日本消化器外科学会雑誌
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51 巻, 11 号
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原著
  • 桑原 隆一, 池内 浩基, 皆川 知洋, 堀尾 勇規, 佐々木 寛文, 蝶野 晃弘, 坂東 俊宏, 内野 基
    原稿種別: 原著
    2018 年 51 巻 11 号 p. 671-679
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    目的:クローン病(Crohn’s Disease;以下,CDと略記)は再発を繰り返す原因不明の難治性炎症性腸疾患であり,複数回の手術を必要とすることが多い.そこで当院で施行したCD腸管切除症例1,143症例の臨床的特徴,術後経過について検討した.方法:1974年9月から2014年7月までに当科で腸管病変に対して手術を行ったCD 1,143例,延べ手術回数2,001回を対象とし,臨床的特徴および再手術率などをretrospectiveに検討した.結果:男女比は827:316(2.6:1),初回手術時年齢は30.0(7~78)歳,病悩期間は20.4(2.5~43.2)年で初回手術時の病型は小腸型380例,大腸型104例,小腸大腸型659例であった.手術適応に関しては非穿孔型が604例(52.8%),穿孔型は539例(47.2%)であった.術後合併症(Clavien-Dindo III以上のもの)は66例(3.3%)に認め,そのうち縫合不全が45例(2.2%)と最も多かった.累積5年の再手術率は22.2%であった.再手術のリスク因子に関しては性別,初回手術時年齢,病型,病変部位,飲酒歴,喫煙歴は有意差を認めず,初回手術時の“肛門病変あり”のみに有意差を認めた(P=0.001).死亡症例は24例(2.1%)で癌死が16例と最も多かった.結語:累積5年の再手術率は22.2%で再手術のリスク因子は初回手術時の肛門病変の存在であった.死亡原因は癌死が多数を占めた.

症例報告
  • 小森 徹也, 村元 雅之, 長谷川 毅, 杉戸 伸好, 保里 惠一, 松尾 洋一, 竹山 廣光, 溝口 良順
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 680-687
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    症例は76歳の男性で,ふらつきと全身倦怠感を主訴に来院され,上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部大彎側に2型胃癌を認めた.術前の白血球数は33,150/μl,血清granulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)値は659 pg/ml,alpha-fetoprotein(以下,AFPと略記)値は171.2 ng/mlと高値であった.幽門側胃切除術および横行結腸間膜合併切除術を施行した.病理組織学的所見は,pap,pT3,pN2,M0,Stage IIIAであり,抗G-CSF抗体および抗AFP抗体を用いた免疫組織染色検査は陽性であった.術後7日目の白血球数は6,530/μl,血清G-CSF値は42.7 pg/ml,AFP値は37.9 ng/mlと低下を認めた.免疫組織学的検査にG-CSFおよびAFP産生胃癌を証明した報告がなく,本症例が初めての報告である.

  • 浅海 吉傑, 酒徳 光明, 菅原 浩之, 林 沙貴, 太田 尚宏, 吉田 貢一, 田畑 敏, 金木 昌弘, 家接 健一, 清原 薫, 又野 ...
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 688-693
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    骨髄異形成症候群の経過で胃癌が発見され,根治切除を行った1例を経験したので報告する.症例は87歳の女性で,3年前に骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;以下,MDSと略記)(RCUD/RA)と診断され当院血液内科に通院中であったが腹部CTを契機に胃角部に胃癌が発見され,臨床病期はcT4aN2M0 cStage IIIBであった.高齢であったが本人と家族は手術を希望され根治切除を行った.好中球減少に対する支持療法として周術期にG-CSFは1日のみ投与し,抗菌薬は執刀直前と執刀後3時間後,帰室4時間後にcefazolin sodium 1 g/回を投与した.切除標本の病理結果はpT3N2M0 pStage IIIAであった.術後経過は良好で術後16日目に自宅退院した.MDSを合併した消化器癌症例に対する手術治療の報告は少なく,貴重な症例と考え報告する.

  • 上田 翔, 惟康 良平, 高柳 智保, 川守田 啓介, 小林 敏樹, 橋本 洋右, 藤本 康弘, 米沢 圭, 前田 賢人, 江川 勇樹
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 694-701
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    脾臓を原発とした未分化多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma;以下,UPSと略記)は非常にまれな腫瘍であり腹腔鏡下に切除した報告は1例のみである(2018年1月現在).症例は83歳の女性で,8か月で3 cmから6 cm大に増大する脾腫瘍を認め,左上腹部痛,発熱も伴っていた.精査を行ったが確定診断に至らず切除生検の方針となり,2孔式腹腔鏡下脾臓摘出術を施行し病理組織検査でUPSと診断された.FDG-PETを行ったが,他に病変を認めず脾臓原発と診断した.術後1年6か月経過し再発はしていない.脾臓原発のUPSに対する最も有効な治療法は脾臓摘出であるが,脾腫瘍は術前診断が困難な場合が多い.今回のように診断と治療を兼ねて脾臓摘出を行う際には低侵襲である腹腔鏡手術が有用であり,reduced port surgeryも許容されると考える.

