日本消化器外科学会雑誌
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27 巻, 12 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 発色合成基質の相違による乖離現象について
    菊地 充, 渡辺 正敏, 中村 隆二, 斉藤 和好, 遠藤 重厚, 稲田 捷也, 吉田 昌男
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2517-2522
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    食道静脈瘤術後にみられたトキシカラーとエンドスペシー (ともに生化学工業, 東京) のエンドトキシン (以下, Et) 値の相違に関して検討を加えた.症例 (13例) において手術前後にNew PCA (過塩素酸) 法前処理で測定したトキシカラーとエンドスペシーとの値の差 (G因子活性化因子値, 以下G値) は, 術後46.3 (平均, pg/ml) より術後第1病日140.6に有意に上昇した (p<0.05).G値は, Etが失活する希釈加熱処理変法 (n=5) を用いた測定でも大きな変化を見せなかった.5例についてPCA法の上澄と沈殿のG値を測定すると, 術後第1病日では沈殿 (74.8) に比べて上澄 (115.5) でより高値を示した.
    以上の実験結果から, 術後第1病日のトキシカラーによる測定値の上昇はEtと異なることが示唆された.この原因はトキシカラーに含まれるG因子活性化因子による可能性がうかがわれた.
  • 長谷川 順一, 中尾 量保, 仲原 正明, 荻野 信夫, 西田 俊朗, 辻本 正彦, 濱路 政晴
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2523-2529
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃原発の非ポジキンリンパ腫 (以下, NHL) 31例を対象とし, nucleolar organizer regionsassociated proteins (以下, AgNORs) を中心に, 細胞学的悪性度と予後の関係を検討した.AgNORsは細胞周期中のS期分画の比率と正の相関が認められた (p<0.01).予後因子として組織型, 臨床病期, DNAploidy, AgNORs, 手術根治度, 化学療法の有無にっき単変量解析を行った結果, 臨床病期, AgNORs, 手術根治度の3因子に有意の差を得た (p<0.01).次にこの3因子について多変量解析を行った結果, AgNORsが最重要予後因子となった (p<0.05).また治癒切除の23例について, 再発の有無でAgNORsを検討した結果, 有再発症例 (9.5±0.6) は無再発症例 (5.4±1.5) に比べ高値であった (p<0.01).以上よりAgNORsは胃NHLの生物学的悪性度を示す.良い指標であり予後因子として有用と考えられた.
  • 大橋 薫, 織畑 剛太郎, 神田 博司, 大浦 慎祐, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2530-2535
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    孤立性胃静脈瘤19例の病態と手術成績を検討した.孤立性胃静脈瘤の供血路は血管造影上, I群 (左胃静脈優位型) 2例, II群 (左胃静脈ならびに後胃静脈, 短胃静脈均等型) 6例, III群 (後胃静脈, 短胃静脈優位型) 11例に分類され, 供血路として主に後胃静脈に短胃静脈の関与するIII群症例が57.9%を占めた.また, 流出血行路としての胃腎短絡路は19例中18例認められた.末梢血NH3値と腎静脈合流部上下間での下大静脈血NH3値の差異をみると, 供血路として左胃静脈が関与するI+II群はIII群に比較し有意に高い値を示し (p<0.05), NH3の高い門脈血が左胃静脈と胃腎短絡路を介して大循環系に流出していることが示唆された.手術成績についてはHassab手術後, 胃静脈瘤は全例で消失し, 術後5年累積生存率は52.14%であった.孤立性胃静脈瘤の治療は供血路ならびに流出血行路の徹底した遮断が肝要であり, Hassab手術が最も合理的なものと考えられた.
  • 鈴木 孝雄, 落合 武徳, 永田 松夫, 軍司 祥雄, 中島 一彰, 磯野 可一
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2536-2542
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌患者における免疫反応を評価する目的で, lymphokine-activated killer (LAK) 活性を中心とした免疫学的検索を行った.胃癌20例の所属リンパ節, 脾臓, 末梢血単核球を検索対象とした.組織間の比較では, 脾臓, 末梢血がリンパ節よりも高いLAK活性を示した (p<0.05).サプレッサーT細胞はリンパ節ではほとんど認められなかったが, 末梢血では高値を示した (p<0.05).一方, キラーT細胞は各組織間に差はみられなかった.また癌の進展に伴い, リンパ節転移陽性例ではIL-2非誘導LAK活性が末梢血で低下し (p<0.05), メモリーヘルパーT細胞は第1群リンパ節で低下がみられた (p<0.05).しかし漿膜浸潤の有無別の検討では, LAK活性, 単核球亜分画に一定の傾向を認めなかった.以上, 胃癌患者におけるLAK活性を中心とした免疫学的検索の有用性を報告した.
