日本消化器外科学会雑誌
Online ISSN : 1348-9372
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30 巻, 10 号
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  • 牧野 治文
    1997 年 30 巻 10 号 p. 1973-1977
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌のリンパ節転移診断におけるGd-MRIの有用性を検討した. 対象: 食道癌手術例42例 (摘出リンパ節50結節). 方法: P-MRIを撮像した後, Gd-DTPAを0.1mmol/kg静脈内投与し結時的にGd-MRIを撮像した. 描出されたリンパ節のintensity変化と摘出標本における組織学的転移の有無について検討した. 結果: 食道癌の転移リンパ節と非転移リンパ節のintensityは造影7.5分後に最大の差を認め, 造影7.5分後での検討が有用と考えられた. 簡便な診断基準を設けるためenhancement ratio (ER) を考案し検討を加えた. ER二45%をcut off値とした場合極めて良好な結果がえられた (sensitivity 93.9%, specificity 88.2%, accuracy 92.0%). Gd-MRIは食道癌の術前リンパ節転移診断に有用であり, 今後, 食道癌の治療方針決定にGd-MRIが重要な検査法となると思われた.
  • 福元 俊孝, 島田 麻里緒, 夏越 祥次, 中野 静雄, 吉中 平次, 白尾 一定, 貴島 文雄, 草野 力, 馬場 政道, 愛甲 孝
    1997 年 30 巻 10 号 p. 1978-1984
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    教室では, 原則として深達度m2までの早期食道癌は内視鏡的粘膜切除 (endoscopic mucosal resec tion, EMR) の対象としている. 1992年5月から96年8月までにEMRによって切除された30症例, 38病巣について, その適応の妥当性, 治療成績について検討した. その結果, 1) 内視鏡所見は28病集 (73.7%) が, 0-IIbまたは0-IIcであった. 2) 大きさは30病巣 (78.9%) が20mm以下であった. 3) 予測深達度と組織学的深達度の一致率はdysplasiaであった4例を除いて70.6% (24/34病巣) であった. 4) 合併症として, 動脈性出血が5例 (16.7%) に, 穿孔, 皮下気腫がそれぞれ1例 (3.3%) にみられた. 5) 再発が3例, 異時性食道癌が1例にみられ, いずれも再EMRを施行した. 6) 他病死1例, 深達度sm3で手術を施行した1例が癌死した. その他は最長4年5か月を含め, 全例生存中である. 深達度m2までの, 全周性でない癌はEMRの適応であり, その治療成績も満足できるものであった.
  • 小村 伸朗, 柏木 秀幸, 青木 照明, 古川 良幸
    1997 年 30 巻 10 号 p. 1985-1989
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    嚥下困難を主訴とし, 逆流性食道炎を併発したCREST症候群の1症例を経験した.
    上部消化管造影検査では食道はアカラシア様に拡張し, 下部食道の狭小化が認められた. アカラシア分類に当てはめるとFlask type, Grade IIIに相当した. 内視鏡では約5cm長にわたりSavary &Miller III度の全周性の食道炎が存在し, 24時間pHモニタリング検査では食後期のみに一致した酸逆流が観察され, pH4未満時間は9.8%と著明に延長していた. 本症例に対して食道通過障害の解除, 逆流防止機構の修復を目的として腹腔鏡下にHeller-Dor法を施行した. 術後には嚥下困難をはじめとする症状は消失し, 食道の狭小化は解除された. また, 食道炎は瘢痕像となり, pH4未満時間も0%になった. 強皮症の食道機能障害に付随する症状への外科手術アプローチとして, 本手技は有用であると考えられた.
  • 木ノ下 義宏, 鶴丸 昌彦, 宇田川 晴司, 梶山 美明, 堤 謙二, 上野 正紀, 秋山 洋, 星原 芳雄
    1997 年 30 巻 10 号 p. 1990-1994
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道破裂は早期診断が予後を左右するといっても過言ではない. 今回, われわれは表在食道癌の術前検査後に食道破裂をきたした症例に対してリンパ節郭清を伴う1期的切除再建を行ったので報告する. 症例は53歳の男性で, 術前内視鏡診断は胸部下部食道の0-IIc表層拡大型であった. 深達度診断はm3であった. 内視鏡検査後, 昼食をとり食後の嘔吐に引き続き心窩部痛, 背部痛が出現した. 発症4時間後に胸部単純X線, CT撮影より食道破裂と診断した. 食道癌に対する治療としては郭清を伴う切除再建が必要であるが, 食道破裂に対するドレナージ術後の2期的手術の場合, 癒着瘢痕により郭清は極めて困難を要する. 自験例は全身状態も安定していることから, 縦隔のドレナージを行うと同時に郭清を伴う1期的食道切除再建を施行した. 術後は経過良好で, 第20病日に軽快退院した. 食道破裂は早期に診断できれば比較的予後は良好で, 自験例のように食道癌に対する1期的なリンパ節郭清, 切除再建も可能であると考える.
