 単発73.1%), 胃癌の合併(多発12.8%, 単発4.8%)であった.考察:多発癌のリスクファクターとして腺腫の併存, 胃癌の合併, および大腸癌家族歴の存在が考えられ, 異時性第2癌の早期発見にはこれらの因子を念頭に置き, 術後全大腸内視鏡による定期的follow upが重要である.
  • 長谷川 健司, 大沢 常秀, 鎌野 尚子, 桝屋 義郎, 奥野 雅史, 山田 修, 高田 秀穂, 中矢 秀雄, 三好 勝彦
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1727-1731
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃悪性リンパ腫の術後に敗血症性ショックを発症し, 急激な経過で死亡した1例を経験した. 症例は74歳の女性. 胃悪性リンパ腫に対し, 胃全摘術を施行した. 手術当日から, 高熱, 低血圧, 呼吸不全を呈し, 翌日には, 腹壁周囲に皮下出血斑が出現し, その後数時間で広範な壊死性筋膜炎となった.腹壁切開創, 腹水, 血液の塗抹グラム染色でグラム陰性桿菌(後日Aeromonas hydrophila; 以下, AHと同定)が多数認められた. 壊死創部を切開ドレナージして, 広範囲スペクトルの抗生物質への変更を行ったが, 手術後50時間で死亡した. AHは免疫能の低下した病態では重症化することが報告されているが, AHによる術後の重篤な敗血症と壊死性筋膜炎の報告は, 本例が第1例目である. 免疫能低下症例の手術時には, 本症を合併する可能性を念頭におき, Bacterial translocationのリスクを最小限にして手術を施行する必要があると考えられた.
  • 広瀬 和郎, 玉木 雅人, 千田 勝紀, 廣野 靖夫, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1732-1736
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性. 食欲不振, 右腰・臀部痛, 体重減少を訴え受診し, 胃体部の4型胃癌, 多発性骨転移と診断された. 骨シンチで肋骨, 腰椎, 骨盤に多発性の異常RI集積を認め, 骨X線写真で骨盤に多発性溶骨像を認めた. 胃全摘, D1リンパ節郭清を行い, 組織学的に低分化腺癌(中間型), se, ly1, v2, n1, H0, P0, cy0で, 骨転移以外の癌遺残はないと判断した. 術後早期の全身化学療法(mitomycin C, 5-FU)により疼痛は消失し, さらに全身化学療法(FAM変法: 5FU, adriamycin, mitomycin C)と放射線治療(Linac, 3Gy, 12回)により, 術後6か月で骨シンチの異常RI集積像は消失し, 骨X線写真で溶骨像は硬化した. 以後, 外来で通院治療(UFT内服とレンチナン静注)を継続したが, 臨床症状はなく, 定期的なRI, X線検査でも再発はなく, 術後9年8か月で他病死(心不全)した. 本症例の長期生存には術後の化学放射線療法が骨転移に奏効したことが要因と考えられた.
  • 河合 秀二, 川崎 博之, 井関 恒, 西山 瑩, 小林 道也, 弘井 誠
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1737-1741
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性で, 食欲低下で当院内科を受診, 腹部CTで, 胃, 膵尾部, 脾臓に囲まれた部位に腫瘤性病変と肝臓に径3cm大の低吸収域を認め精査予定となった. 翌日腹膜炎による激しい腹痛で緊急入院となり, 腫瘤形成性膵炎, および肝膿瘍の診断で保存的治療を施行した. 経過中腫瘤を直接穿刺し, 細胞診を施行, class Vの診断を得たため状態の改善を待って手術を施行し, 病理組織診断で胃原発gastrointestinal stromal tumor (GIST)と診断された. 胃原発のGISTで, 肝膿瘍を合併し, 腫瘍の穿破が原因と考えられる腹膜炎を発症した症例は極めてまれであると考えられるため, 文献的考察を加え報告した.
  • 高橋 秀典, 東野 健, 加納 寿之, 岩澤 卓, 松井 成生, 中野 芳明, 矢野 浩司, 衣田 誠克, 岡村 純, 門田 卓士
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1742-1746
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は57の男性. 既往にC型慢性肝炎があった. 右季肋部痛, 黄疸にて当院入院となった. ERCにて左肝管に透亮像を認めた. CT, エコーにて肝に腫瘍を認めず, 肝内結石症と診断された. 黄疸は保存的に軽快し, 外来経過観察となったが, 経過観察中, AFP値が上昇し再入院となった. CT, エコーにて肝臍部から総胆管に胆管内腫瘍を認めたが, 肝内に腫瘍を認めなかった. ERCにて総胆管内に浮遊する透亮像を認めた. 肝細胞癌の胆管内発育と診断し, 肝左葉切除, 胆管内腫瘍摘出術を施行した.術後標本にてS4に直径1.5cmの腫瘍を認め, 低分化型肝細胞癌, vp2, vv0, b2であった. 術後2年3か月で再発を来たし, 6年1か月で原病死した. 画像診断上肝内に腫瘍像を認めず, 胆管内結石と鑑別が困難であった興味深い1例であったので報告した.