  • 高橋 直樹
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2543-2550
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝転移予防を目的とし抗癌剤含有lipiodol emulsionの投与経路別効果を検討した.まず, 抗癌剤としてEpirubicin 0.5mg/kgをlipiodolとemulsion化し家兎に経肝動脈 (以下, IA) または経門脈 (以下, IP) 的に投与し組織内濃度, 血液生化学データの変化を検討した.次に, VX2腫瘍を1.0×106個, 経門脈的に移植し, 移植後3日目 (着床期) または10日目 (微小肝転移期) にIA, IPし, 16日目の肝表面転移個数で評価した.組織内濃度はIA, IPとも肝臓で5時間以上1μg/mgが維持された.また, ともにGOT, GPTの上昇が認められたが一過性であった.転移個数は着床期ではIA, IP群ともにコントロール群に比べ有意 (p<0.05) に転移個数が少なかったが, 微小肝転移期ではIA群のみに有意差 (p<0.05) が認められた.IA, IPがともに肝転移発生のごく早期においては有効であるが, それ以降の微小肝転移巣に対してはIAが有効であった.
  • 富田 凉一, 黒須 康彦, 五十棲 優, 丹正 勝久, 宗像 敬明
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2551-2556
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    回肛吻合術 (直腸短筋筒, J型回腸嚢) を行った12症例 (ulcerative colitis: UC8例, adenomatosiscolilAC4例, 男性8例, 女性4例, 14~56歳, 平均39.2歳) を, 回腸人工肛門閉鎖術後より最短1年6か月以上経過した時点 (UCは20~106か月, 平均51.6か月, ACは24~87か月, 平均58.5か月) で, soiling (一) 7例とsoiling (+) 5例の2群に分け, 排便異常のない体表手術例15症例 (男性8例, 女性7例, 27~69歳, 平均4910歳) を対照としてlow compliance infused open tip法を用いて直腸肛門内圧検査成績を比較検討した.その結果, soiling (+) 例は対照例, soiling (一) 例に比べて, 括約筋機能 (肛門管長, 肛門管最大静止圧, 肛門管最大随意収縮圧), 排便知覚 (最小知覚量), 貯留能 (コンプライアンスのみ) の低下を示した.soiling (+) 例において, 括約筋機能と排便知覚の低下は肛門括約筋群に対する手術損傷が, そして貯留能でのコンプライアンスの低下は, UC自体の炎症の残存直腸筋層への波及が, 影響したことが考えられる.
  • 野村 務, 笹島 耕二, 宮下 正夫, 杉崎 祐一
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2557-2563
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    ラットにlipopolysaccharide (LPS) を投与, endotoxin shockモデルを作成し, 血清および肝組織phospholipase A2 (PLA2) 活性を経時的に測定した.LPS投与30分後に血清PLA2活性は投与前の194.4±25.4 (mean±SEM) pmol/ml/minから359.1±56.4pmol/ml/minに有意に上昇し, その後漸減した.肝組織内PLA2活性も投与30分後に7.8±0.6pmol/mg protein/minから10.2±0.2pmol/mg protein/minに上昇した.血清, 肝組織ともに熱処理 (55℃, 5分間) による活性の低下はLPS投与群で著明であった (p<0.01).LPS投与群のPLA2活性は反応液中のCa2+濃度の低下により著明に低下した.形態学的にはLPS投与1時間後より, Kupffer細胞や傷害部の肝細胞ライソゾーム膜にPLA2活性部位の増加を認めた.LPS投与によるendotoxin shock時に, 血清および肝組織中で, 熱に不安定でCa2+依存性のPLA2活性の上昇が, ごく早期から認められた.