  • 松本 剛昌, 村嶋 信尚, 藤原 拓造, 伊波 茂道, 飽浦 良和, 浜崎 啓介
    1997 年 30 巻 10 号 p. 1995-1999
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    緊急手術を施行した後に, 好酸球性胃腸炎と診断した1症例を報告する. 症例は17歳の男性で, 約2週間続いた腹痛のため当院を紹介された. 超音波検査にて多量の腹水が認められ, 末梢血白血球増多もみられたことより, 腹膜炎を疑い開腹手術が施行された. 開腹にて2.1lの血性腹水がみられたが, 腹腔内の炎症所見は, 軽度であった.虫垂切除術のみ施行した. 術後に, 嘔気・嘔吐・腹痛・下痢などの消化器症状が持続し, 末梢血や腹水中に好酸球の増多が確認された. 好酸球増多症を伴う他の全身性疾患を否定しえたので本症を疑い, ステロイドのパルス療法を行ったところ, 著明な症状の改善を認めた. さらに切除した虫垂やS字状結腸内視鏡下生検標本の組織学的検索にて, 高度の好酸球浸潤が証明され, 好酸球性胃腸炎と診断した. その後6年間外来通院中であるが, ステロイドの投与中止により症状の再燃がみられる極めてまれな好酸球性胃腸炎の症例と思われた.
  • 大西 秀哉, 加藤 雅人, 高嶋 雅樹, 佐伯 修治, 山崎 徹, 中垣 充
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2000-2003
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胃重複症は先天性の奇形で消化管重複症の1つである. 自験例を含め, 本邦で74例の報告を見るに過ぎない. 今回, 2つの嚢腫を有した胃重複症を経験したので報告する. 症例は40歳の女性で, 1991年12月腹部エコー, CT検査で左横隔膜下, 膵背側に嚢胞性腫瘤を指摘された. 1992年4月, 膵嚢胞の疑いで手術を受けた. 左横隔膜下に径8cm, 膵体尾部背側に10cmの嚢腫が存在し, おのおの別個に胃体上部大彎側との強固な壁の連続を認めた. 病理組織学的所見で2つの嚢腫は共に消化管壁に類似した構造を持ち, またその筋層は本来の胃の筋層と連続しており, 胃重複症と診断した. 胃重複症は無症状で経過し成人で偶然発見されることも多い. 診断には胃透視, 腹部CT検査, 超音波内視鏡が有用であり, また重複胃よりの癌発生の報告もあるため治療は外科的治療が第1選択と考えられる. 腹腔内に嚢胞性腫瘤がある場合には胃重複症も念頭に置くことが大切である.
  • 相本 隆幸, 吉田 初雄, 湖山 信篤, 二瓶 光博, 左近司 光明, 恩田 昌彦
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2004-2008
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は55歳の男性.食欲不振を主訴に来院.入院時検査で白血球増多 (21,200/mm3) を示した.胃透視および胃内視鏡検査で幽門前庭部に2型進行胃癌を認め, 1995年10月30日幽門側胃切除術 (D2) を施行した.手術的進行程度はT2, N2, P0, H0, Stage IIIaで, 腫瘍径は110×90mm, 肉眼分類は 5T2であった.また, 病理組織学的にはpap, ss, ly3, v3, n2であった.術後の白血球数は第3病日の19,200/mm3から第28病日の7,200/mm3まで低下し, 血中G-CSF値も第3病日の195pg/mlより第28病日の60pg/mlまで下降した.術後経過は良好で, 1996年1月20日軽快退院した.一方, 抗G-CSF抗 体を用いた免疫組織染色では腫瘍の細胞質が陽性を示した.以上よりG-CSF産生胃癌と診断した.本邦でのG-CSF産生胃癌の報告は自験例を含め7例にすぎない.今回, 極めてまれなG-CSF産生胃癌の1例を経験したので本邦報告例の検討を含め報告する.
  • 近藤 竜一, 清水 忠博, 久米田 茂喜, 岩浅 武彦, 堀 利雄
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2009-2013
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で, 32歳時に盲腸癌にて回盲部切除術, 55歳時に胃癌・肝浸潤にて幽門側胃切除術・肝部分切除術, 59歳時に胆石症にて胆嚢摘出術, 同年直腸癌にて低位前方切除術, 62歳時に横行結腸癌にて結腸左半切除術・胃空腸輸出脚切除術, 65歳時に残胃進行癌にて吻合部残胃部分切除術, 横行結腸・空腸合併切除術を施行している. 今回は定期外来通院中に貧血および便潜血陽性を認め, 胃内視鏡検査を行ったところ残胃の小彎および前壁にBorrmann 2型様病変を認め, 残胃全摘脾合併切除術を施行した. 最近, 多発癌・重複癌の報告が増えているが, 重複した多発6癌巣以上のものはまれである. 多発7癌巣のうち6つが進行癌で定期検診のあり方を考えさせられる一方, 34年間以上の長期生存しえたのは局所所見に比ベリンパ節転移が軽度で, 腹膜播種・肝転移を認めなかったためと思われた.
