日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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20 巻, 4 号
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  • 渋谷 進, 高瀬 靖広
    1987 年 20 巻 4 号 p. 825-829
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    光感受性物質としてeosin yellowを用い, アルゴンレーザー光照射により発生する蛍光を観察することによる悪性腫瘍の肉眼診断が, 食道癌に応用しうるかを検討した.手術前にeosin yellow10mg/kgを点滴静注し, レーザー光線を手術標本, 特に癌腫, 外膜, 転移リンパ節および非転移リンパ節, および脂肪組織に照射し, eosin yellowの蛍光を観察した.その結果, 手術48時間前に投与した食道癌7症例中, 癌腫100%(5/5例) およびほとんどの転移リンパ節94.4%(17/18個) に蛍光がみられ, 外膜, 非転移リンパ節0%(0/8個), および脂肪組織では蛍光がみられなかった.以上より, eosinyellowを用いた食道癌に対する術中肉眼診断は可能であると思われた.
  • 本島 悌司
    1987 年 20 巻 4 号 p. 830-838
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    食道癌切除185例の術後合併症について, とくに術前経口的糖負荷試験 (OGTT) 施行85例の病型を糖尿病既治療型 (治DM型) 5例, 糖尿病型 (DM型) 29例, 境界型5例, 正常型36例に大別して検討した.耐糖能異常群は57.6%にみられ, 治DM型, DM型には縫合不全, 呼吸器系と中枢神経系合併症が正常型よりも多くみられた (p<0.05).また治DM型, DM型では多臓器障害 (MOF) 例が正常型よりも多くみられ (p<0.05), 71%の例が死亡した.さらに血小板減少症を併発すると85%の死亡率で, 非併発例よりも高率であった (p<0.05).術前にOGTTの病型を知っておくことは術後合併症発生の防止に有用であると思われる.
  • 浅江 正純
    1987 年 20 巻 4 号 p. 839-848
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    イヌの幽門側胃切除術後の消化管再建において, 約2cm長の有茎空腸漿膜筋層移植を行い, 代用括約筋機能を営ませる新しい再建術に関する実験を行った.胃排出では, 本術式群は流動食の場合, 標準BillrothI法 (B-I) 群よりも有意 (p<0.001~0.05) に遅く, 固型食の場合, 非胃切除群と変わりなかった.ダンピングテストは本術式群0%に対し, B-1群100%陽性であった.ICGを利用した十二指腸液胃内逆流は, 本術式群がB-I群の約1/3に抑制される傾向を認めた.移植空腸片の筋細胞は組織学的に線維化されることなく, 電気生理学的に平滑筋として10~12cycle/minで収縮運動を示した.本術式は今後臨床に十分応用可能と考える.
  • 広瀬 和郎, 向 仁一, 松本 俊彦, 村 俊成, 草島 義徳, 片山 外一, 東野 義信, 上村 卓良, 田中 茂弘, 宮崎 逸夫, 三輪 ...
    1987 年 20 巻 4 号 p. 849-855
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    過去9年間に低分化腺癌と組織学的に診断された進行胃癌切除34例を, 癌実質と間質結合織の程度から, 髄様型 (12例), 中間型 (2例), 硬性型 (20例) に分け臨床病理学的に検討した.その結果, 硬性型では1, 従来の報告と同様に「未分化型癌」としての特徴が認められた.一方, 髄様型では, 高齢男性の胃下部・中部の限局型癌が多く, 非治癒因子や再発形式として肝転移がみられた.また, 表層に管状・乳頭腺癌の組織像の混在がみられ, INFα, INFβでps (-) 症例が多かった.中間型では髄様型と類似した所見を呈した.以上より, 髄様型の低分化腺癌は, 硬性型と異なる臨床病理学的特徴を有し, むしろ「分化型癌」に近い性格を有していると考えられた.