  • 中村 浩志, 寺本 研一, 高松 督, 馬場 裕之, 佐伯 伊知郎, 五関 謹秀, 岩井 武尚
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1747-1750
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術後の重篤な合併症に肺塞栓症がある. 今回, 簡易型経皮式心肺補助装置を用いることにより救命しえた肺塞栓症の1例を経験したので報告する. 症例は69歳の女性で, 気腹法による腹腔鏡下胆のう摘出術後第1日目に肺塞栓症を発症しショックとなった. 抗凝固療法, 血栓溶解療法を開始したが, ショックから離脱できなかったため簡易型経皮式心肺補助装置を用いた. その後は各種治療が奏功し, 第50病日軽快退院となった. 肺塞栓症の治療法は抗凝固療法, 血栓溶解療法であるが急性期の循環動態維持のためには簡易型経皮式心肺補助装置が有用であると考えられた.
  • 五十嵐 直喜, 金田 宗久, 小山 恭正, 片桐 誠
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1751-1755
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳の男性. 黄疸を主訴に来院. 腹部超音波, CTおよび経皮経肝胆道造影にて下部胆管に25mmの腫瘤が認められ胆管癌の診断で膵頭十二指腸切除術を施行. 切除標本で下部胆管に桑実状に突出した黄白色の腫瘍と, それとは色調の異なる乳頭状に発育した腫瘍が隣接して認められた. 大きさは22×25mmであった. 病理組織学的にはクロモグラニン陽性のカルチノイドと乳頭状腺癌の衝突腫瘍であった. 術後2年が経過し, 再発兆候はみられていない. 胆管のカルチノイドはまれな疾患であり, 内外の報告例は自験例以外には36例であった. さらに癌と合併した症例の報告は6例と極めて少数であった. 治療法は手術が第1選択であるが, 胆管カルチノイドの肝転移またはリンパ節転移の報告もあるので癌に準じた手術を施行することが肝要である.
  • 杉浦 博, 高橋 弘, 下沢 英二, 福永 亮朗, 長谷 龍之介, 加藤 紘之
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1756-1760
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    原発性胆嚢管癌の4例を経験した. 症例1は70歳の男性で, 胆嚢結石症の診断で胆嚢摘出術を施行し, 切除標本で胆嚢管癌と診断され, 2期的に胆管切除, D2郭清を施行した. 組織学的にはpat C, tub1, fm, n1, 2(-)で, 術後9年目に他病死したが再発はなかった. 症例2は61歳の男性で, ERCPで中部胆管の狭窄を認め, 胆管癌の診断にて肝床, 胆嚢, 胆管切除 (D2)を施行. pat C Bm, tub1, ss, n2(+)であった. 術後9年4か月の経過で再発なく生存している. 症例3は54歳の男性で, 経皮経肝胆嚢造影で胆嚢管に不整な途絶を認め, 生検にて胆嚢管癌と診断され, 肝床, 胆嚢, 胆管切除(D2)を施行した. pat C Bm, tub2, ss, n1, 2(-)であったが, 術後16か月目に癌性胸膜炎のため死亡した.症例4は70歳の女性でCTにて胆嚢管腫瘍を認め, 生検で腺癌と診断され, 肝床, 胆嚢, 胆管切除 (D2)を施行した. pat C, pap, ss, n1, 2(-)で, 術後1年の経過で再発なく生存している.
  • 工藤 篤, 川崎 恒雄, 地引 政利, 林 政澤, 玄 東吉, 谷畑 英一, 菊池 正教, 寺本 研一, 有井 滋樹, 岩井 武尚
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1761-1764
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    特発性大網捻転症は比較的まれな疾患であり, 本邦報告例は文献検索上は自験例を含めて59例であった. 今回, 我々は大網裂孔ヘルニアを合併し, 小腸の血流不全を来した特発性大網捻転症の1例を経験したので本邦の報告例の考察も加えて報告した. 症例は27歳の男性. 臍下部の痛みを主訴に来院した. 左下腹部を中心とする腹膜刺激症状があり, 腹部CT検査では右下腹部を中心とする特徴的な渦巻状層状構造を呈する腫瘤を認め, 緊急開腹手術を施行した. 開腹時, 血性腹水, 大網捻転, 大網裂隙, そして大網裂孔ヘルニアによる小腸の血流障害を認めたので, 異常な裂隙を含めて, 捻転し壊死に陥った大網の切除を行った. 本症の術前診断は一般に困難であるが, 術前のCT検査が非常に有用である.