  • 吉村 哲規, 藤原 斉, 谷岡 保彦, 濱頭 憲一郎, 小林 雅夫, 能見 伸八郎
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2014-2018
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝動注療法に起因したと考えられる肝動脈瘤破裂の2症例を報告する.症例1は57歳の男性.平成4年11月直腸癌肝転移に対し肝後区域切除, 肝動注用ポート留置術が施行された.術後43日目より持続肝動注療法を開始したが2週間後に肝動脈瘤が診断された. 手術待機中に動脈瘤が十二指腸に穿破し大量吐血をきたし緊急開腹術を行い, 総肝動脈結紮, 瘤切除, 広範囲胃切除, 肝動脈再建術を施行し救命しえた. 症例2は89歳の男性. 平成5年2月肝転移を伴った大腸癌に対し右半結腸切除, 肝部分切除, 肝動注用ポート留置術が施行された. 以後肝動注療法を施行されていたが, 平成7年4月下血, 右季肋部痛にて当科入院し, 精査にて肝動脈瘤の胆道内穿破と診断された. 動脈塞栓術にて止血されたが合併した肝膿瘍のため失った. 肝動注療法の合併症として肝動脈瘤は比較的稀だが破裂の際の予後は不良であり, 重篤な合併症の1つであると考えられた.
  • 若林 正夫, 花崎 和弘, 五十嵐 淳, 袖山 治嗣, 川村 信之, 宮崎 忠昭
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2019-2023
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    糖原病I型を合併した肝癌の初回および再発に対して2回の切除を行った1例を経験したので報告する. 症例は40歳の男性. 小児期より体格は小さく, 23歳より痛風と診断されていた. 肝機能障害を指摘され来院, 腹部超音波検査, computed tomography, 血管造影で肝S3に腫瘤を認め, 空腹時血糖の低下, AFPの上昇, 肝生検組織のglucose-6-phosphataseの低下より糖原病I型に合併した肝癌と診断し肝左葉外側区域切除術を施行した. 術後7か月目に手術創部に腫瘤が出現し, computed tomographyで肝S7に腫瘤 を認めたため, 肝癌再発と診断し肝S7部分切除, 腹壁腫瘤切除を施行, また術中に大網および右副腎にも腫瘤を認めたため大網切除と横行結腸部分切除, 右副腎摘出術を施行した. 病理組織診断はいずれもhepatocellular carcinomaであった. 再手術後1年10か月を経た現在経過観察中である.
  • 桂 長門, 里村 一成, 日昔 秀岳, 猪飼 伊和夫, 山本 正之, 山岡 義生
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2024-2028
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    外科的操作もしくは外傷の既往なしに発生するspontaneous bilomaの報告はまれである. 今回, 3管合流部結石嵌頓による1例を経験したので, 文献的考察を加え報告する. 症例は74歳の男性. 3年前より胆石を指摘されていた. 1996年4月1日より上腹部痛, 黄疸, 発熱が生じ, 同4日当科へ紹介された. 同日午前のMRIでは特に有意な所見を認めなかったが, 約5時間後のCTなどでは, 肝左葉の上下面に巨大な嚢胞様の低吸収域を認め, 穿刺液の成分検査からbiloma (胆汁性嚢胞) と診断された. 培養検査でKlebsiella pneumoniaeを証明した.
    このように急速に増大したbilomaを論じた報告はなく, 従来緩徐に形成されるとされてた物とは別に, 胆道内圧の急激な上昇により肝被膜下に貯留する機転が存在することが示唆された. したがって, 急速に増大するbilomaが存在する場合は, 胆道系の閉塞の可能性も疑い, CTなどで検索すべきと思われた.
  • 津村 裕昭, 児玉 節, 横山 隆, 竹末 芳生, 村上 義昭, 立本 直邦, 赤木 真治, 松浦 雄一郎
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2029-2033
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    57歳の男性の極めてまれな腎細胞癌異時性膵多発転移の切除例を経験した. 患者は1985年に他院で腎細胞癌にて右腎部分切除術を受けており, 経過観察中の1994年10月腹部超音波検査で膵腫瘍を指摘された. Enhanced CTでは境界やや不明瞭な不均一に造影される膵全体の多発腫瘍を認めた. MRIではT1強調像でiso intensity, T2強調像で不均一なhigh intensityを示した. 血管造影では動脈相早期より濃染する腫瘍陰影を認め, 静脈相では膵内静脈系を介して早期に門脈系が造影された. ERPでは主膵管の多発性の狭窄像, 尾側膵管の拡張を認め, brushingによる細胞診にてclass 2, 異型細胞はp53に軽度に染色され, 内分泌由来の悪性腫瘍は否定された. 以上より腎細胞癌異時性膵多発転移の診断のもと膵全摘, D1郭清を行った. 本稿では文献的報告例の集計に考察を加えて報告する.