  • 古河 洋, 岩永 剛, 建石 竜平, 谷口 春生
    1987 年 20 巻 4 号 p. 856-859
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    NG (N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine50μg/ml+0.04%Tween60) を生後4週齢のWistar系雌性ラットに4ヵ月間投与し, 妊娠・分娩・哺乳の発癌に対する効果を検討した112ヵ月後の発癌率をみると, NG投与のみの群 ((1) 群, 発癌率0%) にくらべて, 途中4ヵ月目~5ヵ月目に妊娠・分娩させる群 ((2) 群, 33%) や, さらに哺乳させる群 ((3) 群, 18%) では有意に発癌率が高かった (p<0.05).また, 妊娠中にはびらんの程度がもっとも軽度であった.さらにEP (エストロゲン+プロゲステロン) 投与により発癌がみられたことから, 妊娠・分娩 (哺乳) による雌ラットの発癌率の増加は, 妊娠から分娩に至る変化, とくに性ホルモンの変化が原因と考えられた.
  • 能美 明夫, 渡部 洋三, 織畑 道宏, 矢ヶ崎 喜三郎, 百瀬 隆二, 石井 康裕, 森本 俊雄, 佐藤 浩一, 大久保 剛, 佐々木 浩 ...
    1987 年 20 巻 4 号 p. 860-864
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    著者らは, 糖尿病の外科的重症度判定を目的として, 術前に糖尿病と診断された手術症例を術前インスリン投与不要群, インスリン小量投与群 (20IU/日未満, low dose: L群) および大量投与群 (20IU/日以上, high dose: H群) の3群に分け, 術前および術後合併症に関して検討した.術前合併症併存率は, インスリン投与2群 (H群は76.0%, L群は71.4%) において, 投与不要群の併存率20.3%より有意に高率であった.また術後合併症発生率は, 投与不要群の11.4%と比較して, H群は40.0%と有意の高値を示し, L群も22.9%と高い傾向を示した.以上より, 術前インスリン投与不要群を軽症, L群を中等症, H群を重症とする糖尿病の外科的重症度判定は有用であることが示唆された.
  • Clearing法および触診法を用いて
    木村 修, 水沢 清昭, 菅沢 章, 川角 博規, 竹林 正孝, 西土井 英昭, 貝原 信明, 古賀 成昌
    1987 年 20 巻 4 号 p. 865-870
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    大腸癌のリンパ節郭清, 切除範囲を検討するため, 進行大腸癌54例に対しクリアリング法および触診法を用いてリンパ節転移図を作製し, リンパ節転移様式を検討した.
    結腸癌36例においては, 腸管軸方向への転移は癌腫辺縁より4cm以内の癌腫近傍に限られており, 中枢方向への転移は転移陽性リンパ節の28.3%に認められ, 中枢方向への十分な郭清が必要と考えられた.また, 直腸癌18例においては, 口側腸管軸方向への転移が転移陽性リンパ節の61.3%と高率に認められたが, 肛門側への転移は認められず, 上行リンパ流に遮断がみられない場合, 肛門側切除腸管は2~3cmの狭い範囲でも十分であると考えられた.
  • 児玉 悦男, 勝見 正治, 田伏 克惇, 小林 康人, 湯川 裕史, 楠山 洋司, 浅江 正純, 橋本 忠明
    1987 年 20 巻 4 号 p. 871-874
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 大島 厚, 北島 政樹, 岩田 憲治
    1987 年 20 巻 4 号 p. 875-878
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 山瀬 博史, 二村 雄次, 早川 直和, 長谷川 洋, 前田 正司, 神谷 順一, 宮崎 芳機, 岡本 勝司, 岸本 秀雄, 塩野谷 恵彦
    1987 年 20 巻 4 号 p. 879-882
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 喜多 豊志, 石田 亘宏, 吉峰 修時, 冨田 隆, 日高 直昭
    1987 年 20 巻 4 号 p. 883-886
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 松尾 繁年, 江藤 敏文, 冨岡 勉, 宮本 峻光, 角田 司, 原田 昇, 土屋 凉一, 石津 要, 高原 浩
    1987 年 20 巻 4 号 p. 887-890
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 川西 孝和, 藤田 敏雄, 榊原 年宏, 石坂 龍典, 伊藤 博, 小泉 富美朝, 若木 邦彦
    1987 年 20 巻 4 号 p. 891-894
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 山口 明夫, 渡辺 俊雄, 熊木 健雄, 関野 秀継, 桐山 正人, 冨田 冨士夫, 宮崎 逸夫, 寺畑 信太郎, 松原 藤継
    1987 年 20 巻 4 号 p. 895-898
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
  • 渡辺 晃, 村上 穆, 俣野 一郎, 柴崎 信悟, 鎌迫 陽, 西連寺 愛弘, 西連寺 完茂
    1987 年 20 巻 4 号 p. 899-903
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    膵癌手術は200例で, 切除は149例, 切除率74.5%であった.便宜上50年を境に二期に分けた.P.D.112例, T.P.21例, D.P.13例などで死亡率は前期26%, 後期15.3%であった.主死因は膵腸吻合部の縫合不全であった.縫合不全防止目的などで12の術式を試行錯誤を続けながら行った結果, カテーテルを用い膵管空腸の無縫合吻合法ならびに膵液完全体外誘導法を考案し, 縫合不全を克服することが出来た.また各種再建法にそれぞれ検討を行った.最後に特殊な門脈再建を行った2救命例を提示した.生存曲線を示した5生例はstageI8例, III1例, 計9例であった.また, 症例に応じた拡大根治手術の成績に検討を加えた.
