日本消化器外科学会雑誌
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45 巻, 10 号
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原著
  • 永田 仁, 絹笠 祐介, 塚本 俊輔, 山口 智弘, 塩見 明生, 金本 秀行, 坂東 悦郎, 上坂 克彦, 寺島 雅典
    原稿種別: 原著
    2012 年 45 巻 10 号 p. 995-1004
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     目的:人工肛門粘膜皮膚接合部における肉芽(接合部肉芽)発生の関連因子としてストーマ旁ヘルニア(旁ヘルニア)やその他の臨床学的因子がなりえるか分析する.また,旁ヘルニアを合併する接合部肉芽の形態的特徴と症状の有無について検討する.方法:当院にて2002年9月から2010年7月までに直腸切断術と下行またはS状結腸の単孔式人工肛門造設術を行った145例を対象とした.接合部肉芽発症26例と非発症119例で,旁ヘルニアを含む臨床学的因子を比較した.また肉芽発症群を旁ヘルニア合併17例と非合併9例にわけ,肉芽の連続形成(3個以上の肉芽が間隔をあけず形成されるものと定義した)と出血,疼痛といった症状について比較した.結果:多変量解析にて,旁ヘルニアの存在(P=0.018),術前BMI 23.5以上(P=0.035)が接合部肉芽発症の有意な関連因子となり,ストーマの高さがスキンレベルであること(P=0.052)も関連の傾向が見られた.かつ,術前BMIとストーマの高さは旁ヘルニアに対しても有意な関連を持っていた.旁ヘルニア合併接合部肉芽は,非合併例と比べて有意に連続形成を示し(P=0.004),症状を伴っていた(P=0.039).結語:旁ヘルニアは接合部肉芽の有意な関連因子であり,肉芽の連続形成と有症化にも関与すると考えられる.接合部肉芽の治療においては保存的治療の他に旁ヘルニアの対策が必要である.
症例報告
  • 辺木 文平, 奥村 浩, 尾本 至, 松本 正隆, 内門 泰斗, 瀬戸山 徹郎, 佐々木 健, 大脇 哲洋, 石神 純也, 夏越 祥次
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1005-1011
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     症例は51歳の女性で,上腹部違和感を主訴に近医受診された.内視鏡検査で,胸部食道に長径12 cmの不染帯を指摘され,生検で扁平上皮癌と診断後当院へ紹介となった.精査の結果,胃壁浸潤を伴う右噴門リンパ節(No. 1)転移および総肝動脈幹前上部リンパ節(No. 8a)転移を有する表層拡大型食道癌と診断され,3領域郭清を伴う右開胸開腹食道亜全摘術を施行した.術前に右噴門リンパ節への転移と診断した病変は長径53 mmの巨大胃壁内転移であった.最終病理組織学的検査所見は深達度T1a-MMの低分化型扁平上皮癌で,遠隔リンパ節転移を伴う計10個のリンパ節転移を認めた.また,原発巣にリンパ管新生因子VEGF-Cの高発現が確認され,本症例の高いリンパ行性転移能を裏づける結果であった.術後補助化学療法施行したが,術後9か月目に腹部リンパ節再発を認め,術後29か月で死亡された.食道粘膜癌からの胃壁内転移は本邦報告4例目であった.
  • 川原林 伸昭, 網倉 克己, 坂本 裕彦, 山浦 忠能, 田中 洋一, 大庭 華子, 黒住 昌史
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1012-1019
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     症例は66歳の女性で,心窩部痛を主訴に前医を受診し,腹部超音波で肝腫瘍を指摘され当院に紹介された.造影CTでリング状に造影される肝右葉を占める9 cmの腫瘍を認め,肝内胆管癌と診断し,拡大肝右葉切除+胆管切除+リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的検査所見では,腫瘍の大部分を占めるneuroendocrine carcinoma(以下,NECと略記)成分と肝内胆管癌(腺癌)成分が近接して存在した.免疫組織化学的検索では,いずれの成分にもsynaptophysinの発現が認められた.術後3か月のCTで多発肝,肺,骨転移を認め,gemcitabineを投与したが効果なく,術後6か月に永眠された.肝原発NECは非常にまれな疾患である上に肝内胆管癌と近接して存在する報告ははじめてである.肝原発NECと肝内胆管癌の分化発生の関連性を示唆する貴重な症例と考え報告した.