  • 澤田 傑, 石川 真, 関野 昌宏
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2034-2038
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性. 右下腹部痛を訴え来院. 来院時, 右下腹部を中心に圧痛, 反跳痛, および筋性防御を認めた. 腹部超音波およびCT検査の結果, 右卵巣嚢腫および虫垂炎による汎発性腹膜炎を疑い手術を施行した. 腹腔内は黒褐色の腹水が貯留し, 右卵巣に径約5cmの壁が破裂した単房性腫瘤を認めた. 右卵巣嚢腫破裂にともなう汎発性腹膜炎と診断した. また回盲部は周囲組織と癒着し, 虫垂を認めず腫瘤を触知した. このため回盲部悪性腫瘍を疑い, 右卵巣卵管切除に加え右半結腸切除を施行した. 切除標本の病理組織検査の結果, 虫垂子宮内膜症に起因した虫垂重積と診断した. 虫垂切除71,000例中, 虫垂子宮内膜症と虫垂重積はそれぞれ0.05%, 0.01%に認められたのみである. 本症例はわれわれの調べえた範囲で本邦3例目であり, きわめてまれと思われる. 本疾患の術前診断や緊急開腹時には癌との鑑別が困難なため, 術式の選択に苦慮すると思われた.
  • 浜口 洋平, 小尾 芳郎, 和田 浄史, 藤井 義郎, 千葉 泰彦, 山内 毅, 高橋 利通, 林 嘉繁, 鬼頭 文彦, 福島 恒男
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2039-2043
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    炎症性腸疾患に消化管カルチノイドを合併した2例を報告する. 症例1: 36歳の女性. 主訴: 嘔気, 嘔吐. 1988年10月クローン病 (小腸大腸型) の診断で, 回盲部切除術を施行した. 93年6月十二指腸狭窄を認め, 94年8月11日術中迅速病理診断にてカルチノイドと診断し幽門側胃切除術を施行したが, 以後肺, 骨転移を認め, 95年3月4日死亡した. 症例2: 67歳の女性. 主訴: 便秘. 1990年7月より全大腸炎型潰瘍性大腸炎の診断で投薬治療中, 94年1月便秘が出現し, 直腸カルチノイドで3月3日直腸前方切除術を施行した. 術中所見で肝転移, 腹膜播種を認め, 4月27日死亡した. 炎症性腸疾患に合併した消化管カルチノイドの報告例は, 自験例を含めクローン病16例, 潰瘍性大腸炎20例あり, 両疾患の病変部位は一致する症例が多く, 潰瘍性大腸炎では10年以上の長期経過例が大半を占め, カルチノイド発生に炎症性腸疾患が関与している可能性が示唆された.
  • 丸山 祥司, 岡部 聡, 新井 健広, 李 宗成, 村瀬 尚哉, 椿 昌裕, 遠藤 光夫
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2044-2048
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腫瘍最大径5mmでリンパ節転移を認めた直腸カルチノイドの1症例を経験したので, 文献的考察を加え報告する. 症例は65歳の女性, 排便時出血を主訴として近医受診. 直腸癌と診断され当科受診となった. 下部消化管内視鏡検査で下部直腸に限局潰瘍型の進行癌, その3cm口側に5mm大の黄白色扁平隆起性病変を認めた. 進行下部直腸癌, および粘膜下腫瘍の診断のもと, 低位前方切除, 3群リンパ節郭清術を施行した. 口側の病変は深達度sm, 最大径5mmのカルチノイドで, 下腸間膜幹リンパ節に転移を認めた. なお進行癌は深達度mpで, リンパ節転移は認めなかった. 文献的には最大径1cm未満の直腸カルチノイドの転移例はまれで, 筆者の検索する限りでは本報告例が最小であった. 直径1cm以下のカルチノイドに対しても転移の有無の術前検索は必要で, 転移が疑われたならば, 系統的リンパ節郭清を伴った切除手術が必要であると思われた.
  • 石川 治, 大東 弘明, 中野 博史, 安田 卓司, 中森 正二, 平塚 正弘, 亀山 雅男, 佐々木 洋, 甲 利幸, 古河 洋, 今岡 ...