  • 松野 正紀, 今村 幹雄, 武田 和憲, 宮下 英士, 宮川 菊雄, 佐藤 寿雄
    1987 年 20 巻 4 号 p. 904-908
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    教室で経験した膵頭十二指腸切除術151例のうち, Child法に準じた消化管再建術を施行した149例について術後の病態, 社会復帰状態について検討した.広範囲胃切除の併施により本術式後の消化性潰瘍の発生は予防できると考えられた.本術式では消化管ホルモンの宝庫が切除されることになり, 術後早期には, 各種消化管ホルモンの分泌低下, 膵内外分泌機能の低下とそれによる代謝異常が生ずるが, 残膵機能保持に細心の注意を払うことにより, Child法再建による膵頭切除術では比較的質の高い術後の社会生活が期待できるものと思われた.
  • 中山 和道, 内田 立生, 友田 信之, 西村 祥三, 中山 陽城, 古賀 道弘
    1987 年 20 巻 4 号 p. 909-913
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    空腸瘻造設Whipple変法57例Child変法96例など計161例の直接死亡率は4.3%であった.膵空腸吻合法では, 端側吻合の膵管拡張例には膵管空腸粘膜吻合法を, 非拡張例には膵管空腸内挿入法を行い, 端々吻合では膵断端嵌入法を施行し好結果を得ている.現在79例連続直接死亡はなく重篤な合併症もみていず, 手術手技的な面では十分満足している.長期生存例の病態ではWhipple法にくらべChnd法の方が体重, 膵内分泌, 消化吸収においてやや良い傾向で, 挙上空腸の胆汁停滞が著しいほど残膵機能への影響が示唆されたが, 両法ともに全般的にみると満足すべき状態であった.Whipple法, Child法も膵頭十二指腸切除後の良い再建法である.
  • 鈴木 衛, 羽生 富士夫, 中村 光司, 今泉 俊秀, 吉川 達也, 大橋 正樹, 三浦 修, 梁 英樹, 新井田 達雄
    1987 年 20 巻 4 号 p. 914-918
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    PD術後3年以上の経過観察が可能であった95例を検討したところ, 長期観察症例のほとんどは膵胆胃配列のChild変法による消化管再建法が行われていたが, 術後の消化吸収機能は, 膵頭部癌と慢性膵炎の一部の症例を除けば, おおむね良好で大半は何ら愁訴なく社会復帰し, 比較的質の高い社会生活が可能であった.PD術後の消化吸収機能は, 単に消化管再建法の違いよりも, 原疾患や手術時のリンパ節郭清の程度, そして残存膵の機能に強く依存していると考えられた.PD術後の胆道感染症は, 癌再発, 胆管空腸吻合部狭窄, 下部腸管の癒着などが原因であったが, 再建空腸の腸内容輸送能の低下による胆汁うっ滞も逆流性胆管炎の原因と考えられた.
