日本消化器外科学会雑誌
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48 巻, 5 号
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症例報告
  • 土井 雄喜, 大島 貴, 菅野 伸洋, 林 茂也, 木村 準, 吉川 貴己, 利野 靖, 大谷 方子, 國崎 主税, 益田 宗孝
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 399-406
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     症例は57歳の女性で,胸背部痛を主訴に受診した.CTにて胃壁に連続する40 mm大の腫瘤を認め,胃粘膜下腫瘍を疑い超音波内視鏡検査を施行した.超音波内視鏡検査では,食道胃接合部の粘膜下に境界明瞭で内部均一な低エコーを呈する壁外に突出する病変として認められ,さらに精査目的で施行したMRIでは,腫瘍内部は均一でT1強調画像で著明な高信号を呈し,T2強調画像では淡い高信号を呈していた.以上から,内腔に粘調な液体を伴った囊胞状の腫瘍と診断し,腹腔鏡下に病変を切除した.切除標本は壁に厚みのある囊胞状で,内部には褐色で粘調度の高い液体を認めた.病理組織学的検査所見にて壁の内側が多列円柱線毛上皮に被われていることから,気管支原性囊胞と診断した.気管支原性囊胞が胃壁に発生することは比較的まれであるが,悪性化の可能性もあるため,切除すべき鑑別疾患の一つとして本疾患を認識しておく必要があると考えられた.
  • 大原 佑介, 山本 雅由, 稲川 智, 永井 健太郎, 奥田 洋一, 釼持 明, 内田 温, 菊地 和徳
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 407-413
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     症例は70歳の男性で,2013年5月に下痢を主訴に近医を受診し,精査目的で当院紹介となった.その結果,胃癌(4型),S状結腸癌(2型),左腎腫瘍(腎細胞癌疑い)を認め,また腹腔内に多数のリンパ節腫大を認めた.胃癌とS状結腸癌はともに通過障害を伴っていたため手術の方針となった.開腹するとリンパ節転移の他に多数の腹膜播種結節を認めた.胃全摘術,ハルトマン手術を施行し,術後経過良好にて第11病日に退院した.病理組織学的検査所見で,胃癌は低分化腺癌および印環細胞癌,S状結腸癌は高分化腺癌が主体であった.特に胃癌の浸潤転移が著明で,腸間膜リンパ節転移および腹膜播種は胃癌によるものと診断された.胃の低分化腺癌および印環細胞癌はびまん性に浸潤転移を来すことが知られているが,本症例は同時性に存在したS状結腸癌の所属リンパ節への転移を認めたまれな症例であった.
  • 敦賀 陽介, 蒲池 浩文, 三橋 智子, 田原 宗徳, 若山 顕治, 折茂 達也, 柿坂 達彦, 横尾 英樹, 神山 俊哉, 武冨 紹信
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 414-420
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     症例は55歳の男性で,心窩部痛を主訴に前医を受診し,CTにて膵臓のびまん性腫大,下部胆管の狭窄および胆囊底部に約20 mm大の広基性腫瘤を認め,血清IgG4高値を認めたため自己免疫性膵炎と診断されたが,胆管狭窄と胆囊病変に対する精査目的に当科紹介となった.狭窄部の胆管生検では悪性所見を認めず,胆管狭窄の原因はIgG4関連硬化性胆管炎と考えられたが,胆囊病変の悪性の可能性が否定できなかったため,拡大胆囊摘出術を施行した.病理組織学的検査所見では,胆囊病変は悪性所見を認めず,膠原線維の増生およびIgG4陽性の形質細胞の浸潤を多く認め,IgG4関連の炎症性偽腫瘍と診断された.自己免疫性膵炎は,IgG4関連疾患の主要な病変であり,さまざまな膵外病変が報告されているが,胆囊の炎症性偽腫瘍合併の報告は極めてまれである.