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2049-2053
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    我々は1981年来膵頭部癌切除に際し, 郭清範囲を1群リンパ節のみ (D1) から1, 2群リンパ節および周囲結合組織 (D2α) へと拡大してきた. その結果, 局所再発は減少し5年生存率も9%から29%へと向上した (p<0.05). リンパ節転移陽性例の5年生存率も0%から14%へと向上した (p<0.05). D2α群のうち, n (+) で5年生存した例の大半はn1, 特に (13) / (17) リンパ節に転移が限局していた例であった. その他のリンパ節に転移が及んでいた場合の遠隔成績は有意に不良であった. しかしリンパ節転移が陰 [生あるいは (13) / (17) リンパ節に限局していても, 約40%の症例が膵周囲結合組織内に微小浸潤 (MI) を有していて, 膵頭部・上腸間膜動脈・腹腔動脈神経叢方向にMIが見られても約40%の5年生存率が得られた. 一方, 総肝動脈・肝十二指腸靱帯あるいは膵頭部下縁方向にMIの見られた症例からはいまだ5年生存を得ていない. 以上より, リンパ節転移が陰l生あるいは (13) / (17) に限局する症例にこそ, 膵頭部・上腸間膜動脈・腹腔動脈神経叢を始めとする膵周囲結合組織郭清の意義は大きい.
  • 金光 敬一郎, 平岡 武久, 辻 龍也, 森崎 哲朗, 北村 信夫
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2054-2058
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    拡大郭清手術例46例 (術中照射: IORT併用35例) とts1症例15例からの膵癌の至適切除範囲を検討した. 拡大郭清手術例の87%はstage IVa以上で, リンパ節転移は80%陽性で, 膵外神経叢浸潤は66.7%陽性であった. 治癒切除率は71%であった. 拡大郭清例のIORT併用例でのみ5年生存率16.8%, stage IVaで18.9%の予後が得られたが, stage IVbやn2症例は1年以内に癌死した. 剖検では拡大郭清単独例に比べ術中照射 (IORT) 例では局所再発を60%においては認めず, 再発例でも軽微で, 改善を認めた. 1cm以内膵癌では進行度も低く, 標準郭清で予後も良好であった. 膵癌の至適切除範囲として, 1cm以内膵癌は標準郭清手術, 1cm以上stage IVaまでの膵癌には拡大郭清手術とIORTを適応すべきであり, stage IVbやn2症例にはpalliative切除が望ましい.
  • 小菅 智男, 島田 和明, 山本 順司, 山崎 晋
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2059-2063
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵癌の切除成績向上と術後のQOL維持を両立させることを狙って, 上腸間膜動脈周囲神経叢を温存した拡大後腹膜郭清を試みた. 上腸間膜動脈根部を中心に術中照射を併用した. この術式を標準術式とした1990年以降 (後期) と1980年から1989年まで (前期) の治療成績を比較したところ, 後期において切除率・生存率の向上が認められた. 特に, 総合的進行度が低いか, あるいは局所進行癌であってもリンパ節転移を伴わない症例での成績は著しく向上した. 神経叢を温存できた症例では難治性下痢の発生はほとんど見られなかった. 開腹非切除例では早期に死亡する症例が多かった. 以上の成績から, 上腸間膜動脈周囲神経叢を温存し術中照射を併用した拡大後腹膜郭清は, 根治性と術後QOLを両立できる術式であることが示された. また, 診断や姑息的な処置のみを目的とした手術はできる限り避けるべきであると考えられた.
  • 今泉 俊秀, 吉川 達也, 中迫 利明, 新井田 達雄, 原田 信比古, 羽鳥 隆, 福田 晃, 高崎 健
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2064-2068
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵頭部領域癌切除例527例を対象として至適切除・郭清範囲を検討した. 浸潤性膵管癌では, 第2群以上リンパ節・後腹膜神経叢郭清, 門脈系静脈合併切除, 膵頭体部切除を基本とする拡大手術が治療成績向上の必須条件であった. しかし, 局所の高度進展例ではその治療成績は極めて劣悪であり拡大手術の適応から除外すべきであった. 膵頭部癌の治療成績向上のためには, 術前術中進展度所見を評価して適切と思われるCS III期 (RP2, PV2, A (-)) 以下の症例に合理的に適応選択する必要があった. 乳頭部癌では特にNo.14リンパ節の完全郭清が, 下部胆管癌では更に十分な胆管追求切除と後腹膜郭清が必要であった. 膵頭部領域癌に対する胃切除PDをretrospectiveに検討した結果, 十二指腸第1部又は胃幽門部への直接浸潤がなければ, 胃周囲のリンパ節 (No.3, 4, 5, 6, 7) に転移する頻度は少なく, 90%以上の症例に根治性を損なうことなくPpPDを適応することが可能であった.