  • 中尾 昭公, 岸本 若彦, 鈴木 祐一, 市原 透, 野浪 敏明, 原田 明生, 末永 昌宏, 高木 弘
    1987 年 20 巻 4 号 p. 919-924
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除後の再建法として今永法を基本術式としているので, われわれの施行している術式と成績について検討した.
    1981年7月より1986年4月までの4年10カ月間に膵十二指腸切除術を83例に施行した.術式は膵全摘術43例, 膵頭十二指腸切除術40例であり, 膵頭十二指腸切除術40例中, 今永法で再建した34例を中心に術後成績について検討した.今永法膵頭十二指腸切除術施行34例中, 直死例は認めなかったが, 膵空腸縫合不全を3例 (8.8%) に認め, 2例がその合併症で入院死した.1984年以後は重篤な合併症もなく, 術後膵内外分泌能の検討でも比較的良好に維持されており, 今永法は簡便かつ生理的な再建法と考えられる.
  • 永川 宅和, 竹下 八州男, 小西 一朗, 八木 雅夫, 上野 桂一, 秋山 高儀, 萱原 正都, 宮崎 逸夫
    1987 年 20 巻 4 号 p. 925-929
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    教室では, 種々の検討から膵癌に対し拡大郭清術を施行してきた.しかし, これにともなって下痢を中心とする栄養障害が発来することから, その対策の1つとしてPDIII法の再建術式を採用するようになった.拡大郭清術における術後の消化吸収能をみると, 131I-Triolein試験, D-xylose試験, PFD試験ともにその障害は大で, 長期にみてもその回復は遅れたが, 膵内分泌能では特別なことはいえなかった.PDII法とPDIII法の術後消化吸収能を比較すると, D-xylose試験においてPDIII法では, 1.24±0.36gとPDII法の0.72±0.21gに比し, 有意に高値を示した.膵内分泌能では両者間に差異を認めなかったが, 胆道シンチの胆汁流出状態ではPDIII法の方が優れた結果がえられた.以上拡大郭清膵切除術後の再建法としてPDIII法がPDII法に比し良好であると考えられた.
  • 特に全胃温存術式の位置づけ
    高田 忠敬, 安田 秀喜, 内山 勝弘, 長谷川 浩, 土屋 繁之, 三須 雄二, 斉藤 康子, 四方 淳一, 国安 芳夫
    1987 年 20 巻 4 号 p. 930-933
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    1981年8月から1986年7月までの5年間に経験したWhipple変法15例, Child変法27例, 今永法9例, 全胃温存法12例の計63例において膵頭十二指腸切除後の消化機能について検討した.術後3月後のPFDや75g OGTTにおいては各術式間に有意差は見られなかった.胆道・消化管のDual Scanでは, 胆汁との混和能, 腸管運動能はChild変法がもっとも不良で, 今永法と全胃温存法が優れ, 中間にWhipple法が位置していた.全胃温存法は健常人とほぼ同じ結果を示した.体重の推移, 小胃症状については全胃温存法が他術式に比べ有意的に優れていた.
  • 白部 多可史, 尾形 佳郎, 高橋 伸, 神徳 純一, 古内 孝幸, 前田 京助, 都築 俊治, 阿部 令彦
    1987 年 20 巻 4 号 p. 934-938
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除後消化管再建法 (Child法15例・Child Roux-en Y法55例・今永I法48例・幽門輪保存Child法26例・Whipple法1例の計145例) を合併症と, 食物と胆汁の混合面より見た消化吸収機能を中心に検討を加えた.
    合併症発生率・手術死亡率には各再建術式間に有意の差を認めなかった.また胆道-消化管同時シンチグラムによる食物と胆汁の混合状態はBillroth I型式である今永I法がBillroth II型式であるChild Roux-en Y法より良好であった.さらにまた消化吸収能の改善を目的とした幽門輪保存術式 (全胃温存術式) は, 従来の術式に比べ術後の体重増加が著しく良好であり, 適応により施行すれば癌に対する根治性も損なわれない優れた再建法である.
  • 平塚 正弘, 大東 弘明, 亀山 雅男, 佐々木 洋, 石川 治, 甲 利幸, 福田 一郎, 古河 洋, 今岡 真義, 小山 博記, 岩永 ...