  • 林部 章, 田中 肇, 鬼頭 秀樹, 阪本 一次, 樽谷 英二, 中上 健, 柳 善佑, 十倉 寛治, 浅田 健蔵, 竹林 淳, 佐久間 裕 ...
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2564-2568
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    われわれはシリコン膜で補強したExpandable Metalic Stent (以下, EMS) を挿入した癌性食道狭窄の3例を経験したので報告する.症例1は49歳の男性で胸部上部食道癌の診断で入院した.食道気管支瘻および気管内播種性転移病変を認めたため, 切除不能と判断し, 癌性狭窄部にEMSを挿入した.症例2は61歳の男性で, 胸部中部食道癌との診断を受けたが, 心肺機能低下のため根治手術を施行しえず, 姑息的治療としてEMSを病変部に挿入した.症例3は85歳の女性で, 胸部上部食道癌であったが, 年齢に伴う心肺機能低下のため根治手術を施行しえず, EMSを病変部に挿入した.症例1, 2, 3のいずれにおいてもステント挿入後食事摂取可能となり, quality of lifeの改善を認めたことより, 切除不能癌性食道狭窄に対する膜付きEMSの挿入は有用な姑息的治療法であると思われた.
  • 加藤 一哉, 松田 年, 小野寺 一彦, 葛西 眞一, 水戸 廸郎, 程塚 明, 小林 達男
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2569-2573
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃悪性リンパ腫は胃悪性腫瘍の1%とされまれな疾患とされる.今回われわれは胃反応性リンパ細網細胞増生reactive lymphoreticular hyperplasia (RLH) との鑑別が非常に困難であり, また術前にherpes zoster脳炎も併発した興味ある症例を経験したので報告する.76歳の男性で主訴は心窩部痛, 胃X線造影, 胃内視鏡, 腹部CT検査にて胃の粘膜下腫瘍病変が発見された.生検材料における病理組織学的および免疫組織学的所見では, RLHと診断されるもlow grade malignancyの悪性リンパ腫も否定できず手術を施行した.切除標本病理の組織および免疫組織学的診断は, RLHを随伴する胃悪性リンパ腫 (diffuse lymphoma, small cell type, Bcell pheno type) であり, RLHが胃悪性リンパ腫の初期像であることを示唆する症例と考えられた.
  • 村上 信一, 内田 雄三, 久保 宣博, 平岡 善憲, 野口 剛, 松本 克彦, 葉玉 哲生, 藤岡 利生, 横山 繁生
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2574-2577
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    患者は73歳の女性で, 嚥下障害を主訴として来院した.食道切除と胃全摘術を行い, 患者は術後51か月の現在再発の兆候もなく健在である.切除標本では噴門部にまたがる大きさ5.0×5.0cm大, Borrmann2型の病変とIIc型の胃病変が相接していた.組織学的検索では前者は低分化型扁平上皮癌で後者は悪性リンパ腫と2つの組織型が確認された.2つの腫瘍が衝突する部分の連続切片において両成分は相接していたが交雑した像は認められなかった.また, リンパ節転移巣においてはいずれか1つの成分の転移がみられ, 両成分の混在は認められなかった.免疫組織学的検索では扁平上皮癌はケラチンとepithelial membrane antigenが陽性であり, 悪性リンパ腫ではleucocyte common antigenが陽性であった.以上の組織学的所見は衝突腫瘍の概念に一致していた.
  • 超音波診断について
    成田 匡志, 中尾 量保, 仲原 正明, 前田 克昭, 荻野 信夫, 西田 俊朗, 宮崎 知, 江本 節, 前田 庄平, 黒田 征加, 辻本 ...
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2578-2582
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    胃癌の手術を契機に超音波検査で発見された腹腔動脈起始部圧迫症候群 (celiac axis compressionsyndrome: 以下, CACSと略記) の1例を報告する.症例は50歳の男性.既往歴として幼少時より月に1~2度腹部仙痛を自覚.主訴は嚥下困難で, 噴門部癌の診断のもとに当科に紹介入院-術前の超音波検査にて, 腹腔動脈起始部の狭窄と総肝動脈の遠肝性血流を認めCACSと診断した.左開胸開腹下に胃全摘術, 摘脾術を施行した.術中に内側弓状靱帯による腹腔動脈起始部の圧迫を確認し, 靱帯を切離した.電磁流量計により測定した総肝動脈血流量は靱帯切離前後で40ml/分から115ml/分に増加した.術後に腹痛の発生を認めず, また術後の超音波ドプラ検査にて総肝動脈の求肝性血流を確認した.超音波検査はCACSの診断および治療効果判定に有用と思われた.