  • PTBD造影およびPTCSによる進展範囲診断
    坂本 英至, 二村 雄次, 神谷 順一, 近藤 哲, 梛野 正人, 宮地 正彦, 金井 道夫, 上坂 克彦
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2069-2073
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去18年間に教室で切除した肝門部胆管癌123例を対象に, 胆管上流側癌進展範囲診断の精度を切除標本と術前画像診断を詳細に対比することによって検討した. 誤差5mm未満で診断できた症例を正診例とした. 粘膜内進展については表層拡大進展 (表拡) のない症例では胆管造影像から95%の正診率を得たのに対し, 表拡のある12例では胆管像からその範囲を診断できず, 経皮経肝胆道鏡 (PTCS) が不可欠であった (正診率78%), 粘膜下浸潤については様々な体位で撮影した鮮明な選択的胆管造影像で胆管壁の硬化・狭小像をもとに癌進展範囲を診断し, 正診率は71%であった.
  • 瀧本 篤, 遠藤 格, 渡会 伸治, 関戸 仁, 市川 靖史, 石川 孝, 仲野 明, 嶋田 紘
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2074-2078
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胆管癌の進展様式と生物学的悪性度との関係を調べた教室のdataと術後成績から適切な切除術式を考察した. 胆管癌の進展様式は乳頭型 (P型) に多い粘膜 (m) を置換する様式と結節型 (N型) およびび慢浸潤型 (D型) に多い漿膜下層 (ss) を浸潤する様式の2種類があり, 前者は高分化, 高接着性の, 後者は低分化, 低接着性の腫瘍細胞を主体とすることが示された. Ki-67発現率やp53異常蓄積率と正の相関を示した癌細胞核面積は, どの肉眼型でもssの方がmより大きく, P型では狭窄部のmが先進部のmに比べ大きかった. 以上よりssに存在する癌細胞は悪性度が高く, 粘膜内を進展する癌細胞は悪性度が低いことが示された. 教室の胆管癌術後成績は1生率75%, 3生率38%で, surgicalmarginをfreeにすることが重要であったが, P型ではhw (+) でも相応の生存期間 (術後32か月) が認められた. 以上よりP型ではhwを考慮した胆管切除でよく, N型やD型ではssに存在する悪性度の高い癌細胞が存在するため肝切除や血管合併切除も必要である.
  • 林 伸一, 宮崎 勝, 大塚 将之, 古谷 成慈, 伊藤 博, 中川 宏治, 安蒜 聡, 清水 宏明, 中島 伸之
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2079-2083
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    肝切除を施行した肝門部胆管癌18例および進行胆嚢癌19例において, 切除標本を臨床病理学的に詳細に調査し, 肝切除の妥当性およびその至適切除範囲を検討した.
    1) 肝門部胆管癌の78%の症例に肝側上皮外癌浸潤を認め, その局在は壁外であった. 右側優位型では肝右側に, 左側優位型では肝左側に有意に上皮外浸潤していた. 上皮内進展先進部より15mm肝側で切除すれば72%の症例で肝側断端陰性を得られ, 同様に術前PTBD造影像より判断した進展範囲より15mm肝側で切除すれば89%の症例で肝側断端陰性を得られる結果となった.
    2) 組織学的癌進達度ss以上の進行胆嚢癌では32%の症例に肝転移を認め, 1mm以下の顕微鏡的肝転移を4病巣 (36%) に見た. 特に組織学的肝内直接浸潤陽性例では積極的に肝切除を行うべきであると考えられた. 切除範囲は, 拡大肝右葉或いは少なくともS4aS5切除が妥当なものと考えられた.
  • 塚田 一博, 黒崎 功, 内田 克之, 伊達 和俊, 若井 俊文, 横山 直行, 畠山 勝義
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2084-2087
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    進行胆嚢癌 (T2以上) 切除例96例の手術成績から, 進展様式 (TNM分類) に応じた至適切除範囲を検討した. 胆嚢摘出術+肝床切除+肝外胆管切除術+リンパ節廓清 (標準的手術) とこれに準じるもの60例, 拡大手術 (肝葉切除または膵頭十二指腸手術) が36例であった. 手術死亡は1例であった. T3・T4では拡大手術がそれぞれ12/26例 (46%), 18/22例 (82%) を占めた. 切除断端癌陽性切除 (R1) はそれぞれ9例 (35%), 10例 (45%) であった. T2 (N=48) の累積5年生存率は66%, T3 (N=24) は27%, T4 (N=19) は15%で, T3・T4間を除いて有意の差があった. T3・T4症例において治癒切除 (R0手術) 例の累積5年生存率は31%で, R1手術例の8%に比較して有意に良好であった. 長期予後をより向上させるため, T2には標準的手術を, T3・T4にはその進展に合致した拡大手術を適応し, R0手術を完遂することが必要である.
  • 小出 義雄, 岡住 慎一, 松原 久裕, 宮澤 幸正, 有馬 美和子, 福長 徹, 浦島 哲郎, 菅谷 睦, 大渕 徹, 前田 智子, 磯野 ...