    1987 年 20 巻 4 号 p. 939-942
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胃上部早期癌で胃全摘術を施行した67例 (深達度m28例, sm39例) について検討した.リンパ節転移率は17.9%で, 単発癌ではNo.(8)(11) に, 術後に発見された多発癌ではNo.(6) に転移例がみられた.smの陥凹型では27.3%と高率であった.随伴IIbはIIc病巣より3.8cm肛門側に広がる症例があった.多発癌の頻度は17.9%(12例) で, とくに隆起型では50%と高率であった.多発癌の見落とし率は25%であった.副癌巣と食道噴門接合部との距離は小変線上で7.5cm以上が7例 (58%) であった.噴門側切除は噴門に近い小さい隆起型の早期癌に可能であるが, 多発癌の術前診断を慎重に行い, 術中に切除予定線粘膜の擦過細胞診と切除胃の断端迅速組織診を行う必要がある.
  • 噴門側切除か胃全摘か(リンパ節転移からみた検討)
    矢吹 英彦, 佐々木 廸郎
    1987 年 20 巻 4 号 p. 943-946
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    昭和44年から57年までに経験した胃癌切除例に対して, 当科における胃全摘例から算出した小弯平均距離14.9cm, 大弯平均距離45cmをふまえ, X線写真, 切除標本などから腫瘍の局在の厳密な再検討を行った結果, 上部胃癌は181例となった.それらの症例に対し5番・6番リンパ節転移率の検討, および噴切例, 全摘例の手術成績の比較を行い以下の結論をえた.
    1.C, Ce癌46例に5番・6番への転移はなく, Mに及んだ癌65例では4番30.8%, 5番7.7%, 6番12.3%の転移を認めたが, そのほとんどが非治癒手術例であった.2.C, Ce癌の治癒手術例では, 噴切33例と全摘14例に予後の差はなかった.3.X線写真上の占拠部位と切除標本上の占拠部位に一致しない例があった.
  • 鈴木 力, 武藤 輝一, 佐々木 公一, 田中 乙雄, 梨本 篤, 宮下 薫, 長谷川 正樹, 植木 秀任, 曽我 淳
    1987 年 20 巻 4 号 p. 947-950
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    上部胃癌, 胃全摘施行232例の所属リンパ節転移率は, No.1, 3, 61.6%, No.2, 4s, 41.8%(n168.1%), No.7, 8, 9, 36.2%, No.10, No.11各23.3%, No.4d, 5, 6, 16.4%であったが, 表在癌においては, 噴門側胃切除で郭清に制約を伴うNo.4d, 5, 6転移を認めず, 膵・脾合併切除の問題と関連するNo.10, No.11転移も16例中各1例に認めたのみであった.以上の結果の相対的リンパ節転移危険性: No.1, 3>No.2, 4s=No.7, 8, 9>No.10=No.11=No.4d, 5, 6から, 上部胃癌根治手術としては胃全摘術+膵体・尾部, 脾合併切除, R2-3郭清を基本とし, N (-) 表在癌に限り, 癌腫の胃体部進展の有無から, 単純胃全摘術または噴門側胃切除術 (R1郭清) を選択すべきものと考えられる.
  • 山田 真一, 岡島 邦雄, 冨士原 彰, 安田 正幸, 革島 康雄, 磯崎 博司, 桜本 邦男, 平松 昌子, 計田 一法
    1987 年 20 巻 4 号 p. 951-955
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胃上部癌に対する噴門側切除術の適応を検討する目的で, 胃上部癌59例を, 噴門部癌23例と非噴門部癌36例に分け, リンパ節転移, 胃上部癌の発育・進展様式, 遠隔成績から検討した.その結果根治性を失わないための胃上部癌に対する噴門側切除の適応としては, 壁内進展の面からは, 胃上部に限局し, 漿膜浸潤は認めず, 腫瘍長径4cm未満, さらに肛門側切離線まで表在癌2cm, 限局型3cm, 浸潤型5cmの距離を保つことと考えられた.またリンパ節転移からは, No.5, No.6, No.4dリンパ節に転移のない場合と考えられ, No.5リンパ節との関連からNo.3リンパ節への転移も重要な適応決定因子となると考えられた.
