日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
Print ISSN : 0386-9768
ISSN-L : 0386-9768
56 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 山中 良輔, 森野 甲子郎, 山本 道宏, 松村 彰太, 中西 望, 仲野 健三, 後藤 俊彦, 田中 宏和, 加藤 滋, 待本 貴文
    原稿種別: 原著
    2023 年 56 巻 7 号 p. 369-376
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    目的:切除可能食道扁平上皮癌に対して術前DTX+CDDP+5-FU(以下,DCFと略記)療法3コースが新たな標準治療となった.当科では2019年よりDCF療法を導入し,忍容性を考慮して2コースとしている.本研究の目的はCDDP+5-FU(以下,FPと略記)療法とDCF療法の治療成績を比較することとした.方法:切除可能食道扁平上皮癌に対して,2016年4月から2022年3月までにFP療法2コース後に外科的切除を施行した15例と,DCF療法2コース後に切除した17例を対象とした.主要評価項目を化学療法奏効率,副次評価項目を忍容性,再発率とした.結果:両群間の患者背景に有意差を認めなかった.Grade 3以上の好中球減少症/発熱性好中球減少症はFP群で1/0例,DCF群で6/3例,化学療法完遂率はFP群100%,DCF群82.3%であった.化学療法の臨床的PD/SD/PR/CRはFP群2/6/7/0例,DCF群2/1/14/0例であり,全奏効率(overall response rate;ORR)はFP群46.7%,DCF群88.2%で有意差(P=0.021)を認めた.切除標本にてcStageに比べdown stageした症例はFP群20.0%,DCF群70.6%であり有意差(P=0.006)を認めた.1年以内の早期再発を認めたのはFP群30.8%,DCF群0%であった(P<0.036).結語:切除可能食道扁平上皮癌に対する術前DCF療法はFP療法と比較し,有害事象は強い反面,高い奏効率と比較的良好な治療効果を示した.術前DCF療法2コースでの当科における治療経験を報告した.

症例報告
  • 小泉 亘, 北郷 実, 関戸 康友, 壁島 康郎
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 377-383
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は71歳の男性で,胃癌に対して幽門側胃切除術後22年目に十二指腸狭窄および胆管狭窄を認めた.十二指腸癌または遠位胆管癌の疑いで,膵頭十二指腸切除術を施行した.術中所見では胃十二指腸吻合部周囲に高度の癒着を認めた.膵切離断端の術中迅速病理診断で,膵実質周囲に低分化腺癌の所見を認めた.切除検体の胆管内腔には腫瘍性病変を認めず,壁外からの浸潤による胆管狭窄が認められた.病理組織学的検査では,前回の胃癌と同じ低分化腺癌と診断された.術中迅速病理検査でCY0と診断された腹腔洗浄細胞診は,アルシアンブルー-PAS染色を追加した結果,癌細胞を認めCY1と診断され,術中にサンプリングした小腸間膜結節も低分化腺癌と診断された(P1).以上より,胃癌術後の局所再発,腹膜播種と診断した.今回,最終病理組織学的検査で22年後の胃癌晩期再発と診断された1切除例を経験したため報告する.

  • 宮下 遼平, 清水 明, 窪田 晃治, 野竹 剛, 細田 清孝, 梅村 謙太郎, 蒲池 厚志, 後藤 貴宗, 富田 英紀, 福田 浩信, 副 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 384-392
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は79歳の女性で,両側肺野の結節影に対して施行した胸部CTにて,偶然胆囊腫瘍が指摘され当科紹介となった.胆囊底部に漸増性に造影される5 cmを超える腫瘍性病変を認めた.腫瘍の芯に相当する部位に石灰化が認められた.周囲への浸潤傾向は認めず,粘液の産生も疑われた.以上より,胆囊内乳頭状腫瘍(intracholecystic papillary neoplasm;以下,ICPNと略記)と診断した.胆囊床切除および胆囊摘出術,センチネルリンパ節切除術を施行した.切除標本肉眼所見は胆囊腔内に粘液の貯留と白色の乳頭状隆起性病変を認め,壊死した部位を伴っていた.病理組織学的検査所見ではlow grade dysplasiaとhigh grade dysplasiaの混在したICPNで,ごく一部に浸潤癌を認めた.組織学的亜分類は,肉眼所見とMUC染色によりgastric typeと診断した.また,#12cリンパ節に微小転移を認めたため後日追加で2群リンパ節郭清を施行した.術前診断可能であったICPNは,ほとんど報告がなくまれであるため報告する.