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2088-2092
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    胸部食道癌の至適切除範囲を, 食道の切除範囲, リンパ節の郭清範囲および隣接臓器の合併切除の3要因に分け検討した. 胸部食道全摘例は部分切除例に比べ残遺食道再発率が低く, 術前あるいは術中診断が困難な微小壁内転移や脈管内侵襲の遺残を防ぐために全摘することが望ましい. n (+) 例において, 3領域郭清では有意にリンパ節再発率の減少がみられ, 予後向上が得られた. リンパ節転移およびリンパ節再発の状況から, 深達度mm以上のIu・Im例およびmp以上のEi例では3領域郭清を原則とすべきである. また, 癌の浸潤が粘膜筋板に達しない症例では, 内視鏡的粘膜切除術やriskに応じたリンパ節郭清の縮小化, あるいは非開胸食道抜去術を適応することができるものと思われた. 隣接臓器浸潤例に対する重要臓器合併切除は, 手術成績・遠隔成績とも極めて不良であり, 現時点における根治手術の対象は, 術前補助療法の奏効例に限定すべきであると考えられた.
  • 桑野 博行, 川口 英俊, 佐伯 浩司, 園田 耕三, 大賀 丈史, 北村 薫, 中島 秀彰, 藤 也寸志, 杉町 圭蔵
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2093-2097
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    食道癌切除術での切除範囲選択の指標を明らかにすることを目的として癌の口側進展形式を検討した. 1980~1995年の当科食道癌切除例405例中, 術前無治療で手術を施行した症例から, ep癌, a3癌, 切除断端陽性例を除いた122例を対象とし, 口側進展形式を (1) 垂直型,(2) 上皮内伸展型,(3) 多発癌型,(4) 上皮下進展型,(5) 脈管侵襲型,(6) 壁内転移型に分類した. 122例の進展形式は (1) 44例 (36%),(2) 50例 (41%),(3) 7例 (6%),(4) 13例 (11%),(5) 5例 (4%),(6) 3例 (2%) であった. これらは主病変の組織型別には差はみられず, 深達度別にみるとm癌で上皮内伸展が18/28例 (64%) にみられる一方, 外膜侵襲a癌では上皮下進展が30mm以上に及ぶものもみられた. 食道内腔に露出した病変は術前の詳細な内視鏡検査で確認できるが, 特に進行癌では上皮下病変の存在もあり可能であれば4.0cmの口側距離を確保することが良いと考えられた.
  • 嘉悦 勉, 河村 正敏, 長山 裕之, 高村 光一, 小松 信男, 丸森 健司, 小林 英昭, 鈴木 恵史, 新井 一成, 草野 満夫
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2098-2102
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    過去44年間に当教室で切除された上部胃癌 (C, CM, CE) 318例を対象とし, 噴門側胃切除術の適応について検討した. 各深達度別のリンパ節転移の割合はm: 0% (0/23), sm: 6.1% (2/33), mp: 25% (4/16), ss: 74.1% (43/58), se: 81.3% (104/128), si: 91.7% (55/60) で, ss以上でリンパ節転移が高率であったが, mp以深ではリンパ節転移112までであった. またsm, mp癌の転移リンパ節の詳細はsmがNo1, 7, mpがNo1, 2, 3, 11で, No4d, 5, 6, 10に転移を認めなかった. 治癒切除後の再発形式でも深達度mpまでの癌でリンパ節再発を認めたものはなく, 深達度mpまでの5年生存率でも噴切群86.7%に対し全摘群74%と両群間に差を認めなかった. 以上よりC領域の早期胃癌においてはD1+No7, mp癌においてもD1+No7, 11の郭清を加えることにより噴切は適応となる. 深達度ss以深ではn2以上の転移が高率であり噴切の適応とはならず, 拡大郭清が適応となろう.
  • 太田 恵一朗, 西 満正, 大山 繁和, 高橋 孝, 中島 聰總
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2103-2106
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1946年から1994年までに, 癌研究会附属病院外科で切除された, 多発, 他臓器重複癌および根治度C症例を除く, 長径4cm未満の上部胃癌 (C, CM, CE) 341例と中部胃癌 (M, MA, MC) 1,258例を対象として, 根治度を損わないための上部胃癌に対する噴門側切除 (噴切) と中部胃癌に対する幽門輪温存術 (PPG) の適応を検討した. 長径4cm未満では, 上部胃癌に対する噴切の適応, すなちNo.4d, 5, 6にリンパ節転移を認めない条件は, 限局型, 30mm未満の表在型, 他の肉眼型は, 漿膜浸潤のない分化型, 腫瘍近傍に転移のない未分化型癌である. 中部胃癌に対するPPGの適応, すなわちNo.1, 2, 5, 6に転移を認めない条件は, 漿膜浸潤のない腫瘤・隆起型, 陥凹型は, 分化型20mm未満, 未分化型は18mm未満の症例である.