  • 特に噴門側切除の適応基準について
    太田 恵一朗, 西 満正, 中島 聰総
    1987 年 20 巻 4 号 p. 956-960
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胃上部癌の中には, 上部局在癌, 上部進展癌および噴門部癌の三者が存在し, おのおの臨床病理学的特徴が異なっており, 治療に際して十分把握しておく必要がある.
    癌研外科における胃上部癌の臨床病理学的特徴を明らかにし, 治療法別に累積生存率を検討し, 噴門側切除の適応を次のように設定した.1) Ce, C領域に局在し, 広くM領域に進展せず, 2) 表在・準早期および限局型で, 3) 明らかな漿膜面浸潤を認めず, 4) 第1群以下のリンパ節転移で幽門上下および右側大弯リンパ節に転移を認めない癌である.術式の工夫で, 噴切は安全かつ生理的で愁訴の少ない合理的縮小手術となってきた.
  • 小玉 雅志, 小山 研二, 成沢 富雄, 石川 浩一, 高橋 政弘
    1987 年 20 巻 4 号 p. 961-964
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    教室の胃上部癌78例に対する胃全摘出術の術後合併症, 予後は諸家の成績と同等であった.また, 胃上部癌に限らず, 胃全摘後ρ and Roux-Y法で再建された患者57名のアンケート調査から, 術後愁訴は軽度でquality of lifeは十分満足できるものであることがわかった.
    胃上部癌に対する胃全摘症例のリンパ節転移, 深達度, 腫瘍長径などを検討し, 表在癌か長径4cm未満のS0症例ならば噴門側胃切除術を行ったとしても胃全摘出術と同等の根治性が得られるとの結果を得た.噴門側胃切除術の術後生体機能に対する利点を考慮し, 安全で愁訴の少ない再建法を選択採用するならば, これらの症例に対し噴門側胃切除術の適応があると考えられる.
  • とくに噴門側胃切除と胃全摘の術後遠隔成績を中心に
    原田 和則, 三隅 厚信, 三隅 克毅, 馬場 憲一郎, 跡部 安則, 近藤 浩幸, 前野 正伸, 本明 宜彦, 金光 徹二, 赤木 正信
    1987 年 20 巻 4 号 p. 965-969
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    胃上部癌の外科的治療における噴門側胃切除 (噴切) か胃全摘 (全摘) かの術式の選択について, 両術式間の術後機能障害の比較検討を目的として, 術後の満足度, 術後愁訴, 脂肪消化吸収試験, 消化管ホルモンの成績などから考察を加えた.脂肪消化吸収試験, 術後の栄養障害, 消化管ホルモンの面からは噴切が全摘に比べて, また全摘では間置術がRoux-Y術に比べて良好であった.胃上部癌の外科治療においては, 十分に根治性が得られる範囲内で切除線を決定することが前提条件であり, 根治性を第一義的に考えて術式の選択をすべきである.その際, 根治性が保たれ残胃を大きく残すことが出来る場合には噴切適応の意義があると考えられた.
  • 根治性ならびに消化管ホルモン動態よりみた手術術式の選択
    水本 清, 古本 豊和, 野坂 仁愛, 河野 菊弘, 小立 寿成, 西村 興亜, 貝原 信明, 古賀 成昌
    1987 年 20 巻 4 号 p. 970-974
    発行日: 1987年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    過去25年間に経験した胃上部癌165例について占居部位をC, CEとCMに分け, 壁深達度別のNo.4d, 5, 6のリンパ節転移陽性率がどの程度あるか検討した結果から, C, CE癌ではS0であれば噴切, S1以上なら全摘が適応となり, CM癌ではすべて胃全摘が妥当と考えられた, また噴切後と全摘後の血清gastrin, secretin値を検索し, 噴切後の高gastrin動態が, イヌを用いた実験で膵外分泌, 消化管・膵へのtrophic actionで全摘よりも有利に働いていることを確認した.以上より噴切は全摘より膵外分泌, 消化吸収面で有利で, 術後代謝面でもすぐれた再建術式と考えられた.
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