  • 上田 順彦, 根塚 秀昭, 山本 精一, 礒部 芳彰
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1765-1769
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腸間膜牽縮を伴った回腸カルチノイドの1例を報告した. 患者は54歳の男性. 主訴は間歇的腹痛発作. 身体所見では右下腹部に約10cm大の腫瘤を触知した. 腹部CT所見では回腸末端部の腸間膜内に造影早期より染まる4×2.5×7cm大の腫瘍と, それより周囲小腸に向かう放射状構造物を認めた. また, 小腸内腔と壁内の2か所に造影効果陽性部分と腸間膜内に多数の小リンパ節を認めた. 手術所見では回腸末端部腸間膜内に8×5×3cm大の充実性腫瘍と腫大したリンパ節を多数認めた. 腫瘍を中心に回腸末端部は一塊となっていたため, これらを腫大したリンパ節とともに摘出した. 切除標本では小腸粘膜面に約25mm大の広基性腫瘍1個と3~8mm大の粘膜下腫瘍を7個認めた. 病理所見ではいずれもカルチノイドであったが, 広基性腫瘍は漿膜下層まで浸潤していた. また腸間膜の腫瘍も同様の細胞で形成されており, リンパ節転移巣と判定した. 術後1年たった現在, 再発の徴候はない.
  • 中島 信久, 中山 雅人, 高木 知敬, 長渕 英介
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1770-1774
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    回腸に発症したまれなDieulafoy様潰瘍の1手術例を経験したので報告する. 症例は87歳の男性で, 下血を主訴として当院に入院した. 出血シンチグラム(99mTc-RBC)で右下腹部に集積を認め, 小腸出血の診断にて緊急手術を行った. 術中内視鏡にて回腸に出血源を同定し, 同部の紡錘状切除という侵襲の少ない術式を行い, 治癒せしめた. 切除標本の粘膜面に小さな露出血管と粘膜の欠損を認め, 病理組織学的には粘膜下に中等大の動脈があり, この血管の破綻による出血と判断し, 回腸Dieulafoy様潰瘍の診断を得た.
  • 伊神 剛, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 坂本 英至, 柴原 弘明, 太平 周作, 森 俊治, 上原 圭介
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1775-1779
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性で, ふらつき感を契機に精査で急性骨髄性白血病(M5a), 化学療法を施行約3週間後に右下肢痛と発熱が出現, 腹部CTで腸腰筋内膿瘍を認めた. 骨髄抑制の状態のため保存的に治療したところ, 症状は軽快, CT上膿瘍は著明に縮小した. 再度化学療法施行, 約2週間後に右下腹部痛, 右下肢痛, 発熱が出現, CTで膿瘍の再燃を認めた. 今回も骨髄抑制の状態で保存的に治療, 症状は軽快し, CT上膿瘍は著明に縮小した. 注腸検査で虫垂から膿瘍内への漏出像を認め, 虫垂炎性膿瘍と診断した. 化学療法後の骨髄抑制から回復後, 虫垂切除術, ドレナージを施行した. 組織学的所見は炎症のみで白血病細胞は認めなかった. 虫垂炎を併発し, 手術を施行した成人白血病の本邦報告例は, 自験例を含めて13例ときわめてまれで, 若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 関根 祐樹, 一瀬 亮吾, 福森 龍也, 鈴木 雄, 遠藤 義洋, 北村 道彦
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1780-1784
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性で, 突然の腹痛で発症し, 来院. 下腹部が板状硬で圧痛, 筋性防御を認めた. 腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. 腸間膜に覆われていた大量の凝血塊と便汁, そして中部から下部直腸に10cmにわたる裂傷を認め, 人工肛門を造設した. 術後エンドトキシン吸着, 人工呼吸器装着, 輸血などの集中治療を行い, 良好な結果が得られた. 悪性腫瘍, 憩室, 異物, 炎症性腸疾患あるいは医原性などが原因となっていないものが特発性大腸破裂と呼ばれている. 大腸の特発性破裂はS状結腸に70~80%と多く, 直腸の発生例の報告は5~10%と非常にまれである. 直腸破裂では腹膜翻転部直上が最多で手術操作に難渋することが多い. 術前の確定診断が困難であり, 腹膜炎の中でも生体に及ぼす侵襲が大きく, 全身的な炎症症状を呈し, 敗血症性ショックとなることが多く, 術後成績はいまだ不良である.
  • 上村 健一郎, 村上 義昭, 横山 隆, 竹末 芳生, 檜山 英三, 今村 祐司, 金廣 哲也, 佐々木 秀, 森藤 雅彦, 末田 泰二郎
    2001 年 34 巻 12 号 p. 1785-1788
    発行日: 2001年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈閉塞症による回腸虚血に対して, 右胃大網動脈有茎グラフトバイパス術を施行し良好な結果を得た症例を経験した. 症例は, 47歳の男性. 近医にて, 急性腹症の診断で, 試験開腹術施行され, 回腸虚血を認めたが, 辺縁動脈の血流は保たれていたため腸切除は施行せず閉腹された. 以後, 保存的治療を施行されたが軽快しないため, 当科紹介入院となった. 血管造影では, 上腸間膜動脈が根部より4cm末梢で完全閉塞しており, 回腸領域は, 中結腸, 第一空腸動脈からの側副血行が認められた. 手術は, 有茎右胃大網動脈グラフトによる上腸間膜動脈バイパス術を施行した. 術後の血管造影では, バイパス血流は良好であった. 腸間膜動脈閉塞症による回腸虚血に対して, 右胃大網動脈を使用したバイパス術は報告がなく, 有効な外科的治療の1つと考えられた.
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