  • 川野 雄一郎, 岩下 幸雄, 矢田 一宏, 佐々木 淳, 太田 正之, 北野 正剛
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1020-1025
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     症例は69歳の男性で,2002年8月,肝腫瘍生検にて診断された肝右葉S5/S6,4 cm大の肝細胞癌に対して肝右葉切除術を施行した.病理組織学的検査にて中分化型肝細胞癌,T2N0M0 stage IIと診断した.切除断端は陰性であった.その後,8年間無再発で経過していた.2010年8月,近医のCTにて膀胱直腸窩に6 cm大の腫瘍性病変を認め,精査加療目的にて当科紹介となった.画像上,gastrointestinal stromal tumor,血管肉腫,malignant fibrous histiocytoma,肝細胞癌の腹膜播種再発を疑った.PET-CTにて他部位に集積を認めず,2010年10月,腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的診断は肝細胞癌腹膜播種であった.肝細胞癌切除後8年経過し,肝腫瘍生検が原因と考えられる腹膜播種再発症例と思われ,文献的考察を加え報告する.
  • 伊藤 勝彦, 石井 隆之, 大多和 哲, 清水 善明, 近藤 英介, 西谷 慶, 小川 清, 岸 宏久, 小豆畑 康児, 宮崎 勝
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1026-1032
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     症例は64歳の男性で,近医にてアルコール性肝障害の経過観察中,腹部CT・超音波内視鏡検査にて多発性肝腫瘍を認め当科紹介となった.腹部dynamic CTでは肝S3,S6腫瘍は造影されたが,肝S8腫瘍は造影されなかった.肝S8腫瘍の穿刺組織診では腺癌の診断であった.手術は肝外側区域切除+肝部分切除+核出術を施行した.病理組織学的検査所見では肝細胞癌(S3,S6)と肝内胆管癌(S4,S5,S6,S8)の重複癌であった.術後20か月後に肺転移,頸部リンパ節転移を来し,化学療法を施行したが,術後23か月後に死亡した.肝細胞癌と肝内胆管癌の同時性重複癌はまれであるが,B,C型肝炎ウィルス未感染での重複癌は極めてまれであり報告する.
  • 福本 晃久, 福岡 敏幸
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1033-1038
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     今回,我々は極めてまれな高度捻転を伴う胆囊Winslow孔ヘルニアによる壊疽性胆囊炎の1手術例を経験したので報告する.症例は86歳の女性で,介護老人保健施設に入所中であった.5日前より発熱・上腹部痛が出現し,抗生剤を投与されていたが改善なく,精査・加療目的に当院紹介となった.腹部超音波検査では,胆囊結石は認めず,胆囊腫大と壁浮腫が著明であった.腹部CTでは,胆囊はWinslow孔に嵌入,胆囊頸部に渦巻状陰影を認め,捻転を伴う胆囊Winslow孔ヘルニアの可能性を考え,同日緊急手術を施行した.胆囊はGross II型遊走胆囊で,Winslow孔に嵌入し,胆囊管から頸部にかけて時計方向に450°捻転していた.これは血流障害と胆囊管閉塞を起こす完全型捻転であり,壊疽性胆囊炎を呈していた.捻転部の総胆管側で胆囊管を切離,胆囊を摘出した.経過は良好で,術後18病日退院,施設に再入所された.
  • 岡田 良, 吉田 清香, 鈴木 聡, 八島 玲, 長谷川 有史, 小山 善久, 畠山 優一, 竹之下 誠一, 田﨑 和洋
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1039-1045
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     胆道原発顆粒細胞腫は極めてまれな疾患である.今回,我々は顆粒細胞腫と診断された,極めてまれな胆道良性腫瘍を経験したので報告する.症例は62歳の女性で,2007年12月他院において胃癌に対して胃全摘術,脾臓摘出術,Roux-Y再建術を施行された.その際の術中触診にて中部胆管に直径約8 mmの腫瘤性病変を認めた.腹部造影CTでは中部胆管に内腔に突出する造影効果を伴う腫瘤性病変を認めたが,胆管壁の肥厚は認められなかった.細胞診などの病理組織学的検査は施行せず,術前には確定診断に至らなかった.2008年3月肝外胆管切除術,胆囊摘出術,胆管十二指腸吻合術を施行した.腫瘤は黄白色調の粘膜下腫瘍の形態を示し,病理組織学的診断にて胆管顆粒細胞腫と診断された.術後経過は良好であり,現在までに再発を認めていない.我々が文献検索しえたかぎりでは,胆道原発顆粒細胞腫の本邦報告例は本症例を含めて5例であった.