  • 土佐 明誠, 小野山 裕彦, 坂井 昇道, 千代 孝夫, 國安 弘基
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 393-400
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は23歳の男性で,モトクロス競技中にハンドルで腹部を打撲し搬送された.腹部所見で腹部全体に圧痛を認め,CTで腹水貯留とfree airがみられた.外傷性腸管穿孔の診断で緊急手術となった.開腹所見では結腸の分節的な腸管肥厚を認め,肥厚の少ない部分で横行結腸が破裂しており,結腸部分切除術(横行結腸)+横行結腸人工肛門造設術を施行した.切除標本所見では腸管粘膜側にcobble stone appearanceがみられ,比較的腸管肥厚の少ない部分で破裂していた.病理組織学的所見で散在する非乾酪性類上皮細胞性肉芽種と全層性の炎症細胞の浸潤およびリンパ濾胞の形成を認めた.以上より,Crohn病を伴う外傷性横行結腸破裂と診断した.Crohn病の外傷性腸管穿孔症例の報告は本邦では小腸例のみであり,結腸破裂の報告は本例が最初である.今回,腹部鈍的外傷により結腸破裂に至ったCrohn病の興味深い症例を経験したので報告する.

  • 川﨑 圭史, 川本 潤, 内 玲往那, 岩屋 啓一
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 401-408
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は53歳の女性で,バリウムによる上部消化管造影検査を契機に発生した腹痛を主訴に当科受診した.バリウムによる腸閉塞の診断で保存的加療となり症状は一旦改善し退院となったが,退院10日後に再度腸閉塞を起こし再入院となった.造影CTにて回腸末端に腫瘤性病変を疑う所見を認めたため,待機的に審査腹腔鏡を施行したところ,回腸末端に白色の硬い腫瘤性病変を認めたため,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査では,回腸腺筋腫症の診断となり,術後1年2か月の現在,無再発生存中である.回腸腺筋腫症の術前診断は画像的には困難であり,無症状で偶発的に発見される場合も多い.今回,我々は回腸腺筋腫症による腸閉塞に対して腹腔鏡下切除を施行したため報告する.

  • 山口 洋志, 柏木 清輝, 鬼原 史, 空閑 陽子, 伊藤 智子, 渡邉 奈々恵, 近藤 信夫, 今村 将史, 永山 稔, 信岡 隆幸, 木 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 56 巻 7 号 p. 409-418
    発行日: 2023/07/01
    公開日: 2023/07/28
    ジャーナル オープンアクセス HTML

    症例は77歳の男性で,下腹部痛を主訴に当院を受診した.入院時単純CTでは回盲部周囲と骨盤内に液体貯留を認め,右側結腸に憩室が多発していたが虫垂は同定できず,虫垂炎あるいは憩室炎による回盲部周囲膿瘍および骨盤内膿瘍を疑った.全身状態が不良のため,抗菌薬投与による保存的治療を開始し,第4病日の造影CTで門脈血栓症を診断し,ヘパリンとantithrombin IIIによる治療を行った.第14病日から食事を再開し,抗凝固療法はエドキサバンの内服に切り替え,第29病日に退院した.退院後の精査では虫垂に異常を認めず,憩室炎による腹腔内膿瘍に門脈血栓症が合併したと診断した.初回退院から3.5か月後に腹腔鏡下右半結腸切除術を施行した.合併症なく退院し,術後1年間,門脈血栓症の増悪や憩室による症状を認めていない.結腸憩室炎による門脈血栓症はまれな病態で,保存的治療後の待機的手術の報告は限られるため報告する.

編集後記
feedback
Top