  • 塩入 誠信, 樋上 健, 大塚 将之
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 702-708
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    症例は66歳の女性で,腹痛,発熱を主訴に当院受診となった.血液生化学検査で炎症所見の著明上昇と腹部単純CTで臍から回盲部周辺におよぶ脂肪織の浸潤像を認めたことから,限局性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.術中所見では,回腸末端から約40 cmの回腸間膜を中心とし周辺腸管を巻き込み一塊となった部位が責任病変と思われ,腹膜転移所見も見られた.第19病日に軽快退院したが,病理組織学的検査,ならびにCD31,CD34,Factor VIIIの免疫染色検査にて小腸間膜血管肉腫と診断されたため,通院によるpazopanibを用いた分子標的治療を導入した.しかし,術後5か月で急激な血性腹水貯留を初発とする腹腔内再発を来し救命できなかった.発生機序は既往の子宮頸癌に対する放射線照射が誘発した治療合併症と推察され,報告例検討では腹腔内発生は非常にまれであった.血管肉腫は予後不良であり有効治療の発見が急がれている.

  • 松尾 泰子, 明石 諭, 杉森 志穂, 山田 行重
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 709-713
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    症例は81歳の男性で,50歳時に虫垂切除術の既往があった.3日前より便秘,腹部膨満があった.前医受診し,腸閉塞の診断で当院に入院となった.腹部は緊満し全体に圧痛を認めた.腹部CTでは回腸末端にclosed loopを形成し,口側腸管の拡張を認めた.虫垂切除術後の癒着により生じた索状物による腸閉塞と診断し,緊急手術を施行した.術中所見では術後の癒着はなく,回盲ヒダに生じた異常裂孔に終末回腸が嵌入しており,回盲ヒダ裂孔ヘルニアと診断した.用手的に整復後,腸管の血流改善を認めたため回盲ヒダを切除して手術を終了した.回盲ヒダに生じた異常裂孔による内ヘルニアの報告例はいまだ見られず,極めてまれな症例と思われる.

  • 真船 太一, 國場 幸均, 小倉 佑太, 菊地 悠輔, 岸 龍一, 大島 隆一, 堀越 邦康, 田中 圭一, 相田 芳夫, 大坪 毅人
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 714-722
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    症例は80歳の女性で,関節リウマチ(rheumatoid arthritis;RA)がありメトトレキサート(methotrexate;以下,MTXと略記)の内服を行っていた.入院4日前から大量帯下を認め,当院を受診した.血液検査では脱水所見,炎症反応の上昇,貧血を認めた.CTでは回腸子宮瘻を認め入院となった.脱水と貧血を補正し,抗菌薬治療を行った後,入院13日目に開腹小腸部分切除術と子宮全摘術を施行した.病理組織学的所見では,回腸と子宮の瘻孔部分に回腸から浸潤する比較的大型の類円形腫瘍細胞を認め,びまん性大細胞性Bリンパ腫(diffuse large B cell lymphoma;DLBCL)と診断した.悪性リンパ腫の原因としてMTXの関与を考え内服を中止し経過観察しているが,現在までに再発を認めていない.悪性リンパ腫による小腸子宮瘻は報告例がなく極めてまれな病態である.自験例のように薬剤誘発性の悪性リンパ腫を背景とすることがあり,小腸子宮瘻の診療の際には悪性リンパ腫を念頭に置き,既往や内服歴を十分に考慮して診断,治療にあたるべきと考えられた.

  • 佐藤 みちる, 林 啓一, 須藤 剛, 佐藤 敏彦, 飯澤 肇
    原稿種別: 症例報告
    2018 年 51 巻 11 号 p. 723-730
    発行日: 2018/11/01
    公開日: 2018/11/30
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    症例は64歳の男性で,便秘,腹部膨満,腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.精査の結果,直腸癌による腸閉塞,腹膜播種の診断となり,腸閉塞の治療のため回腸人工肛門造設を行った後,化学療法を施行した.部分奏効を得られ,原発巣を切除したが,手術の翌月,舌の痛みを自覚した.精査の結果,直腸癌の舌転移の診断となった.大腸癌の舌転移は極めてまれであり,本邦での既報は認められず,転移経路や病態など不明な点も多く今後の究明が必要である.

編集後記
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