  • 佐藤 彰記, 森田 高行, 藤田 美芳, 岡村 圭祐, 市村 龍之助, 山口 晃司, 福島 正之, 高橋 利幸
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1046-1051
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     浸潤性膵管癌に対する膵全摘術は我が国ではあまり施行されていない.多結節性に進展した膵管癌に対し,膵全摘術を施行した症例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,2009年6月上腹部痛で前医受診し急性膵炎,膵癌疑いと診断され経過観察となった.2010年5月当院内科初診となった.CA19-9 390 ‍U/‍mlと上昇しCTで頭部から尾部に3か所の結節性病変を認め,PETでは同部位に集積を認めた.膵全体の膵癌と診断し2010年6月亜全胃温存膵全摘術を施行した.病理組織学的診断はinvasive ductal carcinoma,pTS4,pT3pN0M0,f-Stage III,3か所の結節を伴う浸潤性膵管癌であった.それぞれの結節は上皮内病変を介して連続しており組織学的にも同一であることから,単一の病変が複数の結節を形成したと考えられた.
  • 大内 晶, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎, 前田 敦行, 高山 祐一
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1052-1058
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     症例は74歳の男性で,胃癌で胃全摘の既往があった.定期受診時の採血でHb 3.9 g/dlと著明な貧血を認め精査となり,腹部CTで左上腹部に,膨張性に発育した辺縁に造影効果を伴う内部不均一な13 cm大の腫瘍を認めた.膵体部との境界は一部不明瞭で尾側膵管の拡張と門脈内に腫瘍栓を認めた.MRCPでは主膵管の途絶と尾側膵管の拡張を認めた.開腹すると腫瘍は横行結腸間膜,挙上空腸,輸入脚へ浸潤しており,膵体尾部切除,門脈および被浸潤臓器の合併切除を行い,門脈は右外腸骨静脈を用いてグラフト再建した.病理組織学的検査所見は膵腺房細胞癌であった.術後3か月で多発肝転移再発を認め,gemcitabine,S-1による化学療法を行ったが,術後9か月で原病死した.膵腺房細胞癌は門脈内進展例の中に予後不良な症例もあるため,治癒切除しえたとしても術後補助療法が必要であるが,現時点では標準治療は確立されていない.
  • 西 智史, 森 周介, 西田 保則, 平野 龍亮, 吉福 清二郎, 小田切 範晃, 笹原 孝太郎, 岸本 浩史, 田内 克典, 樋口 佳代子
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1059-1065
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
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     症例は79歳の男性で,腹痛を主訴に来院した.腹部触診上臍左側に高度の圧痛を認めた.腹部造影CTで左下腹部に限局した小腸壁の肥厚と周囲脂肪織濃度の上昇および腸管外ガス像を認め,小腸穿孔,腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.大網の一部がトライツ靱帯より約180 cmの空腸壁に癒着し膿瘍を形成しており,同部を含む小腸部分切除術を施行した.切除標本では中心に潰瘍を伴う3 cm×7 cmの隆起性病変を認め潰瘍底で穿孔を来していた.病理組織学的検査では小腸壁全層に密に増生した中型のリンパ球とlymphoepithelial lesionを認めた.免疫染色検査の結果,CD3陽性,CD4陰性,CD8陽性,CD20陰性,CD56陽性,EBER in situ hybridization陰性であった.以上よりII型腸管症型T細胞リンパ腫と診断した.術後8日目退院となり,その後再発し術後62日目に死亡した.
  • 自見 政一郎, 空閑 啓高, 渡辺 次郎, 山縣 元, 田宮 貞史, 品川 裕治, 堤 宣翁
    原稿種別: 症例報告
    2012 年 45 巻 10 号 p. 1066-1073
    発行日: 2012/10/01
    公開日: 2012/10/16
    ジャーナル フリー HTML
     症例は54歳の女性で,主訴は下血と貧血であった.入院後,下部内視鏡検査で直腸に2型進行癌を認めた.造影CTで下腸間膜静脈内に陰影欠損を認め,腫瘍塞栓が疑われた.開腹所見では,腫瘍直下から連続して,下腸間膜静脈周囲にかけて硬い索状物を触知した.下腸間膜静脈を最初に結紮し,低位前方切除・子宮合併切除を施行した.病理組織学的診断では深達度a2の粘液癌で,リンパ節転移は認めなかった.下腸間膜静脈内に腫瘍塞栓を認めた.8か月後の腹部CTで肝臓S4に2 cm大の低吸収域を認め,肝内側区域切除を施行した.肝臓腫瘍は粘液癌で直腸癌の肝転移と診断された.術後FOLFOX4+bevacizumab併用療法による化学療法を約1年間行い経過観察した.化学療法終了後に,肝・肺・副腎転移が出現した.全て切除した.初回術後4年2か月経過した現在生存中である.
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