  • 佐野 直樹, 柳澤 和彦, 岩崎 健一, 宮本 良一, 村田 聡一郎, 稲川 智, 寺島 秀夫, 大河内 信弘, 中野 雅之
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 421-428
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     成人発症の原発性後腹膜囊胞性成熟奇形腫は極めてまれな疾患である.外科的切除を施行し上記診断に至った2症例を経験した.症例1は49歳の女性で,30歳妊娠時に仙骨前面に7×6 cmの腫瘍を指摘されたが出産のため経過観察となった.出産後は通院が中断していた.49歳時に尿閉を主訴に当院紹介となった.骨盤内に17 cmに増大した腫瘍を認め尾骨合併腫瘍切除術を施行した.症例2は23歳の女性で,23歳の帝王切開時に後腹膜腫瘍を認めた.その後の精査で仙骨前面に9×7 cmの分葉状囊胞性腫瘍を認め尾骨合併腫瘍切除術を施行した.術後病理組織学的診断はどちらも囊胞性成熟奇形腫であり悪性所見は認められなかった.成人発症の原発性後腹膜囊胞性成熟奇形腫は極めてまれな疾患である.悪性転化症例は予後不良だが,転化前ならば切除により良好な予後が得られており,発見された際は迅速な外科的切除を行うべきである.
  • 林 忠毅, 矢田 達朗, 西脇 由朗, 中村 明子, 大菊 正人, 藤田 剛, 田村 浩章, 平山 一久, 金井 俊和, 池松 禎人
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 429-435
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     Müller管囊胞はMüller管由来の上皮に覆われた囊胞で,男性骨盤内に好発し,剖検例では1%弱にみられるまれな疾患と報告されている.今回,我々は貧血精査の際に偶然発見された後腹膜原発Müller管囊胞の1例を経験したので報告する.症例は51歳の女性で,受診1年前から易疲労感,左側腹部腫瘤触知を自覚していたが疼痛はなく経過観察していた.その後近医で貧血を指摘され,精査を目的に当院に紹介となった.精査中に偶然腹部CTで左中腹部に径10 cm大の囊胞性腫瘤が指摘された.腫瘤は左結腸動脈の背側に存在し後腹膜腫瘤と診断された.画像上悪性所見はみられず,良性の後腹膜囊胞と判断し開腹腫瘤摘出術を施行した.術後の病理組織学的検査では上皮性の後腹膜原発Müller管囊胞と診断された.
  • 南 貴人, 西平 友彦, 三木 明寛, 森岡 広嗣, 鈴木 貴久, 大谷 剛, 北村 好史, 吉谷 新一郎, 石川 順英, 荻野 哲朗
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 436-441
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     極めてまれな小腸calcifying fibrous tumor(以下,CFTと略記)によるイレウスの1手術例を経験したので報告する.症例は69歳の男性で,腹痛を主訴に受診した.腹部超音波検査や腹部CTで小腸に石灰化を伴う径約1 cmの結節を認め,前後で小腸が屈曲しcaliber changeを認めた.イレウスの診断でイレウス管を挿入したが改善せず手術を施行した.術中所見ではイレウス管の先端付近で小腸が屈曲して閉塞機転となっており,屈曲部分を含む小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見では屈曲部位の小腸筋層内に石灰化を伴う辺縁平滑な径1 cmの硝子化結節を認めた.免疫組織化学的には,結節内のごく少数の紡錘形細胞にvimentin,CD34との陽性反応を認めた.α-SMA,desmin,S100,CD117,ALKとの有意な陽性像は認めずCFTと診断した.
  • 成廣 哲史, 中島 紳太郎, 満山 喜宣, 衛藤 謙, 小村 伸朗, 池上 雅博, 矢永 勝彦
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 442-448
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     症例は52歳の女性で,子宮体癌,卵巣癌,甲状腺癌,直腸癌に対して根治術が施行され,無再発で5年以上が経過していた.2010年12月に下部内視鏡検査で上行結腸に2型腫瘍を認め,生検で印環細胞癌と診断された.他臓器癌の浸潤や転移の可能性が考慮されたが,画像検査でこれを示唆する所見がなく,原発性上行結腸癌と診断した.開腹による結腸右半切除術を施行し,回腸末端から15 cm口側に腫瘤を触知したため,同部から10 cmのマージンを確保して腸管を切離した.上行結腸病変は粘膜下腫瘍の形態で印環細胞がびまん性に粘膜下層から漿膜下層まで浸潤し,上皮内に癌組織を認めなかった.回腸病変は高分化型腺癌から連続して粘液湖が形成され,漿膜下層に低分化腺癌や印環細胞の増殖を認めた.免疫染色検査の結果,原発性小腸癌の上行結腸転移と診断した.今回,我々は原発性小腸癌の上行結腸転移の症例を経験したので報告する.