  • 名取 志保, 若杉 純一, 遠藤 格, 渡会 伸治, 山岡 博之, 嶋田 紘, 松尾 恵五, 中谷 行雄
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2583-2586
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で心窩部痛を主訴に来院, 胃内視鏡検査で胃角部後壁の0' (IIc+III) T2型胃癌と診断した.CT検査でNo.7と16b1リンパ節の腫大を認め, 血清alpha-fetoprotein (AFP) 値は3.0ng/mlと正常であったが, carbohydrate antigen 19-9 (CA19-9) 値は490ng/mlと高値を呈した.胃全摘術および膵体尾部・脾臓・左副腎・胆嚢合併切除によるD4郭清を施行した.原発巣は深達度ssの低分化型腺癌でNo.7と16b1の転移リンパ節にのみ肝様腺癌を認めた.AFPおよびCA19-9染色は原発巣ではともに陰性であったが, 転移リンパ節の肝様腺癌ではAFP陽性細胞が散在性に認められ, CA19-9染色はすべての細胞がびまん性に染色された.以上より本例は転移リンパ節の肝様腺癌がCA19-9を産生したまれな症例と思われた.肝様腺癌はAFP産生胃癌に特徴的な組織型であるが, 本例のようにCA19-9値が高値の肝様腺癌は広範なリンパ節転移をきたすので十分なリンパ節郭清が必要である.
  • 平井 隆二, 清水 信義, 曽我 浩之, 臼杵 尚志, 佐々木 澄治
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2587-2591
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    肝inflammatory pseudotumor (以下, IPTと略記) は海外, 本邦併せて55例の報告しかないまれな疾患で悪性腫瘍との鑑別が困難である.我々は肝IPTの1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告した.症例は46歳, 女性.心窩部痛と発熱を主訴とし入院.白血球は17,000/mm3と上昇し, 超音波検査にて肝外側区域に境界不明瞭な高エコー病変と胆嚢結石を認めた.Plain CTにてlow densityで造影するとhigh densityを呈した.血管造影でtumor stainを認めた.内視鏡的逆行性胆管造影で総胆管の軽度の拡張と左主肝管での狭窄, 腫瘤内での胆管の不規則な拡張, 蛇行および総胆管結石, 胆嚢結石を認めた.悪性腫瘍を完全に否定できないため, 肝左葉切除, 総胆管切石術を施行した.腫瘤は黄白色を呈し組織学的に肝IPTと診断された.炎症を伴う肝腫瘤の診断ではこの疾患の存在の認識が重要と思われた.
  • 安田 博之, 鬼束 惇義, 宮田 知幸
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2592-2595
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    腹部鈍的外傷による胆嚢破裂の1例を経験した.患者は49歳の男性.飲酒運転中の交通事故で受傷し来院した.来院時には軽度の腹痛を認めるのみであった.自覚症状に乏しかったが, 受傷6日後に総ビリルビン値が5.0mg/dlまで上昇した.点滴静注胆道造影併用CT, ERCPを施行し, 胆嚢破裂と診断し受傷後16日目に手術を施行した.開腹すると, 腹腔内に胆汁性の腹水を認めた.胆嚢底部から体部にかけて肝床より剥がれており, 体部前壁に直径8mmの破裂孔を認めた.合併損傷を認めず胆嚢摘出術と腹腔ドレナージを施行した.受傷直後より腹部所見に乏しく, 食事摂取, 歩行も可能で結果的に受傷から手術に至るまで時間を要した.胆嚢破裂の診断にはDIC-CT, ERCが有用であった.
  • 吉岡 裕司, 小島 治, 飯塚 亮二, 山根 哲郎, 高橋 俊雄
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2596-2599
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    3世代にわたり当教室で手術した家族性大腸腺腫症の11症例を検討した.