  • 仁瓶 善郎, 市川 度, 伊藤 雅史, 山下 俊樹, 植竹 宏之, 長内 孝之
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2107-2111
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    多発胃癌に対し切除範囲を中心とした縮小手術の可能性に関して検討を行うために, 当科および関連施設において切除された100例の多発胃癌症例を解析した. 副病巣の診断率は45.4%であり, 大きさの小さい病変, 平坦型の病変で術前診断が不能なものが多かった. 主病巣が早期癌のものではリンパ節転移は1例 (1.2%) であった. 主病巣が進行癌のものを除く, 術前に副病巣の診断可能であった32例について胃局所切除の適応をみると, 主病巣では37.5%, 副病巣では53.1%でその適応を満たしていた. また, 症例としては切除範囲の縮小の適応とならないものが40.6%に認められたが, 37.5%は局所切除の対象となり切除範囲の縮小が可能で, 胃切除による障害を回避できることが示唆された. 多発胃癌についてもその約4割に対し切除範囲を縮小し得る可能性が示唆されたが, 十分な説明と了解, 同意が必要であり, 残された発癌母地に対してのフォローアップが重要である.
  • 右側結腸癌および低位直腸癌手術後の排便習慣の変化からの検討
    安野 正道, 森 武生, 高橋 慶一
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2112-2116
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    右側結腸癌と低位直腸癌のリンパ節転移の実態を解析し, 至適切除範囲の検討を行った. 右半結腸や回盲部が切除されると術後1年でも排便回数が多い. 泥状便のため11%に止痢剤が投与され, また2, 3か月ごとの水様下痢や過敏性大腸炎様症状が18%にあった. 右側結腸癌のリンパ節転移分析からみると中結腸動脈右枝と右結腸動脈で栄養されるような右側結腸癌では根治性を落とさずに回盲部温存が可能で, 温存により良好な排便習慣が得られる可能性が示唆された. 低位前方切除術後の注腸側面像を検討すると, 頻便例では新直腸は小骨盤内でのたわみが少なく垂直に近く直線上に上行しているが, 新直腸が適応なたわみをもっている例では排便機能は良好であった. また, 腸管軸方向で口側10cmを越えるリンパ節転移はまれで根治性を損なわず相当のS状結腸温存は可能で, ゆとりある新直腸により排便状態改善が期待される.
  • 井原 厚, 大谷 剛正, 相原 成昭, 野沢 直史, 国場 幸均, 榊原 譲, 比企 能樹, 柿田 章
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2117-2121
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    1986年~1996年の大腸癌手術例1,060例中横行結腸癌切除例79例 (7.5%) を対象とした. 横行結腸切除例のリンパ節転移は, n0: 45例 (57-0%), n1: 14例 (17.7%), n2: 7例 (8.9%), n3: 3例 (3.8%), n4 (以下SMA+): 10例 (12.7%) であり, このSMA+10例が横行結腸切除術+D3では問題となる. そこで, このSMA+をいかに予測するか, その危険因子について検討し, 横行結腸癌症例の至適切除範囲についてまとめると, 1. 壁深達度がmpまでの横行結腸癌では, リンパ節陽性例は認められず横行結腸切除術の適応と考えた. 2. SMA系リンパ節転移の危険因子としては, 次の通りである. 1) 壁深達度: ss以上, 2) 組織型: 低分化腺癌, 未分化癌, 3) 脈管侵襲: ly2・v2以上, 4) 浸潤増殖様式 (INF): INFβ, γ, 5) 腫瘍径: 3cm以上3. ss以上の進行癌で上記2つの2) ~5) の何れかの条件を満たすときは, SURGICAL TRUNKの郭清を考慮した拡大右半結腸切除術の適応と考えた.
  • 肥田 仁一, 丸山 貴正, 藤本 喜代成
    1997 年 30 巻 10 号 p. 2122-2126
    発行日: 1997年
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下結腸癌手術では術中にリンパ節を触診できないので根治性を損わない切除範囲が求められている. 直腸癌前方切除における局所再発防止のための切除範囲を検討した. 結腸癌164例, 直腸癌198例のリンパ節転移をクリアリング法で調べた. 結腸癌の腸管軸方向転移は腫瘍から7cm以内で中枢方向の転移は主リンパ節に及んだ. 直腸癌の肛門側間膜内リンパ節転移率は20.2%, 進展距離は4cmで, 壁内進展 (10.6%, 2cm) より高率かつ肛門側に達した. 直腸癌のS状結腸傍リンパ節の転移率は1.0%とまれであった. 結腸癌T1には腫瘍から3Cmの腸切除, T2には中間リンパ節と5cmの腸切除, T3, T4には主リンパ節と7cmの腸切除が必要である. 前方切除ではRs, Raは3cm, Rbは2cm, T1, T2は1cmのAWを確保し, RaのT3, T4には5cmの肛門側問膜切除を, RbのT3, T4には全直腸間膜切除を行うとともに低位吻合にはS状結腸を利用したJ型結腸嚢再建で排便機能の向上を計る.
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