  • 深田 浩志, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 服部 正興, 宮田 完志, 小澤 幸泰, 伊藤 雅文
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 449-455
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     症例は49歳の男性で,17歳時に胃穿孔性腹膜炎の既往がある.2009年3月から急性骨髄性白血病のため末梢血幹細胞移植などの治療を受けていた.2013年1月よりイレウスのため3回の入院歴がある.2013年5月,腹痛のため来院しイレウスと診断され入院した.小腸造影で小腸に狭窄を認め,CTでは下腹部の小腸に限局性壁肥厚を認めた.USでは小腸に長径3 cmの限局性低エコー腫瘤を認め,壁の層構造は消失していた.以上より,小腸腫瘍による腸閉塞,特に急性骨髄性白血病の髄外浸潤を疑い開腹手術を行った.切除標本では径50×30 mmの表面細顆粒状の広基性隆起性病変を認めた.病理組織学的に小腸壁全層に骨髄芽球が高度に浸潤し,免疫組織学的にCD34+の芽球を多数認め,急性骨髄性白血病の髄外浸潤と診断した.骨髄性白血病・骨髄増殖性疾患の患者の消化管に腫瘤を認めた際は,骨髄芽球の髄外浸潤の可能性を念頭におく必要がある.
  • 大原 信福, 森田 俊治, 小森 孝通, 谷田 司, 野田 剛広, 今村 博司, 岩澤 卓, 保本 卓, 足立 史朗, 堂野 恵三
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 456-462
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     下腸間膜動脈領域に形成された動静脈奇形(arteriovenous malformation;以下,AVMと略記)によって虚血性大腸炎が発症したと考えられた1例について報告する.AVMにより虚血性大腸炎を発症することはまれであり,本邦で初の報告例と思われるため報告する.症例は74歳の男性で,血便を主訴に来院した.大腸内視鏡検査で左側結腸に高度の粘膜浮腫とうっ血を認め,虚血性大腸炎が疑われた.腹部造影CTでは左側結腸壁の造影不良と,下腸間膜動脈領域の2か所にAVMが指摘された.血管造影検査で下腸間膜AVMを確認し,引き続き塞栓療法を試みたが手技中に腸管浮腫が急性増悪したため中断した.結腸左半切除術を施行し,単孔式横行結腸人工肛門を造設した.術後は合併症なく経過し,術後7か月まで再出血を認めていない.
  • 三好 修, 仲野 秀
    原稿種別: 症例報告
    2015 年 48 巻 5 号 p. 463-471
    発行日: 2015/05/01
    公開日: 2015/05/16
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     症例は82歳の女性で,78歳時に総胆管結石症に対し総胆管十二指腸端側吻合術を施行されたが,その後も食物残渣による胆管炎を繰り返していた.今回,食物残渣の胆管十二指腸吻合部への嵌頓による閉塞性胆管炎に対し,内視鏡下で食物残渣を摘出したのち入院となった.繰り返す胆管炎に対し,胆管内に遺残する複数の食物残渣除去後に消化管経路変更術を行う方針とした.Endoscopic retrograde cholangiography(ERC)下での胆管内の食物残渣除去中にショック状態となり,帰室後心肺停止となった.心肺蘇生後のCTで血管内に大量のガス像,ultrasonic echocardiography(UCG)で右心室の拡張と壁運動低下を認め,空気による肺塞栓症と診断した.肺塞栓に対する治療を行い全身状態改善後,幽門側胃切除,Roux-en-Y再建による消化管経路変更術を施行し軽快退院となった.
編集後記
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