    1.本家系では世代が進むにつれて, 手術時平均年齢が若年化していた.癌併存例では, 第1, 第3世代の手術時平均年齢の差は16.5歳あり, 世代が進むにつれて癌発生が早くなる可能性があり, 本症の早期発見 (15~20歳) が必要である.
    2.癌併存例の術後の経過観察において胃癌, 胆管癌各1例が発生しており, 上部消化管の長期にわたる検査が必要である.
    3.網膜色素上皮肥大の検査は本症のスクリニーングに有用と考えられる.
    4.回腸直腸吻合術の術後には, 残存直腸の癌発生に対する癌化学予防が重要と考えられる.
  • 岩間 毅夫, 今城 眞人, 榎本 雅之, 豊岡 正裕, 富田 浩, 鄭 柄椿, 石田 秀行, 北郷 邦昭, 嘉和知 靖之, 吉永 圭吾, 三 ...
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2600-2604
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    女性においては回腸肛門吻合術後の生活の質を評価する重要な要素として, 妊娠, 出産を挙げることができる.家族性大腸腺腫症に対して行われた回腸肛門吻合術後の出産例3例を経験したので報告し, 妊娠中の排便状況の変化および合併症につき検討した.3例とも術後の肛門管最大静止圧は70cmH2O以上 (正常100cmH2O) であった.いずれも帝王切開による出産で, 子に異常を認めなかった.帝王切開の適応は, それぞれ症例1は胎児の横位, 症例2は頻回腹部手術, および症例3は妊娠後期のイレウスによる腸切除術であった.妊娠前の排便回数は1日6~8回であり, 失禁はなかった.妊娠中, および出産前後において排便状況が悪化することはなかった.回腸肛門吻合術後の出産は十分可能で, 子にも問題ないことが示された.妊娠は回腸肛門吻合術後の排便機能に悪影響は及ぼさないと結論された.ただし妊娠中イレウスの発生に注意すべきである.
  • 多田 真和, 金丸 洋, 堀江 良彰, 小高 明雄, 村田 戒
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2605-2608
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    S状結腸間膜内ヘルニアは内ヘルニアの中でも極めてまれである.本邦においてはこれまでに瀬藤らおよび山田らによる2例の報告があるにすぎない.特徴的な所見を欠き, 術前診断は非常に困難である.
    症例は83歳の男性で, 左下腹部痛および嘔吐を主訴に来院.腹部手術, 外傷, 腹痛発作などの既往もなく, 絞扼性イレウスを思わせる強い臨床症状や検査所見を認めなかったため, 保存的治療を行った.第9病日になってもイレウスが解除されないため, 開腹手術を施行した.約10cmの回腸がS状結腸間膜右葉に存在する欠損部から底部は後腹膜, 側方はS状結腸間膜左葉で囲まれた腔内に嵌入しており, S状結腸間膜内ヘルニアによるイレウスと診断した.嵌入腸管を還納し間膜の欠損部位を縫合し手術を終了した.術後経過は良好で退院した.
  • 大木 聡, 柿沼 臣一, 草場 輝雄, 大和田 進, 森下 靖雄
    1994 年 27 巻 12 号 p. 2609-2613
    発行日: 1994年
    公開日: 2011/06/08
    ジャーナル フリー
    脾臓にのみ孤立性転移を認めた結腸癌の1例を経験した.症例は73歳の男性で, 下行結腸癌と脾腫瘍の診断で入院した.術前の画像診断で, 脾腫瘍は原発性か転移性かの鑑別は困難であった.術中に肝転移や腹膜播種のないことを確認して, 左半結腸切除術と脾臓摘出術を施行した.結腸の病理組織学的検査は中分化腺癌であり, 脾腫瘍も同一組織型で, 結腸癌の脾転移と判明した.
    大腸癌の脾転移は頻度が低く, 特に多臓器転移を認めず, 脾臓にのみ転移した例はまれで, 本邦報告例は自験例を含めて8例にすぎない.自験例の脾転移経路は, 血行性と考えられた.大腸癌の孤立性脾転移の中には長期生存例もあり, 積極的に脾臓摘出術を含めた手術を行うべきと考える.
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