新鮮剖検例から得たヒト総胆管末端部について詳細な形態学的検討を行い, まずその正常所見を確立した.次いで年齢別に総胆管末端部各部の周の計測と組織学的変化を検した.
その結果, 加齢に伴い総胆管十二指腸内部, 特に前膨大部では粘膜下および筋層内管分枝, 腺増生, 線維化が増強し, 計測上狭窄傾向を示した.総胆管では膠原線維増生, 弾力線維の全層にわたる増生と断裂が観察され, 拡張を示した.すなわち加齢に伴う前膨大部の狭窄進行と総胆管壁の弾力性低下があいまって, 総胆管拡張が発現するものと考えられた.このことは胆汁うっ滞, 感染を起しやすい要因となり, ひいては総胆管結石生成の一因を成すものであろう.また有石例との比較をも行い, これを総胆管末端部における病理学的変化解明の第一歩とした.
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